※この作品はR-18です。

俺ガイル 日常の何気ないエロス。   作:高橋徹

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「わたし、今から拗ねるね」

 

 陽乃さんがにこりと笑って言った言葉に、俺はかこんと首を傾げた。

 

「おお、比企谷くん、今の鹿威し(ししおどし)みたいで気持ち悪いよ。良いね」

「褒めてんのかけなしてんのかどっちなんですか」

「比企谷くん、話を逸らさないでくれるかな」

「理不尽だ……」

 

 ひどい目に遭ったところで、陽乃さんの言葉の意味を改めて考える。

 拗ねる……。

 …………。

 

「……それ、自分から言うことじゃないですよね」

「そうだね。だからあくまで『設定』ってことで」

「……設定、とは」

「んー、イメージプレイってやつ?」

「露骨な言葉にしちゃったよこの人」

 

 顔が仄かに熱くなると、俺の顔を見た陽乃さんがけらけらと笑う。子供っぽい表情は普段とのギャップがあっていちいち可愛く、破壊力がとんでもない。心臓に悪いレベルだ。

 えっとね……と、陽乃さんが自身が発した言葉について説明を始める。

 

「とある土曜日の晩、比企谷くんは用事があると言って帰りが遅くなると告げてきます。わたしは起きて待ってると健気に言ったにも関わらず、比企谷くんはいや良いから寝てろよと無碍に断ります。ひどいです」

「本当にひどい……」

「そして比企谷くんのそわそわした気持ち悪い挙動を怪しんだわたしは、比企谷くんが夕方出かけたところで後をつけます」

「あなた何やってるんですか」

「そしてわたしは見てしまったのです。比企谷くんが、長い黒髪の女性と楽し気に買い物をしているところを……。わたしの愛しの比企谷くんは、猫好きで毒舌がしょっちゅう飛び出る美人なわたしの妹と一緒にいたのです……」

「最初ぼかした意味全く無いじゃないですか」

 

 よよよ……と口元を手で押さえ、わざとらしい嗚咽を漏らす陽乃さん。中途半端にリアルな演技が妙に生々しいからやめてほしい。あと俺のツッコミをさらりと流すのもやめてほしい。

 

「それでわたしは不貞寝して、浮気が原因で遅くに帰ってきたにも関わらず堂々と同じ布団に潜ってきた比企谷くんのお尻を、寝ているフリをしながら15回ほどつねります」

「多い多い、俺かわいそう」

「そして翌日、拗ねます」

「ああ……そういう流れですか。俺は何故雪ノ下と買い物に行ってたんでしょう」

「後で知ることですが、わたしへのプレゼント選びだったようです」

「ああ、誕生日がもうすぐでしたね。そう考えると結構自然な設定かも」

「…………」

「? どうしました」

「いや、ちゃんと覚えてるんだなーって……」

「そんくらい覚えてますって」

「……そ。で、比企谷くんはわたしが誤解していることにも気付かず、『いつもならこの時間帯からエッチなことするよなー、そろそろ押し倒すかー』とか思ってます」

「俺すげえクズっぽいですね……。あと、どうしたんですか、すごい上機嫌ですけど」

「…………」

「あっぶね! なんで首にチョップしようとしたんすか。……普通こういう時ってつねったりするんじゃあ……」

「……まあいいや。それでね、比企谷くんがわたしに手を伸ばすと、わたしはその手をぺちっと可愛くはたくの。可愛く」

「ああはいはい、可愛くてしょうがない仕草が目に浮かびますよ。片頬を膨らませたりするんでしょ」

「そういうのを先に言わないで。やりづらくなるんだから」

「ご、ごめんなさい……」

「そんなわたしに対して、比企谷くんは急に嗜虐心が芽生える訳。得意でしょ? 女の子をいじめるの」

「語弊しか無いんだよなぁ……」

 

 で、まあ、要約すると……と言って、陽乃さんが至極楽しそうに笑う。

 

「エッチに大して全く乗り気じゃないわたしを、比企谷くんが無理やりどうにかしちゃうって設定」

 

 …………。

 ……うわぁ……。

 ……ん、待てよ。

 いやがる陽乃さんを無理やり……。

 …………。

 

「…………」

「今ちょっと、『あ、それ良いかも』って思ったでしょ」

「……べ、べべ、べつに、そんな、ことは」

「良かったー、乗り気で」

「俺の意見が一向に反映されない陽乃政権に異議を唱えます」

「え? 却下します」

「当然の如く……」

 

 比企谷くんはつべこべ言うなあ、そこが可愛いんだけど……とひどいことと小っ恥ずかしいことを言った後、陽乃さんはいそいそと服を着始めた。上下とも下着を着けず、胸元がたっぷり開いたU字のカットソーと部屋着用のキュロットスカートという凶悪な組み合わせだ。

 

「襲われる気満々じゃないですか……」

「女の子はいつだって矛盾してるものなの」

「ここでそんな格言っぽいことを言われても……」

「いいからいいから。はい、スタート」

 

 色々と納得がいっていないまま。

 謎のゲームがスタートした。

 

       ×  ×  ×

 

 ソファに並んで座り、陽乃さんは女性誌を読んでいる。ただ雑誌を読んでいるだけでも絵になるなと感嘆の息が漏れるが、陽乃さんの顔は不機嫌そのもの。控えめに言ってめっちゃ恐い。

 

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

 

 …………。

 

 いつもなら心地良い沈黙も、今は針のムシロにしか思えない。

 陽乃さんはつい数分前までからからと笑っていたのに、一瞬でスイッチを切り替えていた。2人の間の空気も綺麗に塗り替わっていて、居心地が悪いことこの上無い。まさかここまで綺麗に切り替わるとは思わず、ただ戸惑うばかりだ。

 けれど、陽乃さんはただ拗ねているだけではない。

 時折俺に見えるように艶やかな黒髪を耳にかけたり、足を悩ましく流したり、「……ん……っ」と色っぽい吐息を漏らして、カットソーの胸元を暑そうにぱたぱたと扇いだり。扇情的な仕草を絶妙なタイミングで、着実にこちらの理性を削り取るように仕掛けてくる。おかげで俺は陽乃さんの拗ね具合にびびりつつも、本当に手を出したくなってきた。

 陽乃さんが雑誌をテーブルに置いて、ソファにもたれかかる。どこか少女のように拗ねた顔を見せて、俺とぱちりと目が合うとぷいっと逸らしてしまう。何だこの可愛い生き物は……。

 たまらず、そっと右手を伸ばす。

 

「……なに」

「……っ」

 

 ぺちっと手を叩かれて、軽くショックを受ける。本当に乗り気じゃないのか……。

 身体を寄せて、陽乃さんの右肩を抱く。陽乃さんはぴくりと反応したが、顔には依然として不機嫌さを滲ませている。

 

「……なんでそんなに怒ってるのか分かんないですけど、機嫌直してくださいよ」

 

 俺の言葉に、陽乃さんは僅かに目を見開く。俺がこの設定に乗った事にだいぶ驚いているようだ。

 

「……もう、知らないから」

 

 すぐに演技モードに戻った陽乃さんが、再び顔を逸らしてしまう。お構いなしに豊満な肢体を抱き寄せて、左手を陽乃さんの頬に添えてこちらを向かせた。

 

「んん……っ」

 

 無理やり唇を重ねると、いつもなら濃厚な歓迎を受ける所なのに冷たく拒絶されてしまう。目は固く閉じていて、唇も一切の侵入を許さないかのようにかちりと合わさっている。

 けれど、陽乃さんが例え拒絶していても、高まりに高まった感度までは抑えることは出来ない。現に、唇を重ねているだけの今この瞬間も、陽乃さんの身体は小刻みに震えている。

 艶やかな唇の合わせ目を、舌先で丁寧になぞる。いつもはすぐに侵入出来る分、こういった時間は新鮮だ。その感覚が行為に対する情熱を却って燃やしてくれる。

 

「ん……んん……っ」

 

 陽乃さんは切なげな声を漏らしながらも、両手をこちらの胸板に当ててぐいぐいと押し返し、必死で抵抗してくる。思っていたよりも力が強かったけれど、それでも徐々に快感で力が抜けていき、唇の合わせ目も解けてきた。陽乃さんの両肩を掴み、身体ごとこちらを向かせる。両手に力を込めると、陽乃さんの抵抗は更に弱まっていく。

 

「んむぅ……んんん……っ」

 

 瞳にはまだ僅かに抵抗の光を宿しているが、胸板に当てられた手にもはや力は入っておらず、頼りなげに胸をさすってくるだけだ。これならもうじき舌を口内に入れられるだろう。陽乃さんの感度を考えればそこから陥落させるのは容易いな……などと思っていると。

 

「ん……っ」

「んむ……っ?」

 

 陽乃さんが突然俺の首の後ろに両腕を回し、きゅっと抱きしめてきた。素直になるのが早いなと驚いたが、冷静になって考えてみると陽乃さんの唇は閉じられたままだ。

 違和感に気付き、まさか――と思ったのも束の間、陽乃さんは油断して力を抜いていた俺の胸に手を当てると、とんと突き放してしまった。腕の中の柔らかくて甘い感触が消えてしまい、何とも寂しい気持ちでいると、陽乃さんはほんのりと頬を赤らめながら、眉をひそめて不機嫌そうな表情を浮かべた。

 

「……変態」

「……っ」

 

 俺の反応も待たぬまま身体の向きを変え、また女性誌を読み始める。

 ……つ、つれない……。

 あと、一筋縄ではいかないにも程がある……。

 

「…………」

 

 でも、何だろう。

 この感じ、結構ぞくぞくする。

 冷たくされるのがツボだったのか、ここからどうしてやろうかと燃える思いが強いのか、或いはその両方か、自分の気持ちが分からない。

 SとМ同時に目覚めたような奇妙な感覚は、今の陽乃さんを見れば見る程強まっていく。

 この気持ちは何だろう……と、悶々としながら陽乃さんを観察していると。

 

「……さっきからじろじろ見てるけど、何なの? 気持ち悪いんだけど」

「……っ」

 

 猛毒を吐きながらも、ちょっと恥ずかしがっている……。

 どこまでが演技でどこからが本気なのか分からないけれど、その割合がどうでもよくなるくらいには可愛い。

 

「…………」

 

 何だこのゲーム。

 

 結構、というかかなり、楽しいぞ。

 

 

 

 続く。

 

 

 

 




 はるのんでした。以前書いた妄想デート同様、ひねくれ気味のゲームです。

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①冬コミ2日目(12月30日)に出ます!
 細かい情報はTwitterアカウント
 takahashi_toru_
 でツイートしますので、日々のツイートも合わせてご覧頂けると嬉しいです(^^)!
 何気ないエロスでの関係の延長で、大学生になった八幡と雪乃が正月に温泉旅行に行きます。しっとりエロです。
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 いろはすとの甘々エロエロな禁欲生活。
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 それでは、今回もお読み頂きありがとうございました(^^)!!

 
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