私はまだ、生まれてから13年も経っていない。だから、初めて体験することが毎日のようにある。沢山ある。
けれど、こんな「初めて」は、今までに無かった。絶対に無かった。
身体が、熱い。
奥底から、燃え滾るように、熱い。
私の身体は、心は、一体どうしてしまったんだろう。
× × ×
八幡の部屋に遊びに行った後、家の前まで送ってもらった。すっかり暗くなった道で、私と八幡は何度もキスをした。
あのキスが、情熱的なものだったのかは分からない。
けれど、「貪る」という表現なら、とてもしっくりくる。
私が八幡の手を、指で波打つように握ってじっと見つめると、八幡はきょろきょろと辺りを見回した。すっかり暗くなっていて、寂し気な街灯以外人影一つなかった。そんな帰り道で、私は八幡に何度も「襲う予行演習」をされた。
頭と背中を抱きかかえられて、何にも身動きが取れなくなった状態で、唇を奪われる。
「んっ……んぐっ、んちゅっ、んっく、ふぅん……んふぅっ、んふぅぅ……っ」
八幡は私の口の中をめちゃくちゃにしながら、私のスカートの中に自分の足を差し込んで、大事な所を太ももでこすってきた。身長差が大きいから、そんなことが簡単に出来てしまう。ぐりぐりと擦られると頭の中に火花が散って、腰ががくがくと震える。それで腰を落とせば快感が増して、腰を上げようとしてもままならない。意識が朦朧として、八幡に身を委ねてされるがままになると、八幡はようやく解放してくれる。時間にすれば数十秒、いや、数分くらいだろうか。一回につき一体どれだけそうしていたのかは分からない。けれど、私は何度でもその行為を求めてしまって、回を重ねるごとに意識が弾けるまでの時間が縮んでいく。途中で、八幡の膝の辺りがぐしょぐしょに濡れているのに気付いた時は死ぬ程恥ずかしかったけれど、それでも求めることをやめることは出来なかった。
「じゃあ、また明日な」
「……ん、また明日」
別れ際、家の前でキスをする時は、八幡は最大限に周囲に気を払っていた。私はもう八幡とキスをすることしか考えることが出来なくて、周りを見る余裕なんてなかった。別れ際は私の耳をそっと撫でながら、優しくキスをしてくれた。私がせがむように舌を出すと、八幡はぱくりと咥えて私の舌を舐め回した。耳の中にも指を入れられて、膝ががくがくと笑った。八幡の腰に手を当てて、少しでも長い間キスを続けられるように耐えながら立っていた。
「んっ、ちゅくっ、んふぅぅ……っ、……ぷはっ。……明日も、キスしていい?」
「……っ」
正直な願いを告げたら、八幡は目を見開いて口をわなわなと震わせた。一瞬私の背中に手を伸ばしたけど、すんでのところで思い留まったみたいだった。もしかしたら、この台詞が一番八幡のことを誘惑出来ていたのかもしれない。
そんな風にして別れてから、しばらく経った。
ご飯を食べている時、母にしきりに心配された。「何だかぽーっとしてる」って。でも体調が悪そうというよりは、何だか夢見心地に見えるとも言われた。八幡とのことを追及されそうだったから、急いでご飯を食べた。無理して早く食べるとあまり良くないということが分かった。
そして、今。
歯磨きとお風呂を終えた私は、自室のベッドに横たわっている。
「うぅ……んっ、くぅっ、んんん……っ」
小さく蹲って、息を荒げる。
身体が、熱い。
奥底から、燃え滾るように、熱い。
私の身体は、心は、一体どうしてしまったんだろう。
「八幡……っ」
自分にしか聞こえない微かな声で、彼の名を呟く。それだけで、身体の芯からふわふわとしてきて、それと同時にどうしようも無い程のもどかしさに駆られた。
ベッドのシーツを握り締めて、彼の顔を思い浮かべる。
私って、こんなに八幡のことを好きだったんだ。
いつからこんな……なんていう事は分からない。
八幡のことが、好きなんだ。大好きなんだ。
だから、八幡にあんなことをして、あんなことをされて……。
そっと、自分の唇を撫でる。自分の指を八幡の唇だと思って撫でると、ぞくりとした何かが背中を駆け抜けた。
ああ、私ってこんなにエッチなことが好きだったんだ。知らなかった。
けれど、一人きりだったらこんな風にならなかった。
八幡と居るから、私はこんな身体になったんだ。こんな心になったんだ。
「熱い……っ」
身体の中を、燃え盛る炎が駆け巡っているようだ。私の身体を内側から焼き尽くして、外へと躍り出ようとしている。
止めなきゃ、この炎を、止めなきゃ……。
そんな風に思っていると、突然着信音が鳴った。驚いてびくりと身体が跳ねる。こんな風に電話をかけてくる人はほとんどいない。
綾乃か、もしくは――
画面を覗き見る。
「八幡……っ」
私の顔は、きっと今にも泣きそうだったと思う。
× × ×
『もしもし、わりぃな急に』
『ん、大丈夫』
耳元から聞こえる優しい声に、気持ちが安らぐ。けれど、身体の火照りは収まるどころか増すばかり。
『なんかな、さっきの別れ際の留美を見て、何となく心配になってな』
『心配って……どういう?』
『や、その……っ』
八幡が、急に恥ずかしそうに口ごもる。きっと電話の向こうでは頬をぽりぽりと掻いているんだろうな。
ふぅ、と八幡が息を吐いた。
『その、な。留美……寂しがってんじゃねぇかって思ってな』
『……っ』
その一言が、私の身体を芯から焼き焦がした。
携帯を枕元に置いて、仰向けに寝転がる。スピーカーモードにするか迷ったけど、八幡の優しい声を耳元で聞いていたいから、敢えて普通の通話モードのままにした。
『……ふぅん。どうしてそんな風に思ったの?』
『おい、声笑ってんぞ』
そう言う八幡の声も笑ってる。けれどきっと、私がこんな喋り方をした本当の理由を八幡はすぐには気付けないと思う。
これからすることへの緊張を和らげる為だなんて、きっと考えやしないと思う。
『……ありがと。嬉しい。すごく』
『お、おお、そうか、それなら良かった……』
電話してくれた割に、自信は無かったみたい。
くすりと笑いながら、私は――
自分の胸に、両手を伸ばした。
「ん……っ」
薄手のパジャマ越しに、指が僅かながらも胸の中に沈む。最近少しは大きくなったけど、まだまだ発展途上だ、きっと。
『? どうした?』
『何でもない。それで、何話す?』
『その切り出し方でまともな話題を出せるヤツはこの世に存在しないと思うんだが……』
私が漏らした小さな小さな声にも八幡は気付いてくれたけど、知らないフリをする。今日数えきれないくらい八幡に抱きしめられて、意外と逞しい八幡の胸板に私の胸がぎりぎりと押し付けられた時の感触を思い出す。
「んん……っ!」
手に力は加えていないのに、イメージ一つで途端に気持ち良さが増した。
『? 留美、大丈夫か?』
『ん……なに? 大丈夫だよ?』
自分の声が上ずっていることに気付く。
私は何をやってるんだろうか、と思う。
けれど、私がこんなことをする原因を作ったのは八幡だ。
だから、八幡にはその責任を取ってもらわないといけない。
――ただ、今は八幡のことを誘惑中だから、今回は間接的な協力を求める、ということで。
我ながらどうしようもない言い訳を心の中に並べ立てて、ゆっくりと手に力を込める。
『んーっとだな……そうだ、明日はどこで会う? 部活があるからあんまり長い時間は会えないけど……って、……留美? 本当に大丈夫か? 無理すんなよ?』
『んっく、んん……っ、だ、大丈夫、大丈夫だから……っ、ほら、話、続けよ?』
『……留美、まさか……っ』
八幡の声が低くなった。
あ、やばい。
この声、知ってる。
私を思い切り抱きしめて、私の耳元で恥ずかしい言葉を囁く時、こんな声だった。
『……一人で、してるのか?』
『あ……っ、うぁ……っ』
八幡に知られてしまった。
頭がおかしくなりそうなくらい羞恥が湧くけど、八幡は電話を切るどころか呆れる様子もない。ただ静かに、私の言葉の続きを待っている。
『そ、そんな、こと、してない……っ』
『うそをつくなよ。うそをつくと、明日はしてやらないぞ』
『あ、うっ、うぅ……っ』
八幡の言葉に、泣きそうになる。
どうしよう、どうしようと思う反面。
私の手は、小さな胸を必死で弄っていた。
続く。
ルミルミでした。スイッチが入ってどんどん凄いことに。
それでは、また明日ここでお会いしましょう(^^)!
今回もお読み頂きありがとうございました(^^)!!