※この作品はR-18です。

俺ガイル 日常の何気ないエロス。   作:高橋徹

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(2)

 春休み、2日目。

 

 俺と小町はリビングにいた。俺は課題をしていて、小町は高校入学直前ということで盛大にだらけている。中学生として最後のひと時を全力で怠惰に過ごしたいらしい。この辺りは俺と兄妹だなぁと実感が湧いたりする。ちらりと見やると、カマクラをもみくちゃにするのに夢中になっていた。おうふ、カマクラが天に召されそうなくらい気持ち良さそうな顔を……。

 

「ほれほれ~、ええのんか~、ええのんか~」

「にゃー」

「…………」

 

 何この光景、すごくバカっぽくてすごく和むんですけど……。

 小町はしばらくカマクラと戯れていたが、カマクラが勘弁してくれと言わんばかりにリビングから退散してしまうと、口を尖らせてソファに寝転がった。

 

「はー……お兄ちゃん」

「ん、どうした」

 

 ソファでごろごろと自堕落の極みな体勢で小町が話しかけてくる。俺は視線をノートに向けたまま答えた。学校では抜群の人気者で、家でも良い立ち回りをしてくれるのに、俺の前ではこうやっていつもだらけている。ギャップで死にそう。

 

「小町さー……こんな風に今はくつろいでるけどさー……」

「ああ」

 

「夏に向けて、くびれボディになりたいんだよねー」

 

「……は?」

 

 心の底から湧いた声だった。小町を振り向くと、クッションを抱きしめたままだらしなく表情筋を緩めている。

 ……こいつは、なに寝言を言ってるんだ……?

 

「そうかそうか、素敵な夢だな。頑張れよ。お兄ちゃん応援してるから」

「うへぇ……1mmも心がこもってない……」

 

 小町は辟易とした声で言いながらソファを降りた。そして俺と背中合わせで座り込む。小さな背中が寄りかかってきて、猫背が少しだけしゃっきりと伸びた。

 

「お前、同じことを去年も言ってたな。去年は夏休みに入ってから言ってたから今年はまだマシだが、そんなだらだらと過ごしてたら説得力皆無だぞ。応援する気が湧く訳が無い」

 

 ちなみに去年は夏休みに入ってから「プールで水着になるから」と腹筋を始めていた。その行動のあまりの遅さに驚いたが、それよりも何よりも、小町が腹筋の際に掛け声で「ふんすっ、ふんすっ」と言っているのが凶悪なまでに可愛かったのを覚えている。あれ本当に可愛かった。

 

「むぅ……それはそうだけど……」

 

 不満げな声で答えながら、小町が振り返って俺の肩に顎を乗せる。俺はシャーペンを走らせる手を止めずに、空いた手で小町の頭をくしゃりと撫でた。猫のように目を細めて気持ち良さそうにしているのを見て、勉強で張り詰めていた神経がいとも容易く解れる。

 

「まあ、あれだ。俺もずっと勉強してると疲れるからな。午後にでもジョギングしてみるか、一緒に」

 

 試しに提案してみると、小町の目がきゅぴーんと光った。ヤマピカリャー。

 

「いいね! わーい! それじゃ小町、愛するお兄ちゃんのためにお昼ご飯を作っておくね! ちゅっ!」

「えっ、ちょっ!? お、おい……っ」

 

 俺の頬にキスをすると、小町が勢いよく立ち上がってキッチンへと駆けていった。小町と行為に及ぶ時は全然羞恥心は感じないのだけど、普段小町が見せるこういった面には未だに弱い。小町は俺が恥ずかしがっているのを楽しんでいる節がある。おのれ……。

 俺は熱くなった頬をさすると、あと30分だけ頑張るという目標を設定して再び課題を解き始めた。

 

       ×  ×  ×

 

「おいっちにーさんっしー」

 

 昼食後。

 

 歯磨きをして、食休みがてらちょっとした(自主規制)をして、今は家の前で二人で準備体操をしている。

 俺と小町は二人で震脚をしていた。間違えた、伸脚をしていた。武術の心得とかないです、ぼく。

 

「いっちにーさんっしー」

 

 小町が元気よく、にっこにっこにーな笑顔で声を上げる。

 うんうん、和むなぁ――

 

「わんっとぅっ、すりっ、ふぉー」

「何で英語になったんだ」

「いー、あー、さー、すー」

「少林寺の関係者か何かですか」

「壱、弐―、参っ、肆―」

「声に出したら違いが分かんねえだろ」

 

 小ボケのラッシュだった。

 

 こんなやりとりをしながら、準備体操を終える。小町は爽やかな青を基調としたジャージを着ていて、長袖長ズボンのためいつもとと雰囲気が違う。これはこれで良い、素敵だ。

 

 ちなみにさっき、小町が俺にジャージ姿を見せた時は、くるっと一回転して見せた。

 

「どう? 小町はジャージ姿も?」

「超可愛い」

「よし」

 

 屈託の無い笑顔でにぱっと笑うもんだから、思わず抱きしめた。「ぎにゃー!」などと叫び声を上げている割に全くいやがっていないのがまた可愛いかった。

 

 腕をぐいぐいと伸ばしていた小町が、腰に両手を当ててふんすっと胸を張る。

 

「お兄ちゃん、小町はなるべく爽やかなジャージを選びました」

「ああ、可愛いぞ」

「うへへ……や、そうじゃなくて。これは目的があるのです」

「可愛いぞ。目的ってなんだ?」

「うへへ……は! しまった、お兄ちゃんに籠絡されかかっている……」

 

 小町が自分の頬を両手でぺちぺちと叩く。そして何故か頬をむにーっと伸ばして、もう一度叩いた。新手のゆるキャラだろうか。グッズ全部買い占めてやるぜぇ……それどころか本人を買い取って家で養ってやるぜぇ……既に家にいたわ。

 小町が俺をびしっと指差した。掴めということだろうか。

 

「この色にしたのは、お兄ちゃんの気持ちも爽やかにしてなるべく運動中に変な気を起こさないようにってぎにゃー!?」

 

 人差し指を掴んでにぎにぎしたら、変な声を上げられた。小町はしゅばっと手を引いて、猫のように「ふーっ、ふーっ」と息を荒げる。

 

「なんだ、どうした。俺は指を掴んだだけだぞ」

 

 アメリカンコメディーばりにお手上げのポーズを取る。

 

「や、だってお兄ちゃん……自分から仕掛ける時、こういうちょっとした動作から入るじゃん。ちょっと油断してる内に気付いたらとろとろにされる身にもなっ……こ、この話は終わり! 終わりです!」

 

 小町が急に頬を赤らめて両手を振った。レフェリーストップらしい。今までのことを思い出して恥ずかしくなったのか……うむうむ、愛いやつめ。

 二人で並んで、スタートの構えをとる。なんでジョギングをしようとしてるのに、マラソン大会みたいな雰囲気を醸し出してるんだろう。

 

「さて、行くよ!」

「おう、どこがゴールか知らんが、負けねぇぞ」

「負けないからね、ごみいちゃん@寝ている小町の身体をまさぐりがち」

「なんでTwitterのアカウント名みたいに!? しかも俺の所業がバレてた!」

「隙ありっ」

「うぬあっ!?」

 

 動揺した隙をつかれて、またしてもほっぺにキスをされた。小町は走り出してから後ろを振り返ると、固まっている俺に向けて舌をちろりと出した。可愛すぎて更に思考と動きが止まってしまった。

 30mくらいの差をつけられたけど、信号待ちでごく普通に追い付いた。や、まあ、街中ですしね……。

 

「あっさり追い付かれた……」

 

 眉根を寄せて不満げに呟く小町に悶えながら、視線より幾分下にある頭をくしゃくしゃと撫でた。

 

       ×  ×  ×

 

 30分程走っただろうか。

 

「はぁっ、はぁっ、はぁっ……も、もう、小町は限界~……」

 

 通ったことの無い公園に入った所で、小町が音を上げた。

 

「そうか、じゃあ休むか」

 

 言って、近くの木陰へと移動する。歩きながら、小町が何故か俺をじっと俺を見つめてきた。

 

「……お兄ちゃん、なんでそんなに平気なの?」

「ふっ……小町。甘い、甘い、甘すぎるぞ」

 

 小町に対してずびしっと指を差す。

 

「これが、二人乗りを妹に日々強制されたものが身に付けた体力だ! そして俺が鍛えている間、お前はくつろいでいたことで停滞どころか後退さえしている! その差なのだよ!」

「な、なんだってー!?」

 

 小町がサスペンス顔で驚く。3秒程そのままで制止すると、極めて冷静にいつものテンションに戻った。

 

「そっかー、その差は大きいなぁ……」

 

 二人で茶番を繰り広げた後のこの落差は、いつものことだったりする。由比ヶ浜なんかは俺たちのやりとりを見て、「なんか心臓に悪い……」などと言っていた。失礼なやつだ。事実ではあるけども。

 

「小町も自転車に乗ろうかなぁ……でもお兄ちゃんと二人乗りするの楽しいんだよなぁ……」

 

 なんですと。

 

「来年度一年は俺が毎日送ってやろう」

「チョロすぎるよお兄ちゃん……」

 

 小町は俺の言葉に呆れながら、「でも、そんなとこも好きだけどねー」とさらりと言う。身体が芯から熱くなった。

 

「……ん?」

 

 ふと、目の前に立っている小町の首筋に目が行く。スタート前は寒さを感じていたが、昼時にしっかり走ったのが功を奏したのか、しっとりと汗をかいている。微かに香ってくる小町の甘い香りと汗の匂いが混じり合ったものが鼻腔を擽り、途端にいかがわしい気持ちが湧いてきた。

 

 周りを見渡す。あまり通る人が居ない公園のようだ。

 

 リラックスした様子で周囲を見回している小町のうなじに、そっと顔を近付け――ちゅっ、と口付けをした。

 

「ひゃぁんっ!? や、ちょ、お兄ちゃん、何すんのさ!?」

 

 俺がキスした所を手で押さえながら、小町が顔を真っ赤にして抗議してくる。

 

「や、まあ、何となく……な」

 

 言って、首を押さえている小町の手首を掴んでゆっくり引き離す。小町は戸惑ってこそいるものの、飛び退こうともしない。

 もう一度口を近付け、わずかにしょっぱさを感じる肌に唇を着地させると、今度は舌を出して表面を舐め上げる。

 

「はっ、ひゃぁぁ……やっ、やぁん……っ」

 

 小町の声が見る見る内に甘ったるいものに変容していく。

 たまらなくなって、小町のうなじに吸い付いたまま細い二の腕を掴み、通行人から見えないであろう林の奥に移動する。

 

「やっ、だめっ、お兄ちゃん、こんな、とこ、ろで、あっ、あふぁぁぁ……っ」

 

 俺の舌の動きに敏感に反応する小町の身体は、言葉とは裏腹に何の抵抗も示さずに俺のなすがままになっていた。

 

 

 

 続く。

 

 

 




 小町でした。もう1話で終わらなかったら更にもう1話書きますw
 この兄妹の会話が一番自由気ままに書けますわ……。

 それでは、また明日ここでお会いしましょう(^^)!
 今回もお読み頂きありがとうございました(^^)!!
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