いろはの提案に、俺は焦った。
……既に、めっちゃ汗かいてるじゃん、俺。
いろはは俺の身体を舐めたい、それも全部舐めたいと言った。
仮に、俺がいろはに対して同じことをしたいと言ったら、いろはが何と言おうがこの場でひん剥いて舐め回しただろう。女の人の匂いの甘さを知っている以上、シャワーを浴びない方が楽しめると言っても過言ではない。
しかし……俺がされる側となると、色々気にしてしまう。
――そんな訳で。
俺たちは、風呂に入ることにした。
「身体を洗わせてくれるか」
いろはにそう言った時、いろはは眉根を寄せて悲し気な顔をした。
「……先輩の匂い、好きなのに……」
変態としか思えないものの死ぬ程どきどきする言葉に、俺の決意はものすごく鈍ったが……それでも俺は浴室に行くことを頑として譲らなかった。何でかって言ったら恥ずかしいという理由以外は特に無い。
こういう時、一度移動を挟むと一気に興が醒めるのではと心配したのだけども。いろはは俺と浴室に移動するまでの間、ひたすら俺の身体をまさぐっていた。Tシャツやパンツの中に手を入れて滑らかな指で愛撫されると、興が醒めるどころか益々興奮が高まるばかりだった。
「えへへ……先輩とお風呂……」
いろはは移動しながら、頬をてろてろに緩めている。
……しかし、今考えると……風呂だと、落ち着いて寝転がることが出来ないよな。いろは、舐めづらくないだろうか。
……こんな心配、今までの人生で一回もしたことねぇ……。
身体中を舐められる為に身体を洗いに行くという、世にも奇妙な目的の為に浴室に向かった訳だが、いざ浴室に辿り着くと……思考が止まった。
「先輩、これ……何ですか?」
「……ええっと……」
いろはの純粋な質問に、言葉を詰まらせる。
脱衣所に立てかけてあったのは、映像の中でしか見たことのないものだった。
銀色の、高級感は感じない色合い。
波打った表面。
イカダのような形状。
そして、空気の入ったぷにぷにしてそうな質感。
……どこからどう見ても、マットだった。
マットプレイに用いるという、あれだ。
「……ええっと……」
吐血しそうになりながら何と説明したものかと思い悩んでいると、「あれ?」といろはが何かに気付いてマットに近付く。よく見ると、マットには小さなメモ紙が貼ってあった。
「何か書いてま……」
いろはが内容を見てぴたりと止まる。
「どうしたんだいろ……」
俺も内容を見て、ぴたりと止まった。
以下、メモの内容。
『お兄ちゃんといろはさん、きっとさぞかし爛れた生活、や、性活を送っていることでしょう。きっと勢い余ってここに来ちゃうこともあるでしょう。しかし浴室はベッドが無いし滑りやすいしで何かと危険です。そんな時の為に!? このマット! マットでござます☆一般家庭でも使いやすいやや小さめなサイズで、思う存分様々なプレイが楽しめます! それともしかしたら浴室で長時間楽しみたいということもあるかもしれませんので、冷蔵庫にスポーツ飲料2リットル入りを2本用意してます。良かったら利用してください。それでは、レッツ爛れ~!』
「…………」
「……こ、小町ちゃん、すごいですね……」
「……ああ」
もはや何もツッコめなかった。
2人とも無言で、徐にリビングに引き返す。冷蔵庫に向かったのは言うまでもない。俺と二人で居るときはいくらでも気分が盛り上がって何でもやれてしまういろはだが、小町という第三者にあんな風に冷静にメッセージを書かれては、流石に恥ずかしすぎたのだろう。今は頬を赤らめて俯いている。俯きながら俺の股間をまさぐってるけど、なに、それは本能なの?
リビングに付き、冷蔵庫を開ける。スポーツ飲料のペットボトルには、それぞれメモ紙が貼られていた。
『お兄ちゃんへ。いろはさんがとろっとろに甘えた声を出してる時、小町はいつも鼻血を出してます』
『いろはさんへ。いろはさんが気持ち良くなりすぎた時にお兄ちゃんのことを【ひぇんぱい……っ】って舌っ足らずに呼ぶの、死ぬほど可愛いです。いつも鼻血を出してます』
なんかラジオのリスナーからのお手紙みたいだ。
「これ、結局どっちもわたしのこと……っ」
いろはが耳まで真っ赤にして俺の胸におでこをこすりつけた。ううん、小町……遊んでやがるな……いろはで。気持ちは分かるけど。
× × ×
そんなこんなで。
かぽーん。
なんて音がする訳ではないが。
2人とも一糸纏わぬ姿になり、浴室に足を踏み入れていた。
足を滑らせないよう気を付けながらマットを敷いた所で、いろはが何かを思い付いたように目を見開いた。
「……先輩、その……」
「ん、どうした」
尋ねると、いろはが俺の手首をきゅっと握った。目を合わせると、えへへと照れくさそうに笑う。
「……マットの上で……洗いっこしませんか」
「え……っ」
いろはの言葉にびくりとする。
「あ……先輩の、おっきくなった……」
「や、お前、そりゃそうだろ……っ」
あんな魅力的な言葉で、反応しない訳が無かった。
いろはがしな垂れかかってきて、俺をマットの上に座らせる。俺の目の前に座ると、いろはは蠱惑的な笑みを浮かべた。
いろはがシャワーの蛇口をひねり、お湯を俺の手に当てて大丈夫かと目で問う。こくんと頷くと、俺の足先から徐々に心臓に向かってシャワーヘッドを動かしていく。優し気な瞳には母性さえ感じて、この子は良い母親になりそうだな……なんて場違いなことを考えた途端に、妙な興奮を覚えた。
いろは自身も同じようにお湯を浴びると、胡坐をかいた俺の股座に座り、柔らかな双丘を押し当ててきた。瑞々しい柔肌がこちらの肌に吸い付くようにくっついて、お湯の温もりも相俟って二人の身体の境界が曖昧になる。
「んふぅ……っ」
互いの乳首が当たるように身体を上下に動かして、艶めかしい吐息を漏らす。その瞳は完全にスイッチが入っていて、肉付きの良い肢体からはくらくらする程の牝の香りを漂わせている。
「身体……洗いますね?」
そう言って、いろはが楽しそうに笑う。
ボディソープを手の上に出して、白く泡立てる。そして自らの身体の前面に淫らな手つきで泡を塗り立てた。下腹部の恥毛まで綺麗に泡で包み、俺の身体に密着する。先程は上半身だけくっつけていたが、今度は俺の腰に足を絡めて、下半身まで密着した。
「うぁ……っ」
一層濃く感じるいろはの肢体の柔らかさに、たまらぬ愉悦を覚えて官能のため息が漏れる。
「先輩……かわいい……っ」
俺の耳元で囁くいろはの声が、しっとりとした熱を帯びている。いろはが身体を滑らせる度に、にゅっ、ぬりゅっ、といやらしい音が二人の間で悩ましく鳴る。互いの乳首がこすれ合い、ぎちぎちに勃起した肉棒の裏筋にいろはの恥毛がしょりしょりとこすれて、ゆっくりと射精欲が高まってくる。
いろはは足を俺の腰から離すと、俺の尻に手を回した。形状を楽しむかのように手のひらで尻を撫で回し、尻穴の周辺を特に入念に撫で回す。
「あっ、くぁっ、こっ、こら……あんまり、そこは……っ」
慣れない感覚にびくびくと悶えていると、いろはの身体がぶるると震えた。
「んぁ……っ、せんぱい、やんっ、本当に、可愛い……っ」
上ずった声で言ったかと思うと――細い十本の指が、突然俺の肉竿を包み込んだ。驚いて声を上げるのとほぼ同時に、息を荒げたいろはがそそり立った肉茎を強烈にしごき始める。
がちゅっ、ぐちゅぐちゅっ、ぐちゅりっ、じゅくじゅくじゅぐぐ……っ。
「うあぁぁっ!? お、おい、いろは、これは本当に……っ」
ボディソープと先走り汁が混ざったものに包まれた肉棒は、いろはの手のひらの滑りを良くして、おぞましい程の快楽を与えてくる。あっと言う間に限界直前に達して、焦っていろはの手首を掴むと、いろはははっと気付いたように動きを止めた。
「あ……ご、ごめんなさい。先輩があんまり可愛くて、つい……っ」
口では素直に謝りながらも、手の動きを止めない。
「……こら」
「んむっ?」
叱るような口調で言いながら、いろはの唇を奪う。そして更にシャワーヘッドを掴んで蛇口をひねり、2人の身体の泡を隅々まで洗い流した。口付けを交わす間、いろははシャワーを浴びている場所から逃げるように身体をよじらせていて、それが何とも色っぽかった。
「……ぷはっ。落ち着け、な?」
「……あぅぅ……ごめんなさい」
唇を離して優しく諭すと、ようやく正気(?)に戻ったいろはが、叱られた子犬のような表情を浮かべた。
いろはは胸の前で両手をぐっと握りしめ、ふんすっと息を吐いた。
「身体も洗えましたし、先輩の身体……落ち着いて舐めますね!」
「…………」
顔を逸らしていろはの頭をくしゃくしゃと撫でると、「むぅ……」と拗ねた声が聞こえた。何て答えるのが正解なんだよ、今の……。「この服とこの服、どっちが似合う?」と同じくらいの難問だぞ。
……うーん、誰がこの子をこんな変態に仕立て上げてしまったんだろう。
……俺だった。
続く。
いろはすでした。シャワーシーンを追加してみたら再び小町の助け舟(?)が。
体調が思わしくないので、明日はお休みします。楽しみにされてる方は申し訳ありません。
今回もお読み頂きありがとうございました(^^)!!