1.
買い物兼遊び目的のお出かけを終えて、ようやく帰宅する。
時間的にはまだ夕食を作るにも少し時間があるので、何をしていようかと考えながらスーパーで買ったものを冷蔵庫に入れていると、ふと視界の隅で雪ノ下がふらふらしているのが見えた。
「おい、雪ノ下。大丈夫……じゃねえな」
話しかけると、雪ノ下がこちらを向いて苦笑いを浮かべた。
「ああ、ごめんなさい。……少し、疲れてしまったようだわ」
少し前までであれば、意地を張って大丈夫と言っていたかもしれない。
でも今は、その時と比べて、少しばかりこちらを信用してくれるようになったみたいだ。
そのことが嬉しくて、失礼かなと思いつつもふっと微笑むと、同じように微笑む小町と目が合った。ううむ、流石兄妹。
小町はこれから冷蔵庫に入れようとしている食べ物が入った袋をぺしぺしと叩き、にっこりと微笑む。
「まだ晩御飯作るまで少し時間あるし、これを冷蔵庫に入れるのもそんなに時間はかかんないから、雪乃さんとお兄ちゃんは休んでて良いですよ! お兄ちゃん、雪乃さんを部屋に連れてってあげて?」
言うと、俺にしか見えない角度でにやりと笑った。こいつ……。
小町のにやり顔は腹立つけど、言ってることは至極まともだ。だから「わかった」とさらりと返事をして、小町の言う通り雪ノ下を俺の部屋に……と思っていたら。
「……ん?」
ふと、異変に気付く。
雪ノ下が、なんか変だ。
今はもうふらついてないんだけど、むしろぴたっと止まってるんだけど、そのぴたり具合が半端ない。なに、パントマイムの人だったの?
……なんで顔真っ赤なのん?
「お、おい、雪ノ下、どうし――」
言葉を最後まで言い切る間も無く、雪ノ下が俺の方に振り返り猛然と捲し立てる。
「べ、別に比企谷くんの部屋に行くから慌てている訳ではないわ。そうよ、私たちの今のこの関係から考えればそんなことは至極当然よね。私の部屋にはあなたは来たことがあるのだし。そうよ、これはごくごく自然な行為・成り行きだわ。だから、その……何も……緊張なんか、してないし……恥ずかしいとか……そんな……」
「…………」
…………。
やばい。
こいつ。
俺を、殺す気だ。
わざわざ全部事情を言ってくれちゃったよ。しかも何だよその可愛い慌てよう。ちょっと可愛すぎて意味分かんないです。
「……あ」
隣を見たら、小町が首を左手で押さえて仰向けに倒れていた。右手は天に伸ばしている。
なんか、「比企谷死すともぼっちは死せず~」とか言いそう。そりゃそうだろって話だけど。
「くうぅぅ……不意打ちだよぉ……雪乃さんの不意打ちキュートだよ……」
泣きそうな声でなんかバカみたいなこと言ってる。なんだ不意打ちキュートって……。言わんとしてることはすごい分かるけど。俺も死にかけたし。
ダイイング小町(その2)のアホらしい様子にさえ注意が行かない程、雪ノ下は余裕がさっぱり無いようなので、そっと手を引いて部屋に連れて行った。
2.
「ほいよ、まあ座ってくれ」
「……あ、ありがとう……」
クッションの上にぽすりと腰を下ろすと、雪ノ下はものすっごいきょろきょろと部屋を見回し始めた。すんごい見てる。なんか目が子どもみたい。
……あれ、リビングに入ったときはさらっとしか見回さなかったのに……この差はなんなのん?
そして俺をちらちら見たかと思うと、何か迷ってるのか少しばかりもじもじして、ゆっくりと目を閉じる。
数秒後、目を開けて妙にきりっとした顔になったかと思うと、斜め右に座っていた俺の所にクッションを持ってすすすと寄ってきた。
……なんでそんな気合入れたんだお前……。
肩を抱くか迷って手をわきわきさせていると、雪ノ下が無言で俺の肩にこてんと寄りかかった。
や、終始無言てなんなんだお前。登場したての頃の金髪幼女吸血鬼かっつの。
……すげえ良い匂いする。
何度嗅いでも、というとすげえ変態みたいだけど、ていうか変態か、俺。ツッコミによる相次ぐ脱線で1文終えてしまった。
では、改めて。
……何度嗅いでも、この匂いには慣れない。どきどきするのに安らぐし、あと、勃つ。はいサイテー。
力を入れ過ぎないようにそーっと肩を抱くと、小さく「……んっ」と声を漏らした。
……くっそ可愛い。なんだこの生き物。
もう少し匂いを嗅ごうと思って首を傾けると(変態)、雪ノ下は俺の首やあごの下辺りに自分の顔をこしょこしょと甘えるようにこすりつけてきた。なんか猫みたい。
眠そうにしながらも甘えてすりすりしてくるし、胡坐をかいている俺の太腿にごく自然と手を置いてそっちもすりすり撫で回してる。
あ、これあかんやつや。
「雪ノ下」
「……ん……」
右手で雪ノ下の首をくいとこちらに向けて軽く口付けすると、子どものような幼いとろんとした顔で、不思議そうに俺を見つめてきた。
んー、この部屋入ってから何度か僕殺されてますねー。既に残機が底を突きそうですねー。
ちょっと、むらむらがやばい。しかしこれ以上雪ノ下の身体に負担はかけたくない。でも何かしたい。
うーん。
どうしよう。
獣と人の間を心の中で行き来してぐぬぬと唸っていると、
「……あ」
一つの案が浮かんだ。
雪ノ下に向き直り、頭をくしゃくしゃと撫でながら話しかける。ポイントは子供に話しかけるような優しい口調。ただし赤ちゃん言葉を使おうものなら即座に物凄い冷たい目で見られて俺の人生 is overしちゃうので、あまりやりすぎないように気を付ける。
「雪ノ下、マッサージするか? ほら、そこ、ベッドあるから、な、うつ伏せになってもらってれば良いから。何なら途中で寝てもらってもいいし。な、どう?」
…………。
我ながら、すんごい気持ち悪い言い方をしてしまった。日頃からキモいキモいと言われて耐性が付いている俺でも自己嫌悪してしまう。
多分同じように自己嫌悪に陥る気持ち悪い言葉のケースとしては、「挿れるのは先っぽだけだから!」が挙げられる。本当に先っぽだけちゃんと挿れて済ますやつが居たら、そいつはもはやただの神だぞ。God of 亀頭。なんか違うな。
こんな誘い方しても流石にアレかなぁ……と思ったのだが、
「……ん」
目をくしくしとこすり、若干幼い喋り方を残したまま、雪ノ下がこっくりと頷いた。
よし、眠気に任せてうやむやにして押し切る作戦成功! ちょっとだけ本気で考えてたから俺本当にゲスい!
3.
「それじゃ、この辺りに寝てくれ」
「え、ええ……」
ここにきて我に返り始めたのか、雪ノ下の挙動がぎこちない。
ふはは……もう手遅れだぜぇ……。
恥ずかしがりはするものの、律儀にベッドにうつ伏せになる。
その際にロングスカートが少し捲れて、白いふくらはぎがちらりと見えただけで、たまらなくなった。
それじゃ、と言って、俺は雪ノ下の上に腰を下ろす。
「んんっ……」
体重を掛けると、雪ノ下が甘い声を漏らした。
俺は、雪ノ下の尻に自分の竿を宛がう位置に座っている。
いくら衣服越しとは言え、この状態でも既に興奮しすぎて頭がどうにかなりそうだ。
「じゃ、触るぞ」
言うと、雪ノ下の身体がぴくっと揺れた。
「……ん」
返事なのかもよく分からない返事をされて、俺は雪ノ下の背中に手を伸ばした。
4.
初めはちゃんとやろうと思い、肩甲骨近くを親指でぐっと押す。初めはって言っちゃった。
まあ、これくらいなら普通のマッサージになるだろう……と思ったら。
「あふっ、あぁぁぁ……っ、んっ、くふぅっ、ふあぁっ……」
…………。
……助けてー。
おいバカやめろよ。最初からそんな飛ばした声出すんじゃねえよ。
ベッドのシーツをきゅっと握りしめるんじゃありません! それは行為の最中にやるやつですよ! このツッコミもやべえな。
それでもめげずに押し込む場所を徐々に下にずらしていくと、雪ノ下の身体の震えがどんどん増していく。
「あっ、くふっ、はぅんっ、あっ、ひあぁっ、ひんっ、んんんっ……」
もう。
お前は一生マッサージ屋さん禁止。
男にも絶対させないし、女にもなんかさせたくない。
ていうか、こんな反応してんのに全くいやがらないってのも凄いな……。
試しに、腰を浮かせて雪ノ下から離れ、背筋を指でつーっとなぞってみる。
服越しだからあまり意味無さそうだけど、その分少し強めに。
つーっ。
「~~~~~~~~っ!」
背筋を弓なりに反らせて、足がぴんと伸びた。
すかさず今度は下から。ちょっとだけ尻の割れ目からスタート。
つーっ。
「ひあぁぁぁあぁぁあああぁぁぁああぁぁ……っ!」
甘い、涙混じりの声を上げた。足も軽くばたつかせている。
さっきから、背筋を駆け抜けるぞくぞくが止まらない。
……もっと、してみたい。
うん、まだ大丈夫、きっと。雪ノ下は能動的には動いてないし。
「雪ノ下、服脱いだ方がマッサージしやすいと思うんだ。出来たらで良いから、下着姿になってくれるか?」
どきどきのリクエスト。
「…………」
俺を横目でちらりと見ると、むくりと起き上がった。
そして、ベッドの上で座ったまま上着を脱ぎ、「んっ……」と悩ましい声を上げながら、ロングスカートも脱いだ。
こてんと仰向けで寝た雪ノ下を見て、生唾を飲み込む。
その余りの美しさに、本当に今さらながら「なんで俺がこんな綺麗な子と……」なんて考えてしまった。
こんなことを彼女に言ったところで、怒らせてしまうだけだろうから絶対言わないけれど。
下着も可愛らしい淡いピンクのブラ……と、白メインのショーツ。上下が別だ。
……あ、そうか、着替えたんだもんね……。
なんつう1日を過ごしてんだ俺たちは。まだしばらく続くけど。
美しい下着姿を凝視していると、雪ノ下が恥ずかしそうに身を捩らせた。
「……あ、あんまり、見ないでちょうだい……? 恥ずかしいから……」
言いはするものの、決して俺の目から隠そうとしないその健気さが、俺の心臓を鷲掴みにする。
横になっている雪ノ下の頬に、そって手を添える。
「あ、ああ、悪い。じゃあ、またうつ伏せになってくれ」
言うと、雪ノ下は頬に添えられた俺の手にそっと自分の手を重ねて、とろんとした目をして頷いた。
続く。
明日もゆきのんです。
しかし書くまでは「2連投でこのシーンは書き切れるなー」とタカをくくっていたのに、実際書き始めたらこれ3~4話必要になりました。なんてことだ。
久しぶりにどのエピソードも微エロ・どエロゾーンに入ってしまいそうで困惑。どうしたものでしょう。めぐりん編は慎重に行きたいので週末まで取っておきたいのですが……ううむ。まあ、何とでもなるのでしょう。
浮かんだシーンを逐一メモしているんですが、今日浮かんだのが各ヒロインのエロシーンだらけという事態に。全部書こうとするといつ終わるやら……と思うくらい沢山浮かびました。最初の頃と比べると、多分同じシーンを書くのにも2~3倍の字数になってしまうので。
気長にやるとします。
ちなみに18日はガハマさんで行きます。ちょうどガハマさんの誕生日になるので。こちらも連投します。
感想・評価投票・メッセージ等お待ちしております(^^)!
それでは、今回もお読み頂きありがとうございました(^^)!!