「ヒッキーくん、今度はね……もう少し前の方を触ってくれるかしら」
「え……」
ソファに座り、俺の股座に座り込んだ由比ケ浜マ――彼女に後ろに体重を預けられて、今の俺はソファの背もたれと彼女の柔らかな背中に挟まれた状態だった。どきどきは尋常でないけれど、この体勢で肩揉みを継続出来ないことはない(そもそも何でこの体勢なんだって話なんだけど)ので、まあ良いかと思っていたんだけれど……え、この人今何て言った? 前の方?
「それって、具体的にどういう……」
俺がそろりと尋ねると、彼女は俺の手を掴み、彼女の身体の前にぐいと引っ張った。
「この辺かしら。お願い出来る?」
「え……」
俺の手が着地した場所は、彼女の肩と、山の如く隆起した乳房との間の部分だった。手の指が鎖骨を挟んでいる形になる。
「えっと、この辺ですか?」
言って、鎖骨の横――肩に近い方をぐっと押すと、
「あっ、あんっ……そこも気持ち良いけど、私が揉んでほしいのは、こっちね」
彼女は妖艶な声で囁いて、俺の手を鎖骨の肩側ではなく、胸の側に押し当てた。
「え、ちょ、それは流石に……」
慌てて目を背けると、頬に柔らかくて温かな感触が当たった。見ると、振り返った彼女が手を添えていた。
「こんな場所、恥ずかしくて他の人にお願い出来ないのよ……良いでしょ?」
心臓に焼き石を当てられたかのような熱を感じて、喉を震わせる。
「……わかり、ました」
たどたどしく答えると、彼女がにっこりと笑う。
「ありがと。……ちゃんと見ておいてね? でないと……違う所、触っちゃうと思うから」
艶っぽい笑みを浮かべて、目を細める彼女。
「……っ。……気を付けます」
頷くしかないだろうと思い、躊躇いながらも了承する。
この、視線を限定させる指示が持つ意味を、この時、まだきちんと把握出来ていなかった。
× × ×
「……あっ、あぁっ、あっ、あんっ、あっ……」
…………。
指定された場所を、誤ってとんでもない場所を触ることの無いように凝視しながら揉み続ける。彼女はさっきまでと比べるとやや控えめな、けれどそれによって却って官能的になった甘い声を漏らしている。
この状況で気付いたことが一つ。
それは、俺が揉んでいる場所を凝視することで、さっきまでなるべく見ないようにしていた、彼女のたまらなく扇情的な香りを漂わせている柔肉の谷間をはっきりと視界に入れてしまうということだ。彼女の肩の上から谷間を凝視しているようにしか見えなくて、奇妙な罪悪感に駆られる。
……それに……。
「あ、あの……すいません」
「あふぁぁ……っ、……んん? な~に?」
とろんと惚けた声で、彼女が聞き返す。や、その……。
「……なんで、俺の足をこんなに触ってるんでしょうか?」
彼女は、揉み始めると気持ち良くなったのか最初よりも更に俺に体重を預けて、あごを上げて天井を仰ぐような体勢になった。それだけでなく、途中から両手をそれぞれ俺の太ももに乗せて、初めは単調にすりすりと撫でるだけだったのに、徐々に手を内股にまで伸ばして、艶かしい手つきで股間のすぐ横を撫で回していた。
「あっ、あんっ、んふぅぅ……だめかしら? わたしもヒッキーくんに気持ち良くなってもらいたいんだけど……」
言い方言い方。
「いや、流石にこれ……は……」
言葉の途中であることに気付き、固まる。
ふと目についた、彼女の双丘の先端。
そこに、どう見ても見間違いが無い程にはっきりと、ぷっくりとした先端が浮き出ていた。反射的にごくりと喉を鳴らすと、彼女が俺の反応に気付いて目を細めた。
「あら……言ってなかったわね。わたし今、下着着けてないのよ」
「なん……で……」
「さ~? なんでかしら~?」
急にいつもの口調に戻ってとぼける。腹立つし可愛い……。
「ヒッキーくん、揉んでほしい場所は変わらないんだけど、今度はちょっと揉み方を変えてもらえるかしら」
「? はい、いいですけど。もっと強くしたり弱くしたりとかですか」
「ううん、今度は……こう」
「うお……っ!?」
一度離していた両手を掴まれ、そのまま、彼女の腋の下をくぐって、双丘の横を危うげに通り抜けて、柔肉のすぐ上に手のひらを着地させられた。さっきまでは肩の上から手を伸ばしていたが、今度は腋の下から手を伸ばした形になる。
……ていうか、これって……。
「あ、あの……これって……」
流石に……と言おうとすると、彼女が切なそうに眉根を寄せた。
「……だめ?」
「うぐ……っ」
……なんで、こんなに可愛いんだこの人……。
「……わかりましたよ。気を付けます」
「ありがとね~」
けろっとした顔で微笑む彼女を見て、ハメられたなどとは今更思わなくなっていた。
× × ×
「うっ、うっく、うふぁぁ……うっ、うぅぅ……っ」
彼女の声が、先程までと比べてより切なそうに、より苦しそうに、より焦れったそうな熱を帯び始めている。
彼女の腋の下から腕を通して揉むという体勢になって、細かいが、けれど大きい変化が生まれていた。
まず、揉み方。
さっきは親指以外の指の先で押し込むような形だったが、今は親指以外の指の腹で満遍なく揉みしだく形になっていた。自然と、揉み方の幅も広がる。
そして、顔の位置。
さっきは肩の上から覗き込む時、彼女の肩と自分の顔との間には自分自身の腕があった。しかし今はそれが無い。それでも彼女の肩と自分の顔との間に距離を開けることは可能だったはずだけれど……この空間に精神をとろとろに蕩かされていて、気が付けば、彼女の柔肌を求めるように、彼女の肩に顎を乗せて双丘の谷間を凝視していた。
「あっ、はぁっ、ひ、ヒッキーくん、すご……上手、よぉっ……んはぁっ……」
待て待て待て待て。
ちょっと、この状況でこんな声を聞くと、もう、ね。
あかん。
こんなことを考えている間も、手を止める訳にはいかない。
そう思い、彼女の胸と鎖骨の間の柔らかい部分をひたすら揉みしだく。
「んっ、んふぅっ、くふぅっ、あぅぅ……っ」
耳元で垂れ流され続ける甘美な声が、全身の皮膚から余すことなく身体の奥底へと染み渡る。
徐々に、徐々に。
自分が今、何をしているのかという自覚が、薄れてきた。
「ね……ヒッキーくん……」
「なんでしょう」
言いながら、揉み方に変化を加える。親指以外の指をくっつけた状態で手のひらを伸ばしてから、関節を折り曲げてぎゅむっと肉を引き寄せるようにして揉むと、彼女があごを反らした。
「んおぉぉぉぉ……あっ、あっ、これ、ほんとに……っ」
彼女の足に目をやると、切なそうに足をもじもじとすり合わせていた。構わず何度も揉みしだくと、内腿をぴたりとくっつけてぶるぶると震える。
「さっきの、何て言おうとしたんですか?」
聞きながらも、手を止めない。
「ふっ、んふぁぁ……っ、ひ、ヒッキーくんて、鬼畜なのねぇ」
言って、彼女が汗の滲んだ顔で微笑む。彼女がかいた汗は甘ったるい匂いを放って、揉めば揉む程に、下腹部に血流が集まった。
――どうして俺は、こんなに――。
「……はっ、はぁっ、んんんっ……わ、わたしね? せ、切ない、のぉ……っ」
言って、彼女が俺の両手を掴む。
「え……」
彼女の言葉と手のひらが纏う淫気に心がざわめく。
「も、もう少し……下の方、触って?」
「……っ」
ここまで、お互いがどこかボーダーラインを引いて、必死で堪えてきて。
そして、彼女自身も決して口にしなかった言葉を。
彼女は、ついに口にした。
続く。
由比ヶ浜マでした。加速するエロ。
予め言っておきますと、このエピソードも他のヒロインのお話と同様に、心臓に悪い要素が全く無い甘々な展開にしようと思っています(今回は特殊なので、甘々にするやり方はいつもと違いますが)。なので安心してご覧ください(^^)
はるのん、もうじき3話分程書き終わりそうなので、数日中に投稿始めます。書いていたら自然と流れがぐぐぐっと変わったもんで驚いています。
ルミルミの登場部分を読み直そうと、4巻と9巻を読み直しています。4巻は久しく読んでないので一通り読もうかなと思ってるんですが、9巻はルミルミのシーンは一部だしかなり長いから、読む所は選ぼうかなと。9巻はこの作品を書き始めた当初からまめに部分的に読み直していたことに気付きました。
官能小説をもりもり読むようにしたら、エロシーンへのモチベーションがぐぐぐっと上がりました。うーん楽しい。ちゃんと濃密になるように頑張ります。
俺ガイルのR-18小説がもっと増えないかなーという願望。お仲間お待ちしております。
それでは、また明日ここでお会いしましょう(^^)!
今回もお読み頂きありがとうございました(^^)!!