※この作品はR-18です。

俺ガイル 日常の何気ないエロス。   作:高橋徹

407 / 700
 サキサキ編どーーーーーん。
 以前書いたサキサキ編(10ヶ月前……)とは別物としてお考えくださいませ。


いろいろあって川崎沙希は思いを寄せている。
(1)


 季節は春。

 高校三年生となった俺は、今日も今日とて、かれこれ丸二年も通っている総武高に向かって歩いていた。

 今日はクラス替え後の初日ということで、周りを行く生徒もどこか浮足立っている。いつもは自転車に乗っているところだが、今日は何となく歩きたくなって、途中から自転車を押して歩いていた。

 クラス替えで周りとの別れを惜しむという気持ちはこれといってない。そうは言っても去年一年は色々、本当に色々あった。それでも、教室での会話量が増えた訳でもなかったし、会おうと思えば廊下でもどこででも、いつでも会える。ちなみに俺から会いに行くことはまず無いので、会いたい場合は俺に会いに来る方式で。俺超偉そうだな。なんだろう、入院して見舞いに来てもらってる人もしくは動物園の動物みたいな抜群の受け身態勢だな、それ。

 新しく文理選択で分かれたクラスのメンバーが発表されるのも今日なので、まだ誰と別れて誰と一緒になるかは把握していない。まあ、もし戸塚や戸塚や戸塚と別のクラスになっていたら、さぞ陰鬱な気持ちになることだろう。あゝ戸塚。

 誰と一緒になったとしても、あまり変わらない。俺のような人種はいつだってそうだ。内面はだいぶ変わった気がするが、それでも根本は変わらない。俺が昼食で四~五人で楽しく談笑しながら話すなんて日は、きっと来世でぎり来るかどうかだ。

 どうでもいいことをぽけっとしながら考えていると、

 

「……おお」

 

 ゆるりと流れた春風が、少し長くなった前髪を揺らした。風は柔らかくて暖かく、どこからか花の匂いを運んできてくれる。

 良いなぁ、春風。

 どこかで一つ下の女子高生が春風にスカートをめくられて、くまさんパンツを見せてくれたりしないだろうか。あんな理想的なシチュエーション中々無いよなぁ。真剣に考えてみよう。一つ下の女子高生……俺の知り合いでは一色しかいねぇな。うん、声も同じだから可能性はあるかもしれない。声も同じって言っちゃったよ。

 取り敢えず、ここから二週間ほどは一色とは外で話すことにしよう……と固く心に誓っていると。

 

「……おはよ」

「……おう」

 

 別の道から、美人で目つきの怖い青みがかったポニーテールが特徴的で何気にある箇所が結構立派な女子生徒が姿を現した。回りくどいけど川崎です。最近やっと名前を覚えました。そういやこいつの家、うちからあまり離れてないんだったっけな。

 進んで世間話をすることは今までまるで無かったけれど、目的地が同じで且つ並んでしまった為、自然と一緒に登校することになる。川崎はさっきから何やらちらちらとこちらを見ているが、恥ずかしいから止めてほしい。

 

「……今日、クラス発表だな」

 

 視線が気になったので適当に話題を振ると、

 

「ああ、……別にどうなろうと関係ないけどね」

 

 川崎の返答に少し驚いた。ああそうだ、タイプは違えどこいつ、俺と同じ人種だった。ちなみに同じ人種には他に雪ノ下や予備軍として留美が居るが、みんな細かな分類は違う。〇〇目までは同じで〇〇科が違うみたいなイメージ。ぼっち目腐り目科、ぼっち目グラマラス科、ぼっち目永遠の0科、的なね。これ口に出したら確実に命が無いな。

 

「ま、そうだな。誰と一緒だろうと勉強しなきゃならんことには変わりない」

 

 前を向いて春の陽気にのほほんとしながら答えると、視界の隅で川崎がちらちらと俺を見た。

 

「……なに、どうした」

「べ、別に、なんでもない」

 

 そっぽを向くようにして、川崎が顔を逸らす。しかしそれでもまだ俺をちらりちらりと見やってくる。一体何なんだ。

 

「言いたいことがあるならはっきり言えよ」

 

 気持ちはのんびりとしているのだが、声音が思ったより強くなってしまった。川崎はびくっと身体を強張らせて、途端におどおどし始める。案外打たれ弱いというのをすっかり忘れていた。

 

「すまん、無駄に言葉が強くなった」

 

 謝ると、川崎が慌てて首を振る。ポニーテールが揺れて顔に当たってるけど大丈夫だろうか。

 

「う、ううん。あたしこそごめん」

 

 口早に、やけに素直に謝ったかと思うと、川崎はそれっきり俯いてしまった。落ち込んでいるのだろうかと思ったが、こちらから見える頬はほんのり赤く、何だか照れているように見える。

 再び二人とも無言になり、ぽてぽてと歩く。見慣れた風景も自転車に乗って見るのと歩いて見るのとではだいぶ違うことに気付く。生命の息吹があちらこちらから感じる風景は、見ただけで何だか嬉しくなってしまう。

 

「結局、さっきのは何だったんだ」

 

 しばらく歩いて、もうじき学校に着くという辺りでふと話しかける。川崎は髪をくりくりと摘まんでもじもじすると、しどろもどろに話し始めた。

 

「……いや、その……別に、新しいクラスで誰と一緒かなんて全然気にしてないんだけど……その、も、もし、あんたがいたら、結構……」

「え……」

 

 川崎の発言に心が一気に引き寄せられる。突然降って湧いた展開に動揺して立ち止まると、川崎も慌てて立ち止まる。続きを言わなければならない状況に、川崎は頬を赤らめながら人差し指をつんつんと合わせて視線を泳がせる。

 川崎が口を開いて、何か言いかけたその時。

 

 風が吹いた。

 

「……あ……」

 

 今日一番と言って良い程の強い風は、立ち止まってこちらを向いていた川崎のスカートを気持ち良い程鮮やかにめくって。

 残念ながら、一つ下の子でもなければくまさんパンツでも無いけれど。

 いつか見たのと同じ、黒のレース。

 しかもあの時脳裏に焼き付いたものよりも、若干セクシー。

 妄想していたシチュエーションを遥かに上回る衝撃だった。

 あれ。

 ていうかこの状況、やばくない?

 待て待て待て、俺と川崎の出会いを、運命の黒のレースを思い出せ。あの時あいつのパンツを見た時、そしてその後教室で会った時。どちらの時も、川崎は「……バカじゃないの?」と冷たく言い放って終わっていただろう。そうだ、あの川崎なら、これくらいのこと何でも――と、思ったのだけど。

 今の川崎は、どうやらもう、出会った時の「あの」川崎ではなくなっていたようで。

 

「……え、あ、ちょ、うそ……っ」

 

 風でふわりと靡いたスカートを、両手で必死で押さえ込んだ。スカートと俺を交互に見やって、耳まで真っ赤にしている。あ、あれ? おかしいな、これじゃまるでただの可愛い女の子なんだけど……?

 

「……心配すんな川崎。見事な黒のレースだったぞ」

 

 試しに言葉をかけてみると、

 

「ば、バカじゃないの!?」

 

 と、いつものクールさからは想像も付かない程上ずった声で叫ばれた。川崎は首を横にぶるんぶるんと振ると、俺を置いて早足でずんずんと進んでいく。その後ろ姿を見つめながら、俺は川崎の予想外の変化に戸惑っていた。

 本来、性格の変化なんてものは曖昧だ。その日その時の気分だってあるし、良い変化かどうかななんてのは完全に見た人の主観でしか考えることが出来ない。

 だからこそ、以前と似た状況というのは、川崎の変化をはっきりと示す指標になった。

 去年、まだ顔も知らない時の(同じクラスだったけど)川崎は、今のような状況に対して冷たくさらりとした反応を示した。

 そして今年、今日この日のあいつの反応は、まるで可愛らしい乙女そのもので。

 あまりにも変化がはっきりとしていて、思わず目を瞠った。

 頭をがしがしと掻いて、自転車に跨る。ぼーっとしていたら結構時間が経っていたので、ここからだとあまり歩きと差は無いが一応乗ることにした。

 きぃこきぃこと自転車を漕ぎながら、気付けばずっと川崎のさっきの反応を反芻していた。

 ……この一年で、あいつに一体何があったんだ……。

 

 

 

 続く。

 

 

 




 以前はもっと突発的に書いていたので短かったですが、今回はながーーーくじっくりと行きます。もう少ししたら書き始める折本編もそんな感じです。ゆるくて心地良い時間が流れるように頑張ります。

 活動報告のリクエスト受付なんですが、何故かその2よりもその1に書かれることが多いです。上限を設けている訳ではないんですが、その2に書いて頂くようお願いします。

 それでは、また明日ここでお会いしましょう(^^)!
 今回もお読み頂きありがとうございました(^^)!!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。