※この作品はR-18です。

俺ガイル 日常の何気ないエロス。   作:高橋徹

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(2)

「ふぅ……」

 平塚先生から言い渡された雑用を終えて、自転車のペダルを漕ぐ足に力を込めて、足早に家へと向かう。や、もうほんと勘弁してほしい。最初は「比企谷。すまないが、休日にちょっと奉仕部関連で頼み事があるんだが……もちろん無理にとは言わんが」と控えめに言ってきたのに、俺が「すいません、その日はちょっと……」と目を泳がせながら答えた瞬間目の色を変えて、「なんだ、女か? それとも現生徒会長か? それとも一色か?」と詰め寄ってきた。段階を踏んで特定してくのやめてほしい。キスすんじゃないかってくらい顔が近付いたんだけど、思いっきり血の涙を流してたから違う意味でどきどきした。血涙って本当に流せる人居るんだ. ……。

 

 平塚先生の言葉からも分かるように、俺といろはの関係はそこはかとなく、けれど確実に学校内に知れ渡っていた。俺は学校で他の人の目がある時はあくまで今まで通り接するつもりで居たんだが、いろはの振る舞いが予想外にかわい……下手だった。

 学校で俺を見た途端に目を輝かせて、

「あ、先輩! おはようございます! えへへぇ……」

 と腕に抱きついてくる。

「お、おい、こら、こら」

 必死で訴え掛けると、

「あっ、す、すみません、そうでした……あぅ」

 と、顔を赤くしながら離れていく。

 こんな流れはしょっちゅうで、というか毎日のことで。しかも毎回無邪気極まりない仕草で抱きついてくるもんだから手に負えない。反射で抱きしめ返しそうになって毎回ヘッドバンキングして理性を保っていたら、この間1年生と思しき女子グループの前を通りがかった時に「あ、ヘドバンの人だ」と言われて激しくショックを受けた。俺のキャラ付けが確実に変な方向へ向かっている。

 ダントツで気まずくなるであろうと予測していた奉仕部での空気は意外といつも通りだったが、この件はきちんと話題に出た。

 雪ノ下が「一色さん、最近なんだか変わったわね。……比企谷くんのばか」と拗ねたように呟いて、それを聞いた由比ケ浜が「そうだね、いろはちゃん、すごく可愛くなったよね。……ヒッキーのばか」とこれまた拗ねたように呟かれた。人生で一番返答に困って、膝に手を置いて机に視線を落としながら「お……おう」と言うのが精一杯だった。俺の回答の拙さマジクール。

 

 そんなこんなで、周りに少しずつ知られつつもいろはとの付き合いは続いているのだけど、気付いたことが一つある。

 俺は、身内にとことん甘いらしい。

 ここで言う身内は小町のような肉親に当たる人のみを指すのではなく、漠然と「心を許した人」という意味で言っている。雪ノ下と由比ケ浜は身内と言っていいような恥ずかしいような……という感じ。戸塚と俺との関係は神とそれを崇める宗教の教主っていう関係な。材木座? もちろん他人だけど。

 実際、俺はいろはに対して、日が経つにつれて小町を甘やかすときと同じくらいの勢いで愛でるようになってきた。いろはも以前のように事あるごとにあざとかったり変な行動をすることが減って、それはもうデレッデレになってきたために、俺のこの変化にも拍車がかかっているのかもしれない。

 ちなみにいろはに以前ぽろっとこの話をしたら、

「み、身内!? ちょ、ちょっと、そりゃもう先輩とは毎日毎日一緒に居て夜も可愛がってもらってますけどそんな言い方されたらもうお前は一生俺の女だって言ってるも同然じゃないですか何ですか何なんですかもうもうちょっと直接的に言ってくださいお願いします」

 と畳み掛けられたので、恥ずかしくなって逃げた。ダッシュで。ちなみに「逃げたら今まで先輩がわたしにした数々の淫猥な行為を白日の下に晒しますよー」と爽やかに言われたので即座に戻った。それはお前の立場もやばくなるだろうが。そしてその後本当にプロポーズじみたことを言わされそうになったので、キスで誤魔化した。15HITくらいしたんじゃなかろうか。. ……うん、まあね、そのうちね。

 あと5分程で家に着く。時計を見ると、時刻は12時40分。待ち合わせは13時だから、きっとまだいろはは来ていないだろう。急がなくても時間には間に合うと分かっているのに、ついつい気が急いてしまう。

 毎日会っているというのに、もう。

 

 いろはに、早く、会いたい。

 

       ×  ×  ×

 

 時刻は正午。先輩と会う予定のぴったり1時間前に家に着いた。

「いらっしゃいませー! って、ありゃ? いろはさん、早いですね! ようこそ我が家へー♪」

 予定より明らかに早く着いたわたしを、先輩自慢の妹さん、小町ちゃんが暖かく迎えてくれた。

「小町ちゃん、こんにちは。お邪魔します」

「はーい、どうぞどうぞー♪」

 小町ちゃんがにぱっと笑うと、ほんとに天使みたいで思わず頬が緩む。先輩がシスコンになるのも分かる気がするなぁ。先輩は何故かシスコンと認めなくて気持ち悪いし、シスコンじゃないと言いながら小町ちゃんの事を話し出すと急に目の色を変えて喋り出すのはもっと気持ち悪いけど。ダブルで気持ち悪いとこの間本人に直接言ってみたら、思いの外凹んでしまったので、その後立ち直ってもらうまでかなり大変だった。先輩、変なとこでメンタル弱いなぁ……まぁそういうとこがかわい……こほんこほん。

 靴を脱いでいると、小町ちゃんが後ろでテンション高めに喋りだした。

「うへへぇ……未来のお義姉ちゃん……ええのぉ、かわえぇのぅ……」

「……お、お邪魔します」

 な、なんだろうなぁ。すごい可愛いんだけどなぁ。小町ちゃん、時々変なテンションになるんだよなぁ。こういうとこを見ると、ああ、2人は兄弟なんだなぁと実感する。そう思ってほっこりすると同時に、2人の間にはわたしの知らない思い出が沢山あるんだと思うとちょっぴり悔しくなる。うぅ――

「いろはさんはこれからお兄ちゃんといっぱい素敵な思い出を作れば、それで良いと思うんです」

「え!?」

 あれ!? 今、わたし心読まれた!? 気のせい!? あれ!?

「なんとなくですよー」

 またしても心を読んだようなことを言って、小町ちゃんが腕を頭の後ろに回してにかっと笑った。可愛いけど。可愛いんだけど! なんなの!?

 突然小町ちゃんが発揮した超能力者じみた力に動揺していると、小町ちゃんがわたしの目の前にとててと寄ってきた。抱きしめちゃおうかなぁ。

「いろはさん、お兄ちゃんの部屋で待ってますか?」

「え? だ、大丈夫だよ? わたし、早めに来ちゃった分は小町ちゃんとお話したり、カマクラちゃんを可愛がりたいなぁって思ってたから」

 突然の提案に戸惑いながら答えると、ちょうど良いタイミングでカマクラちゃんがのそのそと足元によってきて、なーごと可愛く鳴きながらすりすりしてきた。ふふん、この辺りがわたしと先輩の差だよね……っていうのをこの間先輩に言ったら、がっつり凹んでしまった。地雷って程じゃないけど結構な弱点だったらしい。ああもう可愛いしめんどくさいし可愛い。

 わたしの答えを聞いて、小町ちゃんがにへっと笑った。いたずらっぽい笑顔に心臓が高鳴る。

「いろはさん……お兄ちゃんと会わないうちに小町たちと遊んでても、絶対上の空になりますよ?」

「うぇっ!? そ、そんな、こ、と……っ」

 小町ちゃんからの突然の指摘に、顔が急に熱くなる。両頬に手を当ててうーと唸ると、小町ちゃんが「ぐはぁっ!」と悲鳴を上げて倒れた。どたんという大きな音に心臓が飛び上がりそうな程驚く。

「こ、小町ちゃん!? 大丈夫!?」

 慌てて駆け寄ると、小町ちゃんが首だけくりんとこちらに向ける。一歩間違えるとホラーになりそうな絵面だなぁ。

「うへへ……ええのう、恋焦がれる相手を思って顔を真っ赤にする未来のお義姉ちゃん。かわえぇのぅ……うへへへ……」

「…………………………………………」

 こ、小町ちゃん……。

 やっぱりこの子……ちょっと、というよりはかなり……変なのかもしれない。すごい可愛いんだけどね。

 そんなやりとりを経て、結局わたしは小町ちゃんのご厚意に甘えて先輩の部屋で待つことにした。時刻は12時5分。まだ50分以上あるんだ……と、気が遠くなりそうになりながら、わたしはすっかり通い慣れた先輩の部屋に向かった。

 

 

 

 続く。




いろはすでした。こういう書き方、すごく楽しいです。今回の話で視点の切り替え方を勉強しようと思います。

<嬉しいこと>
昨日一日で、初めてUAが9000人を突破しました。書き続けたからこその今のこの状況だと思っています。ああ、嬉しい……!!皆さん、本当にありがとうございます。これからもどうぞよろしくお願いします。

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それでは、また明日ここでお会いしましょう(^^)!
今回もお読み頂きありがとうございました(^^)!!
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