それぞれが購入した漫画本を持って書店を出る。昨日も買ったばかりなのに、本屋と
いう空間はどうも購買意欲をそそられる。こうやってお金が空也上人像のように財布から出ていくんだなぁ……。
外はもう夕方。まだ日が沈むまでには時間があるが、10月に入り気温も下がっていて日中よりもいくぶん肌寒い。
「……寒い」
まるで俺を糾弾するかのように三浦がつぶやき、ミニスカートの裾をキュッと引っ張った。理不尽じゃないです? とは思うが、すねたような顔をしてさりげなく二の腕を当ててくるのが尋常でないほどに可愛らしい。
「この後はどうする」
夕方前まで勉強して、その後に書店に行くという予定以外は特になにも決めていなかった。紙袋をカバンに入れながら尋ねると、三浦は自分が買った漫画3冊が入った紙袋をちらりと見た。
「帰る前に漫画読んでく」
「おう、そうか。お疲れ」
「……なんでだし」
試しに額面通りに言葉を受け取って返事をしてみると、ちょっと冷たい声でつぶやかれた。腰骨をぺちぺちと叩かれる。
「……その、一緒に、って意味なんだけど……」
消え入るような声で囁き、どんどん尻すぼみになり、やがてまた拗ねた顔をして俺の腰骨をぺちぺちと叩いた。俺の腰骨を狙うのがブームなんだろうか。可愛いから一向に構わないけど。
「わかってるわかってる。じゃあ、向こうの公園でいいか」
「……わかってんなら初めからそう言えし」
また腰骨を叩かれた。ぺちぺち。
× × ×
先ほど訪れた郊外の大型書店の近くに、散歩にぴったりといった風情のある公園があった。ここ数年で作られたというものではなく、20年以上前に作られたという。郊外の住宅地として開発される前から残っているものとしてはなかなか広く、季節によって桜や紅葉が楽しめるとネットの小さな記事で見かけたことがあった。
公園に入る時に楽しそうに帰っていく母娘を見かけた以外、人はいなかった。これからの時間に見かけるとすれば、夜ランニングをする人くらいだろう。
「ええっと、ベンチは……」
歩きながらきょろきょろと辺りを見渡していると、三浦の手の甲がコツンと当たった。
ふむ。
「ええと、ベンチ……」
もう一度、手の甲がコツンと当たった。
ふむふむ。
「ええと、ベンチベンチ……」
もう一度、手の甲がコツンと当たった。右側からちょっと圧を感じる。これ以上からかうのはまずいなと思い、すかさず手を握った。からかい半分、恥ずかしくて躊躇っていたのがもう半分といったところ。三浦の手は少し冷たくなっていた。指を絡ませて温まるようにキュッと握り締めると、三浦がぴくりと震えた。にぎにぎと優しく握ると、三浦も握り返してきた。自分の手の熱が華奢な手にゆっくりと伝播して、ぴったりと吸いつくように馴染んでいく。
「あ、ヒキオ。あそこがいい」
「ん?」
俺を振り向かせる時になぜか頬をぷにぷにとつつかれた。三浦さん、こういったスキンシップが好きな節がありますよね。可愛くて死にそうです。
三浦の指差した先には小さな丘があり、綺麗に手入れされた芝生が広がっていた。三浦のミニスカート姿をちらりと確認する。あの芝生なら汚れないかな……大丈夫かな……と考えていると、柔らかな手のひらで頬をぐにっと押された。なんぞや。
「……ヒキオ、見すぎだから」
「……すまん」
考え事をしている最中も三浦のミニスカートをガン見していた。ちらりと見えた三浦の顔が赤い。ここでからかおうものなら本気で怒られそうなので全力でやめておいた。
手を繋いだまま小さな丘をのんびりと登る。一番上まで登ると、空が色鮮やかに燃えている。綺麗な夕焼け空が広がっていた。ここで日が暮れるまで漫画を読むのも悪くない。
腰を下ろしていざ漫画を読もうとカバンから紙袋を引っ張り出すと、三浦に手を握られた。
「ん」
どうした……という意味で問いかけたのだが(熟年夫婦みたいだ)、三浦は俺の手をじっと見つめながらにぎにぎとしている。手相を見るというよりはマッサージしているように見える。ふにふに。ふにふに。
「…………」
待つこと1分。
「……ん」
満足したのか、俺の手を解放して何事もなかったかのように漫画を読み始めた。お尻の下に手を滑り込ませてスカートの位置をちょいちょいと調整しつつ、優雅に脚を流した体勢で黙々と読み進めていく。綺麗に染められた金の髪を指でそっとかき上げる様にどきりとした。
……この子は手フェチかなにかなんだろうか。
なんとはなしに頭を撫でてみると、初めはいかにも「邪魔するなよ」といった表情をされてちょっとショックを受けた。しかし途中から諦めたのかなされるがままになり、だんだんと気持ちよさそうに目を細め、やがて俺にぴったりとくっついて漫画を読み始めた。この子はマメに俺を可愛さで殺そうとしてくる。
× × ×
「くぁ……っ」
勉強をみっちりこなした上にけっこうな距離を歩いたからか、漫画を読み出してものの10分ほど経った頃にあくびが出た。手で口と鼻を覆って下を向き、溢れてきた涙をこしこしとこする。
「眠い?」
三浦が漫画を読みつつも、チラチラと横目をこちらに向けながら尋ねてくる。こくりと頷くと、三浦は漫画を閉じてなにやら考えこみ始めた。
「どうした」
「……はい、ここ」
脚を流して座っていた三浦が、自分の太ももをてしてしと叩いた。
ほーん。
うん、なるほど。
「その部分の名前は太ももです」
「……ナメてんの?」
「ご、ごめんなさい」
可愛い声音でめちゃくちゃ怖い言葉をつぶやかれた。こわ可愛いというジャンルを発見する。すごく可愛いけど本気で怖かった。
「……そこに、寝ろってことか」
念のため尋ねると、三浦はふいと顔を逸らした。耳まで真っ赤に見えるのが夕焼けのせいなのかどうかは分からない。
「……二度は、言わない」
なにそのスパルタ上官みたいな台詞。そもそも一度目も聞いてないんですけど。
しかしまあ、三浦をからかいつつも怒られて、その間になんとか照れの気持ちを抑えこむことができた。
「……それでは、失礼します」
敬語を使うと三浦がくすりと笑った。漫画本を教科書の横にするりと滑りこませ、内心緊張でがちがちになりながら三浦の太ももに頭を乗せる。
「……おふ……っ」
思わず気持ち悪い声が漏れた。え、人の身体ってこんなに柔らかいの……?
後頭部に感じるふよんとした心地の良い包容力。三浦とのやりとりで一度遠のいていた眠気が一瞬で復活する。
「ヒキオ、気持ち良さそう」
三浦が上から覗き込み、くすくすと微笑む。その笑みがたまらなく可憐で、それでいてブラウスを押し上げる豊かな胸も見えてしまう。一瞬で復活した眠気が一瞬で蒸発した。
「む……?」
三浦が左手で俺の頭を、そして右手で腹を撫ではじめる。俺を犬かなにかだと思っているのだろうか。三浦の手つきはどこまでも優しいのだが、太ももに頭を乗せることでたっぷりと香ってくる甘やかな匂いも相まって、安らぎとは別の感情がむくむくと湧いてくる。
(まずい)
三浦が目を細めて覗きこみながら、ひたすらすりすりと撫でてくれる。本当に心が安らぐが、段々と血流が下半身に集まってきた。これは本当にまずい。なにかタオルでもかけてごまかせないか……いや却って目立つだろう……などと煩悶としていると。
「……あ」
三浦がぽつりとつぶやいた。これは引かれたな……と遠い目をしていると。
「……ヒキオ、おっきくなってる」
三浦は引くどころか、その声音を好奇心に満ちた嬉しそうなものに変えていた。つい数秒前まではまるで聖母のような表情だったのに、夕焼けに照らされた瞳は淫蕩に歪んでいた。
今日一日、2人の間に満ちていた穏やかな空気が、明らかに切り替わった。静かに静かにねじ曲がり、妖しく歪んだ。
腹を撫でていた三浦の手が、すすすと下へすべっていく。
「くぁ……っ」
スラックスを押し上げる膨らみに細指が絡みついてきて、思わず声を上げた。
「ヒキオ……」
上から見つめてくる三浦の瞳が濡れている。ついさっきまでと違い、口をかすかに開けて静かに荒げた呼吸をしている。柔らかな感触と甘い匂いに加えて、視覚でも刺激してくる。
「み、三浦、ちょっと、待て……ぐぅ……っ」
頭を撫でていた手で耳をしゅりしゅりと撫でながら、5本のつま先で竿をさわさわと撫でてくる。腰が情けないくらいに浮き、がくがくと腰を震わせるたびに三浦が嬉しそうに瞳を細める。
いくら夜も間近とはいえ、ここは公園で、しかも通りを見渡しやすい丘の上にいる。通りかかった人に見られる危険性が高すぎる。
「三浦、人が来たらまずいだろ……うっ、んん……っ」
たしなめようとしているとチャックを開けられ、するりと細指が入りこんできた。ボクサーパンツ越しにさわさわと女性の繊細な指が這っていく。先走り汁が噴きこぼれて濡れた部分を撫でられるとかぁっと顔が熱くなった。
「ん、来たらこっちからちゃんと見えるからだいじょうぶ。不安なら……はい」
三浦がカバンを持ち、俺の腰の横に置いた。通りからはたしかに見えなくなったが……そもそも、三浦がこんなに積極的になっていることに驚きを隠せない。
「ヒキオ……気持ちいい?」
「うぉ……っ」
三浦が屈みこむと、豊満な胸が顔にふよんと寄せられた。かすかに香る汗の匂いがひどくいやらしく、股間の膨らみがさらに硬くなる。
「三浦……これは、ちょっと、ぐぅ……っ、だ、大胆、すぎるだろ……っ」
ブラウス越しに瑞々しい弾力に顔を包まれて、自分の声がくぐもっている。俺の顔の動きに三浦が微かに反応し、艶めかしい吐息の音が聞こえた。
「……うん、そうかも」
三浦がぽそりとつぶやいて動きを止める。ふっと顔面が極上の肉圧から解放されると、三浦が覗きこんで微笑みかけてきた。
「……あーし、なんかどんどんエッチになってる」
「……っ」
三浦の言葉にごくりと息を飲むと、綺麗に整えられた眉が可愛らしく曲げられた。
「……ヒキオのせいだし」
さらりと責任転嫁をして、反論する隙さえ与えずにふたたび胸を顔に押しつけてくる。視界が柔らかな甘さに包まれたまま、ジーンズの中に入り込んだ細指がざわざわと波打ち、肉幹をいやらしく刺激してくる。このままではパンツの中に思いきりぶちまけてしまいそうだ。
「ぐ……ぁ……っ、み、三浦……っ、出る……っ、ここじゃまずい……っ」
三浦の腰をタップして途切れ途切れにつぶやくと、肉幹を愛撫する動きがぴたりと止まった。
「……ん、それじゃあ……移動する?」
三浦のなかには、行為自体をやめるという選択肢はないようだった。今日一日手をつなぐくらいしかしていないためか、たしかに俺も欲求は募っている。とはいえ時間も時間なのでどちらかの部屋に行くというのも厳しいし、かといって公園では……と思っていると。
「……あそこなら……たぶん、だいじょうぶじゃねえか」
公園の通りからほど近いところにある林を見つけた。細い木が何十本も生えていて、多少奥まで踏み入れば誰にも見つからなさそうだ。
「ん、わかった」
三浦の声が弾んでいる。普段の三浦ならあんな場所でだいじょうぶなのかと言ってきそうなものだが、今は欲求や好奇心が羞恥や不安を上回っているようだ。肉竿から手を離し、慎重にチャックを閉め、俺の身体をそっと起こした。
「わ……っ、な、なに……っ?」
2人とも立ち上がったタイミングで抱きしめると、三浦が可愛らしい声を上げた。
「……別に、なんとなくだ」
「なにそれ」
くすくすと笑い合いながら丘を下り、小さな林へ向かう。
手を繋ぐ代わりに三浦の腰に手を回すと、華奢な身体がびくりと震えた。歩きながら三浦の手がそろりと伸びてきて、もこりと膨らんだ股間に添えられる。こくりと細喉が鳴る音がした。かりかりと膨らみをこすってくる。三浦の腰を掴む手に力をこめた。
もうじき辺りは真っ暗になる。向かう林は街灯の光からも遠い。
誰の目も届かないところで、発情に染まった三浦がどんなことをしてくれるのか、三浦とどんなことができるのか……楽しみで仕方がなかった。
続く。
あーしさんは自然と可愛らしい仕草の描写が増えていきます。ぺちぺち。
丘の上って状況を初めて書きましたわ……。
今、コミケに向けてサキサキ編やガハマさん編・由比ヶ浜マ編を読み直してるんですが、当時の後書きを見てものすごく懐かしくなっています。今もそうですが、特に最初の1年くらいは皆さんの感想にどれだけ励ましていただいたことか……!
サキサキ編・由比ヶ浜母娘編ともにすこぶる楽しい作品になりそうです。どうぞご期待ください(^^)!
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こちらの有料会員(月540円です)になっていただいた方のみに「淡恋に濡恋(あわこいにぬれこい)~純朴な高校生が恋と性に耽るお話~」という作品を公開します。本日夕方~夜頃から公開開始です!
活動報告で詳しい説明を書いていますので、よろしければぜひ覗いてみてくださいませ(^^)!
それでは、今回もお読みいただきありがとうございました(^^)!!