「ほい、それじゃあ、次のランキング発表に行きたいと思いまーす!」
小町が元気よく言ったかと思うと、俺をちらりと見て艶っぽく目を細める。あー、この後がいやな予感しかしない……。
「次は『え、この人……口でするの好きすぎじゃない?』ランキングでーす!」
複数名が顔を逸らした。ソファのアダルト組は腕を組んで真剣に自分の行いを思い出している。見てるだけで恥ずかしいからやめてくれないかなぁ。
「……ん?」
視線を巡らせると、留美が片手を口に当て、恥ずかしそうに俯いているのに気付いた。
……うわぁ、どうしよう、すんごいイジりたいんだけど。でもイジったら絶対怒られるよな「お兄ちゃん、留美ちゃんの口元見すぎだねー」「おいぃ!?」……ああ、留美が俺を睨んでしまった……。でも上目遣いだから睨んでても死ぬほど可愛い。
小町がこほんと咳払いをする。
「これは完全に小町の主観で決めます! きちんと全話チェックしましたので☆」
誰かこいつのメタっぷりを止めてくれないだろうか。
「お兄ちゃんはねちっこいのが好きなので、皆さん全体的に積極的にお兄ちゃんとあれやこれやしてきたようですが」
川崎がごみを見る目で俺を睨んでる。視線が脇腹に鋭利に刺さる。
「そんな中でも、『この人、口でするのほんとに好きだなぁー!』と思った人を上げたいと思います!」
この時点で俺含めてほぼ全員の反応がえらいことになっている。俯いたり口をぱくぱくさせたり目が泳いでいたり。誰も叫ばないのが不思議なほどだ。無言の阿鼻叫喚、って感じ。一人一人の照れてる顔を写真に収めたいと思えるくらい、みんな可愛いんだが(地の文でしかこんな恥ずかしいことは言えない)、アダルト組の顔の赤さはアルコールによるものなんだよなぁ……。
「はい、それでは第3位! ん~~~~~~~~……結衣さんです!」
結衣の名前を呼ぶ前に「ぱんぱかぱーん!」と、小町が高い声で急に叫んだために、単純にびっくりして身体が跳ねてしまった。
「え、あ、あたし……?」
結衣が口に手を当てて、頬を赤らめて俺をちらちらと見る。まんざらでもない感じを出されると俺が余計に恥ずかしいんですが……。
「結衣さんは何といっても、2時間に渡ってお兄ちゃんのものを舐め続けましたからね。本当に犬としか言いようがないです」
「こ、小町ちゃん……っ!?」
結衣が固まった。無理もない。
「ちなみにお兄ちゃんはこの間、『その内、結衣の頭に犬耳を、そして尻にしっぽを入れた上で舐めさせたい』という信じられない程変態丸出しの願望を小町に漏らしてました」
「おいこら待てそんなの言った覚えがねぇぞ!?」
俺は激昂した。無理もない。
「ひ、ヒッキー……?」
「結衣、これは小町が勝手に言ったことだからな? 信じるなよ?」
「そ、そっか……」
俺の言葉に結衣は、安心したような、それでいてどこか残念なような、複雑な表情を浮かべている。
……言ってないのは本当だけど、小町の予想が完全に当たってたからすげぇ複雑な気分だ……。
「はいはい、お兄ちゃんの性的欲求は小町に筒抜けですからねー。それじゃ第2位を発表します!」
ん~~~~~~~~……と小町がやたらと長く唸る。色々考えるのも大変だね。
「第2位! めぐりさん!」
ぱんぱかぱーん! と小町が再び叫ぶ。さっきほどではないが、やはりみんな飛び跳ねた。
「え、あ、わ、わたし……? どうして? わたしそんなに……その……?」
めぐり先輩が頬に手を当てて俺をちらちらと見てくる。結衣もまだ俺を見ているので、照れくさい視線がダブルで俺に向けられている。死にそう。
「めぐりさんは結衣さんほど犬っぽいねちっこさは無かったんですが、初めてキスするまでが長かった反動なのか、あちこちでキスをするわ咥えるわですごいことになってましたね! 早朝のお外でするとか中々の変態さんです!」
めぐり先輩が固まった。無理もない。
「ちなみにお兄ちゃんは『ソファに座った状態でめぐりに咥えさせて、よしよしと頭を撫でながらじっくりたっぷりと舐めさせたい。それで最後はおでこを真っ白に染め上げたい』と言っていました。変態の鑑ですね! 変態カップルやで~!」
「またおでこ……」
俺がツッコミを入れる前に、めぐり先輩がはらりと倒れ伏した。急に病弱キャラが出来てしまった……。
……と思ったら、顔だけ上げて俺を見つめてきた。なんぞや。
「……比企谷くん、わたしのこと呼び捨てにしてたの?」
「え……あ、や、今のは小町の勝手な想像であって、俺はそんなこと全然……」
「……そっか」
めぐり先輩が、どこか残念そうに眉をひそめる。困ったように笑う顔は、俺に何かを求めていた。
2人で見つめ合う。めぐり先輩は俺の行動を待って、何も言わず、潤んだ瞳で俺を見つめる。
頭をがしがしと掻く。どうやら俺はこの場で、この人のために死ぬ程恥ずかしいことをやらなければいけないようだ。
「……あ~、そ、その……め、め……めぐ「は~いそういうのは本編でやってくださいね~」お前全然容赦ねぇな!?」
小町の鬼カットが入った。折角勇気を出して呼び捨てにしようとしたのに。
めぐり先輩は驚きを通り越して、暗殺教室第5巻の表紙みたいな顔になっている。雑でいいなら4秒くらいで描ける顔だ。でもあれ意外と難しいらしいんだよな、色合いとか。急にどうしたんだ俺。
「そんな純白おでこさんは脇に置いておきまして」
めぐり先輩がおでこをさすりながら、小さな声で「純白……? 純情じゃなくて……? わたしそんなに白かったっけ……」と真剣にぶつぶつと言っている。和むから放っておくことにした。小町の今の言葉は絶対下ネタの意味で言ったと思うけど触れないでおこう。
「それでは第1位の発表……の前に、今回はランク外だったものの期待できる人を紹介したいと思います」
小町の言葉に、はてと首を傾げる。
「それはどういう基準で選んだんだ?」
「え~っとね、留美ちゃんはね……あ」
「口が滑りすぎだろ……」
隠し事が生涯出来ないくらいの滑りぶりだった。
小町は俺を見て「やっちゃった~」と苦笑いを浮かべた後、留美を見てにへっと笑った。舌を出して許しを乞うのは止めてほしい。
「な、なんで私が……」
留美が正座して(年上しかいないせいか緊張しているようだ)、膝に手を置いて拳を握って俯いている。まんざらでもなさそうだが、耳まで真っ赤になっていた。
「留美ちゃんはねー、まだお兄ちゃんとキスをしたのが1回だけだけど、それまでが長かったし、友達からエッチな話も聞いちゃったから、これから一体どんな風に、その見た目から想像出来ないような淫乱なプレイをしてくれるかが楽しみでしょうがないです!」
「あ……え……あ……」
留美が絶句していると、小町が留美の下へ歩み寄り、肩に手を置いてうんうんと頷いた。
「留美ちゃん、大丈夫だよ。……今日ここで見聞きしたことは全部、本編では忘れるから」
「お前ちょっと自由すぎるだろ」
留美が「本編……?」と呟いて首を傾げている。まあ、その疑問さえも本編では忘れるから大丈夫……って、ああ、しまった、俺までメタくなっている……。
「さて、番外編の発表も終えた所で、そろそろ第1位の発表を行いたいと思います!」
と言いながら、小町は明らかにいろはを見ている。いろはは顔を真っ赤にして目を泳がせて、「え、え、え……?」と戸惑っている。ここまで露骨なフリだと却っていろはではないんじゃないかと思うんだが――
「第1位は……いろはさんです!」
フェイント無しだった。逆にびっくりだ。ミステリーの序盤で「お前が犯人だろ!」と言われた人がやっぱり犯人だったってくらいびっくりだ。
いろはは名前を呼ばれると、何故かすすすと俺の隣に寄ってきて、袖をつまんできた。鼻血出そう。「比企谷くん、もしかして鼻血出そうなの?」何故か陽乃さんにバレた。あの人俺の鼻血を見過ぎて高感度の鼻血センサーを身に付けたんじゃなかろうか。この世で最も要らない機能だなそれ。
「いろはさんは言わずと知れた口プレイの達人ですね。キスに始まりキスに終わる。上の口でお兄ちゃんの唇もあれもたっぷりと味わい尽くし、喉奥まで突っ込まれるとうっとりとした顔で更にねっとりと舐め回すんですよ。どう思います、奥さん?」
小町はしばらく床に転がしていたマイクを持って(ぞんざいな扱いだ)、何故か由比ヶ浜マ――彼女にマイクを向けた。
「あらま~……そんなにエッチなのね~。わたしも見習わなきゃ~」
彼女が感心した様子でいろはを見て、そして何故か俺を見ると、にこやかな笑顔のままでぺろりと舌なめずりをした。あ、これあかんやつや。勃った。
「おい小町、なんであの人に話を振ってんだ。エロ魔人にそういう話をするな。発情されたら俺がミイラになるんだぞ」
「そんなになんだ……」
小町が今日初めてたじろいだ。恐るべしエロ乳牛さん。
ちなみにこのやりとりをしている間、いろははずっと俺の袖をくいくい引っ張りながら「あうぅ……あうぅ……」と言ってました。ギャグパートじゃなかったらとっくに押し倒してます。
「さっきは友達と電話するとか言ってて結局何をやっていたかは分かりませんが、お兄ちゃんと最後までしてたら絶対声を我慢出来ないと思うので……大方キスやらお口でアレやらをしてたんでしょう」
小町の言葉に、他の面々の一部がうんうんと頷いた。「あうぅ……」といろはがうなりながら、俺の二の腕におでこをこすりつけてくる。頭をぽんぽんと撫でると、潤んだ瞳が俺を見上げた。おかしい、さっき2回出したはずなのに。もうやばいぞ。
さて、ランキングはここまでにして――と小町が言い、川崎・折本・留美を順番に見やった。
「ここからなんですが、ぶっちゃけますと大変なことになります。主にお兄ちゃんが」
『え』
その3人と俺の声が重なる。折本だけ好奇心いっぱいの表情を浮かべてるのは何でだろう。
「なので、お三方は雪乃さんの寝室でおくつろぎになっていた方が良いかもしれません。本当に大変なことになりますので」
小町が俺の都合をがん無視で話を進めて行く。
「そっか、じゃあ仕方ない。比企谷がどんな目に遭うのか見てみたい気もしたけど……」
折本が悪戯っぽい笑みを俺に向ける。その後、反応は違えど3人とも小町の言葉に割と素直に従い、立ち上がってリビングを出ていこうとする。
――と、ここで、留美が立ち止まって振り返り、不意に顔を寄せてきた。
おでこをこつんと当てて、目の前で澄んだ瞳が心配そうに俺を見つめる。
「八幡……無理しないでね?」
「お……おう、わりぃな……っ」
「……ん、よし」
留美が嬉しそうに目を細め、唇を近付けてきたが……途中で止めて身体をくるりと反転させると、リビングのドアに向かって歩き始めた。どうやら恥ずかしかったらしい。ああいういじらしさを見せられてはたまらない。
3人とも部屋を出たところで、小町がにやりと笑った。そして周りの皆とアイコンタクトをしたかと思うと、出て行った3人以外の全員が俺に近付いてきた。アダルト組は横着してソファから降りようとはしないが、それでも身を寄せると8人分の女性の匂いがむわっと香り、途端に頭の中が薄紫色に染まる。
「お兄ちゃんはさっき、いろはさんと何かしらしちゃったんだと思います。それが悪いとは言いません。けれど、今は状況が状況なので、いろはさんだけじゃなく小町たちも相手にしてもらいます」
「え、お、おい……?」
小町の言葉に目をむく。気付けば部屋の湿度が増し、発情した視線が粘糸となってねっとりと絡み付いていた。
「ここからも、表向きはあくまでも雑談ね。お兄ちゃんは小町たちとおしゃべりしながら、色々したりされたりするんだよ。楽しそうでしょ?」
「こ、小町……お前さっきから、本当に何言って……っ」
思わずごくりと鳴らした喉の音に、全員が反応した。
雪乃の寝室に行った3人は、今頃どうしているだろうか。川崎も留美も人見知りだから、きっと折本が上手く繋いでくれているんだろう。
――そんな想像をしていないと、まともに気が保てない程に。
俺の鼻を掠める複数の甘い吐息に、牡の部分ががちがちに勃起してしまっていた。
続く。
引き続き。ここからは爛れます、大いに爛れます。
それでは、また明日ここでお会いしましょう(^^)!
今回もお読み頂きありがとうございました(^^)!!