――気持ち、良い……っ――
今までずっと攻勢に回っていた雪乃を、ソファの上で抱いた時――半開きになった艶めかしい唇の間から、予想していなかった言葉が漏れた。
「……お前、今、気持ち良いって……」
雪乃は俺の言葉に対して、何も答えることなく足を絡めてくる。ソファにもたれかかった雪乃はロングスカートからすらりと伸びた足を俺の腰に絡め、決して離すまいと艶めかしく締め付けてくる。
ついさっきまで、勝負が云々と言っていて。
もう、私の負けでいいからと涙混じりの声を漏らして。
そして今――気持ち良い、という言葉をはっきりと告げた。
雪乃の感度は、ただでさえ敏感で――この関係に至ったのも、きっかけは肩揉みだった。
それでいて、今日はここまでずっと俺を攻め続けていて、言うなれば雪乃自身は我慢している状態だった。そんな中で俺が雪乃の両足を丹念に舐めて、焦れったい興奮を与え続けた。
もしかすると、いや、もしかしなくても。
雪乃の性欲は、いや、獣欲は――破裂寸前なのかもしれない。
雪乃は俺と行為をする時、中々素直に感じたままのことは言わない。それは普段でもそうだし、二人きりで甘えてきた時でも、ある程度の限度がある。垂れ流しのように本音を漏らしたことなんて、数えられるくらいしか無い。
「…………」
ちらりと下を見やり、雪乃との結合部がどうなっているかを確認する。
上品な、黒のレースのショーツ。それでいて透けていて、履いていても大事な所がうっすらと見えるというのに……このショーツは、それに加えて淫裂の部分にぱっくりと穴が開いていて、履いたまま挿入が出来るようになっている。実際今も肉竿の周りはレース生地に覆われていて、動いても擦れることは無いという絶妙なサイズの穴がぽっかりと開いている。
ここまで俺を攻めて、そして陥落した雪乃と。
これだけ俺を攻めるつもりでいながら、こんな扇情的な下着を履いていた雪乃。
正直、どれが本当の雪乃の意思なのかは分からない。
俺を一方的に攻めたかったのか。
俺に一方的に攻められたかったのか。
それとも――両方、楽しみたかったのか。
もしかしたら、雪乃自身も己を把握出来ないままに作戦を練って、今日と言う日を迎えたのかもしれない。
もしそうだったとしたら、俺も、雪乃も、ここから一体どうなってしまうのか分からないのではないだろうか。
俺が雪乃にどれだけ欲情するのか。
雪乃がどれだけ乱れるのか。
今まで数えきれないくらいまぐわってきたのに、まるで読むことが出来ない。
ぞくぞくとした、得体の知れない不安と期待が身体を撫で上げた。
「……雪乃。ここに寝てくれるか」
雪乃と繋がったまま、耳元で囁く。ソファは結構大きなタイプなので、二人重なって寝転がった状態で存分にまじわりたかった。
俺の言葉に対して、雪乃は黙って頷いた。
雪乃の膣は、蹂躙されることを望んでいるのか、ひどく熱い。
× × ×
彼と繋がったまま、私はソファに寝転んだ。彼の体重がかかり、ソファの柔らかな感触と板挟みになるのが何とも心地良い。彼には恥ずかしくて絶対言えないし、それどころか心の中で思っただけでも恥ずかしいのだけど……彼にこうして力強く抱きしめられたり体重をかけられたりするのは、なんだか彼に包み込まれているみたいで安心する。
私が今日のことを思い付いたのは、少し前のことだった。
確か、彼が急用が出来て部活に来られず、夜も会えなかった日のこと。
その日は、いつも通り授業を受けて、昼休みには由比ヶ浜さんと食事をして、また授業を受けて――本当に、いつも通りだった。
「あ……そ、そうなの。わかったわ。それは仕方ないことだから、気にしないで」
授業を終えて、部室に向かう途中で顔を見せた彼が私に告げたのは、何のことはない、「急に家の用事が入って」という話だった。
彼のいつもの行動からすれば、私と会う予定をキャンセルするというのはよっぽど急なことだったんだと思う。彼はいつもの癖で頭を掻きながら私に謝ってきた。その癖はみっともないわよと言いそうになったことはあるのだけど、意外と可愛いと思う自分もいたし、それを言ってしまうと彼は何だかんだで真面目なのできっちりやめてしまいそうだから、言わないでいる。
「や、本当すまん。……一緒に、いたかったんだけどな……」
最後の方はほとんど聞き取れないような声で彼が呟いた。彼がたまに見せる紅潮した顔は、見ていて何だか嬉しくなってしまう。
微笑みが顔に出るのを抑えていると、彼がちらちらと私を見てくる。何か言いたいのだとすぐに分かった。
「どうしたの?」
聞くと、彼は私から一度目を逸らし、またちらりと見てきた。
「や、……なんだ、その、すげぇ残念そうな顔してるから、本当に申し訳なくてな……」
「え……」
彼の言葉に、急に自分の身体が熱くなった。
彼は急な用事が入って会えなくなった。それをきちんと伝えて謝ってくれた。
それで納得していたはずなのに。彼に対しては努めて笑顔を向けるようにしたはずなのに。
それでも、一日彼に会えないというだけで、隠しきれない程の感情が顔に表れてしまったのだろうか。
彼が、私の顔を見て急に表情を変えた。私の身体は熱いままだ。私は彼のこの顔を知っている。色んな時に見たことのある表情で、確実に共通しているのは「彼が興奮している」ということだ。私を見て、何かが彼の琴線に触れて、劣情を催している時の表情だ。
「……お前……その表情は、反則だろ……っ」
息を荒げた彼が周りを見渡す。ここは階段の踊り場で、人があまり通ることがない場所だった。しまった――と気付いた時には、彼は私に抱き付き、唇を塞いでいた。
「んっ、んちゅっ、ふっ、くふぅっ……んふぅぅぅ……っ」
二の腕を彼の意外と逞しい腕にがっちりと固定されて、口内に舌を差し入れられると――ここが学校だということも、もうすぐ部活だということも忘れて、彼との肉体的接触に溺れそうになる。ぎりぎりと締め付けてくる彼の腕の力は、そのまま彼の発情の具合を示していた。
頭の中に痺れるような電流が緩やかに流れて、理性的な思考が解けていく。彼は絶対にそんなことはしないと思うけれど、もし今ここで彼が私の身体をまさぐって私の理性を完全に溶かしてしまったら、人目を気にせずに行為に及んでしまうかもしれない。そんなことはしないとは思いつつも――彼がその気になったら、私は拒めない、拒まない。そんな気がした。
今日ももちろん、彼はそこまでする気はないようで――しばらく私の口内を嬲り続けた後、ゆっくりと口を離した。私を見つめながら顔を上気させている様は、彼には自覚が無いだろうけれど……とても、色っぽい。
「……わりぃ、我慢出来なかった……」
私の肩を抑えながら、恥ずかしそうに彼が謝る。唇を離しても私の身体を離さないのは、寂しさもあるけれどそれ以上に、私が今まともに立てない程足腰にきていることを知っているからだ。こういったさりげない優しさも、褒めるきっかけが掴めないのだけどとても好きだ。
「気にしないでちょうだい、あなたのそういった獣のような行動にはすっかり慣れたから」
ふっと笑って囁くと、彼がむすっとした顔になった。
「や、お前だって何だかんだでいっつもノリノリじゃねぇか」
「え……っ」
彼の言葉に、また顔が熱くなる。
それを見て、彼がまた固まった。
「お前、なぁ……っ」
彼がもう一度抱き付くのを、私は止めなかった。
私を抱きしめる時の彼の息遣いは、身体中の細胞が目覚めるような期待をもたらしてくれる。
唇が重なると、私の心に幸福の薔薇が咲いた。
続く。
☆☆☆祝・1300万PV突破☆☆☆
実は結構前に到達していました。いつも本当にありがとうございます。これからもよろしくお願い致します!!
久しぶりのゆきのんでした。そして初のゆきのん視点!
前話から間が空いたので、八幡の感情や思考を整理するモノローグをきちんと入れよう
→あれ、今ここでゆきのんのモノローグを入れたら楽しそうじゃない?
→せっかくならゆきのんが作戦を思い付いた流れをゆきのん視点で書いてみよう
→あれ、八幡が部活を休むって言うだけでなんか一くだり出来ちゃった!
という流れでした。どうしよう、長いこと書いていたゆきのんでの初めての試みが超楽しいです。いろはすと同様に、完璧にデレてからなのでまた特殊ではありますが!
小町編でUAが盛り返した……!?なんだろう、カクヨムの宣伝でこっちに来て頂いたパターンもあるんだろうか……。
もし「カクヨムの宣伝から来たよー」という方がいらっしゃったら感想で言って頂けると嬉しいです!
それでは、また明日ここでお会いしましょう(^^)!
今回もお読み頂きありがとうございました(^^)!!