1.
エレベーターのボタンを押すと、ドアはすぐに開いた。
先生の数歩後ろを付いて行き、エレベーターに乗り込む。
先生はボタンの前に立ち、俺は一番奥に立った。
「私の部屋は5階なんだ」
「そうなんですね」
何気ない会話を交わす。が、しかし、先生はそう言っただけで全く動かなくなる。
……あれ、ボタン押さないの?……なーんかすごい嫌な予感がするんだけど。
「あの……静さん?」
恐る恐る、先生の後ろから声をかける。その表情は読み取る事が出来ない。
「……ん、どうした?」
「や、その、ボタン、押さないのかなーって。5階なんですよね?」
「そうだよ」
……いや、おかしくない?この状況。動かないエレベーター何てただの妖しい密室空……間……。
先生が、ほんのわずかにこちらを向く。横顔が少し見える程度なのだが、その口にはうっすらと笑みを浮かべている。
そして、こちらに背を向けたまま、ゆっくりと近寄って来た。迫り来る背中って何か超怖いんだけど。超怖いんだけどぉ!
目の前まで来て、俺を壁に押し付ける様に自分の尻を突き出して押し付けて来る。その豊満な肉感に、思わず少しばかり背を屈めてしまった。
「あ……あのー……?」
いや、これ、何なの?突然の平塚ヒッププレス。
「ん、どうした?比企谷?」
先生は見上げる様に振り向き、悪戯っぽい笑みを浮かべた。息を呑んだだけでも気付かれてしまう程の距離。完全に固まってしまう。
先生はふふんと楽しそうに笑うと、俺の腰に手を回し、尻をより露骨にぐりぐりと押し付けて来た。
やばい、やばい、やばい。何がやばいってマジでやばい。
取り敢えず、場所がアウトにも程がある。
「し、静さん!5階!と、取り敢えず、上行きましょう、上!」
理性が爆ぜそうになるのを堪えながら、何とか声を上げる。
先生はふむと考える顔をすると、顎に手を当ててほんの数秒ばかり、斜め上を見上げた。そして、再び悪戯っぽく……いや、先程よりも明らかに悪そうな笑みを浮かべる。
「そうだな、こんな所では流石に、な。では比企谷、君があのボタンを押してくれ」
先生はボタンを指差しながら、にやりと笑った。
俺が今居るのはエレベーターの一番奥の壁だ。距離で言えば2~3歩歩けばそれで済む話なのだが……いかんせん、その数歩が今は果てしなく遠い。
って言うか、先生に尻を押し付けられた状態でエレベーターのボタンを押す為に前に進まなきゃいけないって……これ、何プレイなの?
「……分かりましたよ」
まったく、先生は俺でどんだけ遊べば気が済むんだろうか。
取り敢えずこのままでは進みにくい。まずは、と思い先生の腰を掴んで、進みやすくしようとした。――と。
「……うぁ……」
先生は一瞬戸惑いの声を上げ、少女っぽさが残るあどけない声を上げた。
……あれ?
先生はすぐさまその表情を引っ込めて、先程の悪戯っぽい笑みに戻ると、「ほら、早くしたまえ」と楽しそうに言った。
先生の腰に手を添えたまま、のたのたと歩く。その度に、先生の口からほんの少しずつ「うっ、あぅっ、ふぅんっ……」と甘い声が漏れて来る。
あれ、どうしちゃったの先生?さっきまでの勢いはどこへ?
先生の表情がこちらからは見えないのがもどかしい。
しかし、あれこれ考えて行動に移すには、あまりにも時間が足りなかった。
いつもと同じ歩幅とは行かないため、何とか6歩ほど歩いてボタンの前に立ち、5の数字を押す。
先生から聞こえてくる息遣いは、心なしか熱っぽい。
それがたまらなくなり、エレベーターが上がり始めた瞬間に、先生の尻を思い切り引き寄せて、出来る限りの力で股間を押し当てた。
「うあぁぁぁん……」
長く色っぽい声を上げて、先生が小さく震えた。そして、その体勢のまま、再び俺の方に振り向く。
「こ、こら……大人をからかうんじゃないぞ……?」
そう言いながら、俺の左頬に添えられた先生の手は、しっとりと汗ばんで熱を帯びていた。
「先生こそ、俺の事を散々からかってるじゃないですか」
思わず反論してしまう。だって本当にそうですもんね!鬼です、鬼。
「ふふ……それもそうだな。お、着いたようだぞ」
先生が言葉を切った直後に、エレベーターのドアが開く。先生はするりと俺に押し付けていた尻を離して、ドアをするりと出て行った。
……さっきの、ただの立ちバックだったよな……。思い出したら、一気に顔が熱くなった。
車からのこの流れは本当にえげつないんですけど!ねえ、先生!
2.
「さあ、どうぞ」
ドアのカギを開けると、先生がにこやかに微笑んだ。
「お邪魔します」
少なからず昂揚感を覚えながら、俺は先生の部屋に足を踏み入れた。
部屋は小奇麗な1LDKだった。一緒に住む人が居れば丁度良さそうだなーと思ったけど、悲しくてそれを先生にはとてもじゃないけど言えない。
靴を脱ぎ、中へ入ろうとした瞬間――同じくヒールを脱いだ先生が、俺の手を掴んでいた。
先生にくいと引っ張られて、強制的に方向転換をする。そして、腕を広げた先生の下へ迎え入れられてしまった。
自分の胸板に先生の柔らかい感触が当たる。更に先生の腕が、絡み付く様に俺の背中に回される。
ほーん。死ぬ。心臓が爆ぜるよー。
俺が完全に固まっていると、先生が耳元で囁いた。
「ほう……思ったよりがっしりしているのだな。流石は男の子、と言った所か」
先生はそう言って耳元にふっと息を吹くと、ぱっと腕を離してしまった。
「よし、行こう」
そう言って、先生は俺の背中をぐいぐいと押して、俺をリビングに連れて行った。
え、なに、先生は数分おきに俺を誘惑しないといけない病気か何かなの?おかげで俺の心臓の律動はずっと不規則なんですけど。
3.
リビングをぱっと見た時の感想。
①きちんと整理されている。
②女性らしい可愛げのあるインテリアやぬいぐるみなどはさっぱり無い。
③好きなアニメのDVDセットや、マンガや本が本棚に綺麗に整理されて置かれている。
わぁ……イメージ通りだぁ……。
「ど、どうだろうか……?」
先生は少しもじもじとしながら、俺の一歩後ろから聞いて来た。
そのあどけない姿は、さっきの先生とは似ても似つかない様に思える。
「ああ、や、すごい綺麗に片付いてますし……趣味の感じは何かもう、THE☆先生!って感じで分かりやすいなって思いました。良い部屋ですね」
「そ、そうか。ありがとう……」
や、そんなもじもじとされると俺も恥ずかしくなって来るんですけども。
「君になら、私の趣味も恥じる事なく晒す事が出来ると思ってな」
先生は照れながらも、嬉しそうに笑った。
ちょっと待って、抱きしめたいんですけど。
しかし、今気付いた事がある。
今は真冬。しかもついさっきまで外に居た。
なのに、この部屋は、と言うより玄関までも含めて妙に暖かい。
「なんでこんなに暖かいんですか?」
後ろを振り向いて聞いてみた。まだもじもじしてる……。
あれ、さっきより暑くなって来た。暖かいのって俺の身体と気持ちの問題じゃないよね?
「え?あ、ああ、その……その方が、色々と都合が良いと思ってな。外出前に温度設定を高めに設定して暖房を点けておいたんだ」
……都合が良いってなぁに?あと、俺を連れてくるの前提だったの?
なんかすーごい用意周到な感じがするんだけど……。
「は、はぁ……」
生返事をして、バッグを置かせてもらった。
「さて、まだ昼過ぎな訳だが……」
「そうですね、……って、ええっ!?」
用意されて座っていたクッションから、全力で転げて後ずさりした。
少し着替えると言って戻って来た先生の服装は、薄紫のブラトップにショートパンツと言う服装。しかも、胸の先端を見た感じどうも下着を着けていない。しかもホットパンツはボタンを締めずゆるゆると前を開けていて、ずり落ちることが無いだけと言う無防備な格好だ。
俺が後ずさりした様子を見て、先生がくすりと笑う。
「んん?比企谷、一体どうしたんだ?」
「や、だって、そんな無防備な格好……」
多分、今俺の顔真っ赤になってる。そして超速で目が泳いでる。
先生の豊満な胸や形の良い尻のラインが、先程までとは比べ物にならないくらいにはっきりと見てとれる。何かもう下手すれば全裸よりエロい。
一度意識したらもはや直視なんて出来ません!遊ばれてる!小町ー!俺、今、先生に遊ばれてるよ!
全力で目を背けていると、先生は身を屈めて俺の頬に手を添え、無理やり自分の方を向かせた。ぐきって言った。首超痛いんですけど……。
「比企谷、もう一回聞くぞ?一体、どうしたんだ?」
胸、胸、谷間。やばい。その微笑み方なんなの、超可愛いんですけど。
「ひゃ、ひゃい、しょうですね……」
限界まで噛んだ。死にたい……。
俺のひどい慌て様を見て、先生はにこっと笑う。そして、手をゆるりと離した。
「君は本当に可愛い反応をしてくれるな、ふふ。……まずは、これを見ないか?」先生は「ジャーン!」とでも言いそうなくらいの勢いで、DVDのケースを見せて来た。
……先生がよく口走っているアニメの一つじゃん。こんな状況で何を見せられるのかと思ったから、すげぇ焦ったんだけど……損した。
しかし、これなら変などきどきも抑えられそうだ。
「はぁ、まぁ、良いですけど……」
乗り気には聞こえないであろうテンションで、頭をがしがしと掻きながら答えた。
続く。
車も良いけど、エレベーターの中ってのも良いなぁ……と思って書いてみました。
倍くらいの量を書いて半分くらいで割ったので、後半部分は明日載せようと思います。
一つ一つのエピソードが思ったよりも長くなって、いまいち終わらないと言う。
一応毎日更新はきちんと続けるので、どうかお見守りくださいませ(^^)
(余談)
小町のエピソードを書く参考になればと思い、『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』のアニメを金~日曜に一気に見てみました。
感想:黒猫とあやせと地味子さんが可愛くてかわいそう。
ぬおお……小町エピソードの参考にはならず……。記憶を適宜反芻して、もう少し探ってみますが。
ここで書く内容かなと思ったんですが、思わず書いてしまいました。ラノベは俺ガイル以外はまだほとんどきちんと読んだ事が無いので、順次有名どころから押さえて行って勉強しつつ楽しもうと思います。
閲覧数が徐々に徐々に伸びております。継続は大事ですね。一時期いろはすリクエストが半端なかったのですが、皆さんは既出かどうかは問わないのでしたら、誰のエピソードを読みたいと思われるでしょうか?基本のテイストは今の感じです。相手によって八幡のS具合が変わりますが。もしよろしければご意見をお聞かせ下さい(^^)
たくさんの方にご感想を頂いております。常連の方も、通りすがりの方も、本当に元気を頂いております。ありがとうございます!!
この小説が、皆さんのささやかな楽しみや元気の元になっていれば幸いです。
今日から1週間、また頑張りましょー(^^)!
それでは、今回もお読み頂きありがとうございました(^^)!!