※この作品はR-18です。

俺ガイル 日常の何気ないエロス。   作:高橋徹

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 三浦に連れられて屋上に向かう。三浦は何やら大きな袋を持っているのだけど、時折俺をちらりと見てくるときの顔がやけに険しい。

 

今朝は「もしかして三浦が弁当を作ってきてくれるのかも?」と一抹の期待を抱いていたが、今は先輩にしめられる後輩のような気分だ。何が待っているのか本当に予測がつかない。

 

 こっそりと階段を上って屋上に出ると、柔らかな風が三浦の髪を揺らした。夏の気配が色濃く残る日だと暑くてとても外に出られたもんじゃないが、今日はとても心地良い涼しさだ。外に出るのもやぶさかではない。俺は何様なんだろう。

 

「ええっと、それで俺はどうすれば……」

 

 しどろもどろに三浦へ問いかける。

 

 昔父から聞いたことがある。昔はカツアゲされた人が本当にもうお金を持っていないか確かめるために、ぴょんぴょんとジャンプさせたのだと。そしてチャリンチャリンと音がしたらまだ小銭が残ってんじゃねえかおらぁと言って脅しかけるのだと。持ってるのがお札だったらバレないよね? そんなこと本当にしてたの? と父に尋ねると、「俺もドラマでしか見たことがない」と言われた。真偽やいかに。

 

 何の話だ。

 

 俺の問いかけに対して、三浦は何だかそわそわとしながら眉根を寄せた。

 

「い、いいから。ほら、こっち座って」

「お、おう、はい」

 

 立ち位置が定まらない返事をして、三浦に指示されるがままに三浦の隣へと腰を下ろす。

 

 手に持っていた袋から、何やら弁当箱のようなものが出てきた。

 というか、どこからどう見ても弁当箱である。

 そうか、弁当を食べさせた上で金銭を要求するぼったくり方式か。

 落ち着け、俺。

 いくら三浦が顔を真っ赤にしているからって、動揺しすぎだろう。

 

「あ、あの……これ、昨日、小町に教わったんだけど……」

 

 妹本人がいない状態で名前で呼んでくれることを嬉しく思いつつも、三浦がしおらしく目を泳がせながら弁当箱を渡してくる様にこちらまで緊張してしまう。

 

「お、おう、そうか。ありがとな」

 

 両手で差し出された弁当箱を、きっちり身体を正面に向けた状態で同じく両手で受け取る。弁当童貞の卒業である。なんだ弁当童貞って。

 三浦がジッと見つめてくる。早く開けろと言うことらしい。

 

「……おお」

 

 蓋を開けると、思わずため息を漏らした。

 

 中には昨日も作ってくれたつくねハンバーグと出し巻き卵、それに加えてポテトサラダ、きんぴらごぼうが入っていて、ご飯にはふりかけがかけられていた。

 

 三浦は俺のリアクションに取り敢えず安心したようにフゥと息を吐いたものの、またすぐに俺をジッと見つめてきた。緊張で口元をむずむずさせながら、早く食べてとせかしているようだ。何だこの可愛い生き物は。

 

 箸を持っていただきますの挨拶をして、まずは昨日も作ってくれた出汁巻き卵をぱくりと口にする。少し甘めにした優しい味わいに思わず頬が緩む。

 

「うん……すげえ美味い」

 

 するりと本音を述べると、三浦の表情がパァッと明るくなった。

 

「よかったぁ……。一人でちゃんとできるか不安だったから……。味見はしてたんだけど自信なくて……」

「…………っ」

 

 心の底から安心したように微笑む三浦の表情に、五感の一部が麻痺してしまった。

 

 この後、つくねハンバーグ、ポテトサラダ、きんぴらごぼうと続け様に食べながらひたすら褒めていたが、申し訳ないことに味はわかっていなかった。俺が食べる様子を三浦がずっと嬉しそうに見ていたからだ。

 

 きっと俺が今食べている料理は美味いんだろうなと思いながら食べるという、奇妙な時間になっていた。

 

  三浦に食べないのかと聞くと、慌てて自分の分を取り出して食べ始めた。その仕草がまた可愛らしくて、三浦にバレないようにくすりと笑った。

 

「……なんかおかしい?」

「いえ、なんでもないですすみません」

 

 バレてた。

 

       ×  ×  ×

 

 弁当を食べ終えて礼を言うと、三浦は照れたように首を振って、そそくさと弁当箱を片付けた。すっかり可愛い生き物と化した三浦を見ながら、残りの時間はどうしようかと考える。昼休みの時間はまだそれなりに残っていて、教室に戻って何かやるにも中途半端な時間だ。

 

三浦が良いのであれば、このまま昼休みの終わりギリギリまでここにいるのもアリか……? などと考えていると。

 

「ん……っ」

 

 三浦が首をこっくりこっくりと傾げて、目元をこしこしとこする。なんだか妙に幼く見えた。

 

「眠いのか」

 

 昼ご飯を食べた後に眠くなるのはごく自然なことではあるが、それにしても今の三浦はどう考えても寝不足にしか見えなかった。

 

「……昨日、頑張りすぎた……」

 

 うとうととしながら、ちらりと弁当箱を見やる。この言葉と視線を目の当たりにして、三浦の寝不足の原因に思い至らない訳がなかった。

 

「……美味かった。ありがとう」

「……ん」

 

 眠気により表情筋の動きが鈍くなっているのか、俺の言葉にうっすらと目を細めて返事をする様がちょっと色っぽい。

 

 三浦はスマホでちらりと時刻を確認すると、少し戸惑った様子で尋ねてきた。

 

「ヒキオ……ちょっと寝ていい?」

 

 三浦の言葉に、思わず目をぱちくりさせてしまった。三浦は俺の反応が不思議だったのか、目をぱちくりさせている俺を見て目をぱちくりさせている。ぱちくりというフレーズがゲシュタルト崩壊を起こしそうなほどお互い目をぱちくりさせている。

 

「あー……まあ、うん、俺は問題ない」

「何その言い方……ありがと、ちょっと寝るね」

「おう」

 

 俺が躊躇する素振りをあまり見せると、三浦の眠気が飛んでしまうだろう。いちいち躊躇う理性という名のチキンハートを押さえ込み、顔をそむけながらも了承することに成功した。

 

 三浦は俺の言葉にクスリと笑うと、膝を抱えて小さく丸まり、膝におでこを預けて目を閉じた。よほど眠かったのか、すぐさま静かな寝息が聞こえ出す。空を見上げると、白い雲が呑気に泳いでいた。空もこちらも、吹いている風は優しいらしい。

 

「……んん?」

 

 右肩に柔らかな重みがかかる。何が起きたかは確認するまでもなく、眠った三浦がしなだれかかってきていた。長い金髪がさらりと流れ、俺の腕を蠱惑的に撫でていく。

 

 電車でのドキドキイベント、ふたたび!

 

 うん、これはアレだな。三浦が心地良く眠れるように、俺は石となってきっちり三浦の身体を支えないとな――と必死に言い聞かせていると、ふと昨日の夜に小町から言われた言葉を思い出した。

 

『優美子さんにそういう積極的なことをしても、きっと大丈夫だよ。2人は今そんなフェーズに差し掛かっています』

 

 あの時は「そんなバカな」と思っていた。けれど、今こうして三浦が寝る間を惜しんで弁当を作ってきてくれたことや、二人きりの状態で自分から寝ていいかと聞いてきたことを考えると――我が妹の言葉を、ちょっとくらい信じてもいいのではないかと思ってしまう。

 

 かと言って、寝てるときにするのはまた違うよな……? と思っていると。

 

「ん……っ」

 

 三浦がどこか色っぽい声を漏らし、俺の肩に心地良さそうに頬をすり寄せた。丸まっていた姿勢がほどけて、すらりと伸びた脚を流し、ますます俺にしなだれかかってくる。三浦の身体は驚くほど軽く、冗談かと思うほど柔らかい。

 

「…………っ」

 

 髪の毛からふわりと甘やかな匂いがする。目の前に見えるつむじが可愛らしい。

 ごく自然に、まるで自分の行動が予めプログラムとして組み込まれているかのように、三浦の頭に右手を伸ばして静かに撫でた。

 

「ん……っ」

 

 三浦の声に一瞬驚いたものの、もぞもぞと身じろぎするだけで避けようとはしない。そもそも寝てるんだしな……と思いながらも、滑らかな髪を何度も撫でる。撫でるたびに三浦は気持ち良さそうに身じろぎして、ますます俺に身体を密着させてきた。

 

 え、あれ? 本当に近くない? 

 

寝相でちょっとばかり俺に近付くのは、まあわかる。丸まっていた姿勢が変わるのも、人間は寝返りを打つ生き物なのだから別に不自然ではないだろう。

 

しかし今の三浦は、顔から肩、上半身全体、そして柔らかな太ももまで限りなく密着してきている。三浦がわずかに身体をよじるだけで、自分とは違う女性特有の柔らかさがガツンと頭に叩き付けられる。俺を抱き枕か何かと勘違いしているのではないだろうか。

 

これで三浦が起きたら、真っ赤な顔をした女王様にゴルゴダの丘にでも連れて行かれそうな気がする。

 

 どうしよう……と冷や汗を流すものの、これで俺が離れようものなら三浦が倒れてしまうし、それを支えようとしたらほっそりした身体を思いきり手で支えることになってしまう。

 

今からAmazonでマジックハンドを購入した方がいいかしら、ドローンなら屋上に運んでくれるかもなどと本格的に混乱しながらも、ちゃっかり俺の手は三浦の頭を引き続き撫でていた。

 

「ん……っ」

 

 三浦が目覚めた。

 終わりの始まりである。

 

「お、おっす」

 

 今まで一度も口にした事が無い野澤雅子ボイスの国民的ヒーローの挨拶をする俺を見ても、三浦はポケーッとしていた。

 

 続いて、自分の頭に俺の手が乗っていることを確認。

 そして、身体がぴったりとくっついていることを確認。

 眠気が漂っていた三浦の顔が、一瞬で茹だった。

 

「な……っ」

 

 溢れ出した思考が喉で詰まって、言葉にならなかったようだ。

 

「ええと、その、すまん」

 

 社会的&肉体的な死を覚悟しながら謝ると、三浦は長い髪の毛からちらりと覗かせた耳まで真っ赤にしながらも、口元をもにょもにょとさせて何とか言葉を紡いだ。

 

「べ、別に、ヒキオが謝ることじゃないし……あ、あーしからくっついちゃったんでしょ? その……ごめん」

「え、あ、いや、それは別に、全然構わないというか……」

 

 予想よりも遥かにしおらしい様子の三浦に戸惑い、思いつくままに言葉を発してしまった。三浦の顔がさらに赤くなる。

 

 で、でも……と、三浦がもじもじと動く。視線は頭の上の俺の手に向けられていた。

 

「あ、す、すまん」

 

 慌てて手を離すと、三浦は――俺の自惚れでないとするならば――ちょっとだけ、残念そうな顔をしたように見えた。

 

「……別に、やめろなんて言ってないし……」

 

 ちょっと恨みがましさの混じった言葉を呟き、上目遣いで見つめてくる。視界がぐらりと歪んだ気がした。

 

 この後三浦が何を言うのかも、俺が何を言うのが適切なのかもまるでわからない。ものの見事に固まっていると、三浦がぽそりと囁く。

 

「……ね、寝てるときにされたってわかんないから……明日からは、その、あーしが、起きてるときに、……し、して……っ」

「…………っ」

 

 予想だにしなかった言葉に反射的にごくりと喉を鳴らすと、三浦がビクリと跳ねた。上目遣いで恐る恐る俺の瞳を覗き込む姿は、森にいる小動物を思わせた。

 

 三浦の顔は真っ赤だ。俺の顔も多分、真っ赤だ。

 

「……あー、まあ、うん、その、なんだ……了解した」

 

 俺の言葉に三浦はきょとんとして、それから嬉しそうに、ふわりと花が咲いたように笑った。ずっと見ていたくなるほど綺麗な笑みだった。

 

「……変なの」

 

 ずいぶんな返事だったが、言葉の割にその表情がどこまでも幸せそうだったので何も言えなかった。昼休みがあと数分で終わるというタイミングだったため、少し急ぎ足で教室に戻った。

 

――明日からは、ということはこれからも弁当を作ってくれるのか、とか。

――俺はそのたびに、三浦が見守る中で頭を撫でることになるのか、とか。

 

 具体的に聞きたいことはあったのだけれど、この雰囲気を壊すのがいやだったので何も言わずにいた。

 

 柄にも無く、と言っていいのだろうか。

 三浦と教室に戻るとき、どうしようもないほどの幸せが胸に満ちていた。

 

 

 

 続く。

 

 

 

 




 少しずつ関係が進んでいきます。これからもゆるりとお楽しみください(^^)

 今年の更新は来週の大晦日が最後ですが、その手前の27日(水)からノクターンノベルズ(小説家になろうのR-18男性向けバージョンのサイト)にて
「コンビニで出会った女の子と爛れた関係になりました。」
 をスタートします!!
 イメージとしては、何気ないエロスで書くアフター(くっついた後)のお話で特にエロを凝縮したようなお話です。イチャイチャとゆるく爛れた生活を送ります。
 Twitterアカウント
 takahashi_toru_
 でも宣伝していきますので、ぜひともよろしくお願いします(^^)!

 それでは、今回もお読みいただきありがとうございました(^^)!

 メ、メリークリスマース(途中で思い出した)……!
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