「あ、お兄ちゃん、雪乃さん、お帰りなさにゃっ!?」
リビングに行き、小町がにこやかに話しかけてくるのに対して、食い気味でその両肩に手を置く。にっこり笑顔で。
「お、お兄ちゃん……? どうしたのそんな変な顔して……?」
……にっこり笑顔で。
「小町ちゃん小町ちゃん」
「な、なんざんしょ?」
妹のキャラがおかしくなっている。
しかしそんなことは今はどうでも良い。聞いておくべきことをきちんと聞いておく。
「……あの椅子、どこで買ったかお兄ちゃんに教えてくれるかな?」
気持ち悪いくらい丁寧な口調で尋ねる。ちなみに肩に置いた手は適度に力を込めて、逃げられないようにしてます。兄妹のスキンシップって大事だよね。
小町は冷や汗をだらだらと流し、目をスプリング跳人(ホッパー)よろしく超高速で泳がせる。目ぇ回らないのん?
「え、ええっとね、その……お兄、ちゃんの……」
「ん?」
小町、もじもじ。何ごと?
「正直に言いなさい」
「お、お兄、ちゃんの、アカウント……」
「え」
心がざわつく。
「……え?」
もう一度言うと、小町がそろりと視線をこちらに向けた。
「お、お兄ちゃんの密林アカウントで……注文しちゃった……☆」
「あぁん!?」
あぁん!?
「にゃーーー! ごめんなさいーーー!」
小町の肩を掴んでいた手を首根っこに移動して、猫を持ち上げるようにくいっと上げる。小町は目を×にして腕と足をわちゃわちゃ動かしている。マンガみたい。
「何してくれちゃってんの? ねえ小町ちゃん、何してくれちゃってんの?」
「や、だって小町のアカウントでそんな変なの購入するの何かやだし!」
「変なのとか言うんじゃねぇよ注文したくせに」
「じゃあ卑猥なの!」
「卑猥って言うな卑猥って。ほら、雪ノ下が顔真っ赤になってるじゃねぇか」
「それ言わない方が良かったでしょ」
「いつだ? いつやらかした?」
ちなみにまだ首根っこを摘まんだまま。ぷらんぷらんしてる。
「この間、お兄ちゃんにマンガ返しに行った時。お兄ちゃん寝てたから、ほっぺたぷにぷにするついでにポチッておいたの」
えげつねぇ。
「何その天使的所業と悪魔的所業!? なんでセットでやったの!?」
「あ、その時お兄ちゃんの好きな動画データが開きっぱなしだったから、そこで初めてお風呂のやつを見たんだ。じっくり見て興味が湧いて、それで注文しようかなって思ったんだよ」
「あれ、俺の立つ瀬が無くなっていく!?」
「雪乃さん、ちなみにその時のお兄ちゃんの部屋は何だか栗の花の匂いがしました。知ってます? 栗の花の匂い」
「ねえなんでそれを雪ノ下にフるの? ああもう背中に隠れちまったじゃねぇか」
超可愛いけど。超可愛いけど。
「あの女優さん、雪乃さんに似てたけど……雪乃さんの方が綺麗だねっ☆」
「お前はどこのジローラモだ」
なんかこのツッコミ、5ヶ月ぶりくらいな気がする。(1)ぶりくらいな気がする。何の話なのん?
……と、まあ。
こんなしょうもない話を挟んだ所で、ようやく小町を下ろす。
「ふう……まったく、お兄ちゃんたら……いくら同じ猫系女子だからって、雪乃さんみたいにイジメないでよね」
「おいこらちょっとこっち来いや小町ちゃんよぉ」
「にゃーーー!」
茶番はその後、もうしばらく続いた。
× × ×
「さて、それじゃあ雪乃さんと晩御飯の準備を……って、ありゃ?」
茶番を終えて、小町がふんすっと息を吐いて気合を入れていると、雪ノ下を見て気の抜けた声を上げた。まだ俺の背中に隠れていた雪ノ下(隠れてる時間長くない? どんだけ恥ずかしかったの?)に目をやると、何やらうつらうつらと舟をこいでいる。……まあ、そりゃそうか。
「雪ノ下、疲れたよな。ソファで休むか?」
言うと、目の下をこしこしとこする。
「……ん、大丈夫、よ……ふあ……小町さんと、料理……はぅっ……」
『…………』
眠気で目をとろんとさせて、口を手で隠して小さく欠伸を繰り返す雪ノ下の凶悪な可愛さに撃ち抜かれて。
俺と小町、二人揃って、死神のノートに名前だけ書かれた人の40秒後みたいな悶え方をした。俺は動くと雪ノ下に悪いので、顔だけで表現しました。いわゆる顔面デスノート。いわゆらないし響きがやばい。
くるりと向きを変え、雪ノ下を抱きしめながらほんのりと水気を含んだ髪を撫でる。
「無理すんなって。一緒に待とう」
「そうそう。今回はお兄ちゃんが鬼畜だったからしょうがないですよ!」
「おいこら」
事実だけど。え、なんで知ってんの? 聞いてたの?
「えへへー」
え、なんでそこで鬼可愛い笑い方すんの? 何この天使? あ、妹でしたね。
俺と小町が2人がかりで言ったのが功を奏したのか、雪ノ下が俺たちを交互に見て、そしてにこやかに微笑む。
「ん……じゃあ、お願いして良いかしら。……ふあ……っ」
『……~~~~~~~~っ!』
もう1回名前を書かれた。
× × ×
「……すう……すう……にゃー、にゃー……すう……」
「お、お兄ちゃん……ぐはっ……」
「どうした、小町……がふっ」
「……にゃーん、にゃーん、……すう、すう……」
「……ゆ、雪乃さんの寝息と寝言が可愛すぎて……集中出来ないよぉ……かはっ」
「……頑張れ、としか言いようがない……ぐほぁっ」
寝ている雪ノ下に、比企谷兄妹が2人して撃ち抜かれ続けている。もはや蜂の巣だ。
雪ノ下をソファで休ませようとして、試しに膝枕をしてみようかと思い先に座ってぽんぽんと足を叩いて招いたら、思考能力が眠気でよっぽど鈍っているのか、目をこしこしこすりながら「ん……」と幼い声で答えて、あっさりと俺の足の上に寝転がった。死ぬ。
ていうかなんなの? にゃーにゃー言って幸せそうに微笑んでるけど、夢の中で猫と遊んでんの? 俺たちを死なせたいの? なんなの?
小町は腰が折れ曲がって、生まれたての子鹿のごとくぷるぷるしながら料理をしている。や、これダメだろう……。これは兄として応援せねば。
「小町、頑張れ。俺はここで雪ノ下を愛でてるから」
「性的に?」
「なんでこの状態でその返しが出来る!? しねぇよ!」
多分。
「くっそぉ……そんなことされたら雪乃さんがまた可愛くなっちゃう……小町死んじゃう……」
「その等式、悲し過ぎるな……」
俺が雪ノ下を愛でる=雪ノ下が可愛い仕草をする=小町死亡=俺も死亡=起きた雪ノ下が絶望。
なんだこの式。
× × ×
なんだかんだ、小町は頑張っている。ちょこちょここちらを振り返っては「ごはっ!」とか言ってはぁはぁした後、「比企谷死すとも……小町は死せず」とか言ってる。それ死ぬの俺と両親じゃん。
雪ノ下は一度起きたと思ったら、寝ぼけたまま今度は俺の足をちょいちょいとつついて開かせ、股座にすっぽり収まった。俺に背中を預ける形は今はすやすや。引き続き死にそう、というか引き続き死んでる。
「…………」
あごの下を指でこしょこしょ。
「ふぁ……んん……」
なでなで。
「んっ……にゃぅー……」
「…………」
…………。
小町が死んだ。ウソ。しかし台所にしがみついてやっとのことで姿勢を維持している。何この無駄な激戦? 料理してるだけだよね?
雪ノ下さん、今度はなんでしょう、猫になった夢でも見てるんでしょうか。
雪ノ下の夢の中身を想像していると、雪ノ下が目を閉じたままふふっと幼く笑った。
「パンさんがいっぱい……幸せだにゃー……」
言って、あごの下を撫でている俺の手に幸せそうに頬ずりをする。
「…………」
いっけね、口から血が出てらぁ。あと鼻。
小町は……ダメだ、死んでる……。倒れたようでこちらからは見えない。心配で様子を見に行きたいのだが、如何せんこっちは雪ノ下の面倒を見るのに忙しい。ごめんね小町。
結局、小町がいつもの標高を取り戻す、つまり立ち上がるまでにおよそ10分かかった。なげぇよ。
……なんだこれ。
続く。
この感じが久しぶりすぎて、書きながら「おかえりなさい」とか思ってました。本当に久しぶりだ……。確認したら、割と3ヶ月ぶりくらいでした、この感じ。
この後書きでお勧め小説を聞き始めてから結構経ちますが、相当参考にしています。可能な限り買って読むようにしているんですが、その勧められた本を買って読んだ旨をここに書くと、「それが好きなのでしたら……」とAmazonばりに勧めてもらえるのが更にありがたいです。皆さんに育ててもらってる感isある。今までの後書きで書いた小説で「あれ、これが好きならこっちもありじゃね?」みたいなのがありましたらぜひ教えてください(^^)!
Facebookで友達が「ドッグブレスをやってたら隣の部屋の人に変な風に誤解された」的な事を書いてまして。それでちょっと、ヒロイン2人分のアイディアが浮かびました。
ハーレムネタだったり企画でテーマを1つ決めてヒロインごとのエピソードを描いたりというアイディアがいくつもあるんですが、如何せん書くのが間に合わないです。うむむ。本当にちょっとしたアイディアも全て文章にしていったら、全て合わせたら200~300話行きそうです。どうしよう。
今日は土砂災害警報がiPhoneに届いてびっくりしました。皆さんもお気を付けください。
平日ももう少しですね。
それでは、木曜日も頑張りましょう!
今回もお読み頂きありがとうございました(^^)!!
また明日(^^)!!