※この作品はR-18です。

俺ガイル 日常の何気ないエロス。   作:高橋徹

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 はるのん編最終話です。


(29)

「エッチは気絶してからが本番なのかもしれない」

 

 謎の名言が誕生した。

――ねえ、比企谷くん。わたし思ったんだけど……などという、やたらどきどきする前置きで、陽乃さんがもじもじと頬を赤らめて言った台詞に。

 

「ぶほぁっ!」

 

 俺は、口に入れていたカフェオレをまあまあの勢いでテーブルに噴いた。ぶびゅーって。

 初めて、この人はバカなんじゃないか……なんてことを思ってしまった。

 

 

 最初に陽乃さんの中に射精した後は、それはもうお互いが溶け合う程の泥仕合と相成った。絶頂に達した時に陽乃さんが足をV字にぴんと伸ばしたので、その膝裏を掴んで獣の如く腰を振ると、陽乃さんが鳴いて泣きながら何度も全身を痙攣させた。俺も射精で敏感になっている肉棒を挿入したまま抽送を繰り返した為、気が狂いそうな程の快感に脳を焼かれた。

 陽乃さんが気絶した時は至極自然で必然的な流れだとは思ったが、膣内の締まりが急に緩くなった時は「人が気絶する」という現象が一番生々しく感じられた。

 

 そして、その後だ、問題は。

 陽乃さんは気絶から回復すると、うっすらと笑みを浮かべて俺を押し倒し、騎乗位で跨ってきた。もちろん敏感なのは相変わらずで、それどころか更に敏感になっていたので、肉棒を柔らかな膣肉に呑み込んだだけで、陽乃さんは達してしまった。しかしそれでも笑みを浮かべたままで、俺の腹に手を置いて腰を前後にぐいぐいとグラインドさせ始めた時は……その蠱惑的な光景を見ているだけで射精してしまいそうだった。実際その後すぐに射精してしまったのだけど、陽乃さんは俺の射精と同時に絶頂したにも関わらず、満足しなかった。身体をぴったりと重ねられて、耳元で「まだ、出来るでしょ……?」と吐息混じりの声で囁かれた時に見えた電灯の光は、しばらく忘れられそうにない。囁いた後、陽乃さんは腰を前後左右上下に振り、時にぐりぐりと回転までさせた。まるで、牡の貪り方を本能的に熟知しているかの如き動きに翻弄されて、俺は気絶する直前まで射精し続けた。

 

 その後一緒にシャワーを浴びた。てっきりいたずらされるかとどきどき(期待ではない、断じて期待ではない)していたのだけど、陽乃さんは疲れ果てていたのか驚く程大人しかった。しかし後ろから抱きしめて丁寧に肉棒を洗われると、あっと言う間にがちがちに勃起してしまった。陽乃さんはボディソープをシャワーで洗い流すと、「うわぁ……」と上ずった声を上げて亀頭をつんつんとつつき、「いっぱい気持ち良くしてくれたから……ね?」と、頭がくらくらする程優しい声で囁いた。そして俺を椅子に座らせ、裏筋や玉も丹念にねっとりと舐め上げる丁寧な口淫をしてくれた。上目遣いで俺を見つめながら、口をOの字にして頬をすぼめる様は淫猥そのもので、最初から最後まで目が離せなかった。唾液たっぷりで肉竿をしゃぶる陽乃さんの蜜壺がもたらす快感は、ついさっきまでの行為と比べて穏やかそのもので、まるで適温の温泉に浸かっているかのような心地良さがあった。射精すると、陽乃さんは俺の様子を窺いながら最後の一滴まで丁寧に搾り、啜ってくれた。

 

 そんなこんなで、今は二人とも服を着て、ゆっくりとホットのカフェオレを飲んでいた。陽乃さんは俺と同じくカフェオレを飲んでいるんだけど、びっくりするくらい機嫌が良い。さりげなく鼻唄を口ずさみながら(引くほど上手い)、何故か俺の腕を抱いて猫のようにころころと甘えてくる。そっかー俺今日死ぬのかなー、などと自然に思うくらいには幸せだったりする。

 陽乃さんがマグカップをテーブルに置いて、満足げに息を吐く。

 

「ふぅ。ごちそうさま。美味しかったよ」

「お粗末さまです。それなら良かった」

「んふふ……」

 

 陽乃さんが俺を見つめて怪しげな笑みを浮かべる。そしてクッションを俺のすぐ後ろに動かしたかと思うと……俺の後ろを陣取り、そのまま抱き付いて来た。背中が天国みたいな感触に包み込まれる。

 

「あ、あの、陽乃さん?」

「なぁに?」

「あ、当たってます……」

 

 全力で真っ直ぐ前を見ながら言うと、陽乃さんが俺の肩に顎を乗せた。吐息に混じったカフェオレの甘い香りに陶然としていると、耳たぶをはむっと唇で咥えられた。心臓が爆発しそうになっている俺に、陽乃さんがくすりと笑って囁きかける。

 

「当ててるのよ……」

「え、あ、はあ、はい、そうですか……」

 

 目が高速で泳ぐ。おいおい、俺と陽乃さんはついさっきまで散々もっとすごいことをしてきたんだぞ。どうした比企谷八幡。お前、これじゃあまるで――

 

「なんか、比企谷くんさ。わたしとあれだけしたのに、反応がまるで童貞みたいだね」

「…………」

 

 心の代弁者、現る。

 涙が出そう。

 

「比企谷くん。なんで泣いてるの?」

「…………」

 

 涙、出てた。

 

「……や、こんな可愛くて色っぽい人に当てられたら、こうなりますって。こんな幸せ、慣れて当たり前になる方がいやですよ……って、あれ?」

 

 陽乃さんが何も喋らないので振り返ると、目の前の顔の動きがぴったりと止まっていた。無表情といえばそうだが、まるで無理に平静を装っているかのようだ。

 

「…………」

「……あ、陽乃さん……もしかして、照れてます?」

「…………」

「あの、陽乃さん、知ってますか?」

「何かな?」

「人間の手首って、そういう方向に曲がらないんですよ?」

「比企谷くん。人間、限界に挑戦するべき時があると思うの」

「そのタイミングは俺が決めるし第一これは人間の限界って言うか人体の限界って言うか関節の限界って言うかいたたたた!」

 

 陽乃さんがびっくりする程素敵な笑みを浮かべたまま、俺の手首をあらぬ方向に曲げようとする。俺のお腹に回された腕が、今は俺を抱きしめる為ではなく、逃がさぬよう拘束する為に機能しているという恐ろしい状況だ。

 しばらくの間手首の関節がグッバイするのを必死で防いでいたが、やがて陽乃さんは飽きたのか唐突に俺をぱっと解放した。

 

「比企谷くん。こっち」

 

 陽乃さんは立ち上がると、俺の腕を引いてベッドに向かった。促されて仰向けに寝転がると、陽乃さんが上から乗ってきた。柔らかな乳圧が胸板にかかるが、これだけ肉感的な身体をしていながらこの人の身体自体は驚く程軽い。

 

「比企谷くん」

「なんでしょう」

「生意気」

「すいませ……っ!?」

 

 謝ろうとした所で、陽乃さんが急に顔を近付けた。おでこを付けた状態で俺をじっと見つめ、顔をずらして耳元で囁く。

 

 

「比企谷くん。わたしね、君のことが、    」

 

 

――その声は、陽乃さんが今まで俺に発したどの声よりも優しくて。

 耳に流れ込むと、兜卒の天の甘露が如く俺の心を魅了した。

 心臓が一瞬活動を止めた、気がする。

 心臓が木っ端微塵に爆発四散した、気がする。

 それほど、有り得ない程の衝撃が俺の心をめちゃくちゃにかき回していた。

 陽乃さんがくすりと笑う。セミロングの艶やかな黒髪が俺の頬を撫で、白魚のような指が俺の手に絡み付く。気が付けば、二人の身体は余す事無く密着していた。

 

「それで、比企谷くん。君はどうなのかな?」

「うぐ……」

「あれー? お姉さん勇気出したのになー」

「や、んなことないでしょう。すげぇあっさり……って、あ……」

 

 陽乃さんが飄々と振る舞うものだから、気付くのが遅れた。

 よく見ると、陽乃さんの頬がほんのり朱に染まっている。

 心臓に、血液が一気に流れ込んだ。

 

「陽乃さん……っ」

「え、きゃ……っ?」

 

 愛おしさで我慢出来なくなり、陽乃さんの肩を掴んでひっくり返す。今度は下になった陽乃さんが、一体何が起きたのかと目をぱちくりさせている。珍しい光景に思わず心の中でガッツポーズをした。

 

 

「陽乃さん……俺、も、す、好きです……っ」

 

 

 陽乃さんの手を握って、ありったけの勇気をかき集めて震える声で伝えると。

 

「……ふぅん。そっか……」

 

 陽乃さんは平静を装っているつもりのようだが、耳まで真っ赤に染まり、目を泳がせている。本当に直球で行くと、実はかなり弱いらしい。

 顔をゆっくり近付ける。吸い寄せられるように唇を重ねると、陽乃さんが背中に腕を回してきた。抱きしめ返すと、陽乃さんの腕に力が込められる。離れたくないという愛くるしい感情がうっすらと透けて見えて、尚のこと愛おしさが湧く。

 唇を離すと、陽乃さんがまるで試すように笑った。

 

「比企谷くん……わたし、めんどくさいよ?」

「……なんだ、そんなことですか」

「……結構、ていうかかなり重要だと思うんだけど」

「ああ、や、言い方が悪かったですね、ごめんなさい。そんなの今更ですよ」

「あんまり変わってないんだけど……」

 

 拗ねたように頬をぷっくり膨らませる。この人は自分がこういうことをすると可愛いと分かってやっている訳だけど、それでも想定が甘いと言わざるを得ない。

 可愛すぎて死にそうなんだぞ、こっちは。

 何言ってんだ俺。

 頬をぽりぽりと掻いて、陽乃さんを優しく抱きしめる。

 

「まあ、それも込み込みで好きってことで……どうですか」

 

 恐る恐る聞くと、陽乃さんは「んー……どうしようかなー?」と焦らすように言う。あんたさっき俺に……ああもう。しかし、こんなことを言いながらも、陽乃さんの笑顔はとても幸せそうで。ただただ俺をおちょくっているだけだとすぐに分かった。

 

「……ま、採用してあげよう」

「陽乃さんは人事の人だったのか……」

「ん、似たようなもんじゃない?」

「え、それってどういう……」

 

 陽乃さんの言葉に戸惑っていると、陽乃さんがにっこりと微笑んだ。

 

「よく、永久就職……って言い方聞くでしょ? あんな感じ」

「え……うおっ!?」

 

 陽乃さんが俺を強く抱きしめて、俺の肩に顎を乗せる。顔が見えないようにしたのは、陽乃さん自身、今の台詞が相当恥ずかしかったからなのだろうか。

 ほんの少し前までは、この人は強化外骨格に包まれた、どこまでも底が見えない魔王のような存在だと思っていた。

 

 しかし今では、その認識はすっかり変わった。

 底が見えない、という点は今でもそう思っているが、それは怖いという意味ではない。

 まだまだ知らない魅力があるという意味だ。

 とんでもなく美人で、スタイルも良くて、外面の良さは最強で。

 それでいて、とんでもなく可愛くて、エロくて、女の子っぽくて、大人っぽくて、子供っぽい。

 

「比企谷くんと好き放題する為だけの部屋を借りようかなー……」

「発想が斜め上すぎる……」

 

 こんな吹っ飛んだことを言われても、本当にやってくれたらどれだけ楽しいかということばかり考えてしまう。

 俺の心も身体も、この美しい女王様にすっかり捕らえられてしまった。

 多分物凄く苦労するとは思うけれど、それ以上に楽しいことが沢山待っていそうで。

 目の前の年上美人を見ていると、どうにも頬が緩んでしまう。

 試しに陽乃さんの頬をむにっと摘まんでみる。

 

「……何してるの?」

 

 冷えた声音で言いつつも、その瞳はとても優しい。この人がもたらすギャップは破壊力が高すぎるようだ。また、新たな面を一つ発見出来た。

 

 これからも少しずつ、こういう発見をし続けて行けたら嬉しい。

 

 ころころと表情が変わるようになったこの人を見ていると、心の底からそう思う。

 

 

――そう。

 

 

 雪ノ下陽乃の傍にいると、意外と見えてくるものもある。

 

 

 

 お終い。

 

 

 




 はるのん編最終話でした。
 終わったーーーーーーーーーーーーーー!!!
 はるのん編は終始テンションをどんな感じにするかで悩みながら書いていましたが、エロシーンを執筆する時の白熱具合は物凄く高かったです。八幡の家に入ってからがまた長かったなぁ。
 はるのん編のアフターは気が向いた時に書こうと思います。ギャグの雰囲気をもう少し強めて、且つエロはもっと濃厚に。ギャップを強めて行こうかと。
 はるのん編を書き始めたのが去年の8月16日でした。7ヶ月前か……。
 はるのんのおかげでUAがぐっと伸びたのを、今でもしっかりと覚えています。本当にありがとう、はるのん……!
 はるのんと八幡(と僕)にぜひ感想を送って頂ければと思います。感想は本当に嬉しくてありがたいです。ぜひ、よろしくお願いします(^^)!

 残る本編は由比ヶ浜マのみ。いろはすとゆきのんはもう数話で終わります。
 今から9巻その他を読み直して、折本やサキサキとの絡みを復習しておきます。

 あ、バレンタインですね。毎日更新しているとそれ用に書く余裕も無いのであっさりスルー!

 それでは、また明日ここでお会いしましょう(^^)!
 今回もお読み頂きありがとうございました(^^)!!
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