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2月のある日。
フリーペーパーの作成も終え、やっとのことで平穏が訪れた。
俺と雪ノ下と由比ヶ浜の3人は、部室で穏やかに談笑しながら、本を読んだり紅茶を飲んでお菓子を食べられる幸せを噛み締めていた。
読書の休憩を一旦入れようとして、本を閉じた。
そして、何の気なしに二人の方を見る。
ふと、雪ノ下と目が合った。
…なんか、最近俺と目が合う頻度が高い気がするんだけど。気のせいですかね、そうですよね。やだ、素直におしゃべり出来ない!
雪ノ下は俺から視線を逸らすと、少しばかり不自然にきょろきょろしながら、やがて机の上に置かれているパソコンへと視線が行き着いた。
可愛らしいネコのブックカバーで包んだ本をぱたんと閉じると、すっと顔を上げた。
「そう言えば…千葉県横断お悩み相談メールのチェックを最近していなかったわね」
「あ、確かに。最近マジで忙しかったもんね」
由比ヶ浜がはっとした顔になる。
秋頃から平塚先生の提案、もとい指示、もとい命令で、メールでお悩み相談を受けるようになっていた。タイトルに未だに納得が行かないんだが…。
最近は前述のフリーペーパー作成に追われていて、いやもう本当に追われてた。もう缶詰を全廃したい。あ、食物としての缶詰は今のままで良い。正しく言えば軟禁・監禁を全廃したい。でもそうすると仕事が終わらない。無限ループだね☆
あ、そう言う訳で、メールのチェックが出来ていなかった。
「…しゃーねー、チェックしてみるか…」
スロウスの如き鈍重な手つきでパソコンを開く。
「なんでそんなに面倒そうなのよ…」
俺の動きを見て、呆れたようにこめかみに手を当てる雪ノ下。猫ペディアさん、その仕草好きですよね。
「ええっと…なになに?メールが来たのはPN:建設的具体案求むさんから。…何この固い名前?雪ノ下?」
何とは無しに名前を読んだ瞬間、雪ノ下が一瞬びくっとした。え、なに、どしたの?何か突然呼んじゃってごめんね?
「…そんな訳無いでしょう」
「ま、そりゃそうだよな。んで本文は…」
『自分の身体の一部分について、少し、いや本当に少しだけ、悩みを抱えています。見る人によっては気にしないと言う人もいるのでしょうが、私の親しい友人に大きい人が居て、いつも近くに居る分尚更意識してしまいます。遺伝の面で考えると、家族で大きい人が居る為ある程度期待を持っていたのですが、この年齢の時点でこの大きさ、と言うことに半ば絶望感を覚えています。何卒、アドバイスの程宜しくお願い致します。』
「…」
「…」
俺と由比ヶ浜が押し黙る。
左を見ないようにするので精一杯。あれ、おかしいな、画面が滲んで見えるぞ?
「ふむ、成る程。まず問題の核心となる部位を直接的に書いていない辺り、メールとは言え相当恥ずかしいと思っているのかしら。まずは何のことについて述べられているかと言う点から話し合わなければいけないわね。何にせよ、ある程度継続して行える対策を取る必要がありそうね」
…めっちゃ饒舌になってる…。
「…いや、雪ノ下…」
「ゆきのん…」
「?どうしたの?」
けろっとした顔で首傾げんじゃねえよ。可愛いだろが。
「…まさかとは思うけど…これ、ゆきのん」
「?何故そう思うの?」
食い気味に潰しちゃったよ。
あれ、さっきと同じけろっとした顔なのに。可愛いのに。何で底冷えする寒さが来てるのん?
由比ヶ浜、君の凍てつく視線で泣きそうだよ?やめたげて!やめたげてよぉ!
「…これ、思い切り胸のことじゃ…」
勇気を出して言ってみた。
…俯いちゃった。
だからさっき、変にきょろきょろしてたのか…。気付いて…欲しかったんだね、メールに…。
と悲しみが溢れ出して胸を押さえていたら、雪ノ下が顔を上げた。何でそんな無駄に凛とした顔になってんの?時雨なの?
「身長かもしれないじゃない」
マジか。この期に及んでとぼけるとは、もはや一周回って清々しいな。
由比ヶ浜とちらりと目を合わせて、どうするか考える。
そこから数秒もすると、揺さぶり方を互いに閃いたようで、二人同時に頷いた。
どこを見るでも無い虚ろな目線にして、まず俺が仕掛ける。
「…陽乃さん…か…」
がたっと音がした。左を見ると雪ノ下が極めて不自然にびくっとしたようだ。
「なんで姉さんの名前が?この人は私じゃないわよ?第一家族としか書いてないじゃない」
まだ粘るか…。
行け、由比ヶ浜!
<ユイガハマ ユイ>
ビッチタイプ
えがお PP99
きょにゅう PP99
くうきよみ PP35
ゆるゆり PP99
やべえ、大体の技打ち放題だ。くうきよみって一瞬空気投げかと思って攻撃技だと期待しちゃうね!
「えへへ、親しい友人…」
メールの文面から雪ノ下の由比ヶ浜に対する好意を自然にピックアップする、純情を伴ったえげつない責め。
上記の技で言ったらえがおだな!
「ぐ、あ、いや、その、別に親しいって程じゃ…」
「え…ゆきのん…」
「あ、ちが、その、…」
「…そんなぁ…」
涙目になる由比ヶ浜。雪ノ下の袖をさり気なく掴んでいる。
行け、もっと行け。ゆるゆりも99回使えるぞ。
「だ、大体、これはあなたのことを指してる訳じゃ…」
「ふぐぅ…」
雪ノ下の言葉を大して聞かずにどんどん泣きそうになる由比ヶ浜。いいぞ、もっとやれ!…あれ、わざとだよね?
「その、いや、友人だとは思っているわ。その、ついここでは…」
慌てすぎてもうほとんど自白してますよ。自爆ってますよ。
「う、うう…」
あれ、由比ヶ浜、わざとじゃないの?本気なの?おーい、由比ヶ浜さーん?
「…由比ヶ浜さん、あなたは私の友人、いえ、…し、親友…よ…」
認めた☆気恥ずかしいことを書いたことと、メールの送り主が自分であることを同時に。
雪ノ下がたどたどしく言うや否や、由比ヶ浜の目が輝く。
そして、遠慮の無いハグ攻め。
「ゆきのん、だーーーいすき!!」
お前はポニョか。あれ一番衝撃的なのは何気に波間をぺたぺた走るシーンだと思うんだけど皆どう?
ハチマン、休みと小町と戸塚とただ飯だーーーいすき!
二人の比較的ガチ百合を堪能した後、事の真相に迫ることにした。
「…どうして、こんなことを?」
何か雪ノ下を崖に追い詰めた感。英一郎風味。
俺の問いかけに、雪ノ下が俯いたまま、腿に置いた手をきゅっと握りしめて答える。
「…直接…言える訳ないでしょう…!」
そう言うと、雪ノ下は両手で顔を覆った。
やめて、嗚咽を漏らさないで。それを前に見た時ってもっと全力で心が揺れ動くシーンだったよ…屈指の名場面だったよ…!この嗚咽の感じ、何か平塚先生みたいだよぉ…!違う意味の上に二重の意味で泣けて来たよぉ…!
続く。
もしこの感じを気に入って頂けたのであれば、登場人物やシチュエーションのリクエストを頂ければと思います。
オリキャラ無し、平和、エロは有りでも無しでもどちらでもありです。ここさえ満たしていれば何でも歓迎します!
それでは、今回もお読み頂きありがとうございました(^^)!!