※この作品はR-18です。

俺ガイル 日常の何気ないエロス。   作:高橋徹

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 後書きでお知らせがあります!!


(11)

「あ、優美子―!」

 

 三浦と並んでパラソルへ向かうと、由比ヶ浜が嬉しそうに手を振った。三浦は麦わら帽子のつばを上げ、にこやかに微笑んで答える。今まで積み上げてきた時間が見えるようなやりとりだ。

 

「あ、隼人……」

 

 各々が遊び道具を吟味している中、同じように準備をしている葉山の下へ三浦が近付いた。一歩を踏み出したくて、それでも踏み出せないでいるような、そんな距離感。

 三浦が見せた、頬を赤らめた横顔は――心がずくんと疼いた。

 

「優美子。うん、似合ってる」

「そ、そっか、ありがと……」

 

 葉山の対応は完璧だった。

 眩しい笑顔を向けて、きちんと褒める。

 そして――それ以上、三浦の心が自分に寄り添うことがないようにしていた。

 

 葉山と三浦の間にある数十センチの距離が、途方もなく遠く思える。三浦の表情は僅かな嬉しさと、それ以上の切なさで埋め尽くされているような気がした。

 

 三浦はぎこちない笑みを浮かべたまま後ろへ下がり、由比ヶ浜のそばへ寄る。由比ヶ浜は少しだけ哀しそうな表情を浮かべ、すぐにいつもの向日葵のような笑みを咲かせた。それを見た三浦の表情が仄かに明るくなる。こういった関係って良いな……と思わせてくれた。

 

「よーし、諸君。それぞれ遊ぶ道具は持ったな?」

「え」

 

 気がつくと、平塚先生がウキウキした表情で水鉄砲を持っていた。

 え、なに、最近の水鉄砲ってこんなに進化してんの?

 

 死傷者が出るのではと疑念を抱いてしまうほどごついフォルムを湛えた水鉄砲を男らしく肩に下ろした先生が、えらくダンディーなスマイルを浮かべる。

 

「さあ、行くぞ!」

『おー!』

「え」

 

 いつの間にか各々道具――という名の水鉄砲――を持った女性陣が、まるで戦の前に上げる鬨の声のようなものを上げる。何だか勇ましくて妙にどきどきしてしまう。

 

「…………」

 

 ちらりと横を見ると、雪ノ下と三浦が明らかに恥ずかしがっていて、水鉄砲を小さく持ち上げて俯いていた。雪ノ下は消え入りそうな声で「お、おー……」と辛うじて言っていて、三浦はこれまた消え入りそうな声で「む、むり、恥ずかしいし……」と呟いていた。

 2人を見てほわっと頬を緩めていたが、ふと重要な事実に気付く。

 

「……俺の武器なくないか……?」

 

 武器が詰まっていた巨大なバッグを見るとそれらしいものが全くなく、女性陣が持っている水鉄砲で全部のようだった。

 

「葉山、お前はどうするんだ」

「俺は……ほら、荷物番で」

「このヤロウ……」

 

 流石に混じりづらいと判断したのか、苦笑いで葉山が言う。

 しかし、このままいけば俺以外全員女性のハーレム状態で俺がハチの巣にされてしまう。それなら俺も荷物番で難を逃れよう……と思っていると。

 

「ああ、比企谷はそれを使いたまえ」

 

 平塚先生がにこやかにバッグの奥を指差す。

 霧吹きの空容器だった。

 

「……なんすか、これで肌の保湿でもしろってことですか」

「そうだな、女性は肌が大事だからぜひケアしてやってくれ」

 

 ええ……。

 

 俺の冗談に快く乗っかり、尚且つ反論させない空気感を出される。俺、平塚先生が上司だったら簡単に小間使いにされそうなんだけど……。

 

 平塚先生が「気を取り直して、今度こそ行くぞ!」と言い、女性陣が再び鬨の声を上げる。雪ノ下と三浦は先程同様の反応だった。さっきよりちょっとだけ水鉄砲を高く掲げている。

 

「……俺が一方的にイジめられる未来しか見えないんだが……」

「大変だな、比企谷」

「お前……」

 

 一人だけさらりと難を逃れた葉山を恨めしげに睨みながら、俺は戦地(数十メートル先)に旅立った。

 

 

<ステータス>

 名前:比企谷八幡

 クラス:ヒキニート(引きこもりでもないしれっきとした学生だが、周りの偏見により)

 武器:霧吹き。近接専用。チャージに時間がかかる。正直素手の方がよほどなんとかなる。

 スキル:①ステルスヒッキー――後ろに回り込んで不意打ちが可能。ただし実行すると犯罪者扱いされることがある。

     ②懐柔:口八丁で敵を丸め込む。ただし雪ノ下・平塚先生・一色・小町は共に頭が回るので、唯一効果があると思われるのは由比ヶ浜のみ。三浦はなんか丸め込める気がしない。

 

 

「……うん、負ける未来しか見えない」

 

 青い空と海に絶望しか見いだせないまま、俺は女性陣の後を追った。

 

       ×  ×  ×

 

 海の中と、砂浜の上に、花々が咲き乱れる。

 そんな光景が、目の前に広がっていた。

 

「それー!」

「きゃー!」

「ははははは! 私を倒してみろ!」

 

 瑞々しい声を上げて遊ぶ女性陣の声がなんとも夏に似合い、思わず見蕩れてしまう。一人魔王みたいな人がいるが、プロポーションが反則なのであまり直視も出来ない。

 

 小町と由比ヶ浜、一色と平塚先生は海に浸かり、水鉄砲に海水をチャージしてはかけあっている。雪ノ下も遅れて海に浸かり、どう遊んだらいいものか分からないのか、恐る恐る由比ヶ浜に近付いていく。なんでちょっと屈んで歩いているのあの子。暗殺者かなにかだろうか。

 

「きゃっ!?」

「わぷ……っ」

 

 由比ヶ浜が驚いて振り向きざまに雪ノ下の顔面を撃った。わぁ……とってもシュール……。

 

「ご、ごめんゆきのん! 大丈夫!」

「え、ええ……問題ないわ……」

 

 言いつつも、思ったよりも海水がしょっぱいらしく顔をこしこしとこすっている。猫みたい。

 

「ぷっ、くく……あ」

 

 その様子を見ていた小町が腹を抱えて笑うのを必死で我慢していると、雪ノ下がゆらりと小町の方を向いた。

 

「小町さん……良い度胸をしているわね?」

「ぴゃー!? ゆ、許してくださいー!」

 

 雪ノ下がこれ以上ないほど冷ややかな笑みを浮かべて、満タンまでチャージした銃口を小町に向ける。容赦なく浴びせられる水に我が妹は可愛らしい悲鳴を上げて逃げ惑う。

 

「小町ちゃん! 助けるよ!」

「む……っ」

 

 やけにノリノリで一色が割って入り、雪ノ下に海水を発射する。雪ノ下は鋭い眼光を浮かべると、一色が発射した水をスウェーバックで躱した。艶やかな黒髪が華麗に空を舞い、なんかただのバトルものみたいなシーンになっている。

 

「一色さんも加わるのなら……容赦はしないわ」

 

 こわっ。

 

 雪ノ下が完全なる戦闘モードになり、小町と一色に近寄る。あの、2人とも涙目になってますので……。

 

「ゆ、ゆきのん! あたしもかせ……火星? するよ!」

 

 音でしか覚えていなかったらしい由比ヶ浜が雪ノ下側に加わる。加勢な、加勢。あと、この場合小町・一色組に参加した方がまだ戦力的に釣り合いがとれていた気がする。水鉄砲をスウェーバックで避けるってどういう運動神経なの……?

 

「うぅぅ……いろはさん! 小町の骨を拾ってくださいね! いくぞぷあぁぁぁっ!?」

「小町ちゃん!?」

 

 1歩前に出た小町の顔面に雪ノ下・由比ヶ浜が発射した海水がヒットする。え、えげつねえ……。一瞬でチームメイトがへろへろにされて動揺している一色に雪ノ下が銃口を向ける。やだ、この子笑ってる……!

 

「一色さん……ごきげんよう」

「なんでここでその台詞を言うんですかわぷぅっ!?」

 

 一色があざとくなる暇もない。鬼だ。由比ヶ浜はへろへろになった小町と撃ち合いをしている。

 

 4人のバトルをぼへ~と見つめていると、不意に俺の横からえらく射程距離の長い水が飛んできて、雪ノ下が咄嗟に避けたことにより一色にぶち当たった。い、一色さん、不憫……。

 

「ははははは! ここで第三勢力の登場だ! 決して仲間はずれにされたのを悲しんでいる訳ではないぞ!」

 

 フラストレーションがたまっていたらしい平塚先生が乱入し、不意打ちをくらった一色の顔がひきつる。雪ノ下も危険と判断したのか、平塚先生に銃口を向けた。一瞬で平塚先生対4人の構図が出来上がる。おお……バトルものっぽい……。

 

「……あれ」

 

 さっきは自分のステータス分析までしてたのに、結局実況中継(心の中のみ)しかしてねえな……。

 

 これはどうしたものだろう、あの戦地に突っ込むのも怖いなぁ……と思っていると、背中にちょろろろと控えめに水が当てられた。

 

「……んん?」

 

 振り向くと、俺に銃口を向けた三浦がもじもじとしている。頬を仄かに朱に染めて、視線をせわしなく泳がせていた。

 

「あ、あーし、ヒマなんだけど……」

 

 なにこの可愛い子?

 

「……そうだな」

 

 にやりと笑い、三浦に霧吹きを発射する。

 

「わぷ……っ」

 

 目の前にいたため顔に直撃し、顔をぶんぶんと振ることで金の髪がふわりふわりと宙に舞う。猫が水気を払っているようだ。

 

「この……っ」

「ぶぇっ」

 

 容赦なく顔に反撃をくらい、鼻腔からしょっぱさが染み渡る。海水って毎回想定していたよりもしょっぱいから困る。顔を拭うと、三浦が楽しそうに笑っていた。

 

 

「……手加減しねえぞ」

 念のため霧吹きの中身をチャージして、ゆっくりと三浦ににじり寄る。俺がよほどやばい顔をしていたのか、三浦が怯んで後ろに下がった瞬間――

 

「いって……っ!?」

 

 背中に物凄い水圧を感じた。明らかに一人二人じゃない。

 振り返ると、バトル中のはずの5人が全員俺に銃口を向けていた。

 

「ヒッキーの変態!」

「お兄ちゃんの変態!」

「先輩の鬼畜生!」

「比企谷くん、海に還る?」

「なんだ、青春か、青春なのか!」

 

 色んな言葉で詰られた。一人だけ涙目なのは何ででしょうか。

 

「いや、俺はただあぶぶぶぶ」

 

 顔に大量の水がぶち当たる。多分5人同時に発射してる。

 

「ヒキオ、隙だらけだし」

 

 後ろから楽しげな声が聞こえたかと思うと、背中にも水が当たり始めた。

 

 ……あの……息があんまり出来ないんですが……。

 

 この後、俺対女性陣全員という鬼のような構図で戦い続けた。もちろん一方的に蹂躙された。

 

 鉄砲6丁対霧吹きっておかしくない? ねえ?

 

 

 

 続く。

 

 

 

 




 あーしさんでした。背中に水鉄砲を当てるくだりが結構気に入ってます。


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 それでは、今回もお読み頂きありがとうございました(^^)!!
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