体調不良と仕事多忙につき、16・17日(もしかしたら18日も)お休みします。楽しみにして頂いている方は申し訳ありません。応援メッセージを頂けると嬉しいです(正直)
陽乃さんが不機嫌な顔で戻ってきて、俺の隣に座る。ラフなTシャツとミニスカートという格好だが、どうやら上下共に下着を着けていないらしく、胸から腰にかけてのラインが恐ろしい程に艶めかしい。
「……陽乃さん、まだ機嫌は直らないんですか」
「君は、機嫌を直してと言われて直す人間がこの世にいると思う?」
「……思いませんね。宿題をやれと言われてやる人間と同じくらいいないと思います」
「不機嫌な人に冗談を言うなんて、比企谷くんってば可愛いなー」
「いたいれふ(痛いです)……」
人差し指で頬をぐりぐりとされる。結構本気で痛い。あと陽乃さんが器用に声音でだけ笑っているのがやたらと怖い。陽乃さんはしばらく俺の頬を弄ぶと、やがて飽きたのか指を離し、またぶすっとした顔に戻った。ちなみにどついている間はずっと無表情だった。この人表情豊かすぎないでしょうか。
「……マッサージでもしましょうか」
「この体質を分かっていてそんな提案をする君の獣っぷりに、お姉さんはドン引きです」
「そこはほら、敏感かどうかとは関係なく、身体に疲れは溜まるでしょうから」
俺の言葉に陽乃さんは顔を背け、指で毛先を弄りながらこちらを試すような流し目を送ってくる。
「……変態。本心を言ってみなよ」
「陽乃さんのことが好きなので、身体を労わりつついやらしいことが出来るマッサージがしたいです。さっきは上半身を責めたので今度は下半身を重点的に責めたいです」
「……っ」
食い気味で本音攻撃に打って出てみたところ、陽乃さんがものすごい速度で顔を逸らした。一瞬だけ見えた顔は、まるで焼き石を入れた水のように茹だっていた。陽乃さんのツボを考えるに、多分、卑猥な本音よりもどあたまの「好き」という言葉に反応したんだと思う。なんだこの可愛い生き物は……と、手で口を覆いながら悶える。今の俺は多分、口元が気持ち悪いくらいににやけてしまっている。
「……陽乃さんは本当に可愛いですね」
更に煽るように――けれど本音で――言ってみると、陽乃さんが手で口を覆いながら振り向いた。同じ仕草をしていることにくすりと笑うと、陽乃さんはジト目で俺の顔を指差した。
「……比企谷くん、顔真っ赤だけど」
「……っ」
陽乃さんの言葉に、今度は俺が高速で顔を逸らした。
食い気味で、勢いで言えば何とかなるんじゃないか……と思ったのだけど。
「好き」なんていう言葉を堂々と言う行為は、俺にとって捨て身にも程があった。陽乃さんの指摘で羞恥心に火が点いてしまい、表情が福笑いのようにちぐはぐになってしまう。両手で顔を覆ってパーツの位置を整えている間、陽乃さんはずっと俺の脇腹をつんつんとつつきながら「……ばか、……ばか」とぽそぽそ呟いていた。おかげで顔のパーツが戻るまでだいぶ時間がかかった。
ようやく元の顔を取り戻したところで、ソファから立ち上がる。陽乃さんの前にひざまずくと同時に、陽乃さんは足を組んだ。ミニスカートの中をあっさりと見せてはくれないらしい。
「足、マッサージしますね」
「なんでわたしが了承してないのに話が進んでるのかな?」
一度茹だったせいもあってか、陽乃さんは不機嫌という設定を忘れているのかというくらい穏やかな表情になっている。今の言葉だって、俺をからかうのを楽しんでいるいつもの声音だった。
そっと、陽乃さんの両足の裏に手を滑り込ませて、がしりと掴む。陽乃さんの身体がびくりと震えた。大きな震えはすぐになくなったが、陽乃さんを見つめている間、すらりと伸びた足はずっと微かに震えている。
「じゃあ、一気に一番奥を責めますか?」
この場合、俺がやることは簡単だ。このまま真っ白な美しい足を開いて、露わになった大事な部分に口付けをするだけで良い。それだけで、この人の理性はとろりと溶け落ちて、あっと言う間に快感に溺れる牝に成り果てる。この人を前にこんなことを考えること自体傲慢に思えるが、陽乃さんが乱れ、壊れ、狂う様は何度も何度も見てきた。何度も魅入られてきた。
俺の言葉に、陽乃さんは歪に唇を震わせた。瞳が妖しく揺れて、二人の間の空気が歪む。
「君は……わたしに、ゆっくり堕とされるか、一瞬で堕とされるかを選べって言ってるわけ?」
「……んー、まあ、そうなりますね」
「……変態」
「褒め言葉ですか」
「……鬼畜」
「陽乃さんをいじめるのは楽しいですからね。鬼畜にもなりますよ」
「……ばか」
「……陽乃さんは可愛いですね」
言いながら、人差し指で足の裏を軽くくすぐる。ほんの数センチの動作で、陽乃さんの全身が電流を通されたかのように跳ねた。陽乃さんが身体をこちらに屈めて、滑らかな手が頬を撫でてくる。愛おしそうに撫でてくる手は、小さく震えていた。
「……どうします? ゆっくり行きますか? それとも一気に行きますか?」
「……っ、これ……もう、主旨がわかんなくなってるよ……っ」
「ん……えーっと、陽乃さんが不機嫌になって、女王様の機嫌をとるために俺が一生懸命気持ち良くするって設定……ってことで良いんじゃないですかね」
「……もういいや、それで……。いいよ、ゆっくりやって。その方が比企谷くんとしても楽しいんでしょ、どうせ?」
「流石、よく分かっていらっしゃる」
道化じみた返答に、陽乃さんはふっと笑う。そして諦めたように背もたれに寄りかかって、俺に身体を預けた。
不機嫌なフリをする時間が短すぎるだろ、とか。
この遊びのゴールは一体何なのか全く分からないだろう、とか。
色々思うことはあるけれど。
取り敢えず楽しいから、まあ良いとしよう。
「じゃあ、まずは足の裏から入念に揉み解しますね」
「よろしくお願いね、変態さん」
「はい」
「鮮やかに開き直ったね……」
美人なお姉さんの呆れ笑いって、どうしてこうも魅力的なのか……と真剣に考えながら、俺も釣られて笑った。
続く。
はるのんでした。はるのんと八幡のじゃれ合いを書くのが楽しい……。
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