※この作品はR-18です。

俺ガイル 日常の何気ないエロス。   作:高橋徹

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(4)

「せん……ぱい……」

 まだ帰宅していない先輩のことをか細い声で呼んで、ドアを見つめる。身体が熱くなると同時に、先輩にもっと会いたくなってどうしようもないくらい寂しくなった。

 服を脱ぎにかかって、ニットをがばっと脱ごうとしたとき、そこでぴたりと止まった。今わたしの上半身は裏返ったニットに覆われている。すごいシュールだなぁ。

 取り敢えず、元の状態に戻す。

 するする。

 ふう。

 服を脱ぐに至った経緯を思い返す。

 ああ、そうだそうだ。

 ……ただ脱ぐだけじゃなくて、ここからもう先輩のことをイメージした方が良いかもしれない。一人でする分にはもはや慣れきった日常の一部と化している着替えという行為も、先輩と居る時にやると途端に色彩を帯びる。

 先輩はわたしが服を脱ぐ時、そういうおしおきとかじゃない限り(結構羞恥プレイと言われるような事もわたし達はしている。やりすぎそうになったらどっちかが固辞するよう頑張ろうと誓い合うくらいには夢中になっちゃう節があるからも結構まずい。こんなことを言いながらも何だかんだでどっちも歯止めをかけるつもりが無さそうなのが更にまずい)、なるべくわたしを見ないようにしている。見ないようにはしている……んだけど、それでも抑えきれないのか、ちらちらとわたしの身体を見ている。ちょっとずつしか見られていないのにその視線は強烈で、なんというか……獣欲でぎらついている感じがする。

 見られただけで、触られる、舐られる、嬲られる。

 そんな感じ。

 他の男の人にそんな事されたら……なんてことは考えただけで身の毛もよだつけど、先輩にそんな視線を向けられるのは……わたしの身体を飽きずに見てくれてるんだって思って、嬉しくなる。

 

 ああ、話が逸れた。

 でも、もう少しだけ。

 

 以前、先輩に「何度も同じ事をしてたら飽きないですか?」と聞いたことがある。その時先輩は、

「ばか、お前、どうやって飽きろってんだよ。お前の反応がいちいち可愛くてエロいし、お前の色んなやり方もどんどん上手くなってるし、繰り返しやりたいこともこれからやってみたいことも盛り沢山なんだぞ。むしろお前が体力的に大丈夫か心配だっての」

 と言われた。ちょっと嬉しすぎて頬が緩んで、がばっと抱きついちゃった。まったくもう、なんなんだあの人は!

 ちなみにその時。先輩はわたしがこのことで悩んでいると思ったのか、更に言葉を続けた。

「だから……お前はアレだよ、ほら」

「え、なんですかなんですか?」

 先輩がわたしの事をめいっぱい愛してくれてるんだーって思って、幸せで内心とろとろに蕩けながら続きを促すと、先輩がうんうん悩んだ顔をした後、ぱっとわたしの顔を見た。

「テーマパーク、って感じだ」

 心理的温度がすごい勢いで下がった。先輩のやってたゲームを見てたときに出てきた「いてつくはどう」ってこんな感じなんだろうか。

「…………………………………………………………………………そ、そうですか……ありがとうございます…………………………」

「……………………あ、な、なんか、その、すまん……」

 わたしが気まずさ全開で答えると、先輩も気まずさ全開で謝ってきた。先輩が小声で「や、まあ、その、いくらでも楽しめるとか、どんどん新たな楽しみが見つかるとか、そんな意味で、ああもう……」とかぼそぼそ呟いてるのはやたら可愛い。先輩はわたしが露骨に冷たい態度であしらうより、こうやって気遣いも見える感じで接せられた方がダメージが大きいみたい。この場合わたしに先輩を凹ませるつもりは全く無いから、わたしもすごく罪悪感に駆られちゃう。実際、この会話を始めたのは行為を終えた後だったんだけど、このくだりで先輩のものは見る間にしおしおと小さくなった。

 ちなみにその後、ちっちゃくなったものが可愛くて、えいえいと言いながらデコピンしてたら「うぉっ、ちょ、やめ、こらっ」と先輩が可愛く反応して段々おっきくなってきたので、楽しくなってぱくっと咥えてしまった。

 悶える先輩の反応が可愛すぎてつい、ばっちり出すまで味わったら……これのせいでおサルさんモードになった先輩にめちゃくちゃにされた。うつ伏せにされて頭を押さえつけられるのが結構ツボらしいという自分の新たな一面に気付いて、わたしどんだけMなんだよって驚いた。この一面は今後加速する気配しかしないぞ。まずいなぁ、えへへ。

 

 よし、脱線終了。学校に行こうとして途中でスタバに寄って、そのまま午後3時くらいまでぐだぐだするくらいひどい脱線だった。……うーん、先輩みたいにもっと妙な引用をした方が良いのかな。今度色々借りて勉強してみよう。あ、ここで読んだり観たりすれば良いのか。うーん、先輩の純粋な一人の時間を削っちゃうかなぁ……今度先輩に聞いて、顔色で判断しよう。先輩はわたしのウソが分かるけど、わたしも先輩のウソは分かるからね。遠慮無しに歓迎してくれたら、わたしは先輩の部屋により入り浸れるようになるのだ。ふふふ。

 いけない、頬が緩みっぱなしだ。

 

 うん、今度こそ脱線終了。

 

 さあ、先輩の視線を思い出しながら服を脱ぐぞ……と思い、強くイメージしながら衣服を脱ぐ。

 するする。

「……あ……れ……?」

 たまらず、疑問の声が漏れた。

 先輩の視線を思いだしながらニットを脱ぐと、衣擦れの音だけで妙にどきどきする。それに肌の上を衣服が滑っていく感触だけで、ぞわぞわとした感触がわたしを襲う。興奮で頭がくらくらしながらニットをベッドの上に置いた。

 しゅるっ、ぱさっ。

 乾いた音がして、上半身が下着姿になる。

 うわ、うわ、うわ。

 なんだろう、なんだろうこれ。

 先輩の視線を意識しただけで、火が出そうなくらいに顔が熱くなってしまう。

 今手を止めると、あまりに恥ずかしくてもう脱げなくなってしまいそう。

 あー、もう。

 わたしこの後、先輩にじっと見つめられたら……一体、どうなるんだろう?

 だめだめ、今は脱ぐことに集中! 集中ってなんだよって話だけど。

 何百何千回とやっている筈の作業をまるで異質なものに感じながら、手早くスカートを脱いで下着姿になり、頭の中の先輩の視線が強くなった気がしながらブラを外して、最後にショーツを脱いで――こてんと寝転がった。一人で居るのに、手は自然と胸と大事な部分を隠していた。

 なにこれ、なにこれ、なんなのこれ?

 先輩のことを意識しただけで、まだ何も始めてないのに、胸の先っぽがぴんと張り詰めて腕に当たってる。

 だ、大丈夫かな? 先輩が帰ってくるまでに、わたし、いつもの自分に戻れるかな? 不安しかないよぉ……。

 でも……今は、そんな不安を軽く越えてしまうくらいに、先輩を思いながら一人でしてみたい。ふふん、先輩、感謝してくださいね。わたしにこれだけ思われていることを! ……わたし、何言ってんだろう……。

「だ、大丈夫、ちょっとだけ、ちょっとだけ……」

 身体を覆う手をずらして、震える指先をそっと胸に近付けた。

 

       ×  ×  ×

 

「ただいま」

「おかえりー、お兄ちゃん」

 帰宅すると、我が家の天使こと小町が出迎えてくれた。

 時刻は12時45分。いろはが来るにはまだ早いだろう。

 さて、いろはが来る前に部屋の最終チェックでもしようか――と思っていると、

「ふふふふ……」

「……どうしたんだよ?」

小町ちゃんが何やら妙に上機嫌だった。手を口に当ててえらく楽しそうに笑っている。どうしたのん?

片眉を上げて訝しげに尋ねると、小町がゆるりと俺の部屋を指差した。

「いろはさん、もう来てるよ」

「おう、そうだったのか。んで、その指はなに?」

「お兄ちゃんの部屋に先入ってもらってるよ」

 なんですと。

「お前……まぁ、別に見られて困るようなもんは置いてねぇけど」

 見られて困るものは全てPCに入ってるしね!

「えー、そうなの? じゃあお兄ちゃん、パスワード教えて」

 PCに入ってるのはモロバレらしい。

「なんでお前に俺の性癖を晒さにゃならんのだ」

「うそうそ、お兄ちゃんの性癖なんて全然興味無いから安心して!」

「お、お前な……」

 さりげに辛辣なことを言って、にぱっと天使みたいに微笑まれた。可愛いけど超腹立つ。

 ぐぬぬと唸っていると、小町がにこにこして俺にとてとて近寄ってきた。抱きしめろってことん? この喋り方、妲己みたいだな。やだ、国家を振り回して最後には地球と一体化しちゃう……。

 しかし、この距離感はもう、抱きしめて良い、それどころかお兄ちゃん抱きしめてという意思の現れだろう。千葉の兄たるもの、妹の意思にはきちんと応え――

「それはないけど」

「お前は俺の心を読んだのか!?」

 なんか俺、小町に地の文読まれ過ぎな気がする。

「いろはさん、12時には来ちゃったんだよ。時間まで待ちきれずに早めに来ちゃう、恋するお義姉ちゃん……素敵やのう……うへへへ……」

「お前は何のキャラなんだ……」

 俺のツッコミをさらりとスルーして、小町がむふふと笑う。

「いろはさん、最初は小町とお話しようとしてたんだけどね。どうせお兄ちゃんに会うまで気もそぞろになっちゃうだろうから、それならお兄ちゃんの部屋で待ってればって提案したんだ」

「……そ、そうなのか」

 なんだか聞いてて死にそうな程恥ずかしくなった。

 頭をがしがしと掻いて、ふぃーと息を吐く。

「わかった、じゃあ行くわ。いろはの応対をしてくれてありがとな」

 言って小町の頭をわしわしと撫でると、小町が気持ちよさそうに目を細めた。やだ、家に嫁が2人……何でもないですごめんなさい。

「ふひゅぃ~……はっ、いかんいかん、お兄ちゃんに攻略されるところだった」

 うっとり顔から小町がハッと目を見開くと、訳の分からんことを言った。

「俺にそんなルートの選択肢はねぇよ」

 あれ、うん、無いよね? ね?

 妹攻略ルートの実在の有無について考えを巡らせていると、小町が俺の手をぱしっと掴んで頭から離し、にこっと笑った。

「ほらほら、早くいろはさんのとこに行ったげて!」

「ああ、そうだな」

 答えて、もう一度小町の頭をくしゃりと撫でた。「あぅ……」と小さな声で唸る小町に吐血しそうな程悶えながら自室に向かう。まったく、最高の妹に恵まれたもんだ。本当にうちの小町は天使。もはや妹さえいれば……まではいかないな。いろはに言ったらマジで怒られるやつだ。

「あいつ、何やってんだろな……」

 ぽそりと呟いて、俺の部屋に居るという、あざと可愛い彼女の下へと向かった。

 

 

 

 続く。




いろはすでした。
4話に渡ってほぼいろはと八幡のモノローグというのも新鮮です。
こういう書き方をしてそれぞれの心情やキャラクター性を深めるやり方は西尾先生を参考にしています。

それでは、また明日ここでお会いしましょう(^^)!
今回もお読み頂きありがとうございました(^^)!!
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