※この作品はR-18です。

俺ガイル 日常の何気ないエロス。   作:高橋徹

71 / 700
(2)

1.

 朝、ソファに座って、小町と少し妙な会話をした。

 あの時から、小町と俺の距離感が僅かに縮まった気がする。

 それは心理的な意味でも、物理的な意味でも、だ。

 物理的な意味での距離感は、今まででもかなり近かっただけに、ほんの僅かに縮まっただけの距離が大きな大きな意味を持つ。

 ……いや、まあ、ただ、スキンシップが増えただけなんだけどね。

 しかし、そのスキンシップがくせ者だ。ちょっとまずい。非常にまずい。

 

 

2.

「お兄ちゃーん、ご飯だよー」

 悶々とゲームをしていると、小町の声がキッチンから響いた。

 集中力が無くてもゲームなら……と思ったのに、全く頭に入って来てなかった。あれ、いつの間にかスライムがばくれつけんとべホマズンとマダンテを使えるようになってる。

 小町はいつも通り、機嫌良さそうに食器をテーブルに並べ、料理を運んでいる。

 席につくと、小町も座るのかと思ったら、背後から突然肩にぽんと手を乗せて来た。

「えへへー、今日の料理どう? ちょっと気合を入れて作ってみたのです!」

 きゃるんと明るく喋る小町。

 確かに、いつもに比べて豪華だ。休日の昼なのだから、いつもならもう少し簡素なもので済ませているのに。その簡素なのでもさらりと美味いものを作るのだから、小町はもうただのマーベラス美少女。

「ああ、そうだな。いつも美味いけど、今日は更に美味そうだ。……って言うか……」

 近い、って言うか完全に触れてる。

 明るく喋っていても、耳元で声がするからやたらとこそばゆい。

「……なんでこんな近いんだ?」

 問い掛けると、小町が一瞬、ぴくっと揺れた。

 そこから空いた僅かな間は、ここから二人の関係性をどうしたいかを真剣に吟味している様にも思えた。

 そして、息を吸う音が微かに耳元で聞こえる。

「……やー、その、あれじゃん? 小町とお兄ちゃんは仲の良い兄妹だから、これくらいは、ね?」

 明るく話しているが、声が少し震えていた。

 何故かは分からない。分からないけれど、この「仲の良い兄妹だから」と言う言葉を一度でも受け入れたら、何か取り返しのつかない事になるような気がした。

 しかし、肩に乗った手の柔らかい感触、耳にかかる息、聞き慣れた優しい声音、ほんのり香るシャンプーの匂い、そして、僅かに潤んだ目。

 どうなるのか、どうなってしまうのか。その好奇心が、不安を勝った。

「……あー、そうだな。俺たちは仲の良い兄妹だしな。これくらい何の問題も無い、うん」

 物凄く遠回しだけれど、「好きです」と言う言葉に「はい」と答えるくらいの意味合いを持つ様に感じた。何となくだけど。

「……ありがと」

 耳元で囁かれたその言葉は、この行為に対してのものなのか、「仲の良い兄妹だから」と言う言い訳を受け入れたことに対してのものなのか、それともこれから始まる何かを了承した事に対してのものなのか、分からない。

 しかし、それでも。

「……どういたしまして」

 何とはなしに、そう答えた。

 

 

2.

「とーう!」

「おぶほぉっ!?」

 材木座みたいな声を出してしまった。

 ご飯を食べた後、ソファに全力でもたれかかってだらだらしていると、腹の上に小町がダイブをして来た。軽くても十分に威力があるんだから、やめろって!俺のガタイが良い訳でもねえんだから。

 さっきのよく分からんシリアス成分を返せ、このやろう。

「いってぇ……なんだよ? 勉強は良いのか?」

「今日は合間合間にやってるから大丈夫! 今は休憩。ダイブは何となくだよ。何してんのー?」

 俺の腹から下りた後も、寄りかかって来て妙にべたべた甘えて来る。近い、近い近いいい匂い!

「いや、おま、こら、近すぎ……!?」

 いつの間にか、小町は太腿をさわさわと触っている。

「い、良いじゃん。私たち、仲の良い兄妹なんだから……」

 そう言う小町の声は熱を帯びていて、今までなら関係的にも年齢的にも感じる事の無かった「女」の顔を見てしまった気がした。

「……そ、そうだな。俺たちは仲の良い兄妹だもんな」

 言って、小町の肩を抱く。まるで免罪符の様な言葉だ。

「……あっ……」

 小さな小さな声を上げて、小町は更に甘える様に身を寄せた。

 

 しばらくの間くっついていたのだが、小町はそれだけでは我慢が出来なくなったのだろうか。

 俺の正面に回り込むと、真正面から抱き付いて来た。

「うおっ!?」

 思わず声を上げてしまう。

「い、良いよね? これくらい。しばらくこうしてても……良いよね?」

 耳にかかる息が帯びた熱が、増している気がした。

 縋るような、懇願するような、確認の言葉。

 断る理由など、もはや無い。

「あ、ああ、良いぞ」

 お返しに、きゅっと抱きしめ返す……とは行かず、いや、行けず、肩に手を置いた。

 そして、少しだけ目を逸らす。

 今、小町の顔を見てしまったら、心の中に設けてある心許ない堤防が、いとも簡単に決壊してしまいそうだったから。

 

 

3.

 翌日。

 昨日の悶々を超引きずっている。いやもう本当に引きずっている。

 このまま家に居ては何かもう非常にまずいと思い、買い物に出る準備をしていた。

 特に用は無いが、それでも書店に行って本を買ってどこかで読んでいれば、それだけでも2~3時間は潰せるだろう。

 そう思いコートを着ていると、小町が声を掛けて来た。

「あれ? お兄ちゃん、出かけるの?」

「ああ、ふらっとな」

 小町はうーんと唸った後、きゃるんっと笑った。

「じゃあ、小町も行く!」

「お、おう、分かった」

 しまった。ふらっとなんて言うんじゃなかった。

 いや、用事があるなんて言っても、そんな安っぽい嘘コンマ何秒かで看破されるのは目に見えてるんだけどね。

 小町はものの数分でぱたぱたと準備を済ませると、

「準備完りょーう! さ、行こ行こ!」

 左手を腰に当て、右手でVサインを作って満面の笑みを浮かべた。

 こんなベタを通り越した少女っぽい事をやっても、小町はやたらと絵になる。素晴らしき美少女。腹立つくらい可愛いなこいつ……。

「おう。じゃ、行くか」

 きらっきらの眩しさを受け流す様に、いつも通りの素振りで玄関のドアを開けた。

 

 二人で自転車に乗り、よろよろと進む。

「お兄ちゃん、事故らないでね」

 そう言って、小町が腰にがっしり腕を回してくる。

「あー、分かってる」

 コートを着ている為、胸の感触がぁぁ!なんて事にならないだけまだマシなのだが、それでも心臓は早鐘を打っていた。

 自転車のバランスを取る事に集中していて、小町がくっついている事に対する動揺が相対的に薄れたのがせめてもの救いだった。

 や、これ、本当にまずい。何がかは分かんないんだけど。

 

 悶々としながらも駅に着き、電車に乗り込む。

 今日の目的地の最寄の駅は割かし先にある。即ち、電車に乗っている時間も割と長くなる。

 ……俺、大丈夫だろうか?

 ……俺、今、何を危惧してたんだ? それとも期待?

 大丈夫、そんなに混んでなければ、きっと。

 

「わー、すっごい混んでるねー」

「だな」

 休日の昼と言う事もあり、電車の中はごった返していた。

 ……読みが超甘かった。

 満員とまではいかないが、それでもかなりの人口密度になっている。

 何が言いたいかって、要は小町との距離が近すぎてやばいって事だ。

 ……今はなんか、凄くやばい気がする。凄くやばい気がする!

「……あ、また混んで来た」

 次の駅に着いた時、更に人口密度が高くなってしまった。

 その際に小町が呟いた言葉の声音は、少しだけ色を帯びている気がして……更に心拍数が増した。

 気付くと、小町は俺の背中に腕を回し、胸元に顔を埋めるように抱き付いている。

 傍から見たら、完全に恋人同士でイチャついてるようにしか見えないだろう。

 ってか、やばい、これはやばいよぉ!

「お、おい、小町……?」

「……ん?」

 こちらを見上げる、潤んだ瞳。

 そして、俺の身体を抱き締める腕に、少しばかり力が入る。

 まるで、俺が言わんとしている事を、聞かんとしている事を、言葉にする前に止めさせようとしているかのようで。

「……や、何でも無い」

 ……負けた。いともあっさり。だって可愛いんですもの。

「……ん」

 小町の返事は短いにも程があるものだったが、僅かに嬉しさを含んでいる、ような気がした。

 

 その後もなんだかんだで密度がもう一段階上がり、小町はまるでそれに便乗するかのように抱き付く力を更に強めた。ぎゅうぅー。

 やばい。可愛い。良い匂い。

 どう振る舞ったら良いか死ぬ程迷ったが、取り敢えず、撫でる事にする。

 小町の頭をぽんぽんと撫でてやると、

「……ん」

 嬉しそうな声を漏らした。

 ……って言うか、さっきから意思表示の言葉短すぎじゃないのん? ファービーの方がよっぽどよく喋るぞ。

 子どもの時母親が突然買ってきたファービーが、しばらく経ったら突然おかしくなって、、昼間起きているときは目を閉じたまま喋り、夜は目を開けたまま寝るようになった。

 夜中リビングに飲み物を求めて入った時に、目を開けたまま寝息を立てているヤツを見た時は泣きそうになった。

 ファービーのおぞましきトラウマを思い出していると、胸元で小町がぽしょりと囁いた。

「ね、お兄ちゃん」

「ん?」

「お兄ちゃんも手、小町の背中に回して良いんだよ?」

「や、お前、それは……流石に人目が……」

 既に妹に思いっきり抱き付かれてるけどね。

 しかしそれでも、俺からと言うのは……恥ずかしいにも程がある。

 すると、小町が何かを躊躇うような表情を見せ、やがて、ゆっくりとこちらを見つめた。

「……じゃあ、さ、コートの下で手を回してくれたら周りも分かんないよね?」

 言うと、小町はコートの前のボタンをゆっくりと一つ一つ外して行く。

「……なっ……」

 ただ、コートの前面を開けているだけなのに。

 心なしか息を荒げて、頬を紅潮させながらボタンを開けるその光景がひどく淫靡で背徳的に思えて、何故かとてもいけないものを見ているような、いけない事をしているような気持になる。

 ボタンを外し終えると、小町は少し目を細め、艶っぽく微笑みながら、コートの前面を開けてみせた。

 ……なんで服着てんのに、まるで露出プレイでもしてるように見えるのん?ごくごく普通に服着てるのに!

「ほら、開けたよ? お兄ちゃん、どうぞ……?」

「お、おう……」

 断る気力も無く、そろりとコートの中に手を入れる。

 やばい、手が震える。痴漢みたい。超痴漢みたい!

 小町はコートを着たままのため、手は自然と小町の脇の下に滑り込ませる事になる。

 ――と。

「……んんっ、あっ……」

 ……待て待て待て。

 何今の色っぽい声?

 知らないぞ? お兄ちゃん、小町のこんな声知らないぞ?

 って言うかここ、電車の中だぞ!?

 幸い、声は俺にしか聞こえないくらいの小さな音量であったが、それでも激しく動揺した。

「んあっ、はぅぅっ……」

 ……助けてー。

 俺、小町のこんな姿知らない。こんな色っぽい声出して俺の胸元にすり寄って来る小町を知らない。

 家でもついさっき似たような事をしたのに、むしろさっきの方がよっぽど薄着だったのに、何故か今のこの状態の方が遥かにどきどきする。と、言うか、死ぬ。

 原因として考えられるのはただ一つ。

 小町のコートのはだけ方が異様にエロかったからだ。いやもうそれに尽きる。

 目的地に着くまでの間、間違っても腰から下に触れないように、必死で手をぴたりと制止させていた。

 

 ……やっぱり、良い匂いすんなぁ……。

 

 

 

続く。




 さきさきの最終話と小町の第2話をそれぞれ半分くらい書いていたんですが、小町エピソードに対する皆さんの反応が未だかつてないものだったのでw、取り敢えず2日連続で載せてみました。小町人気えぐいですねwww
 直接的なエロは無いんですが、八幡はしばらくの間こんな感じで悶絶します。
 電車に乗るとこまでは書いたけどどうしようかなー、まだ直接的なエロは書けないしなーと思っていた所、コートちょい脱ぎのくだりを思い付いたのが今日の午前中でした。
 こう言うテイストをもりもり入れて行きます。
 妖しい雰囲気をちょこちょこと。

 明日からはまた、どのエピソードにするかは気分次第にしようと思います。もうちょいしたらガハマさんだー。


 それでは、今回もお読み頂きありがとうございました(^^)!!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。