ソファに座っている雪乃が右足を伸ばし、俺はその踵とふくらはぎを手で支えて膝立ちになっている。雪乃は俺が足を舐めるという状況になって、よっぽどの嗜虐心が芽生えたのか、唇が微かに戦慄いて喜悦の表情を浮かべている。普段ならば、多少の攻防はあれど結局最後は俺が一方的に責めているので、こういう感情は雪乃自身初めてなのかもしれない。
「それじゃあ……」
ぽそりと呟いて口を開けると、想像以上の屈辱感が湧いてきた。身体の中をどろどろした感情が蠢くが、ここまで来たらもう後には引けない。
舌をちろりと出して、恐る恐る雪乃の足の裏を舐めた。綺麗にしたばかりだからか何も味はせず、代わりに僅かに甘い匂いがした。
「んっ……」
雪乃は小さく声を漏らしたが、どこか安心したような声音だ。「自分から責めている時は、相手からの責めに対する反応に鈍く、強くなる」という、雪乃が調べて実践した仮説は、ある程度は正しいようだ。
新雪のような色をした足裏にじっくりと舌を這わせる。舌先が雪乃の肌を撫でる度に、雪乃の身体の奥底で生じる震えが足まで伝わってくる。
「ふふ……どうやら、私の考えは本当に正しかったようね。今、とても良い気分よ」
涼しい顔で言いながらも、頬を紅潮させている様子は何とも色っぽい。
「ほんとかねぇ……」
舌を離してぽつりと呟くと、雪乃の目の色が変わった。今のは完全に失言だったことに気付く。
「……あら、この期に及んで私と勝負をしようと言うの?」
「や、そんなつもりでは、つい、その」
「つい? ついと言うことは本音なんでしょう」
お、あれ、んん? 何か話が変な方向に……?
俺の動揺をよそに、雪乃は次々と言葉を紡ぐ。
「分かったわ、あなたはまだ形勢が逆転出来るだなんてことを夢見ているのね」
それなら――と、雪乃がほんのりと頬を朱に染め、毅然とした態度で言い放つ。
「あなたの好きなように舐めてごらんなさい。それで私がいつも通りならば、私の考えの正しさが完全に証明されるわ。そしたら私の勝ちになるわね」
「……」
す、すげぇ。
こんな頭良さそうなのに、ていうか本当に頭良いのに。
この子、ばかだ!
ふふんと勝ち誇った顔をしてるけど、自分で地雷を埋めた場所を優雅にサイクリングしているのだと気付かないのだろうか。
「……分かった。後悔するなよ?」
少しだけ、ほんの少しだけ、いつも雪乃を徹底的に責める時の目つきをすると。
「……っ。へ、平気よ。何とでもなるわ」
身体の奥底に刻まれた牝の本能がざわついたのか、雪乃の表情に動揺が走った。強がる声もどこか上ずっている。
さて、ここからどうしてくれようか……。
今日ここまでのお返しも兼ねて、たっぷりねっとりと責めてやろう。
先程の雪乃の嗜虐的な表情とは比べ物にならない、悪魔みたいな表情になるのを必死で抑えながら。
雪乃の踵とふくらはぎを、先程よりも心持ち強めに掴んだ。
× × ×
雪乃の足の裏をじっと見つめ、今度はべったりと舌を貼り付ける。接触させる面積を大きくした状態で、踵から足先にかけてゆっくりと舐めていく。軽く舐めようとじっくり舐めようと、綺麗に洗われた雪乃の足に何か味がする訳ではない。しかし、雪乃の足と俺の舌という、肌と粘膜の接触により、互いに燻らせている官能の炎が混じり合う感覚がする。目の前を白に覆われた状態で微かに聞こえる雪乃の息遣いに、自然と息が荒くなる。
「ふ、ふふ……そんなに一生懸命舐めたって、私は揺るがないわよ?」
雪乃が得意気に声を上げるが、その声音にはどこかはりぼてじみた響きを覚える。今度は指と指の間を一つ一つ丁寧に舐める。ここも味がする訳ではないが、狭い指の間を舌先で押し広げる時、まるで淫裂を口で割り開くかのような感覚を覚えた。外気に晒した肉竿は、痛い程に張り詰めていた。
「ほ、ほら、いくらあなたがそんなに、一生懸め、い、舐めたって……私、は、平気なの、よ……っ?」
……雪乃は、気付いているのだろうか。
舌を指の間から離し、踝を舐め、ふくらはぎに舌を這わせる。
「だ、だから、そんなことしたって、私は平、気、なの、よ……っ」
……まだ、気付いていないのかもしれない。
ふくらはぎを啜る様にして何度も往復し、内ももを舐る。
「そ、その、いい加減、に……っ」
……もうそろそろ、気付くだろうか。
鏡があれば、今の雪乃自身の顔を見せてやりたい。
――明らかに先程までに比べて反応が大きくなり、表情を淫らに緩めていること。
――そして、さっきまであれだけ嗜虐心で燃え盛っていた瞳が、今やほとんど、いつもの被虐的欲求に満ち満ちた色に染まっていることに。
「ふ、ふふ、どう? もう限界でしょう? あなたにもそれなりにプライドはあるでしょう? だから、そろそろ……」
あくまで自分の勝ちを装って、雪乃がこの勝負を終わらせようとする。最初は余裕綽々で足を組んでいたのに、俺がふくらはぎを舐め始めた頃には組んだ足を解いて、ソファーを掴んで震えていた。今日一日、雪乃が積み上げてきた攻撃も、もう終わりのようだ。女王の住む城の門が破壊され、衛兵が打ち倒され、一番奥の間に居た女王が蹂躙されようとしている。まあ、この子の新たな一面も可愛さも見ることが出来たから良しとしよう。
「雪乃」
「え……っ」
とどめに、一段低い声で雪乃を呼び、内ももを這わせながらじっと見つめる。いつも、正常位で雪乃の華奢な肢体をぎりぎりと抱きしめて、「一滴残らず子宮に注ぐからな」と目だけで伝える時と、同じ表情で。
「……あ……っ」
雪乃が声を漏らした。儚げで、今にも消え入りそうな、不安に満ち満ちた声。
次の瞬間、顔を泣きそうにくしゃっと歪めて、
「んんんん……っ!」
唇を引き結んで、くぐもった喘ぎ声を上げた。今日はまだ一度も聞いていなかった、雪乃の嬌声。瞳が俺を捉えて、妖しく揺れた。
「……」
敢えて何も言わずに、舌先を固めて内ももを往復する。細いながらもしっとりとした質感の肉に舌を食い込ませて、ゆっくりとその感触を堪能する。
「あぁぁあぁぁぁぁ……っ」
雪乃がおとがいを上げて、甘美な嬌声を上げる。ずっと抑圧されていた官能の蓋が、今にも弾け飛びそうになっている。
「んー、中々手強いな。雪乃、この勝負……別に時間制限は無かったよな? こりゃじっくりと最初からやり直すしかないか……」
とぼけた道化の声音で言うと、
「……え、ちょ、ちょっと、八幡……?」
雪乃の声が、どこか泣きそうになっていることに心がざわめいた。試しにふくらはぎにちゅっと吸い付くと、「ひぁぁぁ……っ!」と可愛らしい声を出して身体を屈めた。口付け一つでこれだけ反応するということに驚く。身体の反応がいつも通りに戻ったと言うよりは、我慢していた分余計に敏感になっているのかもしれない。
雪乃の家を訪ねてからの一連の流れも、いつもは無いどきどきがあって、それはそれでとても楽しかった。
しかし、ここからは。
いつも通りの。
いや、いつも通りでは済まないくらいの。
屈服だ。
制圧だ。
蹂躙だ。
「は、八幡、あなた……っ」
雪乃が震える声で呼びかけるが、言葉の続きは無い。ここで素直に負けを認めれば、少しは楽になれるかもしれないのだけど。そんなことが出来ない面倒な性格が、とても愛おしい。
「それでは、女王様へのご奉仕の続きといきましょうか」
「……っ」
俺の慇懃無礼な言葉に雪乃が目を瞠り、唇を戦慄かせる。何かを言いかけて僅かに開いた口が、ゆっくり閉じて固く引き結ばれた。
これから訪れるであろう極上の時間は、考えただけでたまらない愉悦が込み上げる。
気付けば、肉茎は凶悪なまでにいきり立っていた。先程よりも硬度が増していて、我ながら呆れた。
続く。
ゆきのんでした。遂に形勢逆転。
ここからとろっとろのどろっどろです、マジで。
ルミルミからの由比ヶ浜マっていう流れがもたらす落差って尋常じゃないんだなーと思いましたw
それでは、また明日ここでお会いしましょう(^^)!
今回もお読み頂きありがとうございました(^^)!!
この挨拶、もう何百回やったんだろうか……。