昼休みが終わる直前に、駆け込むように教室に戻る。席が後ろの綾乃は、私が戻るなり心配して声をかけてきた。
「留美ちゃん、大丈夫?」
「うん、もう大丈夫。心配かけてごめん」
「良かった。いいよいいよ……あれ?」
なるべくいつも通りの調子で返事をして安心したのも束の間、綾乃が私に顔を近付けてすんすんと鼻を鳴らした。
「あ、綾乃? どうしたの?」
「ん、なんかね……何だろう、留美ちゃん、エッチな匂いがする……?」
「っ!? そ、そんなこと……っ」
予想もしなかった指摘に慌てていると、チャイムが鳴って先生が入ってきた。窓際の席の私は、慌てたように窓を開ける。少しでも匂いが紛れるように。
……思った以上に大変みたいだ、このやり方は。
× × ×
放課後。
いつものように留美と落ち合い、帰宅して今日の報告を聞く。大変だったか、今後も続けるのが可能かどうかをきちんと確認しなければいけないからだ。
そして、今日の留美の状況を一通り聞いた結果。
「……………………………………………………………………………………」
「……は、八幡……?」
俺は、鼻を押さえて悶絶していた。
シンプルに、鼻血が出そうだった。
「……留美」
「……なに?」
「……エロすぎ」
「……っ」
普段表情をあまり表に出さない留美の顔が真っ赤に染まった。
俯く留美に、ぐっと親指を立てる。
「だが、それが良い」
「変態」
「留美が言うか」
「うぅ……」
俯いた。
可愛い。
今日の自分を思い出したのか、膝の上の手をぎゅっと握り締めて耳まで赤くして震える留美の頭を、苦笑しながらずっと撫でていた。
× × ×
それから1ヶ月。
今も留美の特訓は続いている。
留美からの報告しか状況を知る術は無いのだけれど、留美が私情を挟まずになるべく客観的に伝えてくれて尚、彼女の頑張りの大きさは凄いと思えた。
初めは昼休みに試しに挿入するだけだったのが、徐々に授業中に挿入し、授業中にスイッチを入れるようになり、挿入して出席する授業数を増やして……今では、朝に俺の目の前で挿入してから、帰ってきて俺の目の前で外すまで、ずっと挿れっぱなしに出来るようにまでなっていた。
留美の膣を解すという目的ではあったが、副次的な効果――ある程度予想はしていた効果もあった。それも、かなり嬉しい効果が。
端的に言うと、留美の表情がとろとろに蕩けるようになった。
学校ではよほど気丈に振る舞っているのか、放課後俺が先に留美を見つけると、大人びていて涼やかな表情を保っているのに、俺を見付けた瞬間、ほんの一瞬だけだが……頬を緩め、口を微かに開けて瞳を潤ませ、顔がほんのりと上気する。その表情を見ただけでがちがちに勃起してしまう。
家に帰って互いに口で舐め合うと、留美が日に日に肉棒を貪るようになっていて、俺が舐めた時の感度も上がっている。周りの誰よりも大人びている少女が、裸で触れ合う時は幼い淫魔のような艶姿を見せる。そのギャップがたまらなく愛おしかった。
「……んぅぅぅ……っ。……行ってきます」
「おう、行ってらっしゃい」
留美が俺の目の前でスカートを捲ってショーツをずらし、ローターを挿入して、リモコンをニーソックスに挟んで学校に出かける。そんな留美を見て、ふと思う。
……5つ年上の俺から見てもあれだけ色っぽいんだから。
……同じ中学生男子が見たら、やばくないか?
……まあ、留美は俺と会ってる時以外は極力表情に出さないようにしてるって言ってたし、中学生男子なんて高校生男子に輪をかけて鈍感な生き物だ。留美の変化に気付きはしないだろう。
――これだけの人数の護衛が居るんだから、モンスターが襲ってくることは無いだろう。
……みたいなフラグにしか思えないが、気にしない。
× × ×
同じクラスの鶴見留美さんが、何だかエロい。
それは、僕のクラスの男子・女子共に皆が思っていることだと思う。
「それじゃあ、次のページの音読を……鶴見」
「はい」
窓際の後ろから2番目の席の彼女が立ち上がると、誰も声に出さず、静かに注目する。
涼し気な声だな、と、初めて聞いた時に思ったことはあったけれど、それでも普段無表情な彼女には僕を含めて男女共にあまり近寄らなかった。それよりも後ろの綾乃さんの方がよっぽど話しやすいという印象を持たれていた。たまに一人で妄想劇を始めるちょっと……と言うかかなり変な一面もあるけど。
「彼は私を見てこう言った。『君はどうしてこんな所にいる? その美貌も、知性も、まるで今いるこの空間に噛み合っていない』私は彼の問いにこう答えた――」
彼女は淡々と言葉を紡ぐ。何ら目立つことの無いこの行為を、ある男子は寝たフリをしながらちらちらと、ある女子は思い切り振り返って堂々と、じっと見つめている。
もうすぐ指定されたページが読み終わる。今日はまだ見れていない、あの仕草がそろそろ――と思った時。
「……んんっ」
――彼女が、音読を中断して……涼やかな表情を崩して顔を赤らめて、何とも色っぽい声を漏らした。音自体はすごく小さいのに、教室全体にじんわりと染み渡るような声。
「つ、鶴見、どうした?」
30を超えた良い大人のはずの先生の声が、ちょっと震えている。
「……すみません、何でもないです。続けます」
「あ、ああ、分かった」
涼やかな表情に戻った彼女が、再び音読を始める。
教卓の横に立っていた先生がわざわざ教卓の後ろに立って、こちらから下半身が見えないようにした理由は手に取るように分かる。
何故なら、周りのクラスメイトも皆同じような反応をしているからだ。
女子は顔を真っ赤にして鶴見さんをぼーっと見ている人、口をぱくぱくさせている人、好きな男子でもいるのか、鶴見さんに見惚れた男子と鶴見さんの間を忌々し気に視線を往復させている人、と様々な反応をしていて。
男子は男子で、顔を真っ赤にして不自然なくらい前屈みになったり、自分の身体に起きた変化に「っ!? っ!?」と混乱していたり、ぼーっと鶴見さんに見惚れている人なんかもいる。
――いつからかは覚えていないけれど、ほんの、つい最近からだと思う。
授業中や休み時間、たまに鶴見さんが一瞬だけ、こういった色っぽい仕草を見せるようになっていた。そうすると、その仕草を目の当たりにした人は皆、今のような様々な反応を示している。初めはクラスの一部だけが目撃していたけれど、あちこちで彼女が見せるその仕草に、このクラスは皆やられてしまった。僕は綺麗な上に家で平気で下着姿のままうろつく姉が2人居るのでまだ免疫があるが、中学生、ましてや数ヶ月前まで小学生だった彼らには、鶴見さんの仕草はあまりにも強烈だった。
高校生や大学生だったらまた違うのかもしれないけど……まだ皆、性の話をするのにどこか躊躇があるようで。鶴見さんが居ない時に教室内の会話に耳を傾けても、彼女のことはほとんど話題に上がらない。触れられたとしても彼女の成績の良さについてだったり、踏み込んでも精々「鶴見さんって可愛いよねー」という女子の会話くらいだ。鶴見さんのことは、皆が口に出さない共通の秘密になっていた。唯一、鶴見さんの後ろの席の綾乃さんは彼女と仲が良いらしく、彼女が色っぽい仕草をする度に肩を揺さぶって「留美ちゃん、絶対何かしてるよね!? ね!?」と必死で聞いている。僕も聞きたい、それ。ちなみに鶴見さんは揺さぶられている間、「あ、綾乃、だめ、今揺らしちゃ……うんん……っ」と更に色っぽくなっている。教室の何割かは会話をしながらも彼女たちのやりとりをガン見している。3人くらいの男子グループなんかは会話を中断して全員でガン見している。
一体何が、彼女をここまで変えたのか。
入学当初からも大人びていてとても綺麗で、喋らなくても目立つ彼女ではあったけれど。
ここ数ヶ月で、見違えるように可愛くなった。
その理由は知らないし、これからもきっと知る機会は無いのだろうけれど……。
「じゃあ、次からの3ページを……ええっと、田中を飛ばして、鶴見」
「先生、何で僕を飛ばした上に鶴見さんが読む範囲がそんなに長いんでしょうか……?」
「い、いいから、何となくだ、何となく。ほら、鶴見、読んで」
「……? はい……」
先生が明らかに変態くさいことをしている――その内注意しよう――のを心配しながら。
今日も、綺麗で、頭が良くて、時々エッチな鶴見さんを。
クラスメイトの皆が、見守っている。
続く。
ルミルミでした。変化球を入れてみました。男子クラスメイト視点は以前から書きたかったのです。
個人的なお気に入りは男性教諭(30代)の最後のくだりです。
それでは、今回もお読み頂きありがとうございました(^^)!!