※この作品はR-18です。

俺ガイル 日常の何気ないエロス。   作:高橋徹

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 過ちを犯しませんようにとは願いましたけども。

 数分おきにドアが開き、一瞬人口密度が緩んだかと思いきや次の瞬間一気に圧力が増すのを数回繰り返すと、ついさっき自分が願った内容は、どんどん現実味の無い絵空事と化して行った。

 現在の状況はと言いますと。

 

「川崎……大丈夫か?」

「んっ、うぅ……っ、だ、大丈夫……じゃ、ない、かも……っ」

「……だよな……」

 

――川崎の身体の前面が車両の壁に思い切り押し付けられ、俺は川崎の顔の両脇に手を付けて必死で圧力を逃している。初めは吊り革を掴んでいたのだが、途中からその場所からも更に押しのけられて、今の壁ドンもどきの状態になってしまっていた。

 

「うぅ……っ」

「……っ」

 

 顔が川崎の耳元に必然的に近付いてしまい、川崎が悩ましく呻くのをかなりの近距離で聞いてしまう。

 車両全体ががたんと揺れた。

 

「うぁ……っ、これ、だめ……っ」

 

 窮屈に感じたのか、足を揃えていた川崎がおずおずと足を開く。可愛らしいミニスカートを履いた状態で俺と密着した状態で足を開き、内股になった。俺は川崎の腰にぐりぐりと自分の身体を押し付ける形になっていて、傍から見れば一つの行為しか想起出来るものが無い。天国と地獄がないまぜになっている状況は、思考能力を地の底まで落としてしまう。

 車両が揺れる度に腰を突き出してしまい、川崎の尻にぐりぐりと圧がかかる。衣服越しでも川崎の尻は柔らかいのに弾力があり、今のような状況でなかったら全力で楽しんでしまいそうだ。気のせいか、川崎が漏らす声が徐々に艶っぽくなってきて、それが興奮に拍車をかけた。

 

「……ひ、比企谷……?」

「……どうした?」

「なんか、さっきから硬いのが、あたしの、その後ろに……っ」

「……っ」

 

 視線をちらりと下にやる。

 当たり前だけど。

 めっちゃ勃ってた。

 

「……何だろうな、不思議だ」

「とぼけんな変態……っ」

 

 バレてた。

 俺の人生はここで終わりなのかにゃー。頭が真っ白すぎて語尾がおかしくなってしまったでごんす。

 

「……わりい、わざとではな――っ!?」

 

 このタイミングで、乗り込んでから一番の揺れが来る。車両の中心に居る人から始まる揺れの波は、俺たちのいる端に伝わる時点で最大級のものになり、弁明途中の俺の腰を容易く前に突き出させた。

 

「あっ、や……っ!」

 

 川崎の肩に一瞬顎を乗せて、衣服越しだろうと挿入しようとしているかのように腰を打ち込んでしまう。川崎の声が耳朶を打ち、無理やりするのも悪くないんじゃないか……などという邪な考えが頭を過ぎった。

 川崎がちらりと真横にいる俺を見やる。目に涙を浮かべながらも、不思議と嫌悪感は無いように思えた。

 

「……あんたが悪くないのは分かってるけど……変態」

「……すまん」

「……はあ、あたしがあんたに背を向けてるからこんなことになったのかな……」

 

 ふむ、と思考を巡らせる。

 川崎が後ろを向くことで、確かに俺は立ちバッ……あられもない行為(言い直す意味の無さよ)を想起してしまった上に、川崎の尻の柔らかさを堪能……味わってしまった(言い直す意味の無さよagain)。この体勢が招いた結果は甘美……惨憺たるものと言えるだろう。

 この密着状態はあと15分は続く。それなら一体どうしたら良いかと考えるが、一向に良い案が浮かばない。

 うんうん唸る俺に、川崎は一つの案を提示した。

 

「あたしの顔を見てれば、あんたも緊張感を保てるんじゃない?」

「え」

 

 それってまさか……という嫌な予感はすぐに当たり、駅に着いて車両の密度が薄まった瞬間に川崎がくるりと身体の向きを変えた。頬を赤らめながらもどこか得意気な様子を見る限り、どうやら本気でこの策が状況を改善出来ると思っているようだ。

 俺、知ってる。今の川崎の行動を何て言うか、知ってる。

 自殺行為ってやつだ。

 

「どう? これならあんたはずっとあたしの反応が見える訳だから、少しは……ひぁっ!?」

 

 川崎が幾分得意気に――何気にこんな表情を初めて見た――喋り出した直後、発車と同時に大きく揺れた。俺は川崎の身体に突っ込まないように、川崎の顔の両脇に見事に壁ドンを決めた。俺みたいな人種はキザなことを意識的にやろうとした所で一生かかっても出来ないけれど、追い詰められた状況でなら結果論的に可能なのだということを覚えた。何これ今後一切役に立たない経験則。

 

「あ、え? ちょっと、これ、え、え……?」

 

 川崎が大パニックだ。やばい、何か今までの俺の生き方とかキャラとかを全無視してキスしたい。いや、いかんだろ俺。落ち着け。

 

「いや、これ自体はさっきもやってたけど……」

 

 呟くように言うと、川崎との距離の近さに驚く。川崎はすらりと身長が高いため、顔の位置が異常に近いのだ。具体的に言うとおでこにキスが簡単に出来る。いかん、思考回路がショート寸前というかもはや完全にバグっている。

 

「……もしかして、さっきよりやばい?」

 

 川崎はここに来てやっと、この危機的状況を認識したようだ。

 

「……いくらお前の顔を見て緊張感を保とうとしてもな、物理的に……うおっ!?」

「ひぁっ!?」

 

 大きな揺れに、俺は川崎に思い切り体重を掛けそうになる。この時、川崎の後頭部と壁に僅かな空間があったこと、川崎が慌てていてその状況を認識していないことに気付いた。

――だから、反射的に。

 右手を川崎の頭に回して、川崎の頭が壁にぶつかるのを防いだ。

 顔がついさっきまでと比較にならない程近い。川崎の瞳孔まで良く見えて、さっきMAXコーヒーを飲んだ為か口からは甘い匂いがする。

 

「……あり、がと……っ」

「お、おう、無事で良かった」

 

 川崎が俯いて返事をする。たどたどしく答えながらも、俺は川崎の頭から手を離せない。それどころか愛おしむように撫でてしまう。川崎は俺の行為を嫌がることもなく、それどころか頬を緩ませた。

 またしても揺れる。

 今度は左手を川崎の背中に回す。

 またしても揺れる。

 川崎を守るという大義名分の下、ぎゅっと抱き寄せる。

 またしても揺れる。

 川崎の身体の柔らかさと甘い匂いに、下腹部が加速度的に反応する。

 

「比企谷……っ」

 

 苦しさや羞恥の色が無い、どこか甘えたような蕩けた声音だった。

 

「……どうした」

「あたし……汗、大丈夫? その、匂わない……?」

 

 川崎の言葉に力が抜けると同時に、ふと視線を下ろす。

――黒のキャミソールは川崎の白い肌に妖しく吸い付き、豊かな双丘が俺の身体と密着することでいやらしく歪んでいる。見事な谷間にはじっとりと汗が滲んでいた。

 ごくりと息を呑んで、顔を逸らす。

 

「正直に言っていいか」

「……ん、いいよ」

「良い匂いしかしない。何でこんな超良い匂いなの?」

「……ばかじゃないの」

 

 そう言って川崎が目を細めると、車両が揺れると同時に俺の腰に手を添え、胸元に顔をうずめた。俺は川崎の青みがかった黒髪に口元をうずめて、鼻腔を包む甘い匂いに酔いしれた。

 電車が揺れる度に、硬くなった股間が川崎の腹に押し付けられる。その度に、川崎は俺の胸で小さく喘いだ。

 抱きしめる力を強くしても、川崎はいやがらなかった。

 

       ×  ×  ×

 

 駅のホームにベンチがあります。

 そこに、2人の男女がいます。

 年頃は……見た所、高校生でしょうか。

 2人とも、顔を両手で覆っています。

 いないいないばあをしているんでしょうか?

 いいえ、目の前に子供はいません。そもそも2人同時にいないいないばあをするのも斬新すぎます。両方いっぺんには見れません。

 では、何をしてるのでしょう。

 ホラーごっこでしょうか。

 手を離したら実は化物の顔が……とか、そういうパターンでしょうか。

 そんなことはありません。手をどければそこにいるのは美人&目以外はまあまあという男女です。

 では、何でしょうか。一体、何をしてるんでしょうか。

 正解は――

 

「電車の中で熱に浮かされるままにやらかした自分たちの行為を死ぬ程恥じて、何か場を取り繕う言葉を発しようにも何を言ったら良いかも分からず、取り敢えず視界を閉ざして落ち着こうとしている」です。

 

 ウケますね。

 ていうか、うん。

 これ、俺と川崎です。

 

 

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

 

 駅の喧騒の中、2人の間にだけ地獄のような沈黙が流れる。周りの喧騒を全て吸い取ってしまって、ここだけものの見事に無音の空間が出来上がっている。

 

「……なあ、さっきのこと「ちょっと待ってもう少し」お、おう、すまん」

 

 まだ回復していないらしい。

 3分後。

 

「……さっきのは、その……っ」

 

 川崎のくぐもった声がする。何を言わんとしているかは分かる。さっきの記憶を無かったことにしようと言うのだろう。確かに、2人の間でそう取り決めれば、無かったことには出来る。

 けれど――

 

「……なんか、もったいねえなぁ……」

 

 手をどけて、ぼんやり駅を眺めながら呟くと、

 

「……もったいないって言うな……っ」

 

 同じく手をどけた川崎と目が合った。

 しばしの沈黙。

 

「……取り敢えず、行くか。目的地はここから近いのか?」

「え、ああ、うん、歩いて5分くらいだけど」

「じゃあ行くか。風でも浴びて頭を冷やさないとな」

「……うん」

 

 今しがたの羞恥プレイ(羞恥プレイって言っちゃった)のことはうやむやにして歩き出す。

 並んで歩く川崎の顔を見ると、電車の中で見た艶めかしい肢体を思い出してごくりと喉が鳴る。

 煩悩を振り払うようにぶんぶんと首を振ると、川崎はきょとんとした目で俺を見つめ、それから呆れるようにくすりと笑った。

 たったの30分間でいきなり濃すぎる展開になったが、今日という一日はまだ始まったばかりだ。

 

 

 

 続く。

 

 

 

 




 サキサキでした。電車の中では毎回大変なことが起きますね。個人的なツボだった台詞は「とぼけんな変態……っ」です。
 電車のシーンは今回で4回目……?

 コミケのアンケート、引き続き活動報告で集めてます。参加は8月12日(金)で1日目です!

 明日は定休日です。皆さん良い休日を!
 それでは、また【明後日】ここでお会いしましょう(^^)!
 今回もお読み頂きありがとうございました(^^)!!
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