折本と一通りじゃれ合うと、俺はコンドームの箱を開けにかかった。初めて手にするものだから、自然と手に力が入ってしまい中々開かない。
「ねえ、比企谷」
「ん」
ようやく蓋をこじ開けて、個包装を取り出す。どう開けると破けないんだっけ……と予習したことを反芻しながらまじまじと見ていると、折本が何気なく尋ねてきた。
「それ、いつ買ったの?」
袋にかけていた指をぴたりと止める。
「……昨日の夜」
「……そっか」
折本はさらりと返事をすると、うつ伏せになって両手のひらにあごを乗せて、楽しそうに俺が格闘する姿を眺め始めた。明らかににんまりと、からかうように笑っている。可愛らしい視線に耐えながらも何とか包装を破き、今度は表裏を確認する。
「昨日の夜買ったんだー、そっかー」
「おいやめろ、手元が狂うだろ」
実に楽しそうに笑いながら、俺の太ももをつんつんと突いて爪先でつつつとなぞってくる。くすぐったさにもぞもぞしながらも向きを確認して、いよいよ装着に取り掛かる。
「む……っ」
ぐっ、と亀頭を包もうとすると、想像以上に抵抗がある。動画だと雑な模型でやっていたから、この辺の機微がいまいち分からない。むむむ……と唸りながら奮闘するが、亀頭を包んだところで止まってしまい、それ以上は中々進まない。こんなに手こずっていても折本はしらけることなく見てくれているが、それがまた申し訳なく思えて、しばらくすると半勃ちになってしまった。
「あれ、元気なくなっちゃった」
「……すまん、中々上手くいかん」
「ん、しょうがないっしょ。初めてなんだし」
からりとした声音に、沈んだ心がふわりと軽くなる。ああもう、俺はこの子をとことん好きになってしまったんだな……と実感して、身体が優しい熱を帯びる。
「……あたしも手伝ってみる」
「……え」
思わぬ言葉にきょとんとしていると、すっくと起き上がった折本が俺の正面に回り込み、足を押し広げて元気のなくなった肉竿にずいと顔を寄せた。そして一瞬の躊躇いを見せたあと、亀頭を包んでいるゴムごとぱくりと咥える。
「うお……っ」
ゴム越しに感じる折本の唇は、独特の感触だった。ゴムの縁を唇で押しやるようにして、くにくにと亀頭を刺激してくる。咥えられること自体も気持ち良いが、それ以上に、目を細めて愛おしそうに肉竿を咥える折本の顔がとても色っぽくて……肉竿がむくむくと硬度を取り戻す。折本は上目遣いで嬉しそうにこちらを見つめ、再びゴムを押し込んでいく。
折本が頑張ってくれているという安心感から、これは行けるのでは……? と一抹の期待を抱いた。
しかし……。
「んっ、んむっ、んんん……っ?」
「うっ、うおっ、うっ、くぁ……っ?」
焦れったい刺激はずっと加わっているが、ゴムは亀頭を包んだ後はほとんど進まない。一体何が悪いんだと悩んでいると、折本が「……んむっ?」と小さく呻いた。
「……破けちゃった」
「……そうか」
折本が口を離すと、ストッキングの伝線のようにゴムが破けてしまっていた。折本が眉を八の字にしてシュンとしながら、ゴムをつまんで取り外した。
「ごめん、上手くいかなかった」
「いや、ありがとな。多分サイズが小さかったんだろ」
折本からゴムを受け取り、ごみ箱にぽすりと捨てる。初めての挑戦は寂し気に終わった。
俺の言葉に折本は「あー、たしかに」と納得した。
「比企谷のっておっきいもんね」
「お、おう、そうなのか」
「え? あ、いや、その……」
「……動画と見比べての統計学的見地なのか?」
「ここでそんな真面目に聞かないで……恥ずかしくなるから」
でもまあ……と折本は顔を逸らし、恥ずかしそうに頬をぽりぽりと掻く。
「色々見てはきたけど……たしかに比企谷のは、その中でも特におっきいなって思う」
「……マジか」
「……うん、マジ」
ぽそりと答えると、折本が肉竿に熱っぽい視線を送り、口元をもにゅもにゅと動かしてまた顔を逸らした。押し倒したい。
「……まあ、その、なんだ、ありがとう?」
「疑問形にするくらいなら言わなくていいから……っ」
顔を逸らしたまま、折本が俺の頭に軽くチョップをしてきた。こっちを見ないでチョップしたせいか耳寄りのおでこにヒットする。恥ずかしさで繰り出す仕草の可愛いこと可愛いこと。
「……しかし、本当にすまん。買い直さないと無理だよなこれだと」
「……今日、しないの?」
「え、あ、いや、その……」
薬局に行ってる間待っていてほしいとも、一緒に行こうとも言いづらい。前者は折本が確実に冷めるだろうし、後者は「カップルでコンドームを買う」というレベルの高すぎる挑戦をすることになる。2人とも耐えられるとは思えない。
俺が答えあぐねていると、折本は言いにくそうに切り出してきた。
「あの……あたし、大丈夫だよ? ……その、比企谷が、着けなくても……」
「……え、いや、それは流石に……」
「……だ、だから、大丈夫。その、別に精神的にどうこうじゃなくって……」
その、あたし……と、折本は頬を赤らめて顔を逸らし、婀娜っぽい流し目を送ってきた。
「……の、飲んでるから……」
「……え、何を……」
「……そ、その、ピルを……」
折本が発した言葉に、目をぱちくりとさせる。しかし何かのネット記事で見た記憶だと、たしかそういう薬って……。
「それ、昨日今日に飲んだからって効くものじゃないだろ? 昨日飲んでたら俺とお揃いな訳だが」
「……う……いや、その……一週間前、くらいから……もう、飲んでた……」
「え」
折本の言葉に脳が混乱を起こす。折本を呆然と見つめながら、必死で情報を整理する。
一週間前と言えば、折本とキスさえしていない。しかしその頃から既に、折本はピルを飲んでいた。
――要は、俺よりもよっぽど早い内から、今の展開に備えていたのか。
「……折本」
「……きゃっ!?」
抱きしめてベッドに倒れ込むと、折本は可愛らしい悲鳴を上げた。2人分の体重を抱えたベッドのスプリングがぎしぎしと軋み、目を白黒させた折本が混乱しながらも抱きしめ返してくる。
「……ひ、比企谷? どうしたの? 大丈夫?」
心配そうに言いながら、折本が俺の背中をさすってくる。気遣わし気な言葉と優しい手つき、そして鼻腔を擽る甘い匂いに目を細めた。
「……すまん、色んな感情が溢れてな、つい」
「……そっか」
「折本、ナイスだ」
「え、あ、うん、ありがと」
「それと、やっぱお前もスケベだと思う」
「……あー、や、その、ね? 備えは必要かなって……」
「それ、俺と台詞がかぶってるぞ」
「……そうだったね……」
観念したように折本が苦笑いをする。
「折本。……このまま、するか」
「……うん。しよ?」
「すげえ嬉しいけど……その前に」
折本を下にした状態で腰を上げ四つん這いになると、細い両腕を掴んで拘束する。
「え……ひ、比企谷?」
折本が引きつった笑みを浮かべる。今の俺はどんな表情をしているのだろう。
「さっき折本が爆笑してたとき、実は内心結構恥ずかしかったんだわ。なので、たっぷり仕返ししてから挿れます。大丈夫、濡れてれば濡れてるほど痛くなくなるはずだから」
「……え、あ、ちょっと、それ、本気で?」
「ああ、くったくたになってから挿れるからな、覚悟しろよ」
「……へ、変態……っ」
折本は口では悪態をつきながらも、拘束を振りほどこうとはしてこない。その表情は今にも泣きそうで、けれどその中にもどこか期待を滲ませている。
折本と、隔たりなく直接繋がれることが嬉しくて。
そして、今からまたたっぷりといじめることが出来るということが、また更に嬉しくて。
気が付けば、肉竿は青筋立っていきり立ち、鈴口からは先走りの汁が滲んでいた。
続く。
折本でした。
折本編は他のヒロインよりも色々な意味での「生々しさ」を描きたいなと思って書いています。前回~今回のコンドームやピルのくだりもその一環です。
<半額セールのお知らせ>
DLSiteで販売中の夏コミ本ですが、現在半額セールを行っております!
活動報告にリンクを貼っておりますので、興味のある方はぜひ(^^)!
<小説情報>
沢山の情報をありがとうございます。まだまだ募集しておりますので(^^)!
それでは、今回もお読み頂きありがとうございました(^^)!!