(1)
一色いろは、一生の不覚。
――そう、言わざるを得ない。
「ふぅ……」
とてとてと道を歩きながら、ゆっくり深めのため息を漏らす。
本日は冬の寒さがまだ残る4月上旬の、土曜日。
先輩のおうちにお邪魔する約束をしたのは午後1時。本当は午前中から行きたかったんだけど、何やら用事(平塚先生の雑用)に駆り出されているらしく、すまんと謝られてしまった。先輩は悪くないと思うんです……ご愁傷さまです……。
そして今の時刻は11時55分。ちなみに先輩の家にはあと5分後には着く。……行ってもまだ先輩は居ないと分かってるのに、迷惑をかけてしまうと分かっているのに、なんでこんなに気が急いてるんだわたしは……。
一生の不覚、それは、先輩――比企谷八幡先輩に惚れたこと……ではない。その言い方は流石に本人に失礼だしね。あの人、さりげなく凹むからなぁ。そこがまた可愛いんだけど……って、そうじゃなくて。
今の思考の流れでも分かる通り。まさかわたしが――誰にでも可愛い子ぶって、男はみんな手玉に取る対象としてしか見てなかったような、あの一色いろはが……先輩に、比企谷八幡先輩に、こんなにベタ惚れしてしまうなんて、今までのことを思い出すだけで火が出る程恥ずかしくなるくらい惚れてしまうなんて……と、いう意味での不覚だ。どっちにしろ先輩に失礼な気もするけど、まぁ良いか。
ちなみにさっきのため息は、寒い中歩いていることに対してでもなければ、疲れている訳でもない。言うのも恥ずかしいけれど、所謂「恋煩い」っていうやつだ。言ったらほんとに恥ずかしかった。手で顔を隠したいよぉ。
――あの日、何時間したかも分からないくらい先輩と交わったことで、元々先輩に惹かれていたわたしの心は、キスをしたことで先輩の心に更に寄り添っていったわたしの感情は、もうどうしようもないくらいに深く、とろとろに蕩けてしまった。先輩がわたしのことをとろとろにした。
わたしは、先輩が好きだ。
そんなことを恥ずかしげもなく言えるくらい、先輩が好きだ。……恥ずかしげもなく言えるのは、心の中でだけだけど。心の中で言うのだって、最初すごく苦戦したくらい。
先輩にはいくら普段あざとい事を言っていても、夜になったら全部蕩かされて素直な気持ちを言ってしまうんだから、もうどうしようもない。
本当は今日だって、午前中どころか前日夜から行きたいくらいだった。友達の家に泊まりに行くと言えばわたしは大丈夫だったし。こういうの前乗りって言うんだっけ?
昨日の夜にそれを提案してみたら、先輩のご両親がいらっしゃるから駄目だと言われた。流石に言うのが直前すぎたのもあったけど、それでも名残惜しくて粘ったら、「お前は自分の恥ずかしい声を俺の親に聞かせたいのか」と言われたから「じゃあ口になんかはめてくださいよぉ。猿ぐつわって言うんでしたっけ?」と試しに言ったらおでこにチョップされた。理不尽だ。ちなみにそのまま手の横の部分でわたしをぐりぐりしてきて、きゃーきゃー言ってるわたしの仕草に発情したのか、先輩がキスをしてきた。ちなみに場所は駐輪場。なんかわたしたち、あそこでよくキスしてるなぁ。コート越しに背中にぐりぐりと押し付けられる、駐輪場の柱の感触をすっかり覚えてしまった。
どうやらわたしはキスがすごく好きで、キスにすごく弱くて、キスでとろとろに蕩けてしまうらしい。お互い、唇をちゅっと合わせた時に、今具体的にどの辺までしたいのかが分かるようになった。唇の触れ方や舌の絡め方、そして何より目の色で、キスだけしたいのか、ちょっとお互いの身体を触り合いたいくらいなのか、お口でしてほしいのか、最後までしたいのか、先輩の望むことが全部分かる。
これは先輩とわざわざ言葉を交わさなくても、互いに通じ合うものだと思っている。
共通認識。以心伝心。不文律。
そんな感じ。
ちなみに昨晩駐輪場でキスした時は、先輩が何を思ったのかエッチする気満々な舌の絡ませ方をしてきた。ちょっとしたエッチをしたい舌の動きじゃない。あれはここでわたしに入れたいという意思表示を兼ねたキスだった。
だめです、そこまでは……なんて言おうとしても、強く抱きしめられて腕を固定されて、唾液を何回も飲まされたらあっと言う間に何も言えなくなっちゃう。口の中をぐっちょぐちょにかき回されて、はしたないくらいお股をぐしょぐしょに濡らして、わたしは激しくイった。
先輩がショーツ越しにお尻を激しく触ってくるから余計に感じてしまって、立つのもままならないくらいに腰ががくついた。
先輩が強く抱きしめているから、全く動けないままかくんと力を抜くと、先輩が「柱に手を付いて、尻をこっち向けてくれ……」と息を荒くした声で言ってきた。この状態になった先輩はもうやばい。最近わたしはこの状態の先輩を「おサルさんモード」と名付けた。本人に言ったらすっごい怒られたけど。怒り方が面白いし可愛いので、しばらく言い続けてみることにする。えらい目に遭いそうだけど。
ああ、話が逸れた。
それで、これ声抑えられるかな……と思いながらも言う通りにして、「手短にね……?」と言ってショーツをずらしたら、自分でも分かるくらいか細い声での懇願になってしまって、先輩に劣情に火を点けてしまった。「わかった……っ」と短く囁いて、先輩が思い切り貫いてきた瞬間……頭に火花が散った。あまりに激しく腰を打ち付けてくるから、わたしはコートを唇で咥えて必死で声を殺した。
何十回か腰を打ち付けられて、先輩から出たお汁がわたしの子宮の入り口に叩き付けられると、視界に花火みたいにぱちぱちぱちって光が散って、意識が飛んだ。意識を手放しながらも感じたお腹の奥の温もりが、どうしようもない程に心地良かった。
その後、起きたら先輩がわたしをおんぶして運んでくれていた。自転車はなんか手を気持ち悪い角度にしてなんとか一緒に運んでいた。ありがたいけど気持ち悪かった。
先輩に「ありがとうございます。でもなんか手の角度が気持ち悪いですね」って正直に言ったら「おしおきすんぞこら」と言われたので、「ぜひ♪」と返したら黙ってしまった。多分顔が真っ赤になっていたと思う。でもその後、結局先輩は自転車を一度止めて、おんぶしたままショーツをずらして私のアソコを指でかき回してきたから、泣きながらイってしまった。先輩ってこういう時本当に鬼畜でどきどきしちゃ……こほんこほん。
昨日は外だったからあれくらいで済んだけど、普段はもっと……もう、本当にすごい。先輩、マジでおサルさん。学校で口だけとか手だけとかでもよくするけど、というか毎日してるけど、本番までは中々出来ない。流石に生徒会長という肩書があるしね。それを考えるなら口だけとか手だけとか言ってる場合じゃないだろって話になるけど。
ああ、また話が逸れた。
角を曲がると猫がてててと駆けて行った。あの天然のあざとさには見習うべき点がたくさんあると思う……ってこの前先輩に言ってみたら、へっと鼻で笑われた。マジ許すまじ、おサルさん。
先輩は、夜、どちらかの家で本気でエッチする時、思い切り力強く抱きしめてくる。その時は全く動けないどころか、息も絶え絶えになる。そんな状態で全力で子宮に先輩の逞しいものを打ち付けてきて、何十回何百回何千回とわたしを鳴かせるんだ。
先輩が上になって、手をぎゅっと握られてキスをしながら打ち付けられると、もうたまらない。うつ伏せになった状態で上からのしかかられながら獣のように交尾をするのなんて、本当におかしくなりそうになる。
仰向けでもうつ伏せでも、脇の下から腕を通されてがっちり固定されながら犯されると、頭の芯まで幸せな感覚で痺れてしまう。先輩の心と身体と欲望と愛情を全身で感じながら中に出されると、もう身体中が喜んでしまう。もちろん、わたしの心もいっぱいに満たされる。
それに、ここで思い出すことさえ恥ずかしくなるような言葉を毎晩のように言わされるんだ。もっとも、最近では言わされてるのか進んで言ってるのかちょっと曖昧になってきたけど。そしてそんな言葉を口にする度に、身体の奥がきゅんと疼く。そして中に出された後、わたしのアソコは喜びに震えて先輩のモノをきゅきゅきゅっと締め付けて、先輩のお汁を残すことなく吸い出してしまう。
正直、わたしたちがこれから大学生になって、それでも関係が続いていて一緒に社会人になれたら、すぐにでもあの人の子どもを欲しがってしまいそう。今だって先輩に「俺の子を孕め」なんて言われたら、喜んで受け入れてしまうだろうなと思う。もちろん、そこは2人とも自制してるけど。結構必死で。
だいたい、なんであの人はあれだけ激しくわたしとしておいて、終わったらずっと撫でてくれたり腕枕してくれたりコーヒーを飲ませてくれたりと、あんなに優しくしてくれるんだろう。反則だ。男らしさと優しさのダブルパンチでわたしが悶えていることに先輩は気付いているんだろうか、まったくもう!
「……はぁ」
もう一度、恋煩いのため息。2回目でもやっぱり恥ずかしい。むしろわざわざ言ったことで更に恥ずかしくなった。
もうじき、先輩の家に着く。確かご両親は居なくて、小町ちゃんが居るはずだ。小町ちゃんとは最近一気に仲良くなったから、一緒にカマクラちゃんを愛でながらお話してようかな。
「……はぁ」
こんなこと、考えるようになるだなんて夢にも思わなかったけど。
先輩に、早く、会いたい。
続く。
8日間我慢しました(笑)
初めて八幡以外の視点で書きました。本当に初めてなので新鮮です。
今回の話は9月12日に既に書いていたので、3週間越しの出番となりました。いろはす編がまだ4話も残っている状態で書いたので(当時はあと何話続くか分かっていませんでしたが)、多少加筆修正をしました。
今回のエピソードは適宜いろは視点も入れていこうと思います。勉強勉強。
平日中日の水曜日も頑張りましょう。
それでは、また明日ここでお会いしましょう(^^)!
今回もお読み頂きありがとうございました(^^)!!