次はあんたの番だよ――と言って、川崎が目を閉じる。仄かに頬を赤らめて震えられると、予定とは違うことをしそうになってしまう。
「……じゃあ……行くぞ」
ごくりと息を呑んで、川崎の頬に人差し指を伸ばす。
――ぷに。
「おぉ……っ」
思わず感嘆の声が漏れる。
それくらい、川崎の頬は柔らかかった。
「ん……っ」
川崎は微かに眉をひそめて、何とも色っぽい吐息を漏らす。どう考えても、この反応と実際やってることとのギャップが大きすぎる。
京華を見るときゃっきゃとはしゃいでいた。取り敢えず満足してくれているようで良かった。
しかし……。
「おぉ……っ」
人の、もっと言えば女性の頬とは、こんなに柔らかいものなのかと驚く。京華の頬も柔らかいが、それとはまた違う……一定の成熟を経た、女性の柔らかさを感じる。人差し指を押し込む度にやんわりと沈み込み、瑞々しい弾力に跳ね返される。気が付けば夢中でつついてしまっていた。
「おトイレ行ってくるー」
京華がぽんと呟いて、ぱたぱたとリビングを出て行った。
「トイレ、行ったみたいだな……」
「そう、だね……」
素人が台本を読んでいるかのような棒読みで言葉を交わす。川崎が片目だけ開けて、ちらりとリビングの入口を窺う様子は妙に色っぽかった。
本来であれば京華が戻ってくるまでこの行為をやめて休憩していれば良いのに、俺も川崎もやめようとしなかった。
無言で川崎の頬を撫でると、川崎はうっとりと目を細め、両目を閉じた。
京華は今いないのか……とぼんやり考えながら、右手だけでなく左手も伸ばす。夢と現の境目が曖昧になったまま、川崎の両頬を撫でさする。
「……え……ちょっと……っ?」
川崎が不安げに目を開ける。一挙手一挙動が色っぽくて、ほんの一つの仕草だけでも俺の中で劣情がむくむくと膨れ上がる。
本来であれば、これは予定に無い行為だ。謝罪をして早々にやめるべきなのだけど。
「……いいから、目、閉じてくれ」
喉奥から出てきたのは、何とも強引な言葉だった。
けれど、それでも川崎は、
「え……う、うん……っ」
おどおどしながらも、再び目を閉じた。どうしてこんなに抵抗しないのだろうと思ったが、もしかしたらさっきやりすぎたという負い目があるのかもしれない。何にせよ、今はその従順な態度が何より嬉しい。
目を閉じた川崎に見惚れ、頬を撫でながら自然と顔が近付いていく。青みがかった黒髪からは甘い匂いが香って、夢の世界へ誘われているかのように意識が蕩けていく。
川崎の頬を撫でて、指を沈み込ませて、また撫でる。
両手の指が、瑞々しい唇の横で止まる。
ぷるんと弾力のある、少し薄い唇。
――美味しそうだな――
そんな感想を抱いたことに自分で驚き、慌ててかぶりを振った。
けれど、好奇心と欲望は止まらない。川崎は目を閉じて、俺の行為を震えながら受け入れている。何もしないで我慢することは出来そうにない。何か妥協案を探らないと、おかしくなってしまいそうだ。
時間にすればほんの数秒、考えに考えた結果。
「ん……っ?」
――川崎の唇を、指で弄ぶことにした。
唇の合わせ目を指でなぞると、川崎はくすぐったそうに身悶える。眉を微かにひそめるが、それでもいやとは言わない。
指で上下の唇をつまみ、合わせ目をなぞり、時々、ほんの少しだけ指を唇の間に侵入させる。
「んっ、んん……っ」
指を侵入させた時、一際大きく川崎の身体が震えた。けれど反応はそこまでで、やはり止めようとしてこない。
理性を焼き焦がす川崎の反応に、気が付けば下腹部がいきり立っていた。
我慢出来ずに、右手人差し指で入念に唇の合わせ目をなぞった後――ゆっくりと、綺麗な唇に割り入れた。
「ん……っ!?」
川崎が驚いて目を見開く。俺は川崎の反応にびくりとしながらも、指を入れていくのを止めない。ずぬぬと第一関節、第二関節まで埋まったところでようやく動きを止めた。
「うわ……っ」
自分で入れたにも関わらず、今は「呑み込まれた」という感覚が強い。
口内の熱く湿った独特のぬめり気に包まれて、まるで違う生き物のような気さえする。
指を引くと、ぬらぬらと光った人差し指が顔を出す。爪の部分を引き抜けばもう指は抜ける ――というところで、川崎が頬をすぼめているのに気が付いた。微かに、指に吸い付いている。
湧き上がる衝動に、身体が震えた。
左手を川崎の頬に添え、右手人差し指を再び口内に埋め込んでいく。今度は止めることなく、ゆっくりと抜き差しをする。
「んふぅぅ……んっ、んんんっ、んんん……っ」
微かに指に舌が絡む。出し入れする度に濃厚に絡みついてきて、蛇に巻き付かれて食べられるかのような錯覚に陥る。川崎の目はうっとりと細められていて、もしかしたら今自分が何をしているのかも分からないのかもしれない。
目の前で川崎と見つめ合いながら、何度も指を出し入れする。この行為が他の何を想起させるかなんて、お互い言わなくても分かるだろう。川崎の身体は芯まで火照っているようだった。
このままでは何をしてしまうか分からない――と思っていると。
リビングのドアが大きな音を立てて開いた。
「おトイレにわすれてたえほんよんじゃった! ……さーちゃん、はーちゃん、どうしたの?」
ドアが開く音がした瞬間、指を口から引き抜いて高速で身体を離した。そのため、ベッドの両端でぜいぜいと息を切らす高校生男女が出来上がっていた。
絵本読んでたのか……道理で長い訳だ。
川崎を見ると、つい先程までとは打って変わっていつも通りの表情で慌てていた。
「な、何でもないよけーちゃん」
努めて明るく振る舞いながらも俺に近付き、京華に顔を向けながらも自分の唾液で濡れそぼった人差し指をティッシュで拭く。もったいない……と思った俺は変態なのだろうか。
京華がトイレに置いていたという絵本をぱたぱたとリビングのテーブルに置いている間に、川崎がそっと顔を近付けた。
「……やりすぎたか」
「……やりすぎだって、ばか」
拗ねた顔で言う仕草は、どうしようもない程に可愛い。
「……だよな、すまん。今後はもうしないわ」
「あ、いや、その、別にいやって訳じゃ……」
「……え?」
「あ、ううん、その、な、何でもない!」
とんでもないことを聞いた気がした所で、会話は強制終了された。
京華が笑顔でこちらに戻ってくる。
時間にすれば、ほんの10分程度。
京華がリビングを出て、戻ってくるまでの時間。
その時間が、俺と川崎の距離を、確かに変えた気がした。
続く。
サキサキでした。当初予定になかったんですが、不意に衝動が湧いて微エロに突入しました。この後はまたのんびりします。
<お知らせ>
明日はスケジュールの都合によりお休みします。いつも読んで頂いている方は申し訳ありません。その代わり明後日は登校します。
それでは、また【明後日】ここでお会いしましょう(^^)!
今回もお読み頂きありがとうございました(^^)!!