由比ヶ浜さんと二人きりで部活を終えて、その日は一人で過ごした。
紅茶を一人分淹れて、リビングでくつろぎながら飲む。
私は一人暮らしだけれど、彼は他の人と同じように家族と暮らしている。そんなに頻繁に夜を共に過ごせる訳ではない。
それでも、ほんの少し前までは一人で居ることにすっかり慣れていたのに……最近は一人で過ごすと、何だかもの寂しい。四六時中一緒にいるというのは私も彼も望まないとは思うけれど、きっと寝室は一緒にして、書斎辺りを各々が使うように設けておけば……。
「…………」
紅茶をソーサーの上に戻した。
何を考えているんだろう、私は。
「それにしても……」
もう一度カップを口に付けてから、ふと独り言ちる。独り言は極力言わないようにしているけれど、彼のことを考えていたら自然と口をついていた。
彼と今の関係に至ったきっかけは、私の体質だ。
こんな言い方をすると大袈裟だけれど、私が人よりも少し――他の人がどれくらいか分からないけれど――敏感ということが、きっかけだった。
そういった経緯もあってか、彼は私を一方的に責めることに幸福を覚えているような気がする。というよりは、確実に覚えている。
出会った頃ならば、そんなことをされようものならすぐさま社会的に消していた所だけれど。
一年近く彼と共に時間を過ごした上で、そこからも常に紳士的な心遣いを私に示しながら距離を詰められていくと、私にはもう拒絶するという考えが無くなっていた。
彼の責めは、激しいのに優しい。
だからいつも、何だかんだで受け入れてしまい――最終的には、溺れてしまう。
ふと、自分の手を見つめる。
彼と初めて行為に及んだ、次の日の夜のことを思い出す。
彼がこの部屋に居たことを示す微かな匂いや乱れたシーツが、一人で過ごす私の心と体をおかしくしてしまった。
自分一人でなんてほとんどしたことが無かったし、したとしてもすぐにやめてしまっていたのに……その夜は、彼との行為を思い出して、何度も気をやって、疲れ果てて眠るまで自分の指で身体の中をかき回した。朝起きた時に、指に染み込んだ淫らな匂いと、心地良い疲労感がもたらした羞恥心は一生忘れないかもしれない。
紅茶を一口飲む。
喉を通る感触まで味わいながら、ふと思い出す。
そういえば彼は、私が食べ物や飲み物を呑み込む時によく私の首を見ている。こくんと喉が動くのが好きらしい。私の口の中に自分の欲望を吐き出した時などは、ゼリーのような白濁を呑み込んでいると、その様を彼は食い入るように見つめていて――その視線だけで、身体が牝としての反応を示してしまう。
……私は、彼のことをどれだけ考えれば済むんだろう。ちょっと考え過ぎかもしれない。
本当なら、今頃この部屋で……。
「……う……ぁ……っ」
――そう考えただけで、身体の芯から末端へと熱が籠った波が広がって、甘い痺れに包み込まれる。カップをソーサーの上に置いて、力無くテーブルに突っ伏す。胸がテーブルにより僅かに形を変えただけで、堪えがたい快感が湧き上がった。
「……はっ、はぁっ、はぁっ……」
いつから、私はこんなに彼を欲するようになったんだろう。いつから、私の頭の中を彼が占領するようになったんだろう。
私は、今、彼に会いたい。
彼は、私と同じようなことを考えているんだろうか、思っているんだろうか。
「……………………」
息を荒げてテーブルに突っ伏したまま、しばし考える。
顔を起こして、窓越しに外を見た。反射して微かに映っている私の顔は不機嫌そのものだ。
「……納得いかない……」
もはや独り言を抑えることも出来ない。
いつもいつも、私に対してやりたいようにやって。
それでいて、彼はどんどん私の上に立って嬲ることを覚えて。
そして、私の心も身体もこんな風にしてしまった。
「……納得いかない……」
もう一度呟く。
彼の優しさは十二分に知っている。
けれど、それでも。
たまには仕返しをしたい。
しかし、学校での彼ならいくらでもやりこめようはあるけども、行為に及ぶ時はどうもだめだ。この体質がある限り、簡単に屈服させられて――
「……あ」
ふと気付く。
この体質は、私が彼を責める時の絶対的な弱点だ。
ならば、それを抑えることが出来たら?
そう考えた私は、ノートPCの電源を点けた。
鏡では見てはいないけれど、私の顔はこの時、きっと意気揚々と浮かれていただろう。
× × ×
そして、現在。
結果を言えば、だめだった。
それに尽きる。
彼が本気で責める時の執拗なやり方と、視線だけで犯しそうな目に、私の覚悟も作戦も簡単に押しつぶされてしまった。途中までは上手くやれていると思ったのに。
何故こんないやらしい下着を着たのかは分からない。彼を誘惑する時の気分を高めようとでも思ったのか、それさえ思い出せない。ただ、気付けば着ていた。
「はぁぁぁぁぁ……っ」
彼に身体の奥底を貫かれて、理性も思考も溶けていく。彼の目は本気になっていた。私が迂闊な言葉を漏らしたから、余計に火を点けてしまったらしい。
でも、もう、限界だ――何も考えずに、好きなように喋って、好きなように甘えてしまってもいいんじゃないだろうか。
「雪乃……っ」
私の名を呼ぶ彼の声は、さっきまでに比べてかなり熱を持っている。よほど興奮しているんだろう。
「八幡……っ」
気が付けば、私も彼の名を呼んでいた。彼が唇を重ねると、せめてもの抵抗で唇を閉じる。しかしものの数秒で上下の唇を舌でこじ開けられ、彼の舌が私の口内に侵入してくる。
「んっ、くふぅっ、ちゅくっ、ちゅりゅっ、んふぅぅ……ごくっ、んっく、んぐっ、んっく、じゅるるる……んっ、ふぅぅ……っ」
彼が獣のような目つきで私を見つめながら、ひたすら唾液を流し込んでくる。余す事無く呑み込みながら、今自分がどんな表情をしているのかに想像を巡らせてみる。
きっと、とてもはしたなくて。
それでいて、彼が再際限無しに興奮するくらいに、いやらしい顔をしているんだろう。
口付けをしながら、彼がぐりぐりと先端を押し付けてくる。感覚が昂ぶっているため、それだけの行動で私の中から大量のいやらしい汁が溢れ出た。
もう、私の思考は止めてしまおう。
後はもう、好きなように、彼に甘えてしまおう。
微かに残っていた理性を取り払った時、私の心はふわりと軽くなった。
× ×
雪乃が震えている。
その顔は、未知の興奮に戸惑いを浮かべていて、けれどどこまでも溺れてしまいたいと思っているような――そんな、複雑な表情。
「雪乃……どうする?」
キスを止めて、二人の唇の間に伸びた糸を雪乃が咥えて呑み込むのを見届けてから、雪乃の頬に手を添えて尋ねる。
「ここから、本気でやって徹底的に屈服させても良いんだぞ? 別に今回みたいなことをこれからもする分には全然構わない。何だかんだで楽しめたし。だけど、その度に俺はお返しとして、お前が翌日も立てなくなるくらいめちゃくちゃにしてやるからな」
「んんっ、ふぅっ! あっ、はぁぁ……んはぁぁぁ……っ」
腰をゆっくりと回しながら威圧するように言うと、雪乃が俺の腕の中で快感に身を捩る。腕に力を込めて拘束を強めると、それに呼応するかのように膣がいやらしく蠢く。
「どうする?」
子宮の入り口を亀頭で執拗にノックしながら、意地悪な質問をする。
「……っ」
雪乃は顔を真っ赤にして、目を背けている。けれど時折ちらりと俺を見る目は、完全に発情した牝のものになっていた。
「どうする、やめるか?」
「……っ」
雪乃が目を見開いて固まる。
「それとも、めちゃくちゃにされたいか? 愛液も小便も好き放題溢れさせて、子宮にたっぷりと注ぎ込まれたいか?」
「……あ……っ」
雪乃が泣きそうな顔で口をぱくぱくとさせて、俺をじっと見つめてくる。雪乃が何も言わずとも、膣の中の肉襞の動きは分かりやすく賛同の意を示していた。
「……なんだ、答えなくても分かりやすいな、雪乃は」
「あ……ち、ちが……んはぁぁぁぁぁっ!?」
腰を引いて力強く打ち込むと、ずどんという感触と共に雪乃の嬌声が部屋に響いた。
続く。
ゆきのんでした。
今日の14時46分は、出来るだけきちんと黙祷しようと思います。
それでは、また明日ここでお会いしましょう(^^)!
今回もお読み頂きありがとうございました(^^)!!