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三浦と付き合うことになった次の日。日曜だったが、三浦に用事があったため会うことはできなかった。それでもなんだろう、アレだ、大なり小なり「俺ら、付き合ってますやん?」という雰囲気がそこはかとなく漂っている連絡を取り合うことができるのではないか……と思ったが、そこは安定の俺&三浦である。
試しに何度かやりとりしてみたが、見事に付き合う前と何も変わらない。文面だけ見たら「ともだち……なの、かな?」と城廻先輩があごに手を当てて首をこてんと傾げるまである。城廻先輩がイメージにピッタリだったので急遽登場してもらった。
唐突だが、普段は夜に自分で処理をする時は漫画や動画にお世話になる。けれど、土曜と日曜の夜は想像だけで抜いた。三浦とのキスの感覚を思い出すと一向に興奮が収まらず、3回連続で抜いてげっそりした。男子高校生なので性欲はそれなりにあるつもりだが、それでも今までは日に1~2回程度だったので驚いた。生身の女の子ってすごい。
そして迎えた月曜日。いつもより早めに学校に向かうと、教室には三浦だけ座っていた。勉強道具を広げているが、明らかに集中できていない。三浦と同じ状況だったら俺も間違いなくあんな状態になっているだろう。
「うっす」
教室の後ろのドアを開け、一文字目で声が裏返りそうになりながら挨拶すると、三浦がぐりんとこちらを向いて背をシャキッと伸ばした。
「お……おはよう」
んんん?
俺を見た三浦の目が、誇張抜きに輝いているように見える。犬ならしっぽをぶんぶんと振ってそうだ。どれだけ後ろ向きな想像をしようとしても、三浦は俺に会えて嬉しいと思ってくれていると分かる表情だ。
え、なに。
三浦さん、こんな分かりやすく可愛くなりますのん?
獄炎の女王と呼ばれていた(俺にだけ)、あの三浦優美子はいずこへ?
驚きながら隣の席に座る。三浦は浮かれすぎたと思ったのか、ほんのりと頬を赤らめて顔を逸らしている。金の髪の毛先をくりくりと指でいじり、太ももに置いた手をもじもじとしながら。仕草だけを切り取って見ればあざといかもしれないが、三浦の場合はどう考えても天然だろう。信じられないくらい可愛い。ここが教室でよかった。こんな可愛らしいところを見てなにかしそうになっても堪えることができる。
「……昨日はごめん」
三浦の言葉にはてと首を傾げる。別に会う約束をすっぽかされた訳でもないよな……と考えたところで、三浦に用事があったことを思い出す。
「別にしょうがねえって。今日から、まあ、うん、その……毎日、会える、し、まあ、うん……だいじょうぶだろ、うん」
しどろもどろ、ここに極まれり。
ここはかっこいい男が口にするような言葉をサラリと言えればよかったのだろうが、そこは安定の俺である。「つまりは?」と半ギレで問いただされそうなどもりっぷりである。
しかし、俺の言葉でも三浦は耳まで赤くして、薄い唇をもにょもにょとさせてうつむいた。
「……それもそっか……」
ぽそりと言葉を紡ぐ唇を思わず見つめてしまう。一昨日の行為を脳内で高速再生して、三浦の甘い匂いと柔らかな感触を思い出す。思い出すだけで血液が下半身に集まりそうになり、慌てて意識を別のことに逸らそうとする。それでも、三浦の綺麗な唇から目を離すことができない。
「ヒキオ、見すぎだし……」
「え……あ、わりい」
三浦が掠れた声でつぶやいた。慌てて謝ると、三浦はそっと手で口元を覆って顔を逸らし、横目で俺をちらりと見た。本人は意識していないのだろうが、口元を隠して流し目を送る一連の仕草がひどく婀娜っぽい。
目を見開き、思わずごくりと喉を鳴らす。
二人の他に誰もいない教室で、その小さな音ははっきりと響いた。
「…………っ」
三浦に瞳が揺れた。ゆらりと、風に吹かれた炎のように。
いつ誰が来てもおかしくない、朝の教室。
ほんの十数秒前まで、この状況は理性をとどめる楔として機能していた。それなのに、どんどん視界が、世界が狭まっていく。三浦のことしか見えなくなっていく。
三浦が口元を覆う手を外した。いや、違う。俺がそっと手を伸ばし、三浦の手首を掴んでどかしていた。三浦は戸惑っているが、抵抗はしてこない。なんだか泣きそうな顔をしている。一昨日、何度も何度も見た顔だ。俺の嗜虐心を燃え上がらせる表情だと三浦は気づいているのだろうか。
「ぁ……っ」
三浦と手をつなぎ、指を絡ませる。三浦がぴくりと震えた。悩ましい瞳で見つめながら、そろりそろりと探るように俺の指に自分の指を絡ませてくる。指と指が触れているだけなのに、まるで互いの神経の束が触れ合っているように思える。ほんのわずかに動いて指同士がこすれるだけで、甘い痺れが身体の隅々にまで行き渡る。
「ヒ、ヒキオ……だめ、今は、だめ……っ」
三浦が身を逸らす。いつのまにか俺が三浦にずいと顔を寄せていた。三浦の言葉は半分が本音で、半分が迷っているような、そんな複雑な心情を覗かせる。
「……だめか?」
ここまで来たら、せめて一回くらい……と思っていると、三浦がそっと俺の唇に手を押し当ててきた。
「後で、ちゃんとしたげるから……」
「……っ」
濡れた瞳で囁かれ、口を塞いでいる指がそっと唇を撫でてくる。三浦の言う『後で』とは、昼休みのことだろうか。最低でも放課後だろう。
「……分かった。わるい、つい……」
ぞくぞくとした興奮を覚えながら下がると、三浦がくすりと笑った。
「ヒキオ、朝からサカりすぎ……だし……っ」
自分で言った言葉に恥ずかしくなったらしく、一瞬で耳まで赤くなってしまった。真っ赤になった小さくて可愛らしい耳を無性に触りたくなったが、廊下で生徒同士が挨拶する声が聞こえたので、慌ててカバンから教科書を取り出した。
× × ×
昼休み。
いつものように三浦が弁当を作ってくれていた。用意していることを告げられた時点で、毎回欠かさず感謝の言葉を伝えている。
誰にもバレないように、こっそりと移動して屋上へ向かった。
壊れた南京錠のついたドアを開けると、仄かに秋の匂いを感じた。夏を名残惜しむようにまだじんわりと暑さが残っていて、季節の狭間の複雑な空気感を感じる。
いつもの場所に移動して腰を下ろそうとすると、三浦が弁当包みを下に置き、唇を重ねてきた。
「んむ……っ」
昼ごはんを食べる前の方がキスするにはいいかな……などと考えていたが、三浦から積極的に唇を重ねてくるのは予想外だった。
「ん……ちゅっ、んんっ、んふぅぅ……っ」
細い腕が俺の首に巻きつき、柔らかな身体があますことなく絡みついてくる。ブラウス越しに感じるふにゅりとした柔らかい感触。甘い匂いが触れ合った部分から染み込んでくるような気がする。一、二歩よろめいたところでなんとか踏みとどまり、三浦の腰にそっと手を伸ばす。
「んっ、ちゅるっ、はむっ……ヒキオ……んっ、んふぅぅ……っ」
うっとりと細めている三浦の瞳は、日陰の中で濡れ光っていた。今朝、キス寸前で止まって欲求不満になっていたのは俺だけではなかったらしい。というよりも、この様子を見た限りでは三浦の方がよっぽど我慢していたのだろう。そう気づいた瞬間、煮詰められた嗜虐心がぞくぞくと背骨を駆け抜けて、柳腰を抱きしめる手にぎゅっと力がこもった。
「ん……じゅるっ、はぁぁ……んくっ、こくっ、こくっ、ちゅぴっ、んふぅぅ……っ」
三浦の背を反らし、上から覆いかぶさるようにして薄い唇を貪る。唾液を流しこむと三浦は戸惑いながらもこくこくと飲みこみ、嚥下のたびに身体をぶるりと震わせた。
何分間か分からないが、とにかく互いの唇を貪り合った。唇を離すと三浦がとても名残惜しそうな顔をしたので、試しに上唇を咥えて端から端へとなぞると、膝がかくかくと笑って今にも倒れそうになってしまった。
「……あーしが……ったの……の……だし……」
「ん? なんだって?」
胸に顔をうずめて荒く呼吸をしていた三浦がぽそぽそとつぶやく。熱く湿った声は秘め事めいていて、ちゃんと聞き取ることができなかった。頭をくしくしとなでながら尋ねると、三浦が上目遣いで見つめてきた。
「……あーしがこんなことになったの……ヒキオのせいだし……っ」
ぐらり、と。
強烈な魅力がこめられた言葉に、視界が、世界が揺らいだ。
「……お前なぁ……っ」
それは反則だろう、と喋る余裕さえもなかった。三浦の背中と腰をぎちりと抱きしめ、唇を奪い、咥え、貪る。
「んむ……んっ、んむふぅぅ……っ! ふっ、んんんん……っ」
三浦は目を白黒させながらも俺の舌を迎え入れる。互いの口内粘膜がねっとりと絡み合い、華奢な肢体がぶるぶると震える。三浦の手が伸びてくる。先ほどと同じように首に巻きつけてくるのかと思ったら、俺の耳をそっと撫でてきた。さわさわ、さわさわとまるで羽が触れるように柔らかく触れてくる。ぞくぞくとした感触に、いつの間にか下腹部ががちがちに張り詰めていた。構うことなく三浦を抱きしめると、へその下に硬い膨らみがぐりぐりと押しつけられる。
「ぅんん……あっ、はぁぁぁっ、やっ、これ……っ」
一昨日は最後まで下半身の膨らみに明確な反応は示さなかったが、今日はちがった。唇を離すと、三浦が自らに押しつけられた硬い突起の感触に泣きそうな表情を浮かべる。いやがっているのかと思ったが、それならば自分から腰を悩ましくくねらせて柔らかな腹に突起を食いこませたりしないだろう。普段の三浦の振る舞いからはまるで想像がつかないほど、今の三浦は一挙手一投足が興奮を、そして嗜虐心を煽ってくる。
じっと見つめたまま、ぐりぐりと膨らみを押しつける。三浦は唇を震わせて、自らの腹に押し付けられる牡の感触に腰をわななかせる。
またキスをして、もっともっと念入りにこすりつけて……などとこの後のことを考えていると。
「ヒキオ……そろそろ、お弁当……」
「……あ」
いま俺たちがいるのが学校の屋上で、しかも時間の限られた昼休みであることを思い出した。いま三浦に呼びかけられなかったら、冗談抜きで放課後までここにいたかもしれない。
「……そうだな、うん、ありがたくいただく」
「うん……」
劣情の気配を色濃く残したまま腰を下ろす。なんだか視線を感じるな……と思い隣をちらりと見やると、三浦が俺をじっと見ていた。正確に言えば俺の下半身を。三浦の視線を辿ると、未だに勃起が収まっていなかった。三浦の細喉がこくりと鳴る。
「……興味、あるのか?」
なんて質問をしてるんだ……と我ながら呆れたが、三浦にとっては効果抜群だったようだ。俺の質問にびくりと身体を震わせ、ひざに顔を埋めて丸まってしまった。からかうというよりは純粋に疑問をぶつけてみたつもりだったのだが、悪いことをしてしまった気がする。謝らないとな……と思っていると。
「……うん」
「え」
思わぬ返答に驚く。三浦は顔をひざにうずめたままだった。そっと髪に触れると、ぴくりと震えたが抵抗はしてこない。髪の毛をくしくしと何度も撫でて、そこから指をゆっくりと滑らせて小さな耳に触れる。耳たぶをふにふにと触り、耳の中にするりと指をすべりこませる。三浦は表情を隠したまま、くぐもった声を漏らして泣いているかのように震えた。
「……今日も、うち来るか」
独り言のようにぽそりと提案すると、三浦がそっと顔を上げた。しっとりと濡れた瞳だけを覗かせる、艶っぽい仕草。
「……うん、行く」
「分かった」
無邪気さと微かな女の気配が混ざった笑みを浮かべる三浦に軽く口づけをすると、ようやく弁当を食べ始めた。
いつもの倍のペースで食べながら、きちんと「これ美味い」「これもすげー好き」などと褒めちぎった。高速で褒めるというあまりない体験ができた。
続く。
あーしさん、開花。どんどん花開いていきます。
それでは、今回もお読みいただきありがとうございました(^^)!!