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1.
冬のある休日。
今日も朝から休日ライフを満喫すべく、ソファとの同化を試みる。極めて詳しく述べると、ソファにうつ伏せになる。
……詳細感0だった。
「深い」って言う感想を言っちゃう人くらい中身が無かった。あと、人生を何かと野球に例えちゃう人くらい。
別に読書でもゲームでもたまに勉強でも良いんだけど、一度だらけると決めたらそりゃあもう限界までだらけたい。
クリスマスの時に小町が見つけた、人をダメにするソファ……あれ、やっぱり欲しかったな。あれにずぶずぶ沈み込んで本格的にダメになりたい。そしてダメ人間界の神になりたい。……マイナス方向での神って底辺中の底辺になっちゃうのん?
「お兄ちゃん、ほれほれ、掃除の邪魔だよー」
「おう、おう」
小町がほこり取りを片手に持ち、もう一方の手で頬をぺちぺちと叩いて来る。いちいち可愛いな、こいつは。
俺は俺でだらけ切っていたため、なんかオットセイみたいな声を上げてしまった。プール際でびたんびたんと揺れてやるぜぇ……。
実際、俺がここに居ると埃をかぶってしまう可能性があるので、これは純粋に気遣ってくれているのだろうけども。
「ほれほれ、邪魔だ邪魔だー」
「おう、お、おい、こら、おう」
何だか小町さんは気分がノって来てしまわれたようで、今度は拳で頬をぐりぐりして来た。いたいいたい、距離が近い、何か恋人みたいで恥ずかしい!
普通の人間の声にオットセイ風味の声が混じっちゃったので、何かすごく気持ち悪くなった。
よろよろとソファから押し出され、テーブルに座り小町の掃除の様子を眺める。
鼻歌を口ずさみながら、手際良くこなしている。
休みの日に掃除する場合の手順は自分で決めたのだろう。母親が掃除をする時の流れとはまた違うようで、小町が自分に合ったやり方を長年かけてブラッシュアップして来た感がある。
何かもう、小町に家事を任せておけば安心だ。そして俺は養われる。
……あれ、俺本当に何もしなくなっちゃうんじゃない?
「ねー、お兄ちゃーん」
キッチンの拭き掃除をしつつ、でーんと寝転がっているカマクラをたまに愛でつつ、小町が声を掛けて来た。
ソファに移動した俺とは少しばかり距離がある上に小町自身が作業をしているからか、呼び声が少し間延びしたものになっている。
「んー」
2人分淹れたインスタントコーヒーに練乳を入れながら、何気なく返事をする。
「最近、雪乃さんとか結衣さんとはどうなのー?」
ほーん?
スプーンを持つ手がぴたりと止まった。
「……何の事だ」
俺の言葉を受けて、小町は布きんをテーブルに置き、ふむーと腕を組んで、人差し指を頬に当ててわざとらしく首を傾げる。あざと可愛いし可愛い。何なのこのマーベラス美少女は?
「うーん……言い方がごみいちゃんには回りくどかったかなぁ……」
「呼び名にナチュラルにGの音を混ぜるのやめろ。すげえナチュラルに不用品になってる」
「そんなごみいちゃんを引き取ってくれる人、それ即ち小町のお義姉ちゃんになる人は決めたの?」
俺のツッコミをがん無視した上で、ど直球160km/h越えのどストレートを抛り込んで来た。
「……何の事だ」
打席に立ってデットボールでも食らおうもんなら下手すりゃ死んじゃうので、バッターボックスにすら立たない。難ならネクストサークルにも行かないし、ベンチにすら居ないようにする。それどころかクラブに入らないまである。
「お兄ちゃん、そんな下手なとぼけ方してたら、コナン君に簡単に追い詰められちゃうよ?」
「何で俺が犯人である事前提なの?何の罪を犯したって言うの?」
「うーん……フラグ立て過ぎ罪?」
「待て待て待て待て。俺はどこのギャルゲーの主人公だ」
「だってアレでしょ、お兄ちゃんゲームで主人公にフルネームを付けなきゃならない時の苗字は大抵「結城」「一条」「高坂」「真中」辺りの苗字なんでしょ?」
「フルネームを付ける事も滅多にねえし、具体例が生々しすぎるだろ」
って言うか、一部妹トゥルーエンドの場合があるんですけど。小町と話すと妙に話が肉感を帯びるから恐い。千葉の兄妹仲間だし。しかもそのルートは高校生活限定だぞ。
待てよ、小町は妹の魅力と猫っぽさを掛け合わせている。って事は、桐乃&黒猫の魅力が合わさっていると言う事か。あれ、小町ルート確定じゃねえのこれ?
……俺、何考えてるのん?
取り敢えず、話を戻される前に逸らす。
「お前はどうなんだよ?」
「え、何のこと?」
「いや、何のことって……その……フラグとか」
俺がどもると心底気持ち悪いなって思う。
でも、聞いておくに越したことは無いからね!別にその情報を基に根回し周到な嫌がらせをしようとかそんな事露ほども考えてないし、大志もとい毒虫についても警戒しておこうだなんて全く考えてないし。
小町を見ると、少し眉をひそめて左上を見上げている。
「あ~、……まあ、結構告白はされるかなぁ」
「なんだって?」
なんだって?
動揺しすぎて、コーヒーの中の練乳が水面で泳ぐのをゆったりと眺めてしまった。現実逃避☆
「え、お、おま、それ、え」
どもり過ぎてすんごい気持ち悪くなった。今なら材木座越えも狙えるかもしれない。あいつを越えるって神レベルの気持ち悪さだけど。
「やー、小町は美少女だし愛想も良いからねー、夢見がちな中学生男子なんかはこっちが別に何もしてなくても、ついつい行けるかもと思って特攻して来るんだよねー。そんで残らず撃墜するんだけど」
何か恐ろしいこと言ってる。「なんか」なんて言ってくれるな。
「ちなみに、告白されそうな気配を先に察知した時は、クラスの女の子に根回しして手を打ってもらって、告白自体しないようにしてもらったりもしてるんだー。後が気まずいしね。撃墜する以前に飛び立たせもしない!」
こわい、恐い、怖い。
恐いよ、女子の世界。
でも、小町がそこまでモテモテな事自体は分かる。こいつが言ってる自己評価は何ら間違っていないだろうし、兄と言う贔屓目を差し引いても思う。贔屓目が大きすぎて差し引いたら何も残らない気がするけど。
それにしても、なぜそこまでフり続けるのだろうか。それなりにまともなヤツも居るだろうに。もちろん全員認めないけど。認めないのかよ。
「なあ、何でそんなばっさばっさと切り捨ててんだ?別に良いだろ、一人くらい付き合ってみたって」
我ながら。
心にも無い事を言う。
妹を、小町の事を思っての言葉だったが、あまりの言葉の軽さに、口から出した瞬間にこのリビングに霧散してしまいそうな気さえした。
しかし、兄のそんなしょうもない質問についても、小町は真面目に考えてくれる。
「うーん……前も言ったけど、小町が好きになる人は多分、浮気しそうになくて変に律儀で真面目で、捻デレな人だと思うんだよね」
ふふっ、と妙に含みのある笑い方をする。
いつぞや、小町本人が確かに言っていた言葉だった。
「そうか、そんなヤツはそうそう見付からないから、しばらく俺の面倒を見てもらえそうだな」
妹の男に対するハードルがよく分からない高さの為、兄は安心して養われることが出来ます。
……俺のふやけた表情を見て、小町がドン引きしてる。
「ごみいちゃんは早めに他の人に引き取ってもらわないと……」
青ざめた顔で言わないで。
あと何、俺は袋に入れて運ばれちゃうの?焼却場に担ぎ込まれちゃうの?
話をしていると、小町はもはや掃除がどうでも良くなったのか、とてとてと歩いてすぐ横に座って来た。なんかごめんね、掃除の邪魔しちゃって……。
「大体、お兄ちゃんと小町でずっと暮らしたってしょうがないでしょ?そりゃあお兄ちゃんと一緒なのは気が楽だし嬉しいけど……」
少し、もじもじとする。
いつもとは、明らかに様子が違う。あまりに聞き慣れたはずの妹の言葉の一言一句に、聴覚を集中させてしまう。
「その……普通の恋人がする様な事なんて、まずしない……でしょ?だから、一緒に暮らし続けても、何かどこか物足りなく感じちゃうのかなって」
どくん、と心臓が跳ねる音がした。
今のは、どう言う意味だろう。
や、本当にどう言うこと?
今の言葉だけで、小町の見え方が、彼女の色合いが、突然変わったような気さえした。
「え、物足りないって、例えば、どう、言う……」
小町が言い淀んだところだけを、わざわざ拾うようにして声を上げてしまった。しかも思いっきり動揺した感じで。
瞬間MAX自己嫌悪。
俺の動揺を感じたのか、小町は頬を赤らめて俯いた。
「……バカ、ボケナス、八幡、高坂」
「最後、最後」
それもはやお前の方が意識しちゃってるんじゃないのってさえ思うんだけど。
「……そうだよ、そんな事、考えた事も……」
小町がぽしょぽしょと呟いた言葉が聞き取れてしまった。
俺が聞きとってしまった事に小町が気付いて、はたと目が合う。
二人の間に、普段の時とも喧嘩の時ともつかぬ、今まで感じた事の無い空気が生じた。
その空気に影響を受けたのか、言わば毒気に当てられた様に、
「……あー、や、これはもちろん例え話だけど。別に、嫌悪感さえなければ、その、そう言う事をしても良いとは思うぞ?ほら、日本人にとっては抵抗のあるハグとかキスも、外国だと挨拶代わりとかでフランクにやったりするだろ?」
こめかみの辺りを、指でぽりぽりと掻く。
「別に、家族だし、年も近い仲の良い兄妹なんだから、ちょっとくらい普通の家族よりも親密な事をやっても良いと思うんだ」
普段ならまず口にしない様な事まで口走ってしまう。って言うか考えた事も無い、はず。もの凄い苦しい言い分だし。論理も何もあったもんじゃない。
無茶苦茶な事を言っているのは分かってる。これは興味本位だ。
恋愛的な意味、そして、性的な意味での。
俺たちは今、恋人の真似事、恋人関係の疑似体験、ニセコイ、恋人ごっこにどこか憧れて、少しばかり手を伸ばしかけている、それだけのことだ。何か一瞬既存の作品が混じった。
だから、こんな馬鹿げた事、冗談のテイストで言うほか無い。
小町を見ると、少しばかり目を見開き、下唇を噛み締め、僅かに震えていた。
これは引かれたな……と思い、俯く。
そして、再び小町の方を向くと、俺に言っていると言うよりは、自分に言い聞かせるように、
「……そう、だね。小町とお兄ちゃんは仲の良い兄妹だから、もうちょっと色々しても大丈夫だよね。……そう、色々、色々……」
ぽしょぽしょと呟いた。
その、どこか惚けた表情に、何故かとてつもない背徳感を抱いた。
この後、どうしたいのか、どうなりたいのか。
そして、どうするのか、どうなるのか。
それはまるで分からないけれど。
胸の中で、異様なまでに期待感が膨らんでいた。
続く。
小町のお話は今までのお話の中でも特に、じっくりじっくりとどきどき描写を入れたいなと思っています。既にイメージしているシーンが、いざ書いた時にどうなるのか……自分でも楽しみにしています。
この小説を心待ちにして頂いている方がいらっしゃるのは本当に嬉しいです。
具体的な褒め言葉、ありがとうございます!そしてよろしければもっと褒めて下さい←
また一週間が始まりますね。
先週と同じ挨拶をしていますが、一週間前と違い今週末からは、今まで構想段階でほとんど進めていなかったオリジナル小説をやっと書き始めました。
ここで俺ガイルの小説を書きつつ、オリジナルの小説を書くのを頑張りたいと思います。超むずい……。
あ、ここの小説を書くペースは落としませんので(^^)
色々な本を読みながら、書きながら、仕事をします。楽しいのでエネルギーが循環しています。週末はある程度ちゃんと寝ないと死ぬんですがw
一週間、頑張りましょー!!
それでは、今回もお読み頂きありがとうございました(^^)!!