いろはを連れて部屋の中に入る。気付けば、いろはの手をいつもより強く握っていた。いろはもそれを感じ取っているようで、頬を朱に染めている。小町と三人で交わす会話も本当に楽しいんだけど、やっぱり今日はどこか気持ちが急いている節があった。放課後にあれだけのことをしたのだから、尚更に。
「……」
部屋に入って、取り敢えず座ろうかと思ったら……いろはが何やらドアをじっと見ている。何をしているのかと思ったのだけど、数秒程でこの子の意図が読めた。
手を伸ばして、ドアの鍵をかちゃりと閉める。いろはが小さく喉を鳴らすのが聞こえた。
ドアを背にした状態で、いろはが俺をじっと見つめる。亜麻色のセミロングの髪がふわりと揺れて、甘い香りが鼻腔を擽る。普段こういう仕草をする時は、俺をからかおうと、魅了しようとしているのだと知っている。しかし今みたいな状況下では、少し意味合いが変わってくる。
……そのしっとりと濡れた目が、俺を誘っている。
そんな、単純で、複雑な意味。
「ひゃん……っ」
いろはの両耳の横を通り過ぎて、ドアに手を置く。いろはは胸の前で手を握り締めて、心細げに震えている。歯磨き粉の名残が微かに香って、いろはの唇がすぐ目の前にあることを認識させてくれる。
「いろは……今日は、どうしたい?」
「……え……?」
俺の質問に、いろはが湿った声で返す。
「今日からしばらくはその、な? 一緒に過ごせるから……なんかこう、色々試してみたいって気持ちはあってだな……」
予め考えていたことではあったのだけど。話すのも恥ずかしい内容だったので、妙にしどろもどろな調子になってしまう。いろはは俺の話を聞いて、くすりと笑った。そして艶っぽく目を細める。
「そうですね、わたしは――」
× × ×
――いろは……今日は、どうしたい? ――
先輩の言葉の意図が、最初は分からなかった。普段から先輩はわたしとする時に、マメにこんな感じで良いかどうかと尋ねてくれるし、そのタイミングも適度だから上手い具合に望みを叶えてくれてる。それが本当に嬉しいし、先輩優しいなって思うんだけど。
……。
……わたし、先輩のこと好きすぎでしょ……。
先輩がせっかく壁ドンをしてるのに頬をぽりぽりと掻き始めた時、締まらないな~と思いつつも「あ、これは照れてるな」という事が分かった。きっと先輩はわたしがにやけちゃうようなことを言ってくれるというサインだからだ。
――今日からしばらくはその、な? ――
案の定、先輩が紡いだ言葉はこっちがむずむずするくらい照れくさい言葉だった。先輩顔赤いよ、可愛いなぁもう。
でも、そっか、今まで試してないことか……。
試してないことは沢山あるけど、普段は本当に満足してるからなぁ。不満と言えば翌日も学校って日にたくさんしちゃって、遅刻しそうになるくらいなんだけど。間に合っても不自然な動きをしちゃってたら女友達に目ざとく見つけられて、「あのヘドバンの人と朝までしてたの?」とか死ぬほど恥ずかしい質問をされちゃうから大変なんだよね。
うーん、どうしよう。
せっかくだから、普段まずやらないことを提案してみたいんだけどな。
うーん……。
…………。
……あ。
思いついた。
でもこれ……大丈夫かな?
何が大丈夫か心配してるかというと、わたしの頭なんだけど。
いけない、先輩としすぎてこんな発想が浮かぶようになっちゃった。
でもなぁ……すごくどきどきしそうだなぁ……。
……ま、いっか、うん。
言っちゃおう。
「先輩、思いついたことがあるんですけど……良いですか?」
「ああ、何でもござれだ」
先輩が器大きめの表情で頷く(前に「無駄に偉そうですね」って言ったらすごい凹まれたから、その後はツッコまないようにしてる。ひどくなってきたらまた言おう)。
……いいのかなぁ。
「ふふ、あのですね――」
先輩、絶対後悔すると思うんだけどなぁ。
……恥ずかしさで。
× × ×
「……いろは」
「……なんですか?」
「……お前、ばかだろ」
「先輩ほどではないです」
「だからって、こんな……」
「そんなこと言いながら、せんぱいのここ……すごいことになってますよ?」
「これはその……うん、お前がエロ可愛いのが悪い、うん」
「あぅ……」
俺の前に立っているいろはが、両頬に手を当てて恥ずかしそうに頬を赤らめた。
いろはの提案は、俺の予想の斜め上を行くものだった。
『世間にはどんなプレイがあるのか、調べてから決めたいんです』
『ああ、確かにそれは良いな。今調べるのか?』
『はい』
『そうか、じゃあ俺はお茶でも淹れてくるか』
『何でですかおサルさん』
『俺はまだおサルさんじゃない』
『まだ、なんですね……』
『こほんこほん、このくだりはいいとして。え、なに、いろはが一人で調べるんじゃないのか?』
『それじゃその間先輩は欲求不満をこじらせたおサルさんになっちゃうじゃないですか』
『まだ言うか』
『ずっと言い続けます』
『道は険しいな……』
『だから、その……一緒に調べたいんです』
『ふむ。じゃあテーブルにパソコン置くか』
『あ、その……勉強机で見たいんです』
『? 椅子は一つしかねえから、俺が立つことになるんだけど』
『そうやって自然とわたしを座らせるように考えちゃう先輩がすごく好きです』
『俺今ストレートの剛速球を心臓に食らって死にそうなんだけど』
『やーいやーい先輩の初心(うぶ)ザルさーん』
海猿みたい。
『押し倒すぞ』
『望むところです』
『望まれた……』
『脱線しすぎですよ先輩、ほんとダメだなぁ』
『ぷりぷり怒んなよ。可愛いだろうが』
『あぅ……』
『お前も直球に弱いな……』
『そんなことより。その、椅子は一つで良いんです。あと、どっちも座ります』
『え、なに、俺がいろはの上に乗るのか』
『強めのビンタしますよ』
『ごめんなさい』
『えぇっとですね……やり方なんですけど……耳貸してくれますか』
『なんで二人きりなのに……あいよ』
『ごにょごにょごにょ……』
『……いろは』
『……なんですか?』
『……お前、ばかだろ』
そんなやりとりを交わしていた。
今俺は、勉強机にノートPCを置いて椅子に座っている。
……肉棒を曝け出した状態で。
そしていろはは今、下着だけを脱いだ状態で俺の前に佇んでいる。
電気は薄明かりにしていて、目の前のパソコンが煌々と光を放って俺たちを照らしている。
いろはがしようとしているのは、「様々なプレイを二人で検索しながら交わる」というものだった。プレイを探す時点で既にかなり過激だと思うんですけどどうなんでしょうか。
「あうぅ……」
下着を着ない為にすーすーするのが気になるのか、いろはが頬を赤らめながらもじもじと内股をこすり合わせる様が何とも可愛らしい。ちなみにいろはのこの仕草を見て、俺はものの数秒でがちがちになってしまった。
「そ、そそそ、それじゃあ先輩、調べましょうか」
「お、おう」
二人とも妙に上ずった声で喋る。裏返りそう。
俺が足を閉じ気味にすると、いろははおずおずと俺の前に来て背を向けて、ゆっくりと足を広げた。動きの一つ一つに底知れぬ期待感が高まる。
「……いろは」
「……なんですか?」
「スカート、捲っていいか?」
「変態だー!」
「今さらだろ!?」
今さらだろうが何だろうが。
完全に変態の台詞だった。
流石にだめかーと悲しみに暮れていると、いろはがちらりとこちらを見やった。
「……でも、その……捲らないと、……入れづらいですよね?」
「……あ、ああ、そうだな」
「……捲りたいですか? 捲るの見たいですか?」
「贅沢すぎる悩みだから、今回選ばなかった方を後日やらせて頂きたい」
「……おサルさんだやっぱり」
「……否定できねぇわ」
盛ってます、盛ってます。
「それで……どっちが良いですか?」
「……捲って、見せてほしい」
「……っ」
いろはが小さく喉を鳴らした。机に手を付いて前屈みになり、俺に尻を突き出すようにすると、震える手をスカートの裾に添えた。
「……は、い……っ、どうぞ……っ」
掠れた声でいろはが囁くと、ミニスカートをゆっくりと捲り始める。
「……う……お……っ」
感嘆の声が漏れ出た。
徐々にその姿を見せる双丘が、とても新鮮に見える。見慣れて、けれどそれでも飽くことなく俺を興奮させてくれる桃尻が、今日は特に劣情を煽ってくれる。恥部は影になってあまり見えないが、内股を伝う発情の滴に気付くと、精巣がずくんと疼いた。
「……あぅ、あぅぅぅ……っ」
いろはが今にも泣き出しそうな声を出して、俺に流し目を送る。今すぐ突き入れて無茶苦茶にしたい本能を必死で抑えながら、いろはに呼びかける。
「いろは。そのまま、自分で入れてくれるか?」
「……っ。……せんぱいの、えっち……っ」
いろはが振り返って、泣きそうな顔で笑う。
パソコンの光で影を帯びたその表情は、一目見ただけで陶酔してしまう程淫靡なものだった。
続く。
いろはすでした。視点をかちかち切り替える試みをしてみました。結構楽しいです、これ。
八幡がいろはすにやりたいことを聞くという所までは考えた通りだったんですが、書きながら思い付いたことを書いていって展開ががらりと変わりました。
最初はタイトルのくだりを2~3話で書くつもりだったのに、続く続く。もう少しお楽しみくださいませ(^^)
前話はJDEに対する皆さんの反応の多さにびっくりしましたwまさかのルミルミに対する感想がなくなるというwすごいなぁ……。ルミルミもどうぞよろしくお願いします!w
感想、毎回全て読んでます。最近余裕が無くて返信がまるで出来ていないのが超申し訳ないですが、本当に元気を頂いています。これからもどうぞよろしくお願いします。
それでは、また明日ここでお会いしましょう(^^)!
今回もお読み頂きありがとうございました(^^)!!