留美を連れて部屋に入る。扉を閉めると、留美の身体がびくりと跳ねた。
「……どうした」
「……ん、なんでもない。鍵閉めるのかなって思った……だけ……っ」
「…………」
自分で言っておいて、顔を真っ赤にして俯いてしまった。この自爆がすっかり気に入ってしまった……。
……特に理由は無いけれど。
――かちゃり。
そろりと手を伸ばして、鍵を閉めた。
「……っ」
留美が驚いた顔で振り返る。
「どうした、留美が望んでるからやっただけだぞ」
「……ん、うん、わかってる……っ」
声を震わせる留美の手をぎゅっと握ると、留美は目を見開いて俺を見つめた。期待と不安の入り混じった瞳は揺れていて、ぞくぞくと嗜虐心をそそる。
「取り敢えず……座るか。ほれ」
留美をクッションの上に座るよう促す。
「……ん」
留美がクッションのある所まで歩いてきて、黒のワンピース越しにお尻を手で押さえると、幼くも艶めかしい肢体のラインがくっきりと見えて思わず目を逸らした。
「八幡……」
「ん、どうし……って何で尻を押さえたままなんだよ」
留美は、座る直前の体勢で、お尻を押さえた体勢のまま俺を見ていた。俺に対してお尻を突き出しているようにしか見えない。というか確実に突き出している。
「すごく視線を感じたから、好きなのかなって。こういうの」
あっさりとそんなことを言う。
その通りだった。
「……じゃあ、遠慮なく見させてもらうぞ」
半ばやけになって、留美の後ろに腰を下ろして胡坐をかき、留美の尻を真正面で眺める。
絶。
景。
見つめることしばし。
『…………』
…………。
「……なあ、留美」
「なに?」
「今俺がやってるのって、完全に変態行為だよな?」
「……気付くの遅い」
「……もうちょっと見てていいか?」
「……変態」
呆れたように留美が言うと、顔をこちらに向けて柔らかく微笑んだ。
「でも、この体勢だと疲れるから……これでいい?」
「ああ、姿勢を崩すのはいくらでも……って、うおぉ!?」
留美は膝を付いたかと思うと、背の低いテーブルに手を付いて、四つん這いのような体勢でこちらに尻を突き出した。先程よりもはっきりと分かる双丘のラインに魅入られて、思わず手が伸びそうになる。
「……る、留美」
「なに、もっと見たいの?」
「……ぎ、ギブ……」
「……もう」
これ以上見ていたら取り返しの付かないことをしてしまいそうだと思い、何とか思い留まった。へたれと言われても反論は出来ません。
留美は困ったように眉根を寄せて、クッションの上にぺたりと座り込んだ。俺はその隣に座り、何とはなしに留美の頭を撫でる。
「八幡、今日は何かいつもよりも欲望に忠実」
「そりゃあな、留美がそんだけ凶悪に可愛い服を着てくればな」
「…………」
抱き付かれた。
俺の胸に顔をうずめている。
なんか楽しくなってきた。
「どうした、可愛い顔を見せてくれって、ほら」
「…………」
無言で首を振る。おでこが胸板にすりすりとこすられる。何だかむずがゆい。
「んぁ……っ」
留美の耳に手を触れると、留美は驚いたように顔を上げた。美しい顔は上気していて、既にスイッチが入っているように見える。
自然に、とてもスムーズに、唇を重ねる。
「ん……っ、ふぅっ、んっ、ふぅぅ……っ、ちゅく、ちゅくく、ちゅぷ、ちゅぷりゅ……ふぅん……っ」
綺麗な桜色の唇の間に舌を割り入れると、熱い口腔内で留美の舌が積極的に迎えてきた。
紅い愛情を交わらせながら、留美の身体を支えようとして、そっと留美の二の腕に手を添える。
――留美の服がノースリーブであることを、忘れたままに。
「んふぁぁ……っ!?」
留美の肌を直に触ると、留美は驚いて口を離した。
「あ……わりぃ、つい」
手を離そうとすると、留美がかぶりを振って微笑んだ。
「……もっと、触って?」
「……っ」
蠱惑的な表情を湛えて、甘えるように首を傾げる留美の表情が。
俺が幾層にも重ねた筈の理性の殻を、一枚一枚しっとりと剥いでいく。
理性の逃げ場がなくなって、もうじき行き止まりの崖が見える気がした。
× × ×
留美の腕は細い。掴めば尚更顕著に感じるその細さは、強く握れば折れてしまいそうで不安になる程だ。
なのに。
それなのに。
どうしてこうも、俺の指がその肉に沈み込むのか。
指を沈ませていった先には、骨が無いのではないか――そんな風に疑ってしまう程、留美の腕は柔らかい。
さらさらと滑らかな肌は、留美の腕を握った時に指を僅かに滑らせる。氷を握ろうとした時の様に。
氷のように滑らかなのに、内に湛えているのはしっとりとした熱で。
「……あっ、あっ、んぁっ、あ……っ」
――漏れ出でる吐息は湿り気を帯びて、甘い匂いに一瞬で魅了される。
留美の二の腕を掴んで、ゆっくりとさする。
「あっ、うっく、んふぅ……っ」
ただそれだけの行為なのに。
「あ……っ? あっ、うぁっ、あ……っ」
なぜ、こんなにも。
「んあぁぁ……っ、あっ、ふぅっ、ふぅぅ……っ」
――気が狂いそうな程、興奮するのか。
留美は俺の手のひらが上下に滑る度に、うっとりとした顔で息を荒げている。時折強く握ると肩を竦めて、泣きそうな顔で俺を見つめる。拒絶の意を示しているのかと思えば全くもって違っていて、強く握ったまま揉みしだくと、おとがいを上げて甘ったるい嬌声を上げた。真っ白な首を惜しげも無く晒されて、まるで吸血鬼のような欲望が内から湧き出てきた。
「……んっ、ふぅぅん……あっ、あぁ……っ」
留美はじっとりと汗をかいていて、艶やかな黒髪が額に数本貼り付いている。艶っぽさと生々しさは増すばかりで、ズボンの中ははち切れんばかりに膨れ上がっていた。
ふと、留美のワンピースの――右肩の紐が、はだけていることに気付いた。
肩紐がはだける、という現象。
元々留美の肩にかかっていたのは一本の紐だけなのだから、それがはだけた所で露出度はさして変わらない。
けれど、1が0になるという変化は、100あったものが99になるのとはまるで意味が異なる。
うっすらと汗ばんだ肩が、無防備に目の前に晒されている。肩に僅かにかかっている黒髪が、ぎりぎりの所で、理性に踏み止まるよう訴えかけていた。
ごくりと息を呑んで見つめていると、留美が俺の顔を見てにこりと微笑んだ。
俺の手の力は緩んでいたようで、留美がすっと右手を上げる。
何をするかと思えば、首を左に傾けて――つまり、肩紐がはだけた側の首を俺によく見せるようにして、肩にかかった黒髪を、白魚のような指で払った。
何にも隠されることなく、白い肌が露になる。
「……留、美……っ」
声が震えている。
腕も震えている。
何より、心が震えている。
左腕を留美の背中に回し、留美の右腕を固定しながら左腕も手で掴み拘束する。
右手は留美の頭に回して、後ろから留美の右耳を掴んで首を向かって右側に更に倒す。
留美を見る。
一瞬目が合うと、何か言いかけるように口を開いて、やがて唇を引き結ぶと目を閉じた。
目の前には、透き通るような肩と首。
心臓が痛い程に鳴る。留美の肩から払われた黒髪が、俺の心臓を締め付けている気がした。
口を近付ける。
触れてもいないのに、留美の鼓動が聞こえるような気がした。
続く。
ルミルミでした。まだ行きます。まだまだ行きます。
40話書いて、まだ服を脱いでさえいないという。今回キスをして二の腕をさするだけでした。
感想ですが、以前の常連の方が再び書いてくださっていてとても嬉しいです。中々返信出来ず申し訳ありませんが、本当にありがたいです。
まだ感想を書かれていない方も書いて頂けたらとても嬉しいです(^^)!
それでは、また明日ここでお会いしましょう(^^)!
今回もお読み頂きありがとうございました(^^)!!