※この作品はR-18です。

俺ガイル 日常の何気ないエロス。   作:高橋徹

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(26)

 中学校に入って初めて出来た友達、綾乃。

 彼女は、どうやら私とすごく似た状況にあって、しかも私の先輩と言えるようなことをしているみたいだ。

 だから、私は綾乃から色々と話を聞くことにした。

 出来れば、人目につかない場所で。

 

       ×  ×  ×

 

「えーっと、ドリンクバー、ですか? えっと、あ、はい、ありでお願いします。え、アイスかホットかですか? えっと、じゃあ、留美ちゃん、アイスでいい? あ、はい、じゃあ2人ともアイスで。あ、はい、マイクがこれ……はい、あ、はい、ありがとうございます……」

 

 カウンターでほんわかとする問答を終えた綾乃が、半べそをかきながら戻ってきた。

 

「もう……留美ちゃん、助けてよぉ……」

「ご、ごめん、何か……綾乃が慌ててるのがすごく可愛くて……」

「ぐすっ……何それ……」

 

 すっかり萎んでしまった綾乃の頭を撫でて、伝票に書かれた番号の部屋に移動する。

 私と綾乃は、カラオケ店に来ていた。

 何だかんだで、本当に人に話を聞かれずにいられる場所というのはそうあるものじゃない。マックを出た後しばらく彷徨って、結局カラオケの部屋で話そうということで落ち着いた。

 

「わたし、カラオケに来たことはあるけど、その時はリーダーっぽい子が全部やってくれたから……いざ自分でやるとなると、分かんないもんだね」

 

 綾乃がてへへと笑いながら言う。……私もあるにはあるけど、あの頃を思い出すと少し複雑な気持ちになるからやめておこう。あの日々があったから、八幡と出会えたんだけれど。

 飲み物をコップに入れて、指定された番号の部屋のドアを開ける。入口のすぐ横にテレビがあり、コの字に椅子が置かれた狭い空間が私たちを待っていた。こういう場所は煙草の匂いが残っている印象が強いんだけど、この部屋は何の匂いもしない。たまたま煙草を吸う人がいなかったのか、掃除をきちんとしているかなんだろうと思う。

 

「わぁ……何だか……」

 

 綾乃が部屋を見回しながら何かを言いかける。その顔には不満は浮かんでいないどころか、どこかわくわくした風でさえある。きっと、同じことを考えているんだろう。

 

「……秘密の話をするのにぴったりだなって、思ったんでしょ?」

 

 そう囁くと、綾乃が嬉しそうに笑った。周りに光を分け与えてくれるような、向日葵みたいな笑顔。私はこの笑顔がとても好き。

 

「うん、そうそう。……えへへ、何か楽しくなってきたな……」

 

 綾乃がうきうきした様子で椅子に座り、持ってきたコップや伝票、マイクを置く。楽しくなったからと言って歌い始める訳ではなく、マイクはかごに入れたままだった。どうやら本題はきちんと覚えてくれているみたい。

 何となく、綾乃の対面ではなく隣に座る。会話を交わすことなく、しばらくの間同じ壁を見つめる。オードブルなどの食べ物のメニューが貼り出されていて、バカ騒ぎをする人がいたのか端の方がやぶけていた。

 テレビの音量をミュートする。両膝を綾乃の方に傾けて、澄んだ目をじっと見つめた。

 

「その……あ、綾乃は、どんな風に、その……してる、の?」

 

 私の問いかけに、綾乃がぽっと頬を赤らめる。

 

「え、えっと、それは……どこから話せばいいかな?」

 

 両手で顔を覆って、ちらりと目だけ覗かせる。可愛い年下の女の子がこんな仕草を見せたら、本当にたまらないんじゃないかなと思う。……こういうのが好きなのか、明日、八幡に聞いてみよう。

 

「じゃあ、その……キスを、する所から……お口、で、する所までの、流れ、を、くわ、しく……っ」

 

 言いながら、私も両手で顔を覆ってしまった。あまりにも恥ずかしくて。

 

「はわわ……留美ちゃん、可愛いよ……っ」

「……そういうの、いいから……っ」

 

 綾乃からの思わぬ攻撃に、更に恥ずかしくなってしまう。おっとりしてるけどお世辞を知らない子なので、こういった言葉が純粋な本音であることが分かってしまい、大きな好意からの逃げ場がない。私はまだ、人から向けられる好意というものそのものに慣れていないのかもしれない。

 ちらりと指の間から綾乃を覗き見ると、照れくさそうに頬をぽりぽりとかいて、前方の壁を見つめながら喋り始めた。

 

「えっとね、いつも週末にデートするんだ。平日は彼が忙しくて中々会えないから……」

 

 綾乃が話す「彼」という言葉に、心臓が跳ね上がる。

 

「それでね、家が近いし昔から遊んでたから、お互いの家にも気兼ねなく行けるの。だから、なるべく朝早くからデートして、まだ明るいうちにどっちかの家に行って……部屋で、2人っきりになるの」

「そ、それで……?」

 

 心臓がやかましく鳴り続ける。気心の知れた目の前の女の子が、私の知らない世界を知っていて、それを私に伝えようとしている。そう思うだけで、どきどきしすぎて心臓が爆発してしまいそうだ。

 

「それで……大抵、ベッドに横並びに座るの。最初はデートの延長で何でもない話を続けて、段々と、どちらからともなく近寄っていくの。それで、彼がわたしの肩を抱いて、一気に身体が密着するんだ。

 男の人の身体って、がっしりしてるんだなって思う。わたし、二の腕を抱きしめられただけでもう、ぽーっとしちゃうの」

 

 綾乃の言葉で、八幡に抱きしめられた時の感覚を思い出して身体が疼く。

 それでね――と、綾乃が言葉を続ける。声がしっとりとしたものに変わったことに気付いた。

 

「初めは、唇を重ねるだけの優しいキスをするの。

でも、段々彼の舌がわたしの唇の合わせ目をなぞってこじ開けてきて、口の中に舌を入れてくるの。

 そこからが大変で、頬の内側とかわたしの舌とか、色んな所を好き放題舐めてくるんだ。

しかもすごくねちっこくて、時間が経つごとに頭がくらくらしてくるの」

 

 綾乃がオレンジジュースを口に運ぶ。彼女の喉がジュースをこくりと飲み込む姿に、思わず見入ってしまった。

 

「で、キスしてる内に彼がわたしをゆっくりベッドに押し倒すんだ。それでわたしの身体を包むように抱きしめて、絶対逃げられないようにするの。

 心臓がばくばく言ってるのを感じてると、彼がわたしの口の中に唾液を流し込んでくるんだ。

 いくら飲み込んでも流し込むのをやめてくれなくて、わたしが苦しくてぶるぶる震え出すとようやく解放してくれるの」

 

 綾乃の目が、妖しい光を灯す。

 この子はもう、自分の中に女の顔を見出してるんだ。知ってしまっているんだ。

 

「口が離れると2人の間に糸が引いてて、それが全部下にいるわたしの口に流れ込んでくるの。

 それを頑張って全部舐めとると、彼はわたしの頭を優しく撫でてくれて……今度は彼があぐらをかいて、わたしをその上に座らせるの。

 わたしは彼に足を絡ませて、身体をぎゅっとくっつけて、またキスをするんだ。今度はわたしからもいっぱい舌を絡めながら」

 

 綾乃が、うっとりとした顔で頬に手を当てる。きっと、その「彼」との行為を生々しく思い出してるんだろう。私は、彼女の話を聞いただけで、八幡との行為を想像してしまって身体がおかしな熱を灯し始めていた。

 

「どれだけの間そうしてたかも忘れるくらいの間キスをしたら……彼がベッドの横に立って、チャックを開けて……その、あれを取り出すの」

「……っ」

 

 綾乃の言葉に、ごくりと息を呑み込んだ。

 

「私はベッドの上に座って、彼のものを目の前で見つめるの。

 最近温かくなってきたから、その……部屋に行く頃には、大抵彼のそこは蒸れてて、すごく濃い匂いがするんだけど……その、わたし、結構、その匂いが好きみたいで……」

「……へ?」

「……あ、ご、ごめん、その、わたし何言って……あぅ……で、でも、好きなの。分かんないけど……好き……なの」

 

 顔を真っ赤にしながらも、はっきりと私にその意志を伝える綾乃。この子に対する認識が、どんどん変わっていく……いや、変わるというよりは、広がるという言い方の方が正しいのかもしれない。

 

「初めは手で恐る恐る触ってたんだけど……その、最近はいきなり咥え込むんだ」

「え、う、うそ、ほんとに?」

「う、うん……彼のものって、おっきくなった時でも、その、ちょっと被ってるから……それを、唇で締めてゆっくり剥いてあげるの。

 口の中にしょっぱい味と男の人の匂いが広がって、わたし、もうこの辺りから意識が朦朧としちゃうんだ」

「うわ、わ、わ……っ」

 

 頭の中で、八幡との行為をはっきりと想像してしまって、どうにかなってしまいそうだ。

 

「口がちっちゃいから、なるべく、その……先っぽの部分を唇で締めてあげたり、割れ目を舌でつついたり、カリ……っていうのかな? そこをねっとりと舐めたりして……あ、こ、これは彼に言われてやるようになったんだからね!? 

 初めはわたしも全然分かんなかったんだけど……段々、彼が気持ち良くなってくれてるのが分かると楽しくなっちゃって、色々と勉強するようになって……」

 

 綾乃が口を手で押さえた。身体がぶるぶると震えている。頬が紅潮していて、明らかに興奮しているのが分かった。

 

「彼が出そうになると、最後だけ彼がわたしの頭を掴んで、奥まで咥えさせるの。最初はすごく苦しかったんだけど、最近は苦しい中にも気持ち良いって感情が芽生えちゃって……わ、わたし、やばいかな? 大丈夫かな?」

「う、ううん、大丈夫。いいと思う」

 

 大丈夫じゃない気もしたけれど、今は話の続きが聞きたくてしょうがない。

 

「それで、喉奥に彼のものをぐりぐりこすりつけられた状態で、わたしの喉にいっぱい出されて……その瞬間、いつも頭が真っ白になっちゃうんだ。

 全部飲み込むまで彼はわたしの顔を離してくれないの。ゼリーみたいに濃いのをごくごく飲み込む度に、わたしの身体が彼に染まっているような感覚に囚われるんだ。

 それで全部飲み込むと、彼はわたしを解放して『よくやったね』って。『気持ち良かった、最高だった』って言ってくれるの。そしたら、気持ちがふわぁっと軽くなって、幸せな気持ちになって……彼のことを、もっと好きになっちゃう。……こんな、感じだよ」

 

 綾乃がひと息つく。私は何も、感想が話せずにいた。

 

「あ、ありがとう……ん?」

「どうしたの、留美ちゃん?」

 

 この部屋に入ってから、綾乃は私に話をして、私は綾乃の話を聞いていただけだ。

 それだけのはずなのに、何だか部屋に妙な匂いが満ちている。

 

「ん、わかんないけど……何か匂いが……あ」

 

 何が原因かが分かってしまい、口を噤んだ。

 私だけなのか。

 それとも、綾乃もなのか。

 それは分からないけれど……とにかく、これは死ぬ程恥ずかしい。話には出さないでおこう。

 

「留美ちゃん、本当に大丈夫?」

「ん、大丈夫……。綾乃、お話ありがとうね。すごく……参考になった」

「えへへ……それなら良かった」

 

 綾乃の笑顔は、よく見知ったいつもの素敵な笑顔だった。

 

       ×  ×  ×

 

 その後、私たちは普通にカラオケをした。せっかく来たんだし歌わなきゃもったいない……なんて言い方を綾乃はしたんだけれど。

 いざ始めてみると……2人ともこういったことに不慣れにも程があって、結局2人で一緒に歌ってばかりだった。

 そうして一日中遊んで、綾乃と別れて家路につく。

 リビングで母と軽く会話をして、部屋に行く。帰り道、着信が来ていたけど電車の中にいて返せずにいた人に電話をかけた。

 

『もしもし』

 

 聞き慣れた気だるげな声に頬が緩む。

 

『もしもし、明日は7時集合だからね』

『や、なんで集合が2時間早まってんだよ。どこに行こうってんだ』

『うそうそ。ちゃんと八幡が集合時刻を覚えてるか試そうとしたの』

『俺、どんだけ信用されてないんだよ……』

『ふふ、それで明日なんだけど――』

 

 ……こんな、他愛も無いやりとりをしばらく続けて、八幡との電話を切った。

 

――ああ、だめだ。

 

 綾乃の話が、頭の中をぐるぐる回る。

 

 明日、八幡と楽しく話せるかな。

 明日、八幡と沢山手を繋げるかな。

 明日、八幡と……キス、出来るかな。

 明日、八幡と――

 

「……う~~~~~~……っ」

 

 うつ伏せで枕に顔をうずめて、ベッドの上で足をばたつかせる。

 ……先は、まだまだ長いみたいだ。

 

 

 

 続く。

 

 

 




 ルミルミ2連投でした。今までと違うテイストで、新鮮な気持ちで書けました。

<お知らせ>
 スケジュールの関係で、明日明後日(19・20日)はお休みします。その分きちんと、1周年記念の21日には投稿します。
 阿呆なメタネタをやります。多分今までで一番「」を使うと思います。今から楽しみです。
 (感想が現時点で2890件でして。もし沢山の方がおめでとう的な感想を書いて頂けると励みになると同時にそれで3000件に到達するのでは……なんて考えていたりします。ぜひ一言でもがっつりした褒め言葉でも何でも良いので感想を頂けるとありがたいです……! 常連さんも初めての方も中間くらいの方もログインしている方も非ログインの方も、どなたでも大歓迎です!)

 それでは、また【明々後日】ここでお会いしましょう(^^)!
 今回もお読み頂きありがとうございました(^^)!!
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