小町といろはを散々責めた所で、ふっと息を吐く。2人はそれぞれ雪乃と結衣が介抱してくれていた。俺よりも遥かに疲れ果てて、ぽけっとしている2人の頭をくしゃりと撫でて、ソファに浅く腰掛けた――その瞬間。
「……ふーーっ」
「うひゃういぇおっ!?」
首筋に吐息をかけられ、上げたことの無い奇声を上げてしまった。
「今のは奇声どころか規制ものだよお兄ちゃん……」
仰向けに寝転がった小町が、地の文を平気で読んできた。何でそんな状態で言葉遊びが出来るんだろう。
「……気持ち悪い……」
雪乃が低い声で俺をなじる。ちょっとシンプルすぎやしませんかね。シンプルが故にダメージが大きい。
……なんて思ったが、雪乃の視線をきちんと辿ると俺を見ていないことに気付く。
「ひーきがーやくんっ」
子どものような調子で俺を呼びかける声がした途端、背中が柔らかな感触に包み込まれた。身体の前面に絡められた腕が、俺の顎をそっと撫でる。
「……陽乃さん、何やってんですか」
鼻腔を擽る甘い香りの正体は、陽乃さんの匂いだった。雪乃、自分のお姉さんに気持ち悪いだなんて言わないで……。
陽乃さんは俺の身体に絡み付いたまま、ゆらゆらと揺れた。
「んふふふー……」
「…………」
あ、この雰囲気はやばい。
機嫌が良い。
機嫌が良いのにやばいと俺が思う辺りが、この人のやばいたる所以だと思っている。やばいを連呼すると抜群に頭が悪い感じがするな。俺やばい。
この人、機嫌が良いと俺へのいたずらがそれはもうひどくなるんだよなぁ……。一緒にご飯を食べに行った時なんて、公然猥褻未遂及びぶっちぎりの公然猥褻を平然と仕掛けてくるし。
あー……どうしよう。
「……はぁ」
「……比企谷くん。君はなんで、綺麗なお姉さんに抱きしめられてるのにそんな中年サラリーマンみたいなため息を吐いてるのかな?」
悪戯っぽい口調に、ほんのわずかだけ……希釈された怒気が混じる。あ、これは本当にやばい。この人を怒らせると後の生活に支障が出る(物理的・精神的・経済的・勉学的その他諸々の意味で)。
「や、陽乃さんが綺麗なお姉さんってのは何の文句も無いんですけどね」
「…………」
「いたいいたいいたいいたい、頬をぐりぐりしないでくむむむ」
さりげなく褒め言葉――という名の、ただの事実報告――を告げると、陽乃さんは数秒の間を置いて、俺の頬に指をぐりぐり押し付けてきた。どうやら照れているようだ。顔を見なくても、こういうあまり痛くない攻めをしてくる時は、照れ隠ししようとしているのだと経験で知っている。
――なんていう風に、内心調子に乗っているのが顔に出てしまったからだろうか。
「……君のような勘のいい子は嫌いだよ」
「いだだだ!? ちょっと陽乃さん、爪が! 爪が食い込んで……っ!」
なんでそんな懐かしい台詞(若干変えてるけど)と共に攻めを強めてんのこの人!? 実写化されるから!? 関係無いな、うん。
俺の頬をしばらくごりごりと抉った後(穴を開けるつもりなんじゃなかろうかと、途中本気で思った。本当に痛かった)、陽乃さんは俺の頬――もはや患部と呼んで良いのではと思う程ひりひりする――を優しく撫でた。
「比企谷くん。そろそろ服、脱いで良いんじゃない?」
「え? ……あ」
ふと、自分の服を見やる。
俺は相変わらず肉棒だけ晒した状態だが、服はこの家に来た時のままだった。汗をじっとりとかいていて、冷静になるとべたべたしていてちょっと気持ち悪い。
「それじゃあ……」
脱ぎます――と言いかけて、女性の集団の前で堂々と服を脱ぐことに抵抗を覚える。
「この場の全員とやることやっておいて何を躊躇している。早く脱ぎたまえ、比企谷」
「は、はい……っ」
平塚先生の凛とした声に背筋が伸び、いそいそと服を脱ぐ。くそぉ……この人が先生モードになるとつい言うことを聞いてしまう……!
服を最低限折り畳み、くるりと振り返る。
「陽乃さん、脱ぎましたよぉ……っ!?」
驚きで声が裏返った。
「よしよし、良い子だね」
陽乃さんは、俺の姿を見て満足気に頷いていた。
――上下ばっちり、下着姿になった状態で。
……や、この人、何やってんの?
そんなツッコミが頭に浮かぶが、目の前の美しい肢体に見惚れて、その言葉も喉の中でかき消えてしまう。
赤と黒のランジェリー姿。黒の布は透けていて、肉感たっぷりの乳房の先端がうっすらと見えるのが悩ましい。下のTバックも同じく透けていて、陰部を覆う赤い布地の下に生えた恥毛が微かに見える。見えているのにもどかしい、絶妙な見え具合。
本当に俺は、この人を数え切れない程抱いているのか――?
自分の記憶は捏造されたものなのではないかと疑う程、目の前の女性は信じがたい美貌を放っていた。本当の美しさというものは、飽きというものとは無縁なのかもしれない。
「……ん、良い具合に反応してくれてるね。お姉さんは嬉しいぞ」
陽乃さんが得意気に笑って、視線を下に移す。
「……あ……っ」
陽乃さんを見ているだけで、気付けば肉棒がぎちぎちに反り立ち、その切っ先を陽乃さんに向けていた。
さて、それじゃあ――と陽乃さんが言って、ソファにもたれかかって俺に手招きする。
「ほれほれ、ここに座って」
「え、あ、はい……」
無邪気に笑う顔と蠱惑的な肉体のギャップに撃ち抜かれながら、言う通りにする。
素肌が陽乃さんの薄い下着に触れ、洒落にならない程の緊張が走る。薄布一枚の下の突起が、背中にこりこりと擦れていた。
「よし。それじゃあ、めぐりー」
「え……」
陽乃さんの言葉に驚くと、めぐり先輩が徐に俺の正面に立った。
「……こ、こんにちは……」
「……あ、ど、どうも……」
あれ、今日初めて会話を交わすんだっけ? ていうかこれもはや初対面の挨拶だろ。何この空気……めぐり先輩は何でこんなに照れてるんだ?
「いけ~……お兄ちゃん、めぐりさんのおでこを真っ白に染め上げてしまえ~……」
「お前のせいか!」
雪乃の膝枕でうたた寝しながら、小町が爆弾を放り込んできた。くそ、そこ気持ち良さそうだな……。
「ひ、比企谷くん……っ」
めぐり先輩の声に顔を上げると、両頬に手を当てて耳まで真っ赤にしてもじもじしていた。これ以上無い程保護欲を誘う仕草に、思わず見惚れる。
「そ、その……もし、もしね? 本当にそういうことをしたいんだったら……わたしは、その、いいよ? でも、ちょっとここだと恥ずかしいから……今度、2人で、ね?」
「しましょうしましょうぜひしましょう後で予定を組みましょう」
「そんなに!?」
思わず食い気味で言ったら、めぐり先輩が驚きながらもツッコミを入れてくれた。俺の性癖をずばり言い当てた妹が恐ろしい。
「うぅ……っ!?」
和やかな会話をしていると、不意に背中を指でなぞられた。振り向くと陽乃さんが蠱惑的に笑っている。
「ほら、めぐり。そろそろでしょ」
陽乃さんの言葉に、はてと首を傾げる。
そろそろって……何が?
その疑問も、めぐり先輩の行動によりすぐに答えが明らかになった。
「う、うん……」
陽乃さんの言葉に頷いて、めぐり先輩が服のボタンに手をかけ、1つ1つ外し始める。
「え、ちょ、えぇ……っ!?」
陽乃さんは俺に脱ぐ姿を見せなかったが、めぐり先輩は今こうして、俺に一部始終を見せるようにして脱ぎ始めている。ボタンを1つ外すごとに足をもじもじとくねらせ、恥ずかしそうに俺をちらちら見やるのが却ってこちらの官能をかき立てる。
「比企谷くん……わたし、ね? おでこにかけるのは2人きりの時にしてほしいけど……他のことは、その、今やってみたいなって思ったんだ。……みんなのを見てて、あんまり我慢出来そうにないから……」
「……っ」
めぐり先輩の言葉に、ごくりと息を呑む。
めぐり先輩の着替えに見惚れながら、陽乃さんの手を握り返すと、
「あん……っ」
耳元に、悩ましい喘ぎ声が淡く滲んだ。
続く。
はるのんとのやりとりや他のキャラを適宜混ぜたくだりが楽しくなって、予定していたシーンまで行きませんでした。楽しい予定外。エロを連続で書くと中々大変なので、良い息抜きになりました。
明日なんですが、恐らくお休みするかと思います。もしかしたら深夜2~3時くらいに投稿するかもしれません。
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今回もお読み頂きありがとうございました(^^)!!