※この作品はR-18です。

俺ガイル 日常の何気ないエロス。   作:高橋徹

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比企谷八幡にも何だかんだで嫉妬と言う感情はある。
(1)


1.

噂話と言うものは、とにもかくにも不快だ。

信憑性の無い下らない話も、回り回ればやがて、初めからさも真実であったかのように振る舞い始める。

なんで中学の時、俺が1年間で学年の女子5人にメールで告白した事になってたの?他のクラスからもあらぬキモ扱いを受けて、それで更に自分のクラスでもキモがられると言うデフレスパイラル。なんなの?ねえ。泣いちゃう。

以前雪ノ下と葉山の仲についてあらぬ噂が流れた時も、どうしようも無い程不快な気持ちになった。

人と言うものはどうして、噂と言うものが好きなのだろう。ああ、鬱陶しい。

 

2.

朝、教室に向かって歩いていると、テンション高めの楽しそうな会話が聞こえて来た。

「最近さあ、雪ノ下さんの雰囲気変わってない?」

「あー、分かる分かるー!何か前は話しかけるなオーラが凄かったけど、最近はちょっと柔らかくなった気がする。」

「だよね?J組の子も前よりも雪ノ下さんを囲んでること多くなった気がするんだよねー」

「分かる分かるー!」

そんな会話が、廊下を歩く時に聞こえて来た。

歩く速度がいつもの8割くらいになった気がするのだが、それは気のせいだろうか。気のせいだろう。

俺が出会う前から、彼女は有名人だ。このくらいの噂話をされる事はあるだろう。

……歩く速度がいつもの6割くらいになった気がするが、それは気のせいだろう。

女子が女子について、良い印象について話すのだから、別にこれは聞こえて来ても不快になるような話題ではない。

俺は、何故か口が少し微笑みそうになるのを抑えながら、再び歩を速めた。

すると、それと同時に女子たちの会話に野郎の声が混じる。

「あれ、何の話してんのー?」

「あ、おっはー!今ねえ、雪ノ下さんの話してたんだー」

その挨拶、化石だよ?びっくりしちゃった。

「そうそう。何かねー、話しかけやすい雰囲気になって言うかー」

「あー、確かに。元々は綺麗だけど近寄りがたいオーラ出てたけど……それがあんまり無くなって、何か尚更魅力的になった感じがするよな。より綺麗にもなったって言うか」

あん?

「えー?ちょっとなになにー?もしかして雪ノ下さんの事狙ってるわけー?」

「いや、ばか、そんな事……あ、でも、今度話しかけてみようかな」

ああん???

「きゃー!良いじゃん良いじゃん!でも今人気やばそうだよね。」

「分かる分かる!今まで密かに人気があるくらいだったのが一気に爆発…みたいな!きゃー!」

「きゃー!マジやばい!マジやばい!」

「マジかー。っべー。マジっべーわー」

え、戸部?

振り向いたら違った。

戸部はもっと頭っからウザいノリだったな。ごめん、戸部。

て言うか、一人は口癖「分かる分かるー!」なの?最初にそれを言って会話の糸口を掴むの?

気付いたら歩いてる速度がいつもの3割くらいになってた。

なんかあのままだと歩く速度がやがて牛歩並の速さになって、最終的に0km/hになって、ムーンウォークして戻ってしまうような勢いさえある。

「分かる分かるー!」がトレードマークの女子が怪しそうにこっちを見て来たので、足早に立ち去った。

 

雪ノ下がモテると言うのは、まあ分かる。

美人だと言う事に異論を挟む余地は無いし、制服を着ている分にはあの絶壁だってさして気になるものではないだろう。

それで居て、あの凍てつく様な近寄りがたさも氷解したとあっては、それでチャンスと見た男共が阿呆みたいに群がって来るのは容易に想像がつく。本当に容易。

その変化は俺も少なからず感じているし。

まあ女子は良いとして、男子の方は急に足元に穴が開いてロンハーばりに落ちたりしないかなー。行き先は一階、マット無し。

うふふふふ。サザエさんじゃないよ?

 

3.

「最近さー、由比ケ浜さんまた可愛くなってない?」

「分かる分かるー!元々可愛いのに更にって感じー!」

少し進んだ所で、またこんな会話が聞こえて来た。

歩く速度を緩めるつもりはさらさら無い。

ただ、勝手に足が歩を進める速度を緩めてしまうだけだ。それだけです、マジで。

女子が会話をしてる分にはまあ良いか……。

「何なに、何の話してんのー?」

野郎が来た。不快指数が80%増しで限界突破。

「あ、今由比ケ浜さんの話してたんだー」

「そうなんだ。いやーあの子マジ可愛いよねー!胸もでかいし」

あん?

「分かる分かるー…ってやだーもう!」

「もうじきバレンタインじゃん?チョコくれたりしねえかなー」

ああん???

「あんた話したことほとんど無いでしょー?」

「それもそうか、あはは!っべー。マジっべーわー」

え、戸部?

振り向いたら違った。

何か俺、戸部を求めてるみたいになってる。「振り向いてももう君は居ないと分かっていても、街で道行く人に君の面影を探してしまう」とかってフレーズ、J-POPでありそう。あいつに会う必要無いんだけどね。あいつと出くわす運を全て戸塚に使いたい。

つうかさっきと違う男女のグループなのに、会話の切り出しと「分かる分かるー!」の返しと、「マジっべーわー」が共通するって何なの?リア充どもの会話ってそんなに固定した流れなの?Siriのがよっぽど良い仕事するぞ。

 

まあ、由比ケ浜がモテると言うのも分かる。

可愛いしスタイルも良いし優しいし、おバカ成分だって人によっては魅力と映る。俺だってあいつのおバカ加減は呆れこそすれ、きらいではない。呆れこそするけど。マジで超呆れる。マジっべーわー。

しかし、可愛くなっただと……?何となく、分かる気はするけど。何となくね、何となく。

気付いたら歩く速度が牛になっていたので、怪しまれない内にさっさと退散する。マジで牛ってた。危ない危ない。

取り敢えず麻酔銃で男子の首筋を狙い撃ちたい。撃つ理由は何だろう、何となく。

 

4.

昼休み、いつもの場所に向かっていると、廊下でまたしても噂話が聞こえて来た。

「ねーねー、いろはってさー、最近可愛くなったよねー!何かあったのー?」

「えー、何も無いよー。ほんとほんと!」

「ウソつけー!このタイミングで綺麗になるとか、なに、新しい恋でも見付けたかー?うりうりー!」

「何にも無いってばー!」

……本人だった。何、この会話?あいつ新しい恋見付けたの?

一色にこちらの存在を気取られぬ内に、足早にその場を去る。こう言う時の俺の忍者感半端無い。将来は主夫と忍者の兼業も良いかもしれない。初任務で開始8分くらいで死にそうだけど。

あっと言う間に会話の声が遠ざかる。

よし、問題無くやり過ごせた。

……と思ったら、袖を掴まれてぐんっと引っ張られた。俺力大してないんだからこう言うのやめてほしいんだけど。これでこけたら恥ずかしくて死んじゃうよ?

振り向くと、一色がぷくっと頬を膨らませていた。相変わらずあざと可愛いなこいつ……。

「先輩、今わたしの事ちらっと見てスルーしましたよね。頂けませんよそれは」

「あー、や、お話し中だったみたいだし……」

「先輩、声裏返ってて気持ち悪いですよ?大丈夫ですか?」

「気持ち悪いのはいつものことだよ」

……引いた顔すんじゃねえよ……。もう俺のテイストは多少なり知ってるでしょう?もっと!雪ノ下と由比ヶ浜みたいに!……あいつらも引いてる。あ、小町もだ。……ん、平塚先生も引くことがよくあるな。

……多少は話す女子(と女子(?))は軒並み俺に引いている。陽乃さんはただの魔王だからノーカウント。戸塚は引いてないよね?大丈夫だよね?ちなみに川崎は俺に引いてしかいない気がする。なんなのさあの黒レース!

もう大丈夫かなと思い歩き出すと、膨れっ面のまま再び裾を引っ張られる。

「……で、結局、何でわたしの事スルーしたんですか?」

ふえぇ……逃がしてくれないよぉ……。

「盛り上がってるとこを邪魔すんのは俺の主義じゃねえんだよ」

ウソは言ってない。めんどくさいとかそんな事は思ってない。多分。

目を逸らしつつ何とかやり過ごそうとしていると、一色は更に袖を引っ張って来た。何、何か技でもかけるの?俺を下に引っ張りつつ膝蹴りとかかまして来たらマジもう武術家だわ。

俺の頭の標高を自分と同じくらいの所まで下げると、一色は俺の耳元まで口を近付けて来た。ほのかに香る香水の匂いと、柔らかい髪の感触に一瞬心臓が跳ねる。

心拍数が上がるから、こう言うのやめてくださいよぉ、寿命がリアルに縮むんですよぉ。

「……さっきの話、聞いてました?」

「あ、まあ、ちょろっと聞こえちまった。すまん」

「謝らなくて良いです。それで、どうですか?」

「え、何が」

「わたし、可愛くなりましたか?可愛いですか?」

「え、いや、そんな事言われても」

ずいっと顔を乗り出すのやめて。近いよ、近い。顔赤くさせんな!

可愛いと思った事はまあ、結構あるけど。…ほんとに結構あるな。

それを言えと言うのは流石に、流石に!

「答えてくれないと、このままわたしと先輩との間に変な噂が立つまでこの距離をキープしますよ」

何つう脅しだ。得意げに微笑むのやめろ、可愛いから。

確かに、一色の顔が目の前にあるこの状況ではあらぬ誤解を受ける事になる。

と言うか、誤解を受けても俺は大して気にしないが、一色の方がよほど応えるのではないか。

俺とカーストが明らかに違うし、ましてや今はこの高校の生徒会長なのだ。下手な噂が立つのは避けなければならない。

考えて中途半端に答えあぐねていても、誤解を受ける可能性が増すばかりだ。

だからここは、さっさと正直に言ってしまうに限る。

「ああ、可愛いよ。いちいち可愛い。それに可愛くもなってんじゃねえか?単に距離が近付いて、お前の良いとこが見えるようになっただけかもしれねえけど」

なるべく平静を装って、さらりと言った。これなら問題あるまい。

「……え……」

一色がぽかんとしている。どうしました?言われ慣れてるだろこれくらい。いや、ほんとに。

「……ま、まあ、そう言ってくれるなら……許してあげないことも無いって言うか……」

目を逸らして、頬を赤らめながら少しもじもじとしながら髪を指でくりくりと巻く。

やめろよ、恥ずかしい事言った後にこんなリアクションされたら余計恥ずかしくなるだろ!

なんで曖昧なのん?この場でグレー判定出されても対応に困る。

「あー……そう言う訳だ。行っても良いか?」

「え、あ、はい、どうぞ……。……全く、普段からそれくらい言えれば良いのに…」

後半すごい小声で何か言われた。んなもん恥ずかしくて言えるかっつーの。

去り際、微かに先程の会話の続きが聞こえる。

『えー、さっきの人といろはどう言う関係なのー?』

『何でもないってー。ただの便利な先輩!』

『えーそうなんだー。ここに来る途中に他の先輩に話しかけられてたけど、あの人たちはー?』

『知らない人たちだよー。興味無いし』

『気ぃ付けなよー?いろはやたらモテるんだしさー』

ああん?

気付いたら歩く速度が通常の5%くらいになってた。もはや止まってる。当社比9割5分減!

やっぱり背中にフライパン仕込もうかな。……膨らみがやばくなるな……。

っつか、便利な先輩って……君ねえ……。

 

 

ようやくいつもの場所に着くと、戸塚天使がコートを舞う時間が終わってた。泣いた。

一色に戸塚鑑賞代を弁償してもらいたい勢い。

戸塚ぁぁぁ……。

 

 

 

続く。

 




もう一つ新エピソードの導入部分を書いてみました。
今の所はソフト予定です。いろはすの導入実験ですとも、ええ。
今回一番書きたかったのは『え、戸部?』でした←

多分大体の話で戸塚の事に触れてるのに、一度も戸塚が出ていないと言う不思議。

残業続きでも、書き溜めた分があればちゃんと更新出来るのですなぁ……。

毎日楽しみにしていて下さる方がいらっしゃると言うのは、本当に嬉しいです。これからもどうぞ気楽にお見守り下さい(^^)!


それでは、今回もお読み頂きありがとうございました(^^)!!
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