雪ノ下の肩を抱くと、緊張しているのか微かに震えている。
力を入れれば折れてしまいそうな程儚げなこの身体を、今から……と、考えただけで、背筋がぶるりと震える。
いたずら心で抱き締める手にきゅっと力を入れると、
「あう……」
と、か細く可愛らしい声が浴室の湿った空気に染み渡る。
あまりによく見知った空間が、どんどん未知の空間に変わって行く感覚を覚えて、ぞくぞくとしたものが身体中を駆け巡った。
「じゃ……ここ、座ってくれ」
雪ノ下を椅子の前まで引き寄せて、座るよう促す。
「あ……わ、わかった……わ……」
今にも泣きそうな声を出しながら、雪ノ下が承諾した――けれど。
「……?」
んん?
雪ノ下が、一向に腰を下ろそうとしない。
「…………」
俯いていてその表情が見えないが、これは……。
雪ノ下の耳元に口を寄せて、そっと囁く。
「なんだ……怖いのか?」
「……っ。そ、そんなこと……っ」
精一杯強がってはいるが、それでも座る気配が一向に無い。
……ああ、もう、たまらない。
「……わかったわかった。雪ノ下、じゃあ、足を広げて、この椅子を挟むようにして立ってくれるか」
言うと、雪ノ下が目をむいた。
「な……っ、そ、そんなこと……」
「いいから」
「……うっ……わ、わかったわよ……」
強めの口調で促すと、恥ずかしさに満ち満ちた表情で、雪ノ下がゆっくり足を広げ始める。
恥ずかしくて座れないと言うのなら、もっと恥ずかしい目に遭ってもらおうと言う、鬼畜な考えを抱いての指示だ。
うーん、我ながらひどいなあ。
「こ……こう?」
雪ノ下が全身を羞恥で震わせながら、椅子を跨いだ格好で止まる。
こんな風に足を広げているだけでも、女性が間違ってもとらないような体勢であるため、ものすごくそそる。
しかし……少し、頂けない部分がある。
「ああ、そんな感じだ。……もちろん、タオルは取るんだぞ?」
「……う、うそ、でしょう……?」
「いいから」
「……うっ、くぅ……っ」
こんな圧、理不尽でしかないのだけれど。
それでも、雪ノ下はこの場の雰囲気に呑まれているのか、
「…………っ」
目にうっすら涙を浮かべながら、ゆっくりとタオルを外した。
「…………」
その艶美な肢体を、無言でまじまじと眺める。
手で胸と局部を隠してはいるが、それはここから――。
「雪ノ下……んっ」
雪ノ下にゆっくり唇を重ねて、
「んん……っ、……んんっ!?」
すかさず、その艶っぽい口に舌をねじ込む。
「んんっ、くちゅっ、ちゅりゅっ、ちゅぴっ、ちゅるるる、んはっ、ふぅんっ、んんっ、れちゅっ、ちゅりっ、んふうっ、んんっ、んんん……っ」
手で耳を押さえて、かっちり固定しての、濃厚な口付け。
「ふうん……っ、ふっ、くうっ、んふう……」
口付けに夢中になっているのか、雪ノ下の手はいつのまにか俺の腰に添えられ――
「……んくっ……?」
――俺の下腹部に伸びてきた。
……油断した。
まあ、こんなささやかな抵抗もすぐ出来なくなるんだけれど。
雪ノ下の目はすっかり発情した猫のそれになっていて。
背中を強く抱きしめながら、小ぶりな尻をぐにっと掴むと、
「んふぅっ!? んん、んんんん……はうっ、んんっ、はっ、はっ、ちゅる、じゅる、はあっ、ぢゅるるる……」
身体をぶるぶると震わせ、息を荒げた。
今度は、背中と尻に添えている手をそれぞれ、すれ違う様に上と下に移動させる。
背中の途中ですれ違うような形で、つつーっと両手同時に動かすと――
「んんんんんっ!? んぐっ、じゅる、あふあっ、やっ、これ、んん……んんんん……ひうううう……!」
雪ノ下は激しく反応して、唇を離して俺の胸元に顔を埋めたかと思うと、腰をがくがくと揺らして、徐々に腰が落ちてきた。
「ふああっ、んっく、ひぐっ、やっ、こんなの……っ、耐えられ……っ」
頼りなげに震えるその様が、あまりにも綺麗で、儚げで、色っぽくて。
「……耐えなくて良いんだぞ」
耳元で囁くと、
「え……んああああっ!?」
雪ノ下のおでこに口付けをして、指の往復を再開する。
指先で撫でつつ、時折軽く爪を立ててより圧を高めてやると、
「あふあっ! やっ、そんな、やあっ、やあああ……っ!」
より激しい反応が返ってきて、心が躍った。
何度も、何度も、何度も。
指を、爪を、丁寧に這わせる。
雪ノ下のおでこから唾液が伝い、彼女の唇に触れる頃には――
「あ……かはっ、ああっ、あああ……っ」
――雪ノ下は、いやらしく足を開いて、椅子に腰を下ろしていた。
× × ×
座って尚、先程までの余韻に震える雪ノ下の背後に回り込む。
「……んっ」
「んあああっ!?」
身体を屈めて雪ノ下の首筋に吸い付きながら、両手を彼女の足の付け根に伸ばし、開いたままの足を閉じる事が出来ないようにする。
「あああ……ああああ……」
すっかり力が抜けているのか、抵抗が一切出来ずに、手を胸の前で合わせてただただ長い喘ぎ声を上げている雪ノ下を見て、思わず唇を一度離してごくりと生唾を飲み込んだ。
「あ……うあ……」
透き通るような白い肌が、背筋から尻まで澱みなく広がっている。
つっと手を触れると、なめらかな肌はしっとりと汗で湿っていて、見るとうっすらと桜色に紅潮していて、たまらなく欲情をそそる甘い香りを放っている。口の中には、ほのかな汗のしょっぱさが残っていた。
「比企……谷……くん……」
ゆっくりと振り向きながら、俺の名を呼ぶその声は、普段の凛とした声とはかけ離れた、甘く蕩けるような声で。
「雪ノ下……」
首を傾けて、再び唇を重ねた。
× × ×
「ん……ぷはっ、……ふっ、ふっ、ふっ……」
雪ノ下から唇を離して膝立ちになると、彼女がとろんと惚けた目で俺を見つめる。
口を僅かに開けたその表情は、どうしようもないくらいに扇情的で。
「…………」
少し下を見ると。
がん勃ちだった。
……まあ、そりゃあ、ねえ?
「さて……」
ここでようやく、何をするか考え始める。
段階で言えば、今ようやく準備を終えたところだ。まだまだ先は長い。
……ちょっと、ここまでの時点で楽しみすぎた感はあるけど……まあ、そりゃあ、ねえ?
順当に考えれば、ここは身体を洗う流れだろう。
色々な場所を散々いやらしく洗って……と下衆の極みの顔をしながら考えて、ボディソープを置いてある場所に目をやり、手を伸ばした。
「……ん?」
伸ばした腕が、ぴたりと止まる。
まず目に入ったのは、見慣れない、ざっくり言うと良い感じのボディソープだった。本当にざっくりで我ながらちょっとびっくり。
湿気でしわしわになったメモ書き(今回俺に読ませればそれで目的は達せられるのだろう、本当に無防備でしわくちゃだ)を見ると、
『雪乃さんと小町専用。お兄ちゃんの使用厳禁! お兄ちゃんはこっち←』
と書かれていた。
…………。
……なんだろう。
泣きそう。
矢印に従って目線を滑らせると、俺がいつも使っているボディソープが置いてある。
……ああ、そうか。
小町はいつも、この見慣れない、というか初めて見るボディソープを使っていたんだな……。
並べられて比べると、もの悲しさが波のごとく押し寄せる。
俺と親父はこの安っぽいボディソープを使って……ああ……無情……。母親はどうしているのだろうか。
ボディソープを見ただけで、気持ちがとってもレ・ミゼラブル(やや語呂悪し)になっていると、俺と親父が使っているボディソープの隣にもう1つ、メモ書きの貼ってある見慣れな……い……んん?
……んんんん?
実物では見たことないけど、画面上でなら見たことがあるぞ、これ……?
事実確認をする前に、隣の雪ノ下をちらりと見やる。
「…………」
……ほけっとした顔のまま、俺にぽてんと身を預けてた。どうりでさっきから右肩が妙に心地良くて軽かった訳だ(矛盾)。なんだい君、可愛すぎない? 大丈夫? 襲っちゃうよ?
ちょっと悶えた所で、再度確認の目を向ける。
「…………」
…………。
「…………」
…………。
「…………や、」
うん。
「…………なんでだよ」
一人で鍵括弧とモノローグを駆使してありったけ引っ張った後の、精一杯の気持ちだった。
目の前に書いてあるメモ書きの中身は以下参照。
『雪乃さんとお兄ちゃん専用、ローションってやつ? 責めにも受けにも両方どうぞ!』
「……あいつ、バカじゃねえのか?」
思わず口に出して言ってしまった。
「……?」
俺の声に反応して、雪ノ下がぽけっとした表情のまま、くりんと首を傾げる。
や、ちょっと。
あんまり子どもっぽくならないでくれますかね?
可愛すぎて死んじゃうんで。
……うーん。
この、小町のとっても馬鹿げた置き土産(家に居るけど)を、どう扱ったら良いものか……。
思案に暮れながら、雪ノ下のあごの下をこしょこしょと撫でる。
「……ん……」
「がふっ」
気持ち良さそうに、うっとりとした顔であごを上げたため、可愛さで大ダメージを受けた。
……夕飯の後、雪ノ下を撫でる時間を設けようかなあ。うん、そうしよう。
続く。
小町が一番凶悪な立ち回りを見せているのは、小町本編よりも何気にこのゆきのん編な気がします。やばい。
結構好きだった俺ガイル二次小説も、軒並みやり切ったりなんだりで連載が終わるのを見て、かなりの寂寥感を覚えています。この作品がだいぶ特殊なんだなーと思いつつ。
ここが皆さんと僕にとって心が安らぐ場所であるように、これからものんびりと書いて行きたいと思います(^^)!
それでは、今回もお読み頂きありがとうございました(^^)!!
……このセリフ、原形をいつから書いているのだろうと探してみたら、ニセコイ二次作品の途中、今年の1月1日から書いていました。150~200回程度書いている……!?
うーむ、しみじみします。
あ。
それでは、今回もお読み頂きありがとうございました(^^)!!