※この作品はR-18です。

俺ガイル 日常の何気ないエロス。   作:高橋徹

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(26)

 駅の雑踏をすり抜けて入り口の柱に寄りかかる。ふう、と吐き出した白い息がふわりと漂って消えた。

 

「さむ……」

 

 身を切るような寒さに縮こまる。雪国の出身だという大学の知人が「雪国の寒さはウェッティで、関東の寒さはドライな感じがする」と言っていて妙に納得したことを思い出す。湿度を伴わない冬の空気はなんというか容赦がない。いや、なら吹雪が平気かと言われたらぜったいやだけど。

 

 金曜日の夜とあって駅前はごった返している。近くに大学がいくつかあるためか、サラリーマンだけでなく私服のウェイウェイした連中も楽しげにうろついていた。

 

「ずいぶんと冷え込むな」

 

 耳に馴染んだ声に振り向く。トレンチコートに身を包んだ静さんが手をこすりながら歩み寄ってきた。軽快に鳴るパンプスの足音。背すじをぴんと伸ばした歩き姿は見とれるほど綺麗なのに、ちょっと照れながら身を寄せる仕草は甘える猫のようでとても和む。

 

「お疲れ様です」

「すまんな、遅くなった」

「いや、ぜんぜん待ってないですよ。5分くらいです」

「5分でも充分に寒かろうに。職場から真っすぐくればもう少し早かったんだが……」

「くつろげたほうが良いでしょ。気にしないでください」

 

 静さんは仕事終わりにいったん帰宅して、着替えてから合流していた。今日は居酒屋に行くため、駅で合流してこのまま歩いていく予定だ。

 

「さりげないフォローが板についてきたな」

「素敵な女性に遜色ない男になるために頑張ってるんですよ、それなりに」

「……歯が浮きすぎて入れ歯になりそうだな?」

「静さん、顔赤いですよ」

「君こそ」

 

 静さんは肘で小突いたかと思うと、俺が手を入れているポケットに自分の手をすべりこませてきた。手の甲に感じる冷たさに一瞬跳び上がるも、すぐに指が絡みあって慣れた感触に安心する。

 

 日中とはがらりと変わった街並みをのんびりと歩き、目当ての個室居酒屋に到着した。雑居ビルの5階にエレベーターで上がっていると、途中で静さんがこてんとしなだれかかってきた。ほーん。可愛すぎか?

 

 予約していた旨を店員に伝え、部屋に案内される。静さんがなんだかもじもじしているのではてと首をかしげると、ちらちらと俺を流し見て髪の毛先をいじった。

 

「……比企谷の名前で予約していると、なんだか照れるな」

「……まあ、たしかに、まあ、うん、そうですね」

 

 顔が熱い。静さんが何を想像したのかを想像して顔が熱い。

 

 落ち着いた色合いの木でできた廊下を靴下で進むと、予約した掘りごたつの部屋に案内された。いわゆるカップルシートというもので、ふたりが横並びで窓の景色を眺める形。正面には夜の街並みが広がっていて、思わず感嘆の声を漏らしてしまった。

 

「ほどよく狭いのがまた良いな」

「あー……たしかにそうですね」

 

 ホームページで見た部屋よりも若干狭い感じがするが、大人数で呑むならまだしも今はふたりきり。並んで座ったらほとんどスペースがないこのくらいの広さのほうが良いのだろう。

 

「うんうん、これは良い部屋だ」

 

 静さんがウキウキしながらコートを脱ぐ。ニットセーターにタイトスカート、それからタイツ。お付き合いを始めてからいっそう艶めかしくなった静さんの私服姿に思わず見入ってしまい、視線を逸らす。が、間に合わなかった。

 

「君はいつまで経っても性欲を隠せないな」

 

 静さんが楽しげに笑いながら俺の頬をぷにぷにとつっつき、それから俺のコートを預かってくれる。死ぬほど恥ずかしい。

 

 静さんがごく自然に、肩や太ももがかすかに触れる距離に座った。家でくっつくときとはまた違う感覚になんだかそわそわしてしまう。ドアは俺の後ろにあり、廊下に耳を済ませれば店員のひそひそ声でのやりとりや、トイレはどこかと尋ねる客の声が聞こえる。

 

 メニューはタブレットで入力できるタイプだった。店員と顔を合わせる回数をなるべく減らそうとしているのだろうか。ふたりきりのときは特にありがたい。ちなみに大人数でしかも大して気心のおけない人といる場合、俺は死んだ顔のまま率先して店員に注文をして料理も受け取る。それとなく会話を減らす術なら千葉県で誰にも負けない自信がある。

 

「今日の仕事はどうでした?」

 

 飲み物とつまみを注文したところで尋ねる。

 静さんは流れるように俺の太ももに触れると、

 

「何人かの女子生徒が私に懐いてくれているんだが、放課後に質問に来たかと思えばただの雑談になることが多くてな。今日も他の先生にたしなめられてしまったよ」

「やっぱり慕われてるんですね」

 

 率直に思ったことだった。そんな先生だからこそ、俺は総武高にいたときもさんざん世話になり、そのあとも縁が切れず、こうして今隣にいる。

 

 静さんは俺の言葉に目をぱちくりとさせ、それから何やら唇をにゅっとすぼめ、俺の太ももをてしてしと叩いた。

 

「可愛すぎるんですけどどうしました?」

 

 てしてし、てしてしてし。

 

「……全入れ歯になってしまえ」

 

 俺の二の腕に頭突きしながら怖いことを言ってきた。やってることは可愛いのに。

 

「君はどうなんだ? 大学2年生となればそれなりに忙しいだろう」

「あー……そうですね。まあ、受けてる講義は1年のときから多いですけど……もう少しすれば楽になるんじゃないかなって思ってます」

「安心したまえ、3年になればゼミが増えて講義のときより気が休まらなくなるぞ」

「ぜんぜん安心できないんだよなぁ……。情報は集めてるんで、あんま厳しいとこにはいかないようにしますよ」

 

 大学の先輩の様子を聞くと、ゼミの選び先ひとつで明暗が分かれるようだった。がっつり学問をやりたいガチ勢は厳しいゼミに自ら飛び込む気のようだが、俺はそこまでする気になれない。ゆるいゼミを選びつつ、卒業に必要な単位を昨年度と今年度でだいたい取り終えて、悠々自適な大学生活を送りたい。

 

 ちらりと静さんを見やる。

 

「……君の時間が多くなったところで、私と会える時間が増えるわけではないぞ?」

 

 色々と見透かされていた。

 

「それでもいいですよ。今だって、静さんが空いてるのに俺が空いてないときがあるじゃないですか」

 

 家庭教師のバイトから帰ってくるなり押し倒されることがよくある。字面にすると中々の事案だが、事実だからしかたない。

 

「君がそんな殊勝なことを言ってくれるとはなぁ……」

 

 とん、と俺の肩にしなだれかかり、嬉しそうにぽしょりと囁く。顔が一気に熱くなった。

 

 猛烈に静さんに触れたくなったところで、戸を控えめにノックされた。静さんがぴょいんと飛び跳ねる。可愛すぎか。

 

「ご注文の品をお持ちしましたー。まずは……」

 

 俺が淡々と酒やおつまみを受け取るあいだ、静さんは自分の頬を両手でぺちぺちと叩いていた。

 

 注文したものがそろったところで乾杯する。

 

「そういえば、最近同僚や生徒によく言われるんだよ。『肌艶が良くなったし、すごく元気になりましたよね』と」

「あー……それは俺から見てもわかります」

 

 お付き合いが始まってからの数ヶ月で、明らかに静さんは綺麗になった。冗談かと思うほど肌の張りがすごい。

 

「タバコを吸わなくなったのも大きいが……それもこれも君のおかげだよ」

 

 ビールを景気よく喉に流し込み、俺の内もものきわどい部分を撫でてくる。

 

「若い、と言われることは今も嬉しくはあるんだがね、さほど執着しなくなったよ」

「そうなんですか? 年を重ねるごとに嬉しくなるもんだとばかり思ってましたけど」

「私もそう思っていた。けれど、今は君を喜ばせる身体でさえいられれば、問題ないと思えるようになった」

 

 アルコールが回ってきたのか、ほんのり頬を赤らめた静さんの手が股間をきゅっと握る。

 

「……さりげなくすごいこと言いましたね、今」

「だってそうだろう? 若かろうがそうでなかろうが、元気に互いの身体を貪りあえればそれが一番だ」

 

 たった数ヶ月で考え方がこうも変わるとは、自分でも驚きだよ……としみじみしながら股間を握ってくる。

 

 静さんが焼き鳥を豪快にかじった。唇が油で艶っぽく濡れ光る。

 

「……見すぎだ、比企谷」

 

 ビールジョッキを傾け、色っぽい流し目を送りながら細指を蠢かせる。

 

「女は酔ったときと満腹のときに性欲が高まるらしいな」

 

 細指がチャックをつまんで下ろし、カリ首をつまんで隙間からパンツの膨らみを引っ張り出す。

 

「男は逆なんですよね」

 

 声が上ずらないようにするのが精いっぱいだった。やわらかな指がカリ首をくにくにと揉み、パンツに先走りがにじむ。

 

「私がしっかりと君を興奮させればいいだけだろう?」

 

 耳に熱い吐息がかかる。思わずぐびりと喉を鳴らした。

 

「ふむ……手の中でゆっくりと育つ感触は、いつ味わってもいいものだな」

 

 にんまりと微笑み、膨らんだ股間をぽんぽんと撫でる。

 

「帰ったらがっつりやるぞ。覚悟しておけ」

「……静さんこそ」

 

 背中に腕を回し、腋の下を通って右の胸を掬うように揉む。

 

「うんん……っ」

 

 甘い声を漏らし、内ももを悩ましげにこすり合わせる。タイトスカートがわずかにめくれ、タイツに包まれた太ももが露わになった。

 

「……んっ、くぅっ、こらっ、比企谷ぁ……っ」

 

 右手で乳房に触れながら、左手で太ももをさする。スカートを少しずつめくりあげ、内もものきわどい部分を指で愛でる。静さんのおとがいがくくくと吊り上がる。そのあいだも細指はすがるように肉茎を撫でさすっている。

 

「……注文しますか?」

 

 酒とおつまみがすでになくなっていた。静さんが震えながら首を振る。

 

「……しばらくは、いい」

 

 視線が勃起肉に縫い付けられている。

 

「……これ、どうしたいですか?」

 

 静さんが目を見開き、ちらりとドアを見やり、それからおずおずと上目遣いになる。

 

 何か言葉にするより先に、ゆっくりと口を開けた。

 ちろり、と舌を出す。引っ込めることなく、朱い舌をねろりねろりと揺らす。

 暴力的なまでに淫猥な仕草。

 膨らみの先端に、じわりとカウパーがにじんだ。

 

 

 

 続く。

 

 

 




 平塚先生編は今までで言うところのafter、もしくはコミケ本にするような内容をひたすら書いているので、なんだか不思議な感じがします。


<最近の話をつらつらと>
①俺ガイルのアニメが完結しましたね!
 と言いつつも、「しばらくもやもやした感じが続くだろうから、終わってからのんびり観よー」と考えていたのでまだ第1話しか観てなかったりします(川崎姉妹に無限に癒されたところで時が止まっている)。
 最終話のゆきのん可愛すぎかよ……的なツイートをよく見かけたので、アニメの演出と声優の皆さんの演技を楽しみに今から観ていこうかなと(^^)

②最近はシナリオのお仕事が増えてきまして(死ぬほどありがたいです)、作家仕事と並行してせっせとやっています。
 以前担当編集の方に「シナリオは予め作られたキャラクターを動かすので、二次をずっと書いている高橋さんはやりやすいと思います」と言われたんですが、実際シナリオのお仕事をやっていると何気ないエロスの経験がめちゃくちゃ生きているなーと実感します。楽しいです(^^)

③ぼちぼち冬のコミケ本(コミケは開催されませんが便宜上こう呼びます)の準備を始めていきます。はるのんのエロ可愛さを突き詰める感じで!


 こんな近況報告をする日が来るとはなー、とちょっとしみじみしました。シナリオ云々という意味でも、俺ガイルのアニメまで完結した云々という意味でも。

 それでは、今回もお読みいただきありがとうございました(^^)!!


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