「……ぁ……ぅう……せんぱいぃ……っ」
仰向けになった俺の上にいろはが柔らかい肢体を重ねて、悩ましげに身体をくねらせる。
……なんか、どことなく様子がおかしい。俺の肩に置いた手がふるふると震えていて、口はゆっくりと開いては閉じている。
「いろは、どうした……?」
「んふぅぅ……っ」
「んむ……っ」
俺の言葉に答えることなく、いろはが唇を重ねてきた。舌を絡めるでもない、唇と唇を接触させるだけのキス……のはずなのに。
「んふぅぅ……んむっ、ふむぅっ、んむふぅぅ……っ」
「…………っ!」
まるで俺の口を食べるかのようにいろはの唇が蠢いて、身体がびくりと強ばる。今までそんなことはほとんど無かったのに、キスの途中で時折歯がかちかちと当たる。
いろはの瑞々しい唇の感触に陶然としながら、情欲の火を灯した瞳で唇を貪り続けるいろはにただただ見惚れる。
「……はぷぁっ。……はぁっ、はぁっ、……ふぅぅっ、ふぅぅっ……」
唇を離すと、いろはが息を荒げる。
長い口付けによる息切れよりも、興奮による息切れの方が勝っているかのような表情を見て、いろはのへそに刺さる肉槍がびくんと跳ねた。
「い、いろは、大丈夫か……?」
明らかにいつもと違う様子にごくりと息を呑みながら聞くと、いろはが目だけ合わせて、何も答えることなく再び肉体を重ねてきた。
今度は首に腕を回して……更に密着度を高めてくる。
「ちゅっ……んっ、んむぅ……っ、はぷっ、ぷはっ、あぅ、あぅぅ……っ」
「……?」
またしても唇をねっとりと重ねたところでいろはが離れる。
いろはに一体何が起きているのか、まるで想像がつかない。
「なあ、いろは、お前本当にどうしたんだ……?」
いろはの頬を撫でながら問うと、こつんとおでこ同士を触れてきた。瞳に興奮の色と、確かな不安を浮かべて、俺に真っ直ぐに視線を注ぐ。
「……せ、せんぱい、ど……どうしよう、わたし、さっきのおしおきでどきどきしすぎて、こんな状態でいつもみたいにキスしちゃったら絶対やばいって思っちゃって……」
――でも……それで、と続けながら、いろはがきゅっと眉根を寄せる。
「……我慢するとすごく焦れったくて、もう、訳分かんないですぅぅ……どうしよう、どうしよう……っ」
「……っ」
今にも泣きそうな顔で、いろはが懇願するように言葉を紡ぐ。どう答えたものか、一旦休んだ方が良いのか……そんな風に考え始めたとき、いろはがつと目を伏せた。
そして。
こきゅっ。
小さく、微かに。
けれど、確かに。
喉を鳴らす音がした。
……ああ、そうか。
この子は……いろはは。
これから、俺にこうしてほしいんだろう……。
一人合点がいって、いろはの腰に腕を回す。
「そうか……じゃあ、俺からしてやるよ」
目に嗜虐の火を灯して告げると、いろはの瞳孔が開いて、口元が緩んですぐにきゅっと引き結ばれた。
「……ぁ……で、でも……っ」
予定調和の演技が半分、本気でまだ迷ってる部分が半分。そんな、迷いとゆらぎが見える声を漏らして、いろはが婀娜っぽい流し目を送る。
いろはの背中と腰に腕を回して、力を込める。
「いいから……ほら」
「ぅあ……っ」
くるりと二人の身体を反転させると、いろはが儚げな声を漏らした。
× × ×
「ぁ……ぅぁ……ひっ、ひぃん……っ」
今度は俺の下になって仰向けになったいろはが、胸を手で隠しながらか細い声を漏らす。
顔は背けられていて、小動物を思わせる振る舞いに、たまらぬ程嗜虐心がそそられる。
「ほら、行くぞ」
言っていろはの顎に手をかけて、顔を上向かせると、
「は、はぃ……っ」
掠れた声でいろはが答えて、胸を覆っていた手を自ら離して、シーツを握り締めた。
これから自分の身体を蝕むであろう快感をよほど恐れているのか、俺が顔を近付けるといろはは目を背けて……ちらりと、期待を込めた流し目を送った。
矛盾した感情がいろはの中に渦巻いているのだと確信して、期待が溢れ出して止まらない。
「んぅっ――っ!」
何度も重ねている筈なのに、今日はまるで違った感触に思える。
いろはの薄く瑞々しい唇を、遠慮なく啄んでいく。
「ぅあっ、んふぅっ、ひんっ、やばっ、んふぁっ、……せんぱぃ、やっぱりこれ、んむふぅ……っ、ほんとにやば……っ、んふぅぅ……っ!」
いろはが唇を引き離していやいやと首を振る。
「……じゃあ、なんでお前は俺に足を絡めてるんだ?」
「……ぅ……ぁ……っ」
いろはは自分が無意識に俺の腰に足を絡ませていることに気付き、目を伏せて真っ赤になった。
この子はなんでこうも、いじめたくなる仕草を自然に出来るんだろう。
もう一度ちゅっと唇を啄むと、いろはは眉根をひそめて唇をきゅっと引き結んで、これ以上のキスを拒んだ。
「あぁっ、ぅぅ、それでも、やなのぉっ、こわいのぉ……っ」
今にも泣き出しそうな顔をして、いろはがいやいやと首を振る。腰に絡ませた足は更に力を込めていて、いろは自身、身体と心の矛盾に怯えているようにも見える。
「……いろは」
そっと、いろはの頬に手を添える。
「ふぇ……?」
手のひらに頬を寄せながらも、いろはが少しばかりリラックスした表情を見せる。
「……ちゃんと、唇を俺に向けるんだ」
穏やかな仕草を見せてから、一段低い声でゆっくりと命令する。
いろはがこきゅっと小さく息を呑んだ音がした。
「……はい……っ」
不安げに目を閉じて、いろはが顔を再び上に向けた。
× × ×
再びいろはと唇を重ねたけれど、いろはの唇はまだ閉じられたままで、舌の侵入を許さない。
一体どれだけ恐れを抱いてるんだ……と驚くと同時に、この中に舌を割り入れた時、一体どんな事態が待っているのかという期待も胸の中に溢れる。
いろはの唇の隙間を、舌先で丁寧になぞる。
「んん……っ、ふぅっ、んっく、ふぅんっ、んふぅぅ……っ」
いろはの緊張がじりじりと抜けていき、唇に力が入らなくなっていく。
「……ぷはっ、どうだ、いろは、もう大丈夫そうだろ?」
「……あぅ……で、でも、これ以上はやっぱり……っ、んむふぅ……っ!?」
いろはが油断してわずかに開けた唇の隙間に舌先をねじ入れた。
それと同時にいろはの首に腕を回し、力強く拘束する。
「んむぅっ、んふぅぅっ、くちゅり、ちゅりゅ、ちゅりゅりゅ……んむふぅぅ……っ!」
ぬるりと差し込まれ口腔内を犯す舌に、いろはが目を白黒させて反応する。
腰に絡まった足をばたつかせ、伸びては縮みを繰り返し、必死で快感の逃がし場所を探している。
しかしどんなに逃げようとしても、ぎちぎちと力を込めて拘束して決して逃がさない。
「ちゅっ、ちゅく、ちゅくちゅく……ちゅぴっ、ぴちゃぴちゃ、んひぅぅぅ……」
口腔内で俺の舌から必死で逃げるいろはの舌を追いかけ回し、口腔粘膜ごと犯すように舐め溶かしていく。
執拗に幾度となく口内を掻き回すと、いろはの身体の力がほとんど抜けて、くたっと脱力して腕も足もシーツの上に投げ出された。
「ひっ、ぁぁっ、あへぁっ、ひっ、ひっく、ひぅぅぅ……っ」
子供が泣いてしゃくりあげるような声を漏らしながらも、その顔は信じられない程淫らに染まっている。
「いろは……舌を出すんだ」
先程よりは幾分穏やかな口調で命令する。
「……はっ、はぃ……」
いろはは声を震わせて答えると、舌をおずおずと差し出した。
続く。
いろはすでした。
久しぶりにキスシーンに気合を入れようと思ったら1話で終わらないという。
改行をするようになって、地の文がまだまだ充実してないんだなーと思いました。引き続き精進します。改行のやり方も模索して行きます。
戸塚人気が半端無くてびっくりしましたw
水曜日も頑張りましょう。
それでは、また明日ここでお会いしましょう(^^)!
今回もお読み頂きありがとうございました(^^)!!」