凍えるような真冬が通り過ぎ、寒くはあれど幾分過ごしやすくなってきた頃。
静さんの挙動に、何やら怪しいものが混じるようになってきた。
「…………」
「静さん、なに観てるんですか?」
「あ、ああいや、なんでもない、なんでもないぞ」
ソファに座ってスマホを横にして、明らかに見てほしそうにちらちらと流し目を送っておきながら、いざ俺が来るとすぐに観ていた動画を消してしまう。
けれど毎回、その隠す仕草が少し……ほんの少しだけ遅い。なので俺は、漫画の見開きを記憶するかのように、一瞬だけ映った映像を強く記憶していた。
夜。外。女性。コートの前をはだけている。裸。
そして――羞恥の中に、たしかに興奮のにじんだ顔。
静さんが数日に渡ってチラ見せしては隠していた映像は、いわゆる野外露出ものと呼ばれるものだった。ジャンルとしてそういうものがあることは知っていたが、これまでは特に興味を持ったことがなかった。
けれど、静さんが興味を持っていると知れば、その行為に対する目の色が少なからず変わる。
まあ、静さんが仮にこういった行為に興味があるとしても……彼女の社会的立場を考えれば、容易に提案してしまうのは避けたい。
そう思いながら、静さんの動画チラ見せ行為(生まれて初めて口にするフレーズだ)がしばらく続いた、とある日のこと。
「比企谷……最近、暖かくなってきたな」
ソファに並んで座っていると、静さんがさりげなさゼロで切り出してきた。咳払いが可愛らしい。目線が泳いでる。なんだこの可愛い生き物は。
「……まあ、そうですね」
俺も目線が泳いでた。静さんがぴったりと太ももをくっつけてきた。彼女の太ももに手を乗せる。唇をきゅっと引き結ぶ仕草が艶めかしい。
「暖かくなってきたということは……夜に、外で、多少薄着になっても問題ないわけだな」
「……下手すぎません?」
さすがにツッコまざるを得なかった。静さんは人差し指に髪をくるくると巻きつけながら、股間をふにふにと揉んでくる。可愛らしい仕草と卑猥な指遣いを同時に発動するのはやめていただきたい。心臓がもたないから。
静さんがこほんこほん、とわざとらしい咳払いをして、それからちゅっとキスをしてくる。顔が熱い。静さんの顔も赤い。なんで自分からしたのこの人? 嬉しいからいいけども。
「君に……観てもらいたいものがあるんだ」
「映画の重要どころで聞きそうなセリフですね」
半勃起をきゅっと握られる。え、今のって俺が悪いの?
静さんは下腹部を揉みながらスマホを手に取り、最近見ている野外露出ものの動画を見せてきた。
「……興味が、あるんだが……」
動画は初めて観るものだった。公園の中で女性が裸になり、小声で会話しながら散歩している。
動画を観つつ、静さんの表情を窺い、考える。
「興味がある……なんて言ってますけど、実際はもう、やりたくてしょうがないんですよね」
「う……ま、まあ、その、なんだ……。……正確に言えば、君の前でやってみたい、という言い方が正しいかな」
頬を赤らめての上目遣い。手つきも見せている動画もいやらしいのに、どうしてこんなにウブな顔ができるのか。
「……どうだ?」
上目遣いをされて頷かないわけがない。きっと静さんはそれをわかっている。あれ、よく考えたらこの人って小悪魔なのでは? やだ、性獣なのに(言い方)小悪魔とか無敵じゃん……。
「ふふ……ありがとう。君なら受け入れてくれると信じていたよ」
静さんが俺の二の腕に頬をすりつけ、それから首にキスをしてくる。気絶しそう。
「ただ……やる場所は慎重に考えないとだめですからね」
「それはもちろん……あんっ」
ルームウェアのボタンを開け、豊かな谷間に指をすべらせた。入浴した名残で火照りを帯びた乳肌。やわやわと波打たせると、静さんのおとがいが、くっ、くくっと上がる。あらわになった喉に吸いつき、喉仏の辺りをゆるりと舐める。
「もういちどシャワーを浴びることになるが……いいのか?」
「金曜と土曜の夜はいつもそんな感じじゃないですか」
「ふふ……平日もよくある、の間違いじゃないか?」
「平日は確実に静さんから来ますよね……俺の気遣いの意味はどこへ……」
「睡眠時間が多少削れても、今まで以上に元気に働けているよ」
静さんの手がパンツの中に潜り込む。俺のルームウェアのボタンをあけ、乳首に吸いつきながらズボンを脱がせにかかる。
「今日はじっくり味わいたいな……」
「さっきもかなり舐めてましたよね?」
「君のものは何時間でも舐めていたいんだよ。……大きくなったな」
「そりゃそうですって……」
腰を上げる。静さんがズボンとパンツをいっしょにずり下ろし、剥き出しになった肉茎の先をぱくりと口に含んだ。
× × ×
翌日、土曜の夜。
俺が静さんの車を運転して遠出することになった。かっこいいにも程がある車を大学生が運転するというのはいまだに現実味がないが、それでも多少は慣れてきた。
「ふふ……だいぶ板についてきたじゃないか」
助手席に座る静さんが、窓際にひじをついて楽しげに見つめてくる。車の中で見せる大人びた笑み。いつもならつい見惚れて静さんにすかさず注意されるところだが、今日は別の理由でついつい視線を向けてしまう。
「しかし……なかなか緊張するものだな」
「車の外から見る分には誰も怪しみませんよ」
「それはそうなんだが……むぅ」
可愛らしい唸り声を漏らし、しきりにコートを触る仕草が可愛らしい。
――俺たちが向かっているのは、静さんの家から車で一時間以上かかる場所だ。
Googleマップで調べた限りは近くに繁華街もない閑散とした場所だった。今日はここ数日の中でも特段に暖かいので、コートを脱いでもさほど問題はないだろう。
「コートを脱いだとたんに、その、だいぶ……なあ?」
信号で止まる。静さんはコートの中をちらちらと見て、気まずげに笑う。
「そうですね。じゃあコートのボタンを外しましょうか」
「え……っ」
「初歩ですよ、初歩。ある程度慣らしとかないと大変だと思うんで」
「うぐ……そ、それは、まあ、そうなんだが……」
すでに30分以上運転していて、街からは離れている。横断歩道を渡る人はおらず、対向車線で車が一台停まっているだけだ。
静さんが身じろぎする。剥き出しになった太ももを撫でるとひくりと震えた。
「……まあ、服は着ているしな……」
ぽしょりとつぶやき、コートのボタンをあけた。
静さんが着ているのは、薄手のニットワンピースだった。スカートの丈が際どく、むっちりした太もものほとんどが露わになっている。
「うぅ……や、やっぱりこれは……恥ずかしいな……」
スカートの裾をつまんで呻くさまが可愛らしい。ブラもショーツも着用していないため、豊乳の頂がはっきりと存在を主張している。
「……まあ、ゆっくり慣れましょう」
家にいたら即座に襲ってしまうところだが、タイミングが悪く信号が青になる。
乳丘の頂を爪でかりりと引っかき、アクセルを踏んだ。
「あん……っ。…………」
一瞬だけ愛撫されてすぐに相手にされなくなったからか、横顔に拗ねた視線(可愛い)が刺さる刺さる。
「もう少しで着きますから我慢してください。……ぅぐ……っ」
次の信号で止まると、すかさず股間を揉まれた。ジーンズを突き破らんばかりに張り詰めたところで信号が青に変わる。静さんがぱっと手をはなし、それはもう楽しげに笑った。
ちょっと腹が立ったので、内ももに手を添えて脚の根元にすべらせると、
「手……濡れるから……っ。今はかんべんしてくれ……っ」
消え入りそうな湿った声に、手を引っ込めざるを得なかった。
その後も、信号が止まるたびにいたずらの応酬は続いた。我ながらよく襲わずにいれたものだと心の底から思った。
続く。
あけましておめでとうございます(遅い)!
というわけで、平塚先生野外露出編スタートです。字面がつよい。
今まで書いたことのない描写にチャレンジしてみようと思います。楽しんでいただけたら嬉しいです(^^)
それでは、今回もお読みいただきありがとうございました(^^)!!