そんな訳で、ゴールデンウィーク前夜から先輩の家にお泊まりすることになった。
言い出したのはわたしだけど、わたしが言わなかったらほぼ確実に先輩から誘ってくれたと思う。
その自信はある。
すごくある。
ふふん。
今日。
先輩と放課後にキスした後(すごい言い方だ。でも事実だししょうがない)。
生徒会の仕事がその日は無かったので、先輩が奉仕部に行っている間にお泊まりの準備をする旨を伝えた。
といっても、既に準備は万全だったんだけど。
念の為荷物の最終チェックをして、それでも時間が余ったから街中をぷらぷらする。
先輩と出かけた時、どこに行ったら先輩が楽しめるかなーなんて考えながら、にやけるのを必死で抑えながら、ぽてぽてと歩く。
といっても、先輩が特定の場所に興味を示すことはほとんど無くて(こういうと動物みたいだ。おサルさんであるのには変わらないけど)、
「それならどういう所が良いんですかー」
とぷりぷり怒ると(これ、先輩に結構好評だったりする。ソースは先輩のリアクション)、
「や、お前が楽しいなら……ていうかどこでも正直、お前がいるな……何でもない」
なんて言われちゃったから何かもうどうしようもなくて先輩大好きですよもうまったく。
そろそろ程良い時間になってきたので、先輩の家に向かう。
歩きながら、自分の唇に人差し指を押し当てる。
ぷにぷに。
うん、ぷるぷるだ。
ぷにぷに。
「…………」
先輩とついさっきしたキスを思い出して、あの情熱的な口付けを思い出しただけで膝から崩れ落ちそうになる。
先輩との相性は、あらゆる意味でどんどん良くなってる。
例えば、手。
初めて手を繋いだ時は、それはもうどきどきした。
今も手を繋ぐとどきどきする。
けれど、そのどきどきは初々しさとはかけ離れているもので。
それでいて、とても心地良いもの。
先輩とデートしている時に手を繋ぐと、先輩はとても優しく握ってくれる。
それでいて、人混みなんかでは力強く握ってくれて、絶対離れないようにしてくれる。
たまにその状態で間を人が通ろうとして、二人の腕がぴーんと張っちゃうこともあるけど、それはご愛嬌。
キスする時。
わたしを壁やベッドに押し付けて手を繋いだ時は、わたしを逃がさないという合図。
わたしの指と指の間にするりと忍び込んでくる先輩の指は、わたしに屈服を強制してくる。
それが、たまらなく、気持ち良い。
キスしている時にそれをやられると、もう頭の中が真っ白になる。
先輩と繋がっている時。
この時に繋ぐ手は本当に、洒落にならない。
先輩はキスの時よりも更にぎちぎちと握りしめて、わたしが痛みで顔を歪めそうになる寸前の強さで拘束してくる。
キスの時が屈服の強制なら、繋がっている時は絶対服従の強制だ。
もう何度もイっちゃって、息も絶え絶えになっている所で、先輩が一際強く手を握り、腰をめいっぱい打ち付けて、わたしの中に愛情を注ぎ込む。
その瞬間、子宮の入り口が降りてきて先輩の先っぽとキスをするのが分かってしまう。
それが、たまらなく幸せだ。
……何で例その一だけでこんなになるんだ、わたし。
もっと喋りたい。
ちなみに、学校生活の話をしてみると。
先輩との仲を隠さないでいたら、クラスメイトに盛大にイジられるようになった。
何でも以前まではあざとさとか腹黒さとかが見え隠れしてて、周りの(特に)女子は警戒してる部分が大きかったらしい。失礼な話だなぁもう。
けれど、先輩とこういう仲になってからは、周りの男女共に「何この可愛い生き物」という認識になったらしい。更に失礼な話になってた。びっくりだ。
先輩は依然として謎が多い人物と見なされているようで、二人でどんな風に過ごしているのかと興味を持たれた。
話したいけど、話し出したら絶対止まらない。
そう思って最初ははぐらかしていたんだけど、やがて周りの空気に耐え兼ねて、つい漏らしてしまった。
最初に話したのは休日の女子会で、行きつけのカフェに行って仲良し女子グループで話していた時だったんだけど……何かみんなして、「砂糖を吐いた」「どうしてくれる、砂糖を吐いたぞ」「甘……砂糖……砂糖……」なんてことを言い始めた。阿鼻叫喚ってこういう状態を言うのかもしれない。
ちなみにその店はコーヒーがおかわり自由なんだけど、その日に限ってとんでもない勢いでおかわりされ続けた。
しかもみんなブラックで飲んじゃうから、途中で店員さんが心配して、「お客さん、飲み過ぎですよ」なんていう風に言ってくれた。
それに対して友達が「飲まなきゃやってらんないんですよぉ!」と答えるっていう。
地獄絵図みたいだった。
絶対カフェでする会話じゃないよねあれ。
そんなこんなで、先輩との恋仲になったことで(遠回しに言ってた意味が無い)、わたしの立ち位置が結果としてより安定した。
別に不安定になっても全然構わないくらいだったんだけど、先輩が喜んでくれたから良しとする。
「……ふぅ」
先輩の家が近付いてきた。
お泊まりする気満々で準備はしてきたけど、実のところ荷物はそんなに多くない。少し大きめのバッグで事足りる。
というのも、先輩の部屋にちゃっかり私物を増やしているからだ。
最近のマイブームとしては、
「せんぱーい、わたしのあの服、先輩の部屋に置いてますよね?」
「ばっ、おまっ、こらっ、そういうことを公衆の面前で言うな……っ!」
というやりとり。
ちなみに先輩にしか聞こえない声で言ってるんだけど、それでも先輩は毎回大いに慌てる。
可愛いなぁもう。
それでも調子に乗りすぎると結構きつめのお仕置きをされちゃうんだけど。
あれが癖になったらいよいよわたしも変態の仲間入り(=先輩の仲間入り)しちゃう可能性がある。
先輩の仲間入りと狐の嫁入りって何か似て……ないな、うん。
先輩の家にはもう数えきれないくらい泊まってるんだけど、先輩のご両親は忙しくて夜遅く帰ってこられたり、あるいは帰ってこなかったり、という日にしか行ったことがなかった。
まあ先輩が意図的に鉢合わせを避けていたんだろうなぁ。
恥ずかしかったんだと思う。
けれど少し前、たまたま早く帰れたというお母さまとばったり出くわして(先輩も把握してなかったらしい)、初めてお話した。
以下、その時の会話。
わたしがリビングでお茶を淹れようと先輩の部屋を出た際、偶然出くわした時。
「ただいまー……って、あら? あらあら?」
お母さまは仕事帰りで疲れた顔をしていたのに、わたしを見てきょとんとすると、途端に目を輝かせてわたしに近付いてきた。
背筋を伸ばして、腰の前で手を重ねる。
「あ、こ、こんばんは……っ。は、初めまして、わ、わたし、一色いろはと申します。せ、せせ、先輩、あ、比企谷先輩、あ、え、ええっと、八幡先輩と、そ、その……っ」
「あはは、もっと気楽に話してくれて良いのよ~」
未知との遭遇(失礼)でがちがちに緊張しているわたしを見て、お母さまがにっこりと笑う。
小町ちゃんはお母さま似なんだなと、場違いながらそう思った。
「へー? ふーん? ほーん?」
お母さまはにこにこと微笑みながら、わたしをじっくり見つめる。
ちょっと戸惑ったけど、その視線はわたしに対する好意で満ち満ちていて、不思議と心地良かった。
ていうか唸り方が兄妹とそっくりだ。
この場合先輩と小町ちゃんがお母さまに似てる訳だけど。
「あなたのこと、小町から聞いてるわよ、いろはさん」
「え、そ、そうなんですか?」
驚……きはしたけれど、小町ちゃんなら確かにやりかねないと思った。先輩は絶対言わなそうだし。
しかし、前情報があるというのなら、完全な初対面よりも幾分楽だ。
「何でも、八幡とお互いとぞっこんなんですってね」
「…………」
前言撤回。
死ぬほど恥ずかしい。
「あ、えぇっと、その……」
顔が熱いなと思いながら言葉に詰まっていると、先輩がとててと駆け付けてきた。
「いろは、どうした? さっきから話し声が……って、うおっ」
先輩が素っ頓狂な声を上げる。可愛い。
先輩はお母さまとわたしを交互に見て、目を泳がせた。
お母さまはにやーっと口の端を吊り上げて、ちょっと邪悪な笑みを浮かべた。邪悪って言っちゃった。
「八幡……まさか、あんたがこんなに可愛くて良い子を捕まえるなんてねぇ」
「い、いいだろ別に……」
「ほんと良くやった! いろはさん、小町から聞いてる通り、いや、聞いてた以上に可愛くてもーお母さん嬉しいわ! 仕事の疲れも吹っ飛んじゃった。今日は久しぶりに夕飯を作ろうかな」
そう言って、お母さまが太陽みたいに笑う。
本当に嬉しいんだと分かって、それが照れくさくて、わたしも先輩も俯いてしまう。
あ、でも。
「あ、あの、お疲れですよね? それでしたら、良ければわたしが作りますけど……」
言うと、お母さまがぴたりと止まった。
いけない、何か変なこと言っちゃったかな……と思っていると、どうやらそれは杞憂だということが分かった。
「い、いろはさん……あなた、どれだけ良い子なの……っ! よし、それじゃあ一緒に作ろう!」
「え、ええ!?」
「いいからいいから。色々お話聞きたいし、ね?」
言って、お母さまがぱちっとウインクをする。あ、すごく可愛い。
「は、はい……それなら、お言葉に甘えて……」
言葉のチョイスがおかしい気もしたけど、取り敢えず頷く。
「……ま、まあ、頑張ってくれ」
置いてきぼりをくらった先輩が、頭をがしがし掻きながら見送ってくれる。
お母さまは一旦着替えると言って部屋に戻ろうとしたけど、くるりと踵を返してわたしの両肩に手を置いた。
突然のことにびっくりするわたしの身体を先輩のいる方に向けて、わたしの肩にあごを乗せる。
先輩にもわたしにも話しかける体勢になって、にひっと笑った。
「そうだねぇ……よし、いろはさん。わたしのこと、『お義母さん』って呼んでいいからね」
『っ!?』
「あ、『お義母さま』も良いわねぇ。いろはさん、どっちが良い?」
「あ……お、お義母さま、で……」
「おいぃ!? いろはっ!?」
先輩が慌てて、珍しくハイテンションでツッコむ。
けれどわたしはそれをイジる余裕も全くない。
うぅぅ……反射で答えちゃった……。
「なんだい八幡。あんたそういう気は無いのかい」
お母さま改めお義母さまが、からかうように言ってくる。
その声音には真剣さも混じっていて、どきりとする。
先輩、どう答えてくれるんだろう……?
「……そんなの、あるに決まってんだろ……」
「お?」
「わわ……っ」
わたしとお義母様が感嘆の声を上げる中、先輩は部屋にダッシュで戻ってしまった。
多分この後ベッドで悶え転がるんだろうなぁ。
ちなみにこの後、わたしとお義母さまの話がすごく弾んだのは言うまでもない。
以上、お義母さまとの会話の回想でした。
この日の夜。
先輩は、今日はそういう気になれないと、まるで倦怠期の夫婦みたいなことを言ったんだけど(よっぽど恥ずかしかったんだろう)。
抱きしめ合って寝ていたら、結局先輩から仕掛けてきた。相も変わらずおサルさんだ。
声は出さない方が良いということで、声を押し殺しながらの行為はすごく燃えた。
わたしが手で口を押さえようとすると、先輩はわたしの手首を掴んで騎乗位を楽しんでいた。
ほんと鬼畜だ、先輩。
すごく気持ち良かったけど。
口を手で押さえて良いぞと言ってくれたから塞ぐと、今度はうつ伏せで布団をかぶせて、もの凄い勢いで突かれた。
まるで襲われてるみたいな気持ちになって、貫かれても引き抜かれても、身体に電流が走ったかと思うくらい痙攣して感じてしまった。
獣みたいな声で泣くように鳴いて、先輩をきゅうきゅうと締め付けると、先輩が熱いのを沢山出してくれた。
それと同時に激しく達してしまって、お漏らしまでしてしまった。
翌朝、お義母さまと小町さん(どうやら話を共有したらしい)と先輩とで食卓を囲ったんだけど、なんかもう向かいの二人があまりにも幸せそうににやにやするもんだから、わたしと先輩は終始顔を赤くしていた。
なんだか、先輩の空間にどんどん馴染んでいくのが嬉しい。
先輩と話して。
先輩と笑って。
先輩と繋がって。
もっともっと、先輩を知りたい。
そんな風に思った所で、先輩の家に着いた。
続く。
あと2話くらいの予定だったんですが、やや久しぶりのいろは視点や、試しに書いてみた八幡母との絡みが思いの外楽しくて、割と伸びました。
☆☆☆☆☆祝・お気に入り5000件達成☆☆☆☆☆
どれだけありがたいことでしょう。本当に、本当にありがとうございます。
週間UAも、今では一般作品も含めてハーメルンでは5番目くらいになっています。
R-18作品が1000件強、一般作品が32000件程なので、この現状はありがたいに尽きます。
毎日、書きながら「あ、ここは上手く行った」「あー、ここもっと上手く書きたいんだけどなぁ」という思考を繰り返しています。精進します。
これからも、何卒宜しくお願い致します(^^)!
それでは、また明日ここでお会いしましょう(^^)!
今回もお読み頂きありがとうございました(^^)!!