※この作品はR-18です。

俺ガイル 日常の何気ないエロス。   作:高橋徹

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「お邪魔……しま……す」

 

 留美を自室に招き入れると、かちこちに固まった様子で挨拶をした。ううん、これから会話が成り立つか心配……。

 

「取り敢えずここに座ってくれ」

 

 クッションを2つ置いて、片方をぽんぽんと叩く。留美はスカートを押さえながら座ると、俺をじっと見つめた。

 

「どうした」

「八幡、ここに座る?」

 

 にこやかに言って、留美が自分の太ももをぽんぽんと叩く。意外と余裕はあるらしい。

 ……ふむ……。

 

「そうだな、じゃあお邪魔するか」

「え、あ、う、その……っ」

 

 試しに乗ってみたら、目に見えて慌てられた。反撃に弱いなぁ……。

 

「どうしたんだ留美。座っていいって言っただろ」

「あ、そ、その……」

 

 慌てふためく留美が可愛くて、ついいじめてしまう。

 それならせめて……と、留美が消え入りそうな声で呟き、すっくと立ち上がる。

 

「わ、私が、八幡の上に座る……っ」

 

 おっと、強めの反撃だ。

 留美は耳まで真っ赤にして俯いている。俺の袖をつまみ、俺の次の行動を待っているようだった。

 

 …………。

 ……応じるしかないじゃない……。

 

 取り敢えず、クッションの上に腰を下ろしあぐらをかく。留美にこいこいと手招きすると、こちらにくるりと背を向けて、スカートを押さえた。尻を撫でるようなその動きに、まだまだ華奢な少女の肢体のラインが見えてどきりとする。

 

「お邪魔……します……っ」

 

 留美が恐る恐る言って、そろりと腰を下ろす。股座の中にすっぽりと収まると、体育座りの格好をとった。俺は手の置場に困り、カーペットに両手をついている。

 目の前にある留美の髪の毛からは、甘い匂いに混じって夏を感じさせる爽やかな香りもした。この時期に合わせてシャンプーを変えたりしているのだろうか。

 

 留美の頭を撫でてみる。

 なでなで。

 

「…………」

 

 撫でると良い匂いが更にする。心持ち顔を近付けてもう少し撫でてみる。

 なでなで。

 すべすべ。

 

「…………」

 

 留美は無言で、時折「ん……っ」と艶っぽい吐息を漏らすだけだ。

 うーん、これはこれで楽しいかもしれない……なんて考え始めたところで、留美が俺の空いている手を掴んだ。何をするのかと思いきや、あろうことか自らの腹部に引き寄せた。片手で留美の頭を撫で、片腕で留美を抱きしめる体勢になり、自然と2人の密着度も増す。尚のこと良い匂いが鼻腔をくすぐり、頭がくらくらした。留美の素肌と制服がぴったりくっついたことで、淡い香りが漏れ出したかのようだ。

 

 うん、これはこれで……。

 これはこれ……で……。

 

「……なあ、留美」

「……なに? 八幡」

「……ちょっと、限界だ俺」

「……奇遇だね、私も」

 

 互いに羞恥心の面で限界を迎えて、留美が徐に立ち上がった。君は君で、なんで恥ずかしいのに俺を煽ったの……。

 おとなしく隣に座った留美が、俺をちらりと見ては目を逸らす動きを繰り返す。恥ずかしさの余韻なのか、その挙動は妙に幼い。

 愛おしさが湧いて、留美の耳を撫でて唇を重ねる。

 

「ん……っ」

 

 繋がった唇から甘い声が漏れると、留美は目を細めて微笑んだ。

 さて、ここからどうしようか……と考えながら、頬をぽりぽりと掻いた。

 

       ×  ×  ×

 

「留美、ちょっとしたあるあるネタなんだが」

「なに?」

「道端でたまたま会った仲の良い友達と長話をして、『せっかくだからもっと話そうよ』なんて言って喫茶店とかに行くと、急に話が弾まなくなるんだとさ」

「なんで伝聞形なの?」

「俺にはそんな体験が出来る友達がいない……」

「八幡……私は?」

「や、留美は友達じゃなくて、恋……」

「あ……っ」

 

 会話が続かないことを自虐的に活かそうと思ったら、思い切り事故った。

 

 留美と部屋に入ってからしばし。

 いつもは歩きながらとか、ちょっと立ち寄った公園で話すことが多いからあまり考えたことがなかったが……いざ自室に招いて「さあ話そう」となると、途端に何も話せなくなる。この間行ったカフェだと店の話をすることが出来たし、刺激的なことがあったもんだから会話どころじゃなくなっていたし……。

 

 ううん、どうしよう。

 留美が5つ下ということ、女の子であるということ、今はいずれも問題ではない。

 この状況は純粋に、トークが不慣れな俺の不甲斐なさが原因だ。

 ここで留美を困らせるのはいけない。

 何とか出来ないかと必死で思考を巡らせていると、留美がそっと俺の膝に手を置いた。

 

「八幡、何か学校の話をして。私、聞きたい」

「留美……」

 

 留美の気遣いに泣きそうになった。

 

「……愚痴でも良いか」

「他に無いの……」

 

 留美が困ったように笑った。俺の膝をぽんぽんと撫でて、首を傾げて微笑む様は天使にしか見えない。

 

「や、まあ、正確に言えば俺がひねくれてるから何でも愚痴みたいに聞こえるだけって話なんだが」

「それ、結局愚痴でしょ」

「ああ、それもそうだな」

 

 2人でくすりと笑う。話し下手な2人が紡ぐ、緩やかな空間。温かな雰囲気を感じ取ると安心出来て、自然と口が開いた。

 

「この間なんだけどな、平塚先生にまた雑用を頼まれて」

「平塚先生って、キャンプに来てた胸の大きい人?」

「着眼点はそこなのか……。まあその雑用自体は単に大量の本を運ぶだけの単純労働だったんだけど、何往復かしている内に由比ヶ浜が通りがかってな」

「由比ヶ浜さん……って、あの、私たちとは違って溌剌とした、胸の大きい人?」

「俺たちと違うのは確かだが……ていうか着眼点……。そんで『あたしも手伝うよ』って言ってくれたから、何冊か持ってもらったんだ。厚意を無碍には出来ないしな」

「うん」

「んで、由比ヶ浜と並んで歩いてたら、暑かったからなのか廊下の曲がり角の窓が全開になっててな」

「何かいやな予感がしてきた」

「まあ、うん……。由比ヶ浜が俺に話しかけて目が合った瞬間、思い切り風が吹いてだな。……その、まあ、はっきりと……な」

「……それ、愚痴じゃなくない?」

「いててて、内ももをつねらないで。話は続きがあるんだって。由比ヶ浜は本当に良い子でな、顔を真っ赤にして『……ばか』って言った後は、すぐに切り替えて話をしてくれたんだ。しかしそれが昼休みの出来事で、放課後部活の時に、由比ヶ浜の様子がいつもと若干違うことに雪ノ下が気付いたんだ」

「雪ノ下さんって……私たちと同じ側で、もしかしたら私がもう勝ってるかもしれない人?」

「留美、それ絶対本人に言うなよ。多分死ぬぞ。……でだ。由比ヶ浜は最初こそはぐらかそうとしたが、嘘が下手でな。雪ノ下の追及に観念して耳打ちしたら……雪ノ下の目が、こう、青白く光ってな」

「……比喩、だよね?」

「……あれが幻だったらどんなに良いか……。で、その後はひたすら言葉でぼこぼこにされた。由比ヶ浜がフォローすると『あなたはこんな変態をかばう必要は無いわ』なんて言う始末で。攻撃された時間はかなり短かったんだが、久しぶりだったもんでかなりこたえた……」

 

 話を終えてひと息吐く。留美を見ると、優しい笑みを浮かべていた。

 

「……そう」

 

 短く言うと、留美が身を乗り出し、俺の頭をくしゃくしゃと撫でる。

 

「……大変だったね、八幡」

「……すげぇ恥ずかしいんだけど……」

「いいの、私がこうしたいんだから。八幡、お疲れ様……」

「…………」

 

 俺の正面に回り込み、俺に足を開くよう手で指示をする。言われた通りにすると俺の目の前で膝立ちになり、首に手を回して抱きしめながら頭を撫でてくれた。慎ましいながらもふくよかな胸に顔をうずめて身を委ねると、不思議と心の中にたまったものが洗い流されていくような気がした。

 

 ……い、色んなことをすっ飛ばして言ってしまうと。

 け、結婚してぇ……!!

 

 この後、俺はしばらくの間留美の胸にうずくまっていた。背中に腕を回して抱きしめると、留美は「ふふ……っ」とお姉さんのような声音で笑った。

 留美との心の距離が日に日に近付いていく感覚が、たまらなく心地良かった。

 

 

 続く。

 

 

 




 ルミルミ、2夜連続でした。
 八幡を慰めるシーンと「け、結婚してぇ……!!」というセリフは、結構前に考えてました。当初は放課後に公園で一緒に過ごすシーンの予定でしたが、場所だけ変わりました。前から考えていた部分を書くと結構感無量です。

 それでは、また明日ここでお会いしましょう(^^)!
 今回もお読み頂きありがとうございました(^^)!!
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