※この作品はR-18です。

俺ガイル 日常の何気ないエロス。   作:高橋徹

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 後書きで夏コミ本のDL販売について書いています! ぜひご覧ください(^^)!


(17)

 目的地の駅から歩いて数分で、祭りの会場に着いた。

 ……着いたは着いたが……。

 

「わー、すっごいねー……」

 

 由比ヶ浜が漏らした呆けた声にうなずく。俺も含めみんなちょっと呆気にとられていた。

 

 会場は河川敷を利用していて、川に沿って数えきれないほどの出店が並んでいた。俺たちはその群衆を橋の上から眺めているのだが、とにかく人の密度がすごい。意思を持ったとんでもなく大きな蟲が這い回っているようにさえ見える。

 なんでみんな、わざわざ人口密度を上げにくるの? なんなの? 

子供に満員電車の苦労を体感させて「お父さんは普段こんな大変な状況の中会社に行ってるんだぞ」と苦労自慢をして奥さんと子どもに白眼視されたいの? そして若くて綺麗な女の子に目をとられた隙に子どもが迷子になって奥さんにマジ説教をくらいたいの? なんなの?

 

「あー……よし、帰るか」

 

 冗談3割くらいのつもりでぽつりとつぶやくと、

 

「はーい、お兄ちゃんお疲れー」

「先輩の分も楽しみますねー」

「比企谷くん……あなたって人は……」

「え……ヒッキー?」

「……ヒキオ?」

 

 みんな丁寧に反応を返してくれた。小町と一色が極めてつれない口調で流し、雪ノ下は額に手を当てて呆れて見せ、由比ヶ浜は飼い主に置いていかれる子犬のような目で見てきて、三浦は……声音こそやたらと尖っているが、表情は由比ヶ浜に近い。

 

「あー、なんだ、その……すまん」

 

 特に由比ヶ浜と三浦に対してどうしたらいいか分からなくなり、消え入るような声で呟いた。

 

「えー? 先輩、よく聞こえませんでしたー」

「お兄ちゃん、もう一回言ってー」

「……お前ら……」

 

 雑踏の中で俺が小声で謝ったのをいいことに、小町と一色がにやりと笑って迫ってきた。やめろ、可愛いだろうが。

 

 そうこうしているうちに橋を渡り終わり、河川敷へ下りる太い階段が見えた。

 致し方ない、ここまで来たら覚悟を決めるしかない。

 

       ×  ×  ×

 

 河川敷の雑踏に紛れて歩き始めると、10分も経たないうちに通りを歩く人の密度が少なくなっていった。どうやら今しがた開放されたエリアがあるようで、出口を見つけた水が流れていくように人波が和らいでいく。

 

「わ、わ、ゆきのん! あれ美味しそう! あ、でもあっちも食べたいかも!」

「ゆ、由比ヶ浜さん、あまり引っ張らないでちょうだい……」

 

 大型犬に引っ張られる飼い主のごとく、目を爛々と輝かせた由比ヶ浜に雪ノ下が浴衣の袖をちょいちょいと引かれている。うんうん、今日も百合百合しいな。

 

「結衣さん、どうせなら全部行っちゃいましょう! 手分けして買えば所要時間半減ですよ!」

「小町ちゃん、あったま良い! よーし!」

 

 祭りの陽気に当てられたのか、いつも明るい2人のテンションが更に変なことになっている。なんで2人ともサムズアップして粋な笑みを交わしてんの?

 

 人通りの邪魔にならない程度に立ち止まって小町と由比ヶ浜を見送ると、雪ノ下が由

比ヶ浜の背中をじっと見つめていた。小さな唇が何やらぽしょぽしょと動いている。

 

「そんなに食べて、栄養は一体どこに行くのかしら……」

 

 誰に投げかけるでもない質問を呟いて、そっと自分の胸に手を当てる。質問を口にしておきながら、その答えを既に知っているかのようだった。

 

 胸に手を添えて切なそうな顔をしている雪ノ下と目が合った。

 やばい。

 

「……比企谷くん。あなたは何も見ていないわね?」

 

 こわっ!

 

「は、はい、見ていないです、何も見ていないです」

 

 顔を逸らしているのに、首筋に視線の剣がズブリと刺さってくる。控えめに言って超怖い。

 

「せんぱーい、わたしもお腹減りましたー」

「よかったな、よりどりみどりだぞ」

「先輩、こういう時にこそ先輩としての威厳を示すべきだと思うんですよー」

「都合の良いこと言ってたかるのやめようね?」

 

 一色の相手をしていると、首筋に感じていた痛みが消える。ちらりと隣を見やると、雪ノ下が胸に手を添えたままうつむいていた。落ち込んでいらっしゃる……。

 

 俺がつっぱねたことでブーブー言っている一色に呆れていると、袖をくいくいと引っ張られた。振り向くと、三浦が俺の袖を引っ張りながらも恥ずかしそうに顔を逸らしている。

 

「……ヒキオ、あーしも……お、お腹……」

「え、なんだ? どうした?」

「な、なんでもない」

 

 慌てて顔を逸らしてしまった。ちらりと一色の方を見て、再び顔を逸らす。横顔がほんのりと朱に染まっていた。

 

 ……まさか、一色と同じことをやろうとしたのか? しかも恥ずかしくて断念した?

 ……なんだこの可愛すぎる生き物は。

 

 三浦をじっと見ていると、俺の視線に気付いているのかいつまで経ってもこっちを向こうとしない。

 

 そうこうしている内に小町と由比ヶ浜が戻ってきた。

 ……買いすぎじゃねえか?

 

       ×  ×  ×

 

 小町と由比ヶ浜は案の定買いすぎたようで、残りの4人で余りを食べた。「うう……買いすぎた……」と嘆いている由比ヶ浜の胸を雪ノ下が凝視していたが、とても追及する気にはなれなかった。

 

「あ、次はあれなんてどうですか!」

 

 食べすぎたためか、若干動きが鈍くなっている小町が元気よく指差した先に「射的」の文字が見えた。

 

「あー、いいんじゃねえか」

 

 言いながら、のろのろと射的の屋台に立つ。どうやら2人いっぺんにチャレンジできるようで、俺たちの前には小学生のグループや大学生のカップルが並んでいた。なるほど、2人ずつ挑戦させて客の回転率を上げているのか……大変だな、これだけ人がいると。

 

「2人ずつのようだが、どうする?」

 

 問いかけた瞬間――小町、由比ヶ浜、一色の目が細められ、視線がすさまじい速度で各メンバーを撫でていった。気を遣うのに慣れている3人の思考速度に驚く。由比ヶ浜はなにやら俺と三浦を見る時間が長かった。

 

「雪乃さん! 小町と一緒でいいですか?」

「え、ええ、構わないわ。よろしく、小町さん」

 

 小町が勢い良く雪ノ下の腕に抱きついた直後、「え、柔らか……白っ、さらさら……」とまるで柔軟剤のCМのようなフレーズを呟きながら雪ノ下の腕を真剣に撫ではじめた。やめろ、やってることが完全に変態だぞ。

 

「いろはちゃん、一緒でもいい?」

「はい! ぜひぜひ!」

 

 由比ヶ浜と一色が笑顔を交わし合う。気を遣っていた同士が組んでいるので、なんだか色々な思惑が絡まっている気がした。

 

「ヒキオは……あーしと?」

「……そうみたいだな」

「……そ」

 

 自動的に残りものとなった俺と三浦がペアになる。三浦はそっけない返事をしつつ、横目でちらちらとこちらを見ていた。

 並びながらペアを決めていると、前の大学生カップルが撃ち終えた。

 

「それじゃ、次のお客さんどうぞー」

 

 この道何十年、なんてキャリアがありそうなおっちゃんが頭にタオルを巻いて立っている。先に3ペア分の料金をまとめて払うことにする。小町・雪ノ下、由比ヶ浜・一色、俺・三浦の順で挑戦することにした。

 

「1人につき3発までだよー」

 

 おっちゃんの言葉にふむと頷く。

 景品を見たところ、やたらと小さいものや、当てても重くて倒れなさそうなものもある。

 

 さて、どれを狙うか……と考えていると。

 

「…………」

 

 雪ノ下が一点をじっと見つめていた。

 ねこのぬいぐるみだ。

 ……わかりやすいですね……。

 

 

 

 続く。

 

 

 

 




 ゆるゆるでした。次回は射的から!

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 それでは、今回もお読みいただきありがとうございました(^^)!!
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