1周年記念エピソード、始まるよ!
(1)
「どぅるるるるるるる……」
すぐ隣から、可愛らしいドラムロールが聞こえてくる。テレビで結果発表とかの前によく聞くあれだ。
「とぅるるすっ、とぅるっ、とぅるるぅうりぃぃ……とぅるすっ」
やたらと長く続けているためか、ミスが目立って来た。途中でちょっとジョジョが入ったのは気のせいか?
「とぅるるるるるる……って、お兄ちゃん! ちゃんと『ジャーン!』って効果音を入れてくれないとタイトルコール出来ないでしょ!」
「え、そんな流れだったの?」
まさかの俺待ちだった。
――そうです。
小町が、口でドラムロールの音を真似していたんです。
や、何が「そうです」なんだって話なんだけども。
可愛いでしょう、この子。俺の妹なんです。知ってましたか?
「はい、じゃあ行くよお兄ちゃん。ちゃんとテンション高めで言わないと嫌いになっちゃうからね」
「じゃあ俺はそこからまたお前に好かれる努力をする」
「そんなにテンション上げるのいやなの……」
小町に引かれてしまった。
小町がこほんこほんと咳払いをする。ちなみに、小町は何故か90年代のバラエティの司会者みたいなぴっかぴかに光ったジャケットを着て蝶ネクタイを着けている。下はホットパンツだから色々と残念なことになっていて、なんだか見ていられない。
「良いから言って! じゃあ行くよ? どぅるるるるるるる……」
ここで、周りの視線に気付く。「早くしなさい」だったり「無茶ぶりだけど大丈夫かな……」だったり「いつ押し倒そうかなぁ……」などといった色々な感情が篭った視線が……って、あれ? 俺襲われそうになってる?
「とぅるるとぅすっ、とぅするるるっ、とぅすっ、とぅるるるるる……っ」
あ、小町がまたバテて面白い音を出し始めた。俺を睨みながら口を尖らせている。ううん、もっと見ていたいけどこれ以上は本当に愛する妹の機嫌を損ねてしまいそうだ。
「……こほんこほん、おこぽーん……」
よし、行くぞ。
「ジャーンげほごほっ!」
「え、ちょ、お兄ちゃん!? 大丈夫!?」
大きめに声を出したらむせた。慣れないことをするとこうなるんだな……。
「げほっ、だ、大丈夫だ、小町。それよりもタイトルコールを……」
「お、お兄ちゃん……」
瀕死で親指を立てる俺を見て、小町が口を手で押さえて涙ぐむ。うむうむ、素敵な茶番だ。わざわざ2ページ分ものスペースを使って、俺と小町と時々ドラムロールなくだりを延々と続けているという事実に戦慄したわ、今。
「それじゃあ……」
小町が咳払いをして、すっくと立ち上がる。左手を腰に当て、右手を高々と上げると、にっこりと笑った。
「1周年記念企画! 何でもラン、キン、グ~~~~~~~~!」
『イェーイ!』
「うおぉあっ!?」
小町がタイトルコールをした途端、結衣と一色がやたらと楽しそうにクラッカーを鳴らした。あ、よく見たら雪乃も鳴らしてた。俯いて顔真っ赤にしてるのは襲ってほしいからだろうか――
「獲物を狙うチャンスとして、その獲物が別の獲物を襲っている時が挙げられるんだが……」
平塚先生の言葉で、一瞬で身体中に冷や汗をかいた。この人純粋に何言ってるんだろう。
俺が戦々恐々としている中、小町が司会者のような大きなマイクを持って意気揚々と語り始める。
「さて、今回の企画なんですけども。まず初めに言っておきますが……メタいです」
「おう、のっけからすげぇこと言ったな」
「あと、行き当たりばったりです。どんな展開になるかあんまり分からないです」
「おう、のっけからすげぇこと言ったな」
「基本的に楽しくおしゃべりするだけの筈ですが、展開やテンションによってはややエロシーンも入ります。だってこの作品のタイトルがね」
「おう、のっけからすげぇこと言ったな」
「お兄ちゃん、村人Aか何か?」
「おう、のっけからすげぇこと言ったな」
「もぐぞ?」
「お願いしますやめてください」
「よし、お兄ちゃんが村人を脱却した」
村人を脱却ってどういうことだろう。
「…………」
ふと、周りを見渡す。
本日、この場に居合わせている者――。
雪ノ下雪乃。
由比ヶ浜結衣。
比企谷小町。
平塚静。
川崎沙希。
一色いろは。
城廻めぐり。
雪ノ下陽乃。
由比ヶ浜マ。
鶴見留美。
折本かおり。
そして、俺――比企谷八幡。
以上、12名。
過疎化した小学校の卒業式とかではないです、念のため。
場所は雪ノ下の家。広いとは言え、流石に12人も居ては狭く感じる。様々な年代の女性の甘い匂いが混じり合って、もう少し温度が上がると変な気分になってしまいそうな、そんな湿り気を帯びた空気になっている。
この、どう振る舞ったら良いか全くと言って分からない程気まずい空間に、俺は男一人でぽつんと置かれていた。
……何で、こうなったのん?
× × ×
少し前――小町から謎の召集がかかり、俺たちは急遽集合することになった。ある人は電話で、ある人はLINEで、またある人は直接、またある人は友人を介してなどなど……その連絡の仕方は多岐に渡ったようだ。
「ふー、暑い暑い。なんでこんなの着なきゃいけないんだっていう話だよねー」
説明の途中で、小町があっさりとジャケットを脱ぐ。そんな雑な扱いなんだ。
小町はハイテンションのまま、俺たちをぐるりと見渡す。
「小町さん……あなた、どうしてこんなに沢山の人を集めたの?」
雪乃がくりっと首を傾げる。それに対して小町は、雪乃を見つめてにへっと笑って返した。
「ふふふ……雪乃さん。このメンバーにはですね、ある共通点があるのです」
言って、小町が女性陣を順々に見つめていく。各々がまるで違う反応を示すのが可愛い……って、や、そうじゃなくて。
小町が最後に俺を見て、にやりと笑って言葉をためる。ため長いなー……と思いながら、雪乃が淹れてくれた紅茶を口にした――その瞬間。
「ここにいる全員が、既にお兄ちゃんのものになった、もしくはなろうとしているんです!」
「ぶほぁっ!?」
ほぼ全員が小町の言葉に変な言葉を上げると同時に、俺は盛大にむせた。それはもう盛大に。
この言葉に、川崎が顔を真っ赤にして立ち上がる。
「は、はぁっ!? あ、あんた、何言って……っ!」
川崎の様子を見て、俺と小町は目を合わせて首を傾げる。
「ほーん? 沙希さんは……あ、そっか」
「そうだな、今は複雑な立場だもんな」
「そうだね、一度ばっちり本番までしておきながら、今はクラスでお兄ちゃんと席が隣同士になって指が触れただけで顔を真っ赤にしてるような状態だもんね」
「お前はっきり言い過ぎだろ」
「てへっ☆」
「可愛いなお前……」
「まああれだよお兄ちゃん、今流行りの転生ものだと思えば」
「転生ものって言うか、ただのリトライとかニューゲームだろこの場合。しかも強くなってない」
「たしかにー!」
「な」
「……あんたたち、結局何が言いたい訳?」
『あっ、はい、すみません』
川崎がまあまあマジの怒気を孕ませて呟いたので、俺と小町は急いで茶番を切り上げた。いかんいかん、ついつい楽しくなってしまう。
こんなやりとりをしていると、折本が俺たちを見て、はてと首を傾げた。
「え、なに、あたしこれから比企谷の彼女になるの? ウケるんだけど」
「や、ウケねーけど……」
折本がけらけらと快活に笑うのを見て、どう反応したら良いか分からなくなる。
ていうか、何であなたがここにいますのん……?
「ねえねえ小町ちゃん、これはどういうこと?」
尋ねると、小町は俺と折本を順々に見て、びしっと親指を立てた。
「かおりさんはこの後参入予定だし、せっかくだから出席してもらっちゃいました☆」
「う、うぜぇ……でも可愛い……」
「まあかおりさんはクリスマス会の後の帰り道で『比企谷と付き合うのは無理かなー』と改めて言ってるからね。かなり長い道のりになると思うけど。そこはまあ、それとない偶然やハプニング、ゆったりと2人で過ごす時間、ボディータッチやエロスで何とかなるでしょう!」
さり気なく、本当にさりげなく、名前呼びしてやがる。ていうかどうやって折本を呼んだのこの子……俺聞いてないんだけど……。
「偶然とハプニングは別なのか」
「うん、何か響き的に」
一応聞いてみたら、ざっくりとした答えが返ってきた。まあ、分からんでもない。
あと、後半が生々しいからやめてほしい。ボディータッチはまだしもエロスって言っちゃった……。
俺と小町の会話を聞いて、折本が目を見開いた。
「え……なに、もしかして比企谷、ここにいる女の人全員と……?」
ドン引きというよりは興味津々という顔で折本が俺を見つめる。や、やめろ、そんな目で俺を見るな……!
「え、えっとな、やー、その……」
「かおりさん、最後まで行ったのはまだ全員ではないんですよー」
「おいこらちょっと待て小町」
「へぇ……」
折本が妖し気に微笑んで、視線を巡らせる。きっと誰と最後まで行っているかを推し量ってるんだろう。
ああもう、これだけ人数がいると会話を抑えきれな――
「そうなのよねえ、わたしもまだヒッキーくんとしてないのよねえ……」
「ちょっと!?」
不意に雪乃の部屋の隅のソファからした声に、俺は仰天する。
ソファには、由比ヶ浜マ――彼女と、平塚先生、そして陽乃さんが座っていた。
「ふふ、何だかこの感じ、大学の宅呑みみたいで楽しいねー」
陽乃さんが楽しそうに話す。何で日本酒の瓶を片手に持ってるんでしょうか。あ、もう片方にはコップを持ってる。完全にクロですねこれは。
「こら、陽乃。未成年が沢山いるんだからあまりみだりに飲んでは……む、すまんな。……ぷはっ、こ、これは……八海山か……!?」
「さっすが静ちゃん、分かってるね~」
「あらあら、美味しそうですね。わたしも頂いて良いですか~?」
「はーい、どうぞどうぞー」
ソファの上でアダルトな3人が飲み会を始めてしまった。
謎の宴をぼけっと眺めていると、肩をとんとんと叩かれた。ははぁ、これはアレだな、振り向くとほっぺを指で突かれるという古典的ないたずらだな。きっと相手は小町だろう。分かってはいるが、したり顔で笑う小町は絶対に可愛い。しょうがない、妹の可愛い顔を見る為に振り向いて――
唇に、柔らかなものが覆いかぶさった。
使い慣れたシャーペンのようにすっかり馴染んで、まるで重なるのが当たり前であるかのような感触。
キスだった。
しかもちょっと長めの。
あと、ちょっと舌が入った。
「……ぷはっ」
――唇を離したいろはが、にっこりと目を細める。
「先輩……そろそろ小町ちゃんに、具体的に何をしようとしてるのか聞いた方が良くないですか?」
「あ……そ、そう、だな……」
突然すぎる不意打ち(なんだか頭痛が痛いみたいな表現だ)に呆然としていると、場が俄かに殺気立った。
「ちょ、ちょっといろはちゃん!? ヒッキーに何してんの!?」
「あ、あんた、生徒会長だろ!? そんなことして良いのかよ!」
結衣と川崎が同時に立ち上がり、顔を真っ赤にしていろはを指差す。
「えー……こういうのは早い者勝ちじゃないですか? ……ね、せんぱい?」
「お……ぁ……っ」
耳元で蠱惑的な台詞を囁かれて、身体がぶるりと震える。
「おー、一色やるなぁ」
「やれやれー」
「結衣も負けちゃだめよ~。あ、すみません、もう1杯頂けますか?」
ソファの上のアダルト軍団が、明らかに酔った様子でこちらを眺めている。
ああ、どうしたもんだ……と思っていると、袖をくいくいと引かれた。何ぞやと振り返ると、そこには留美、めぐり先輩、雪乃の3人が……って、え、なんで?
3人がどこか拗ねた顔で眉根を寄せ、口を尖らせる。3人とも上目遣いをしていて、殺人的に可愛くて頭がくらくらしてしまう。
「八幡の……ばか」
「……比企谷くん、君って最低だね」
「……バカ、ボケナス、八幡」
「なんで!?」
なんでも何も無いんだけれど。
3人があまりにも可愛すぎて動揺して、つい立場に合っていないツッコミを口走ってしまった。
小町がこほんこほんと咳払いをして、視線を集める。
「あ、企画の詳細発表は次話に持ち込みまーす。字数が結構行っちゃったので」
「お前メタいことに対してもうちょっと躊躇しろよ」
本当に何なんだ、今日は……と思いながら。
よく分からない宴が、始まる。
いつ終わるのかは、本当に終わらない。
いかん、俺もメタくなっている……。
続く。
☆☆☆☆☆祝!!!1・周・年!!!☆☆☆☆☆
…………。
☆☆☆☆☆祝!!!1・周・年!!!☆☆☆☆☆
大事なことなので、前書きと合わせて3回言ってみました。
1年前の今日、この作品の連載をスタートしました。
ちょっとだけ思い出話をしてみます。よろしければお付き合いくださいませ。
始めるきっかけはそのままここに書くとちょっと重い感じだったのです。
小町の誕生日がマリーの誕生日と同じで、それをTwitterで知って初めて俺ガイルの存在を知り、アニメで見てみました。そこで小町の可愛さに驚いてハマり、原作を読み、当時自分が精神的に抱えていたもやもやと重なってちょっと胸が苦しくなりまして。原作自体は極めて感動的なシーンだったんですが、そこで気持ちが物凄く重くなったんですね。
それでその時ニセコイのSSを書いていたこともあり、「このもやもやを、書くことですっきり出来ないか」と思い始めました。
当時のニセコイSSのUAが1日200程度だったのに、俺ガイル&R-18という効果もあってか最初から1000人以上の方に読んで頂いて驚いたのを覚えています。
そこから紆余曲折がありまして、体調を崩したりアクセスが結構落ちたり只の誹謗中傷を立て続けに受けた時は、真剣に連載のペースを一気に落とそうかなと思ったことがありました。去年のお盆の少し前くらいです。
それでも何だかんだで持ち直し、体調や精神面もかなり良くなり、人生が少しずつ前向きになってきました。今は新しく始めた仕事(書店員をやってます)も頑張って続けながら、日々この作品やオリジナル作品を書いています。
何度も書いているんですが、一昨年の年末まで僕は小説を年に1冊読むかどうか、文に至ってはほんの少し小論文の勉強をしたくらいで、活字に触れる・読むという習慣が全く無い人でした。それが俺ガイルをきっかけに本を読み初め、ラノベを中心にこの1年で200冊以上読みました。Excelで読んだ本をタイトル・読み終えた日・ジャンルで分けて管理してます笑
ベタですが、人生何が起こるか分からないものだなぁと思っています。そして、書き続けています。
まさか毎日更新が丸一年続くとは思っていませんでした……笑 今日のお話で355話に到達しました。マジかこれ。1話の文量は一番短くて2500字程度、長くて5500字程度でずっとやっています。基本3000字程度を目安にしてずっとやってきましたが、なんだかんだで平均4000字弱は行っているようです。
今後と致しましては、今連載中のエピソードである程度終盤に差し掛かっているもの(由比ヶ浜マ、ゆきのん、いろはす)の連載をきちんと終えた頃に折本編に入り、その辺りで少し連載ペースを落とそうかと考えています。励みにしてくださっている方が多いようなので、平日1日と週末1日を休んで週5ペースくらいから……なんていう風に考えています。オリジナル作品をどんどん書いて投稿したり応募したいので、ご了承ください。
この作品を書いていなかったらそもそもこんな風にばりばりと執筆活動をするなんていうことも考えられなかったので、本当に俺ガイル及び何気ないエロスを通して出会えた皆さんに感謝するばかりです。本当にありがとうございます!!!
それで、余談なんですが……。
現在感想数が2900件を超えていまして。最近お返事出来なくて申し訳なく思っているんですが……!
エピソードを終えた時や何かの記念の際、数十件と感想を頂けたことが何度かありました。
もしかしたら、今回皆さんにお祝いメッセージを頂けたら、それで感想数が3000件を超えるんじゃないか……なんてことを考えています。ということを、堂々と言ってしまいます笑
初期も初期から読んで頂いている方、あるいは前作のニセコイSSから読んで頂いている方、感想の常連となっている方、通りすがりで1回だけ書いたことのある方、あるいは1回も書いたことのない方……。
どなたでも。
大・歓・迎です!!!
ぜひとも、感想を宜しくお願い致します。一日に何回マイページを開いても、間奏通知が来ているよな、そんな幸せな日になってほしいんです!!w
堂々と言ってしまいましたが(笑)、何卒よろしく願い致します(^^)!!!
さて、今回のお話ですが。
本当にメタいです。僕が言いたいことはジャケットをすぐ脱いだ世界の妹が代弁してくれるでしょう。
「何やってんだこいつら……」と笑って頂けたら幸いです。
あ、もしSSを書いてみたいと思っている方がいましたら、ぜひ以下のお話を読んでみて頂きたいです。
僕が本当に初めて書いたSS「楽×マリー『オネガイ』その後」第1話「ヒラメキ」
https://novel.syosetu.org/40810/1.html
1年と3ヶ月前に書いたものです。初めはこんな感じでした。これを今の僕と比べてどう捉えるかは人それぞれかと思いますが、やったらやっただけ伸びるんだなと思って頂けたら嬉しいです。僕もまだまだ伸ばします。
後書き、今までは行っても精々500字くらいだったのに……今回は2100字を超えました。まさかの。初めて本編同様にWordで下書きをしています笑
それでは、また明日ここでお会いしましょう(^^)!
今回もお読み頂きありがとうございました(^^)!!