目の前の白い肌に、強烈に引き寄せられる。
自分を突き動かしているものは、愛情のようでも、性欲のようでも、食欲のようでもあって。
――何より、独占欲である気がした。
「……んむっ」
留美の首の付け根に唇を付けると、俺の腕に拘束された留美の身体がびくりと跳ねた。
微かな汗の塩味と、鼻腔を擽る甘い匂い。
本能の赴くままに、舌を這わせ始めた。
……ちゅく、くちゅり、ちゅぴ、ちゅうぅ……ちゅっ、ちゅく……っ。
「あっ、あっ、んぁ……あふぁっ、あっ、うぅ……っ」
腕の中で留美が悩まし気に身じろぎする。密着した身体の柔らかさとワンピースの生地の滑らかさに陶酔しながら、舌を滑らせ柔肌を丁寧に味わう。
吸い付いては離し、固めた舌先で肩から首にかけてなぞり、また吸い付く。
「……あ、跡、付いちゃう……良いの……っ?」
蕩けた声で留美が言う。「跡が付くからだめ」ではなく、俺に「それで良いのか」と聞いてくることに、この子の従順性を感じた。
「……良いんだ」
留美の目を見て言うと、留美は目を微かに見開いて、それから嬉しそうに目を細めた。
「……付けて、いっぱい、付けて……っ」
恋人どころか、従順な奴隷であることを望むかのような発言が、劣情の導火線に火を点ける。
「……留美……っ」
むしゃぶりつくように口付けをして、自分の所有物であることを示すために留美の身体に何度も吸い付く。
ちゅっ。
くちゅり。
ぢゅうぅぅ……っ。
「あっ、んぁ……あっ、あぁぁ……っ!」
留美の身体がびくびくと跳ねて、それでも抱き付いてきて決して離さない。
留美の首を右に傾けて、左側の首と肩に吸い付く。
「あぁぁ……っ、あっ、あっ、ぅあ……っ」
留美の声が緩慢に伸びて、耽美なものと化してゆく。吸血鬼に命を奪われることを悟り、人生を諦め、目の前の快楽に身を委ねているかのように。
どれだけの時間そうしていたか分からない。
ようやく口を離して、留美の表情を改めて見た時。
「……あっ、んぅぅ……っ、八、幡……八幡、八幡……っ」
苦悶に喘ぎながら快感に打ち震える留美の顔を見て、今の口付けが、留美の身体を一から作り変えてしまったような気がした。
留美の腕が首に回される。抱き付いてくるのかと思えば、腕は伸びたままだ。
留美の視線が動く。
俺の右手。
俺の左手。
そして――留美自身の胸元。
俯いて自分の胸を見た後、こちらを見つめてきた。
一連の動きで、何が言いたいのかが分かる。
その欲望に逆らう気は、もう起きなかった。
それでも、決して壊さぬように……と手を震わせながら。
留美の腰に手を添えて、ゆっくりと上に滑らせていった。
× × ×
留美の腰に添えた手を、艶めいた身体のラインに沿って滑らせていく。
肋骨をなぞり、脇の下まで来たら、今度は身体の前面に向かって、真横に滑らせる。
留美の胸の真下に両手を置いたところで――ゆっくりと、慎重に、留美の胸を下から掬い上げるように触った。
「……あ……っ」
留美は頬を朱に染めて恥ずかしそうにしながらも、嬉しそうに微笑んだ。
留美の腕も柔らかいと思ったが、乳房の柔らかさは別格だった。慎ましいサイズだと言うのに、男の心を掴んで離さない。ふに、ふに……と指が沈み込む度に瑞々しい弾力を感じ、留美の口からは甘美な吐息が漏れる。
「んふぅ……あっ、ふぁっ、あっ、あんっ、んっ、くぅぅ……っ」
俺の首筋を悩ましく手で撫でながら、留美が視線を彷徨わせる。目が合う度に口付けをせがんできて、胸に指が食い込む度に、跳ねるように口を離して喘いだ。
「留美、大丈夫か。痛くないか」
留美の反応を窺いながら触っていると、留美は幸せそうに微笑んだ。
「ん、大丈夫。……でも……」
「? でも……?」
「八幡の触り方……優しいのに、すっごくやらしい……」
「……っ」
からかうように言った留美の笑みは、とてつもなく淫猥で。
「……っ!」
思わず手に力が篭ってしまった。
「んあぁっ!?」
留美が口をぱっくりと開け、今までとは比較にならない嬌声を上げる。
「大丈夫か!?」
「あっ、大丈夫……でも、ちょっと、触るの、やめて……っ」
そう言う留美の顔は真っ赤で、自分の腕で顔の下半分を覆ってしまっていた。
いやがっているのではないことは、手に取るように分かった。
いやがっていはいない。むしろ――
「なあ、留美」
「? なに……んふぅぅっ!?」
留美の耳にぴったりと唇を付けて、吐息混じりの声で囁く。それと同時に胸をさっきまでよりも強く揉みしだくと、留美の反応が劇的に変わった。
「留美、強くするの、気持ち良いんだな?」
「……っ、そ、そんなこと……あっ、だめ、そこ、舐めちゃ……っ」
小さな耳の中に舌を挿し込み、双丘を丁寧に強く揉む。手のひらにすっぽり収まる乳房はどうとでも責めることが出来て、蹂躙という言葉がふと頭を過ぎった。
「ほんとのこと言えって。気持ち良いんだろ?」
「うっ、うぅぅ……っ、恥ずか……しい……っ」
留美の顔がぶるぶると震える。耳まで真っ赤にして羞恥に耐える姿が、たまらなく愛おしい。
「……正直に言ったら、もっと気持ち良くしてやるぞ」
留美の震えが止まる。
目が合うと、留美は迷いながらも真っ直ぐ見つめてきた。
「……気持ち、良い」
「ん、何が気持ち良いんだ?」
「意地悪……っ。その、八幡に、優しく触られるのも、強く触られるのも、気持ち良い……っ。強く触られると、何だか知らない自分に変わるみたいで怖いけど、八幡にしてもらってると思うと安心する……」
カウンターをくらってしまった。
真っ赤になった顔で本心を告げる留美の可愛らしさと愛おしさは、尋常ではなかった。
「よし、よく言ってくれた。……じゃあ、あそこに移動するか」
「え……っ」
俺が指差した場所に、留美が面食らう。
「も、もう? その、いくら何でも早すぎじゃ……」
「今までのもよっぽどだったろ……。あそこの方が色々と都合が良いってだけだ。……それに、まだそういう段階じゃねぇからな」
「……そ。まだ、ね」
「ああ、まだ、な」
くすりと笑い合う。立ち上がると、留美が俺を見上げたまま止まっている。どうした……と聞く前に、何となく事情は分かった。留美の手を掴んで引っ張れば良いかと思ったが、ふと悪戯心が湧いて留美の腋の下に手を滑り込ませて、ひょいと持ち上げた。
「きゃ……っ!」
可愛らしい声を上げて驚いた後、恨めし気な視線を向けてくる。頬を膨らませているのはわざとだろうか、死ぬ程可愛い。
「わりぃわりぃ。…………」
ふと、留美の腋に目が行く。
留美の身体に手を添えたまま、見つめることしばし。
…………。
……………………。
………………………………。
「八幡」
「ん、どうした」
「変態」
「……ですよね」
言いながら、留美から手を離す。
「……別に、八幡が何かしたいならいいけど」
「……何でも許可するなよ。まじで何でもしちまうぞ」
「良いの。……だって、私……八幡のものでしょ」
留美はそう言うと、髪をかき上げて己の首を晒した。うっすらと残るキスマークが、己の所業を思い起こさせる。
「……ん、そうだな。……ただまあ、それでもやりすぎるとアレだから、善処するわ」
「八幡、ほんとに優しいね」
「うっせ、めちゃくちゃにするぞ」
「…………」
頬を赤らめて俯いた。
うぅん、この子、中々にドМなんじゃなかろうか……。
続く。
ルミルミでした。いろはす編が終わったのと同じ話数でようやく胸に触るという。
明日は定休日です。皆さん良い平日(?)を!
それでは、また【明後日】ここでお会いしましょう(^^)!
今回もお読み頂きありがとうございました(^^)!!