よろしければぜひご覧ください(^^)!
三浦が初めて弁当を作ってくれた日から、毎日ではないもののちょこちょこと作ってきてくれるようになった。2日連続で作ってくれるときもあれば、月曜日と金曜日に作ってくれる場合もある。定期的ではないため、俺は昼休み前になるといつもそわそわしていた。
「ヒキオ。……ん」
「……おう」
弁当を作ってくれた日の三浦は殺人的な可愛さで、4限が終わると制服の袖をくいと引っ張ってくる。そしていつの間に入れていたのか、机から弁当箱をちらりと見せてくる。その一連の仕草を見るたびに窓を開け放して叫びたい気持ちになった。
4限の終わりを告げるチャイムが鳴ると、俺は隣の三浦に視線は向けずとも全力で神経を張り巡らせた。
どっちだ、どっちだ……と、心臓がノックされているのかと思うほど昂ぶらせていると――普段の態度からはおよそ見当もつかないほど控えめに、袖をくいくいと引かれた。
「ヒキオ。……ん」
「……おう」
声は小さくて、少し掠れていて、何よりも優しい。
口元をむずむずさせながら、そっと教室を出て屋上に向かった。
× × ×
「ごちそうさまでした」
「ん、……お粗末さま」
三浦が照れながら言葉を返してくれた。お粗末さまと言ってくれるようになったのはここ数日のことだ。
「美味かった。……いつも助かる」
「……うん」
三浦が頬を朱に染めて頷く。頷いたきり、顔を上げてこない。何事かと見やると、上目遣いで俺を見つめていた。しっとりとした瞳に心臓が高鳴る。
今日もこの時間が来てしまった。来て『しまった』と言うのは三浦に失礼なんだが、心臓に悪いのだ。良い意味で。良い意味で心臓に悪いってなんだ。
三浦が上目遣いで見つめてくるのは、俺をからかいたいなどと言った意図からではない。三浦はあくまで純情おかんヤンキーなのだ。ものすごいフレーズができてしまった。本人には絶対に言えない。
三浦が上目遣いなのは――俺が、頭を撫でやすくするためなのだろう。
「…………」
夏の気配が少しずつ溶けて消えていく空を眺めながら、金色の髪をくしりと撫でる。
「ん……っ」
華奢な肢体がぴくりと動く。僅かな振動は何十倍にもなって俺を動揺させる。
ちらりと視線を隣に移すと、綺麗なつむじが見える。根本がちょっと黒くなっていた。三浦のことだからこの週末にでも染め直すのだろう。
「ん……っ、…………」
気が付けば、三浦の僅かな反応を見逃すまいとジッと見つめながら頭を撫でていた。三浦の髪はとても触り心地が良く、男である自分とのあまりの違いに驚く。性別の隔たりは身体のちょっとした部分にもはっきりと表れるのだという、あまりにも当たり前なことを今さらながらに実感した。
「ヒキオ……その、見すぎだから……」
「あ、ああ、すまん」
慌てて視線と手を離す。すると三浦は眉根を寄せて拗ねた表情を浮かべた。
「……手まで離せとは言ってないし」
「……お、おう」
難問にも程があるだろう。
三浦の髪をふたたび撫でつつ、視線は空とつむじを行ったり来たりする。
ふとした瞬間に、甘やかな匂いがふわりと香ってくる。反射的に湧き上がる衝動に従い、肩を抱き寄せたくなる。本能とのバトルを静かに繰り広げながら、昼休みの残りの時間を過ごした。
× × ×
弁当を作ってもらう以外でも、三浦は少しずつ俺に対する態度が変化していた。
ある日の昼休みのこと。4限終わりのチャイムが鳴ると、教室に由比ヶ浜と海老名さんが現れた。三浦に用があるとのことだった。
「ヒキオ」
三浦が席を立って教室を出る直前、手に小さなメモ紙を渡された。
『今日は作ってない。ごめん』
三浦の厚意でやってくれていることなのだし、弁当が無いと分かった日でも購買に行けば腹を空かすこともない。わざわざ謝らなくてもいいのに……と、思わず頬をゆるめた。
三浦と一緒のときは屋上に行くのが定番になっていたが、今日は久しぶりにテニスコートが見える『いつもの場所』に行くことにした。
× × ×
購買で買ったパンをもっふもっふと食べ終えて、ポケーッとする。ここ最近は弁当の有無を問わず三浦といることが当たり前になっていたことを思い出し、自分の変化に驚いた。
気晴らしに、最近あまりログインできていないソシャゲを進めようとスマホを取り出す。いつものログインボーナスに加えて新しく始まったイベントのボーナスももらった。
青空の下でやるソシャゲも中々おつなもんだな……などと思っていると、「あ」という声が聞こえた。
「ヒキオ、ここにいたんだ」
「おう」
用事を終えたのか、三浦がパンと紅茶の紙パックを持ってこちらへやってきた。当然のように隣に腰を下ろしたが、少し前までのように戸惑うことがなくなった自分に気付く。
「一回屋上に行っちゃったし」
「おう、すまん?」
疑問形で謝ってしまった。別に俺、悪くないよね? あれ?
俺が盛大に戸惑っている間に三浦の中ではこの話題は終わったことになったらしく、テニスコートを眺めながらパンの袋をピッと開けた。改めて、細い指だなと思った。
「何してんの?」
三浦の視線が俺のスマホに向けられる。
「ああ、ソシャゲだ」
「ソシャゲ?」
三浦が首を傾げながらパンにぱくついた。
「ああ、TLにしょっちゅう絵が流れてくるような流行りのタイプではないやつだけどな。無課金でも結構楽しめるからちょこちょことやってる」
「TL……? 無課金……?」
三浦の顔がどんどん訝し気になってきたところでハッと気付く。以前材木座と最近のラノベの話をしたとき、由比ヶ浜や一色が同じような顔をしていたことに。
あのときはまだ材木座と話していたからいいが(いや、よくはないんだが)、今は三浦しかいない。なのに三浦にとっては未知な言葉を説明もなしに並べ立てるというのはよろしくない。非常によろしくない。
これは引かれるぞ……とビクビクしていると、三浦が小さな口をくもくもと動かし、細喉をこくりと鳴らした。
「ヒキオ、全然意味わかんない。ちゃんと教えて」
極めてフラットな表情で俺をジッと見ながら、2人の距離を一気に半分にまで詰めてきた。甘やかな匂いがふわりと香る。一昔前のアニメなら手が千手観音のように動いて慌てふためくところではなかろうか。
しかし、これは一体どういう風の吹き回しなんだろうか……?
俺がつっかえながらも一つ一つの単語を説明していくと、三浦はストローで紅茶を飲みながらふむふむと頷く。あまりピンとこないときは生まれたてのパグのようにくりんと首を傾げるので、その都度追加で説明をした。首の傾げ方が可愛すぎるんですけども。
一通り説明を終えると、三浦はちゅるるっと紅茶を飲んで、ストローから唇を離した。
「……あーしもやってみよっかな」
「え」
思わぬ言葉に素っ頓狂な声を上げてしまう。俺の反応を見て、三浦は片眉を上げた。
「なに? そんなおかしい?」
「いや、別にそういうわけじゃないんだが……ビックリした」
ぼそぼそと呟くと、三浦がぴったりと脚を閉じて膝におでこをくっつけた。
「……もっとヒキオのこと、知ろうと思ったっていいじゃん……」
「……っ」
きゅうっ、と心臓が締めつけられた。その声は切なげで、切実で、少しだけ泣きそうだった。
「……あー、それなら漫画とかはどうだ? そっちの方がとっつきやすいかもしれない」
何か言わなくては……と苦し紛れに言った言葉だったが、三浦はぴょこっと顔を上げて食いついた。
「ヒキオってそんなに漫画持ってんの?」
「ああ、まあ……漫画と小説だな。本棚に結構ぎっしりと入ってる」
「へえ。じゃあ今度見に行っていい?」
「別にいいけど……って、え?」
「え? ……あ」
三浦の言葉に驚いた俺を見て、三浦は今自分が何を言ったかに気付いたようだった。見る間に顔が赤くなっていく。俺は俺であっさり了承してしまったために耳まで熱くなっていた。
「……あ、そ、その……いつか時期を見て、……行く」
「……お、おう」
曖昧極まりない言葉ではあるが、エラくハードルの高いイベントが予約されてしまった。
続く。
<書籍化します!>
小説投稿サイト・ノクターンノベルズにて連載中の作品「社会人が築く亜人ハーレム~ラブコメとエロを分ける理由なんてない~」が、2018年から電子書籍で刊行されることになりました!!
何気ないエロスでずっと応援していただいていたおかげです。本当にありがとうございます!! 詳しい情報は追々お伝えしていこうと思います!
<お知らせ>
小説投稿サイトノクターンノベルズにて、新作「コンビニで出会ったエロい女の子と爛れた関係になりました。」の連載を開始しました!! タイトル通りの内容で、1組の男女がエロく、ゆるく、そしてエロい生活を送ります。
活動報告にURLを貼っていますので、よろしければぜひご覧ください(^^)!
今年ももう終わりですね! 自分としては本当に濃厚な1年でした。来年もまたガンガン前に進んで行きたいと思います。
来年からも何気ないエロス及びオリジナル作品をどうぞよろしくお願いします(^^)!
それでは、今回及び今年1年お読みいただきありがとうございました(^^)!!
みなさん、良いお年を!