※この作品はR-18です。

俺ガイル 日常の何気ないエロス。   作:高橋徹

590 / 700
 後書きにて、先週募集した夏コミのヒロイン候補アンケートについての結果を発表しています! よろしければぜひご覧ください(^^)!


(38)

 三浦を家に招くことが決まった。

 

 誘ったときは日にちが曖昧だったので、翌日にお互いひどくぎこちない動きをしながらも話し合い、土曜日に来てもらうことになった。家に誘ってからの三浦はやけに反応が過敏になっていて、何気ない会話の中に『家』『部屋』『漫画』などのワードが出てきただけで顔を真っ赤にしてしまう。黒ひげ危機一髪なら穴を3つくらい残してあとは全てアウトのような状態だった。可愛いのだけれども、俺もひたすら緊張していた。

 

 金曜日の夜。

 

 小町が作ってくれた夕食を食べながら、明日のことについて切り出すことにした。

 

「……小町、話があるんだが」

「ほぇ?」

 

 切り出したタイミングが悪く、小町はエビフライをもきゅもきゅと食べていた。俺を咎めることもせず、「ひょっほまっへへ(ちょっと待ってて)」と言ってエビフライをよく噛んで飲み込む。

 

 

「どしたのお兄ちゃん?」

 早く残りのエビフライを食べたいんだけどなーという気持ちを一切隠すことなく尋ねてくる。というかものすごくエビフライを見ている。エビフライに尋ねているようにしか見えない。俺の存在をもう少し上位に持っていってくれませんかね……。

 

 しかし。

 

「その、なんだ……三浦が、明日、ここに、来る」

「……詳しく話を聞かせてもらおうか」

 

 俺が告げるなり、小町は流れるように箸をテーブルに置き、両肘を付いて手の指を組んだ。俺の言い方も悪かったけど、小町のポーズも相俟って完全に三浦が使徒扱いになっている。

 

「それは、この間みたいに小町と何かするってわけじゃないんだよね? 小町、今初めて知ったし」

「ああ、俺の部屋で漫画や小説を見せるだけだ」

「ほう、見せる『だけ』と言いましたね。まるでそれ以外の意図があることを無理やりに隠すような言い回しですな?」

「その鬱陶しいキャラを今すぐセーヌ川にでも投げ捨ててこい」

「お兄ちゃんもおかしくなってるよ」

 

 緊張した兄と、舞い上がっている妹。

 

 どちらもテンションがおかしなことになっていた。セーヌ川ってフレーズを生まれて初めて口にしたぞ、俺。

 

 こほんこほんと咳払いをする。

 

「まあ、それだけのことだ。迎え入れる準備は多少必要だと思ってる。取り敢えず今からレッドカーペットを買ってくるから、廊下に敷くのを手伝ってくれるか」

「お兄ちゃん、ほんとに落ち着いて?」

 

 すでに冷静になった小町にたしなめられた。

 こほんこほんと咳払いをふたたび。

 

「……女子はアレなのか、やっぱりなんか良い匂いがするのが好きなのか? あの、ルーム……なんだっけ、揚げパスタみたいなやつ」

 

 いつか由比ヶ浜の部屋で見た、瓶に刺さっていた数本の細い棒を思い出す。俺の比喩に雪ノ下が笑いをこらえていたことしか思い出せず、肝心の名称が出てこない。俺の言葉に我が妹は、雪ノ下や由比ヶ浜と違って「はぁ?」と優しさのかけらもない反応を返してきた。

 

「何それ、良い匂いがして、揚げパスタみたいなやつ? ……ルーム……まさか、ルームフレグランスのこと?」

「そうそう、それそれ」

 

 妹が発したワードに「That’s right !!」と言わんばかりに親指を上げると、小町がこめかみに手を当てて「はぁ……」と嘆息した。おいやめろ、雪ノ下の真似が上手いじゃねえか。

 

「お兄ちゃんはほんと、そういうところが……アレだね」

「そこははっきり言ってくれた方が優しさを感じるんだが」

「いいの? 結構キツいよ?」

「やっぱやめとくわ」

「豆腐メンタルめ……」

 

 小町の罵りを一区切りとして、話を元に戻す。

 

「なんかそういうやつを置いてた方がいいのかなと思ったんだが」

 

 女子を部屋に招くという難易度の高すぎるイベントに、戸惑いしか覚えていない。誘いたかった気持ちに偽りはないのだが、如何せん自分の経験値が足りなさすぎる。

 

 小町は俺の言葉に、「ふむ……」と腕を組み、あごを親指でぐりぐりしながら思案顔になった。なんかマフラーをぐるぐる巻きにしてそう。

 

「んー、そういうのも手だとは思うんだけど……小町はあんまりおすすめしないかなー」

「と言うと?」

 

 小町が人差し指をピッと上げる。

 

「お兄ちゃんは、優美子さんと話してるときに『良い匂いだなー』って思ったことはある?」

「……あー、いや、まあ、その、ないこともない」

「結構あるんだね」

 

 そのエキサイト翻訳はなんなのん? 語尾に『ん』を足すだけで国を陰で操る傾国の美女が浮かぶ。

 

「それならいいんだよ。あとは優美子さんがどう思ってるかなんだけど……」

「どう思ってるかってのは、俺の匂いをってことか」

「そうそう。相手の匂いが良い匂いかそうでないかってかなり重要だと思うんだー。だから小町としてはお兄ちゃんが気取った策をとるよりも、ありのままでいておいてもらって優美子さんがどんな反応をするか見た方が良いと思うんだよ」

「……俺の部屋に来ただけでわかるもんなのか」

「ん、結構わかるもんだよ。それは別に女の人の部屋でも同じことが言えるんだけどねー。お兄ちゃんの部屋、たまに顔を出したりするとそれとなく匂いがするもん」

「え、ほんとに?」

 

 やだ、あたしったらそんな匂いを……と己の腕の匂いを嗅ぐが、どうにもわからん。

 

「お兄ちゃんの部屋はそんなに気にならないけど、お父さんの部屋は近付くのもきついかな」

 

 さらっと辛すぎる情報が告げられた。親父、気を強く持てよ……。

 そういうわけで……と言葉を繋げると、小町はふたたび箸を手に取った。

 

「今さら気取ったってどうにもなんないんだから、いつも通りでいるしかないよ」

「お、おう、そうか……そんなもんなのか」

「そうそう、そんなもんだよ」

 

 言って、この話はこれで終わりとばかりにエビフライをかじる。俺もこれ以上何かを聞きたいわけではないので、大人しく食事を再開した。

 

       ×  ×  ×

 

 金曜日の夜。

 

 学校から帰って、ご飯を食べて、シャワーを浴びて、部屋に戻る。本当は寝る前に勉強をする時間なんだけど、今はとてもそんな気分になれずベッドに飛び込んだ。

 

「……明日、ヒキオの家に……」

 

 ちょっとした火種で燃える導火線が身体中に巻き付いてるみたいに、ここ数日はちょっとでも『例の件』を考えるたびに身体がぶわっと熱くなってしまう。まさかヒキオから誘ってくるなんて……と初めは思ったけど、考えてみれば、その前の勉強会だってヒキオからの誘いだった。

 

 もしかしたらあれも、帰りに誘うために……? と思うと、表情筋が言うことを聞いてくれなくなる。枕に顔を埋めて脚をバタつかせるとベッドが軋む。普段そんなことをしないからか、聞き覚えのない音だった。

 

 いつから?

 いつからあーしはヒキオのことを……?

 

 隼人をずっと追いかけてきた。けどその途中から、いつの間にかヒキオが近くに見えるようになって。初めはほんとに小さい、居るのか居ないのかわからないくらいの存在だったのに、だんだんあーしの中で大きくなっていって。

 

 気が付けば、隼人とのことを、ヒキオが応援してくれて。

 

 もう届かないってわかったときも、ヒキオはそばにいてくれて。本人に自覚があるかはわからないけど、あーしの隣にいてくれたヒキオは、今にも泣きそうな顔をしてた。男の人でもこんな表情を浮かべるんだ……って、悲しい中でもちょっとビックリしてた。

 

 それから、夏の終わりくらいから、どんどん、どんどん、ヒキオの存在が大きくなって……。

 

 もう、今では、油断したら一日中ヒキオのことを考えるようになってしまった。

 

 そう思ってるのはあーしだけなのかと思ってたけど、最近二人でいるときのヒキオを見てるとどうもそうではないみたい。

 

 手も、繋いだし……。

 

「…………っ!」

 

 もう一度、脚をバタバタ。枕をこんなに強く抱きしめたのは初めてかもしれない。

 

「……はぁ」

 

 バタつかせる脚をぴたりと止め、ふと思う。

 ヒキオの気持ちが知りたい。

 

 でも、前のように――隼人のときのようになることが、恐い。恐くてしょうがない。

 

 けど、それでもあーしは……。

「……ヒキオ……っ」

 

 もう一度、枕に顔を押し付けて名前を呟く。もう何十回、何百回呼んだのかもわからない名前。

 

 あの、無気力そうでぶっきらぼうに見えて……それでいて、おっかなびっくりとしながらも気遣ってくれる、不器用にもほどがあるクラスメイトの顔を思い浮かべて、決断する。

 

――ヒキオの気持ちを、確かめたい。もちろん、自分の気持ちも伝える。

 

「……うぅ……っ」

 

 決意を固めた瞬間、身体が内側から燃えそうになって、もう一度バタバタとベッドの上で暴れた。

 

       ×  ×  ×

 

 部屋のベッドに横になり、電気を消した状態で真っ暗な天井を仰ぐ。

 

「……まあ、そろそろ……だよなぁ……」

 

 経験豊富な大人なら、俺にも想像がつかないような高度な駆け引きを楽しんだり、はっきりと言葉にしない曖昧な関係を楽しんだりもするのだろう。

 

 けれど、俺も三浦もまだ高校生だ。三浦が手慣れていたらまた話は違っていたかもしれないが、失礼ながら三浦はかなり初心だ。それがまた可愛いのだけども。

 

――明日、はっきりと、この気持ちを言葉にする。

 

「……ぐぉぉぉ……っ」

 

 決意した瞬間、両手で頭を覆ってベッドの上を転がった。小町にまた壁ドンをされないように、音を立てずに悶えるという我ながら器用な行為に及ぶ。

 

 明日……緊張しないわけがないよなぁ……。前夜でさえこの有様だもんなぁ……。

 

 イメージトレーニングをしようにも何も映像が浮かばず、ただただごろごろと転がる。

 

 それから小一時間に渡って悶々とすると、疲れ果てていつの間にか眠りに就いていた。

 

 

 

 続く。

 

 

 

 




 2人の物語もやっとここまで来ました。まだまだまだ続きますけどね!


<夏コミ本アンケート結果発表>
 夏コミC94に出す俺ガイルR-18SS本で、サキサキは書くと決めていたので「あと誰にしようなかなー」と思いまして、Twitterのアンケート及びこちらの活動報告で誰のお話が見たいか募集してみたところ、沢山の評価をいただきました! ありがとうございます!!
 
 全ての票数を合わせたランキングを発表します!!

※Twitterのアンケートは投票数と得票率で計算しているので、若干ざっくりしています。
※複数書かれていた方は、今回は全て票数に入れることにしました。
※すでにコミケで書いているいろはす、ゆきのん、はるのんは除外しています。

☆☆☆結果はこちら☆☆☆

1位:小町309票
2位:ガハマさん275票
3位:ルミルミ195票
4位:平塚先生190票
5位:めぐりん179票
6位:あーしさん174票
7位:由比ヶ浜マ169票
8位:折本133票

 でした!! 小町強い!! 
 そして3位~7位の僅差っぷりが半端ないです。ゆうて折本も133票。みんな素敵ですもんね!!

 そしてこの結果とイラストを描いていただく方の意見も取り入れた結果……

 由比ヶ浜『母娘』

 を書くことに決定しました!! まさかの!!

 Twitterのアンケートではこのリクエストはやりようがありませんでしたが、こちらの活動報告では3Pを望む声もちらほらとありまして。かつ由比ヶ浜マ&結衣のエピソードを書いていた期間がおよそ2年前ということで、当時もエロエロに書いたつもりでしたが今書いたらその800倍くらいエロく書けそうだなーと思い決定しました!!

 今度新しく個人サークルを作ることにして、ただいま夏コミ申し込みをしているところです。

 媚熱書房(びねつしょぼう)

 というサークル名で出すつもりです!
 ページ数はまだ決めていませんが、おそらく200ページは越えると思います。前半をサキサキ、後半を由比ヶ浜母娘、といった構成にする予定です! サキサキは家族ぐるみの付き合いとしっとりしたエロを、そして由比ヶ浜母娘はエロ&エロをお届けしたいと思っています!!

 いつもよりもかなり長くなりました。以上です!

 それでは、今回もお読みいただきありがとうございました(^^)!!

 

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