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1.
ある冬の日。
冬真っ盛りで外に出る気が全くしない。その為休日は全力で引き籠もりライフを謳歌している。超楽しいよ、引き籠もり。まあ、季節関係無く何かしら理由を付けて引き篭もるんだけど。
そんな真冬の休日に、雪ノ下が家に遊びに来る事になった。何処かに遊びに行った方が良いのかと最初はお互いがぐるぐると考えていたが、無理に出かけなくても多分それで十分だろうと言う結論に達して、俺から誘ってみた。なんで誘うだけでこんなに照れるものなのん?頭をがしがし掻く率が半端なくて、雪ノ下に誤解を受けてめっちゃ間合いを取られたんだけど。瞬歩でも使って距離を縮めないと、会話もろくに出来ないくらいの距離。何なの俺、比企谷菌なの?
彼女が家に来るのは土曜の午前10時。特に何かする訳ではない。お昼と晩御飯を一緒に食べて、後はひたすら、雪ノ下はうちの猫のカマクラを、俺は小町を愛でるだけだ。そう、俺は小町を愛でる。どさくさ紛れで久しぶりに物凄く愛でてやる。後は雪ノ下がカマクラを可愛がり過ぎてにゃーと言っちゃう場面を的確に捉えてそれを録音して、社会的に抹殺されるだけだ。抹殺されちゃうのかよ。
「お兄ちゃーん、カマクラの準備出来たよー」
何、雪そんな積もってんの?千葉の交通網全滅しちゃうよ?
と思ったら、放っておくとどこに行くか分からないカマクラを小町が捕獲していた。リビングのソファに座りながらカマクラのお腹をもふもふしている。カマクラも観念したようで、ぐてーっとしながら気持ちよさそうにもふもふされてる。なんだ、身体は正直だな、お前は……。
俺も一緒にカマクラをもふもふしながら、カマクラを愛でる小町可愛いなーと目で愛でているとすんごい軽蔑の眼差しで見られた。だがしかし、負けない。めげずに目で愛でる。早口言葉みたいになった。
結局侮蔑の眼差しに耐え切れず、カマクラをもふもふする事に専念した。もふもふ。
2.
10分程そうしていると、インターホンが鳴った。時計を見ると、ぴったり10時。律儀なやつだなぁ……。
小町はその音に素早く反応すると、極めて丁寧且つ迅速に俺にカマクラを預け、『はーい♪』と明るく答えると、可愛らしい足音を立てながら玄関へと向かった。
カマクラを俺に預ける手際は大ベテランの外科医の如し、そして可愛らしい足音はタラちゃんの如し。キャラの振れ幅が激しすぎる……。
って、俺にカマクラを預けたけど、俺も出迎えた方が良いよね?流石に。
カマクラをよっこらと持ち上げると、のたのたと玄関に向かった。こいつ重いな……材木座かよ?体重知らねえけど。それか平塚先生の恋愛面かよ?考えたら涙が出て来た……。
「小町さん、こんにちは」
「雪乃さん、ようこそ我が家へー!」
俺が玄関に着く直前に、二人の会話が聞こえて来た。そこに俺とカマクラがのたのたと乗り込む。
「おう」
「……こんにちは」
俺の顔を見ると、マフラーに顔を半分埋めながら雪ノ下が小さな声で挨拶をした。え、なんで俺と小町とでは対応違うのん?そりゃあ小町が可愛くて思わず明るく挨拶しちゃう気持ちは分かるけど。
「もー、雪乃さんったら照れちゃってー!」
「べ、別に、そう言う訳……じゃ……」
雪ノ下の顔が更にマフラーに埋まった。やめて!このままじゃ顔が全てマフラーに覆われちゃう!マフノ下さんになっちゃう!もはや誰だよそれ。
「あーもう、今日も雪乃さんは可愛いですね。ささ、まずはリビングへどうぞ!カマクラも愛で放題ですよー!」
お前はどこのジローラモだ。俺がこんな事言ったら歯が浮きすぎてオール入れ歯になるわ。そして高校生にしてポリデントについてググるようになる。
小町の言葉に反応して、雪ノ下がマフラーから顔をすばっと出した。カマクラの存在に気付いて一瞬目を見開き、少し深めの呼吸をしたかと思うと、穏やかな表情になる。
「そうね……ゆっくり頂くとするわ」
言葉のチョイス、チョイス。食べるの?じっくり食べるの?
雪ノ下もフレーズをミスったと思ったのか、顔が赤くなって再びマフラーに埋まった。猛烈にイジリたいけど、多分って言うか確実にひどい目に遭うからどうにもならないよぉ……イジりたいよぉ……。俺の心を読んでるのか、牽制の意味を込めてめっちゃ睨んでくるよぉ……。
3.
リビングに入って、雪ノ下がさらりと辺りを見回す。こう言う時の振る舞い方に人柄は出る物だなと思う。彼女はさらりと辺りを見回すと、じろじろ見回す事も無く、かと言って全く興味を示さないでもなく、程々に見回す。そして、胸に手を当てて、肩を上下して一つだけ、息を深くついた。人の家だもんな、緊張するか。ここまで緊張してる感じが見えるのも珍しい気がするけど。
「ソファ、座ってくれよ。今小町がコーヒー淹れてくれるから」
「あ……ええ、ありがとう」
雪ノ下は少し安心したのか、優しく微笑むと、ソファの端に腰を下ろした。……ああもう、笑顔がいちいち可愛いなお前は、もう……。
彼女に続いて俺も隣に腰を下ろすと、腹の上でごろごろ鳴いてるカマクラを彼女に見せる。
「ほれ、お前の大好物だぞ」
そう言って、彼女の胸元にカマクラをもふっと渡した。
「……食べないわよ、別に……」
小声でばつが悪そうに答えると、目の前のカマクラを一撫で、いや、一もふして、ぽそりと『ありがとう』と言った。時刻は午前10時10分。さあさあ、思うがままに愛でるが良い!
3.
「はーい、雪乃さん、コーヒーをお持ちしました……よおぉぉぉ……」
湯気の上がるマグカップをお盆の上に3つ載せて運んで来た小町が、こちらを見るや否や変な声を出した。何、能をやってる方なの?伝統芸能習ってたっけ?お兄ちゃんそんな記憶無いよ?
「ゆ、雪乃さんが天使の様に穏やかな表情でカマクラを撫でていて、それを眺めて心持ち微笑む、と言うかにやけるお兄ちゃん……何と言う和む風景!」
小町が驚愕した表情で言った。劇画タッチの顔みてえだな。
「おい、にやけてねえよ。人を変態みたいに言うな」
「にやけていたの?やっぱり……変態なのね」
雪ノ下がカマクラの前足を持ちながら、顔を背けて言った。おい、ばか、頬を赤らめながら言うんじゃねえよ。真実味が増しちゃうでしょ!カマクラはもぞもぞしてる。
「お、お、お?『やっぱり』?雪乃さん、やっぱりって言うのはどう言った理由からなんでしょうかー?」
小町が良い所に食いついた。これは雪ノ下が全力で恥ずかしがる所が見られるチャンスだ。もっと行ってしまえ!
「お兄ちゃんのどう言った所を見て、変態だって思ったんですかー?」
あ、これ、俺も恥ずかしいやつだ。小町ちゃん、鬼なの?
「あ、や、その……」
雪ノ下があわあわとしながら小町とカマクラとの間に視線を行ったり来たりしてる。こう言う時って俺も見るんじゃないの?見られたら見られたで恥ずかしいんだけど。あと、そんな慌てないで。本気感が増すから。本当に!
っつうか、あわあわしながらカマクラの前足をぶんぶん振り回すのやめろよ。カマクラもごろな~って唸ってるぞ。……どっちも可愛いくてツッコみづらい……。
「だ、だって、あんな事……されたら……」
ちらっと俺を見ると、かまくらのお腹を掴んでもふっと持ち上げて、自分の顔の半分を隠した。何この子、超可愛いんですけど。何なの?
小町を見ると、お盆を持ったままふるふると震えている。
「ふおぉぉぉ……雪乃さんが可愛いよおぉぉぉ……!」
同じ感想だった。
「て言うかお兄ちゃん、やっぱりそう言う所で変態性が出るんだね。あまりに予想通りだよ……」
小町はがくっと肩を落とすと、ソファの前にあるこたつの上にお盆を置いた。
いや、まあ、それは、ねえ?……思い出すとにやけそうだから、死ぬ気で止めておく。
……コーヒー熱いな……。
外を見ると、寒さこそ厳しいものの、雲はあまり無く、柔らかな陽光が降り注いでいる。
いつもなら家でだらだらして、掃除機をかける小町にごみ扱いされながら足蹴にされるだけの時間。それも十二分に楽しいんだけど。蹴られる所をピックアップして楽しいって言うとまた違う意味で変態になるんだけど。
家でだらだらするのは変わらないのだが、今はその空間に彼女が、雪ノ下雪乃が居る。
何て事の無い時間なのだが、これはこれで悪くないと思えた。
……暖房、効き過ぎじゃね?
続く。
他に3つのエピソードが同時並行で進んでるのでいつ載せようかなーと思ったんですが、このゆきのんが妙に好きなので早々と載せてみました。猫が絡むとこの子無敵ですわ……。
このエピソードも何話か書きます。
現在進行中のエピソードとしては
(1)さきさき
(2)八幡(と言うかゆきのん・ガハマさん・いろはす)
(3)平塚先生
(4)ゆきのん
と言う感じです。(2)がどこまで行っちゃうかまだ決まってないと言う。のんびり書こうと思います(^^)
皆さんの感想がちょいちょいテンション高くて元気を貰えますwありがとうございます(^^)!!
お陰様で、通算UAが100000を突破しました!!本当に嬉しいです。良いの?って心の底から思います。引き続きご愛顧の程及びご感想の程(←、宜しくお願い致します!!
それでは、今回もお読み頂きありがとうございました(^^)!!