目を覚ますと、部屋の中の温度がすっかり上がっていた。恐らくもう昼時なのだろう。
「ん……?」
「ん……っ」
……昼時にしてもやけに暑いと思ったら、いつの間にか陽乃さんが俺の胸板におでこをこすり付けてすやすやと寝息を立てていた。
俺が寝ている間に諸々の処理をしてくれたのか、2人の身体は多少汗ばんでいるものの不快感はない。タオルケット1枚を頼りに、後は2人の体温で温め合っていた。
陽乃さんの顔がもぞもぞと動く度に、艶やかな黒髪がさらりと揺れる。甘い匂いと汗の匂いが混じり合って、同じ生き物とは思えないくらい良い匂いがした。
ふとこれまでを振り返る。濃密にも程がある三連休も、残り半日だ。
「どうしたもんか……」
天井を見上げ、自分よりも小さな頭をくしくしと撫でて独り言ちる。
「おっ、んんっ?」
妙な快感が走って視線を巡らせると、陽乃さんが乳首を指の腹で撫でていた。
「おはよ、比企谷くん」
「挨拶代わりにそこ弄るのやめてくれます?」
「え~? だめ?」
「いや、ちょ、ほんとに、ってなんで両方……こら……っ」
「……おっきくなったね」
「……そりゃそうでしょう」
タオルケットの一部に山が出来た。
陽乃さんは起き抜けからとても楽しそうに笑い、俺の頬をつっついて「気持ち良かったんだ?」と囁きながらもう片方の手で肉竿を撫でてくる。和むし興奮するしでもはや心臓に悪い。
「今日の残りはどうします?」
弄られている肉竿からにちゅ、くちゅと音が聞こえ始めて危機感を覚え、それとなく話題を逸らす。
陽乃さんは顎に人差し指を当てて視線を逸らした。それでも肉竿を弄る手は止めてくれない。俺の意図を綺麗に読んで鮮やかに裏切るのはほんとやめてほしい。
えーっとね、と呟き、陽乃さんがにっこりと笑った。
「ずっとイチャイチャしよっか」
「え」
「イチャイチャしたいの。だめ?」
「いや、別に構わないですけど……具体的に何をするんですか?」
「んー? ……こんな風に、かな」
陽乃さんは悪戯っぽく微笑むと、俺の肉竿を掴んだまま身体をこちらに向けて横向きで寝転んだ。やむを得ず俺も横を向き、向かい合う体勢になる。引っ張る場所は考えてほしい、ほんとに。
「こうやって、だらだらして……ん……っ」
「う……く……っ」
陽乃さんの瞳に妖しさが灯り、肉竿を愛撫する手はより巧妙になる。睾丸を撫で、輪を作った指で雁首をしごき、亀頭を手のひらで撫でる。
反撃を望むように陽乃さんが俺の手首を掴み、豊満な胸元に導いた。柔肉に指が触れると、張りがありながらもどこまでも柔らかい肉に指が沈む。
額同士をこつんと当てて目が合うと、2人してちょっとひねくれた笑みを浮かべた。
「どう、こういうのも良いでしょ? お互いイカないようにするんだよ」
「ん……となると、俺は調整がかなり大変ですね」
俺の言葉に、陽乃さんはむっと片頬を膨らませる。あまりにも可愛らしいためつい膨らました頬を指で突っついた。
「む」
空気が抜けた。
「むぅ……」
もう片方の頬を膨らませた。
可愛すぎて鼻血が出そう。
「……わたしだって、君のことイカせようと思えばいつでも出来るんだよ?」
底冷えのする声で囁かれ、肉竿を強めに握られた。
「知ってます存じておりますよーく存じ上げておりますごめんなさい!」
よく分からない言葉遣いで全力で謝り、何とか事無きを得た。
「よろしい」と楽しそうに笑うと、陽乃さんがそっと唇を重ねてきた。
「ん……ちゅっ、ちゅる……んっ、ふぅぅ……っ」
横向きのためあまり熱烈なキスは出来ない。けれどそのもどかしさがたまらず、互いに何度も唇を押し当てては啄むようなキスをして、舌を伸ばして絡め合う。人より長い陽乃さんの舌と自分の舌が絡み合う様は、交尾の一種にしか見えなかった。
「んっ、んっ、くぅんっ! ふぅっ、んっ、んふぅぅっ、ふぅぅぅ……っ」
陽乃さんが身体を艶めかしくくねらせ、肉竿を握る手に力が篭る。豊満な乳房を揉んでいる俺の手を掴んで、もっと激しくしてと無言でねだってくる。
……これ以上やったら、絶対イクだろ。
一歩引いて冷静に判断をして、唇と手を同時に離した。陽乃さんは目をぱちくりと開いて驚き、やがてちょっと不機嫌な顔をして、その後自分が何をしようとしていたかに気付いたのか少し顔を赤らめた。
今の表情の変化を目の前で見ている身としては、悶えすぎて死ななかったのが本当に奇跡としか言いようがない……。
「……これは……思ったより難易度が高いね」
「そうですね。陽乃さんが発情すると大変ですいって!?」
乳首をつねられた。
× × ×
お互いをイカせることなくイチャつくという陽乃さんの希望に従い、ひたすら焦らしプレイに興じる。精々数十分もやれば十分だろう……と思っていたが、一向に終わることがない。恐らく数時間はこの行為に耽っていた。
「あっ、あぅっ、あっ、ひっ、ふぅぅぅ……ふぅぅぅ……っ」
「うっ、ぐぅっ、うぅっ、くっ、うぁ……っ」
今は体勢を変え、対面座位のような格好で互いにベッドに腰を下ろしている。2人の下腹部がほとんど触れ合った状態で、俺は陽乃さんの量感たっぷりの乳房を下から掬い上げるようにやわやわと揉み、陽乃さんは両手で肉茎を艶めかしくしごいている。
先走りが幾度と無く溢れ出て、陽乃さんの指で塗り広げられていく。その上陽乃さんは時折己の淫裂に指を這わせ、たっぷりと愛液を指に塗りたくって肉竿をしごくための潤滑液にしていた。
熱くて甘酸っぱい愛液が、目の前でとろりと垂らされる様子は視線を縫い付けられるほどに淫靡な光景で、俺は何度も射精の波を堪えていた。
むせ返るような性臭がベッドの上を支配していて、互いの目は合っているのに合っていないような、夢見心地の中でひたすら濃厚な愛撫に溺れていた。
「はぁっ、うんっ、ふぅぅぅ……ねえ、ひきがや、くん……っ」
「んむ……っ」
汗で前髪がおでこに貼り付いた陽乃さんが、発情しきった顔でキスをねだる。互いの愛撫の手を緩め、顔を傾けてたっぷりと唇を重ね合わせる。
陽乃さんのキスは時を追うごとに淫らではしたなくなり、口から溢れた2人の唾液が陽乃さんの顎を伝い、豊かな胸の谷間を伝うようになっていた。その唾液も、あと数分もすれば汗で分からなくなってしまう。
唇を離すと、陽乃さんがちらりと視線を落とし、また俺を見つめる。
「比企谷くん……そろそろ、挿れていいかな? わたしもう限界……」
「……俺は3時間前には限界でしたからね。いくらでもどうぞ」
「あは……っ」
力無い笑みを浮かべ、陽乃さんが自分の手の指を舐め上げ、それから俺の首に両腕を回す。俺の両脇に脚を伸ばして腰を上げようとしたが、もはや力が入らないのか可愛らしく唸っているだけで立つことが出来ない。真っ白で張りのある尻肉を掴んで陽乃さんの腰を上げるのを手伝うと――膣口に亀頭を宛がい、両手の力を抜いた。
「あ――――っ」
ごちゅん、と。
亀頭と子宮口がぶつかった音がした瞬間、陽乃さんが、あっけない最期を迎えたような声を上げた。反射的に陽乃さんの両脚が俺の背中に巻き付き、がっちりと身体を拘束される。
膣肉が竿の根本から亀頭まで余すことなく柔らかく締め付けてきた瞬間、俺も我慢することなく陽乃さんの子宮に白濁を注いだ。
「あっ、あっ、あっ、あっ、あっあっあっあっあっあぁぁぁぁ……あぁぁぁぁ……っ」
陽乃さんは獣のような嬌声を上げることはなかった。それでも膣内は荒れ狂う嵐のようにうねり、射精の脈動に耐えている肉竿を締めつけて強烈に愛撫し、限界を超えて精液を搾り取ってくる。互いの肩に顎を乗せた状態で、俺は静かに陽乃さんに子種を注ぎ続けた。
激しい絶頂とその余韻に数分ほど耽溺していると、ようやく大きな波が去った。それでもどちらかが少しでも身体を動かせば相手が反応して、それがまた激しい絶頂の波にまで膨らんでいくのは目に見えている。ぼうっとした状態でも身体を動かさぬように必死で堪えた。
絶頂への閾値が限りなく低い状態をなんとか乗り越えると、虚脱感とともに、その何倍もの安心感に包まれた。
「……あ~……気持ち良い~……幸せぇ……っ」
耳元で聞こえた、随分と気の抜けた声に思わずくすりと笑ってしまう。
「どうしたんですか急に」
「え~? だって、比企谷くんとこうしてるとね……気持ち良いし安心するしで、なんかもう……あ~……」
陽乃さんの語彙がなんかアレなことになっている。
レア!
「……そりゃ良かったです」
何だこの可愛い生き物……とからかいたくなるが、命の危険性があるのでやめておく。代わりにしっとりと汗ばんだ黒髪をくしくしと撫でると、陽乃さんの顔から一層力が抜けるのが分かった。
「はぁ……毎日比企谷くんとエッチしたいなぁ……」
「……っ」
んぐっ、と喉の奥で変な音が鳴った。
「んん……っ? やだ比企谷くん、おっきくなってる……」
「いや、そんなこと言われたら……っ」
慌てて言い訳する俺を、陽乃さんは楽しそうにじっと見つめてくる。
「比企谷くん。来年君が大学生になったら一緒に住もっか」
「え」
「はい決定ねー」
「え、いや、ちょっと」
「なに、落ちる気? そんなの絶対許さないから」
「急に睨むのやめてくださいマジで恐い」
「ちっちゃくなっちゃった」
「そりゃそうでしょう」
「えい」
「いや、胸を揉ませたくらいでこの状態は……あ」
「おっきくなったね」
「ですね」
脱線した話を慌てて修正する。
「え、いや、それって同棲……えええ?」
「……比企谷くんは、いやなの?」
「いや、そういうのって俺から言いたいっていうか……あ」
「……ふぅん?」
陽乃さんが顔を逸らした。耳まで赤い。
こほんこほんと咳払い。
「……えーとですね、陽乃さん」
「……なぁに?」
「来年から、よろしければ一緒に住んで頂けないでしょうか」
「……わたし、一人暮らしになるのも大変だったんだよ? 一昨日話したでしょ?」
「今度は俺もプレゼンに参加しますので」
「……ふぅん……?」
繋がったままだというのに、俺が言葉を重ねるごとに陽乃さんはどんどん乙女のような反応を見せてくれる。
「……陽乃さんは可愛いですね」
ほとんど独り言のように呟いた言葉が、珍しく陽乃さんにクリティカルヒットした。首まで赤くなった陽乃さんが、瞬きを忘れて俺を見ている。
「……楽しみにしてるから」
やがて、俺の肩に顎を乗せた陽乃さんが、ちょっとだけ嬉しそうな声で囁いた。
「……はい、頑張ります」
「うん。じゃあ、取り敢えず今日の残りの時間を目一杯楽しもっか」
「はい」
おでこ同士をこつんと合わせ、微笑み合う。
受験を乗り越えれば、来年度からは大学生。
高校までと大学は、まるで違うと聞く。いくらネットで調べようと、陽乃さんから話を聞こうと、実感は一向に湧かない。楽しみもあれば不安もある。むしろ不安しかない。
けれど、そんな未知しかない場所の中でも、隣に陽乃さんがいてくれるのなら。
なんだか、何とでもなるような気がした。
「んっ、んっく、ふぅぅ……っ」
……まあ、下手なことをやらかしてこの人の鬼の面を見ることはなるべく避けるように努力しよう。
「…………」
「え、どうしました」
「…………」
「んぐっ」
失礼なことを考えていたら見透かされたようで、頬をつねられた。
「……比企谷くん、分かりやすすぎ」
「ごめんなさい」
「……ほら、こっち集中して?」
「は、はい……っ」
恐いお姉さんから一瞬で可愛らしい恋人の顔に変貌する陽乃さんに、初めて出会った頃の強化外骨格の面影はない。少なくとも、俺と接している時は。
「……はぁうぅぅぅ……っ」
目の前で可愛らしく喘ぐ愛おしい人を見つめながら。
俺は、来年の生活を思い描いた。
お終い。
はるのん編アフター、これにて終了です。いかがでしたでしょうか!
あらゆることを試した末、イチャついて終わりました。
残るあーしさんとめぐりんアフターもごゆっくりとお楽しみください(^^)
はるのん編アフターを書き終えたので、ぼちぼち夏コミ原稿を書き始めたいと思います。
ぬあー!
それでは、今回もお読み頂きありがとうございました(^^)!!