※この作品はR-18です。

俺ガイル 日常の何気ないエロス。   作:高橋徹

84 / 700
由比ヶ浜エピソード、スタートです。


由比ヶ浜結衣は思っている以上に犬っぽい。
(1)


1.

 冬のある日。

 学校に着いて、駐輪場に自転車を停めて校舎に向かっていると、携帯が着信通知で震えた。

「……」

 確認すると、メールの送り主は由比ヶ浜だった。

 ☆★ゆい★☆

 ……この名前、本当になんとかならないかなぁ……。

 たまに素で間違えて、スパムメールだと思って削除しそうになっちゃう。

 って言うか一回、しちゃった。

 しかも割かし大事なメールだったみたいで、後で何で返事が無いのかとすげえ怒られた。あいつの怒り方はぷんすかって感じだからあんま恐くなかったんだけどね。ごめんなさい……。

 内容を見てみる。

「ヒッキー、ごめん、今日風邪引いたから部活休むね。ゆきのんにはメールしといたから……」

 ……すごい元気無さそうなんですけど。

 スマホでしゃしゃっと返事を打つ。うそ。そこまで速く打てない。

「了解。看てくれる人はいるのか」

「? かんてくれる……?」

 ……こいつマジかよ……。

「「みてくれる」だよ、バカ。看病してくれる人はいるのか?」

 説明するのもバカバカしいんだけど。

「あ、そ、そう言うこと? し、知ってたし! ……今日はお父さんとお母さん、有給使って泊まりで出かけてるんだよね。朝早くから出ちゃってたから、あたしが風邪引いたの自体知らないし……」

「そうなのか。わかった。お大事にな」

「うん、ありがと」

 短いのか長いのかも分からんやりとりを終えて、電源を消す。

 ……なんかそわそわするので、やっぱりマナーモードにした。

 って言うか由比ヶ浜のご両親、仲良いのね……。

 

 教室に入ると、トップカーストの連中にも連絡は行っていたようで、6人の話題は由比ヶ浜のことで持ちきりだった。

「あーしさー、見舞い行けるなら行きたいんだけど……今日は無理なんだよね……」

「あー、私もなんだよね。結衣、大丈夫かな~……」

 ……話が聞こえて来る感じ、由比ヶ浜の見舞いに行きたい気持ちは皆やまやまだが、どうにも都合が悪いようだ。

「……むう」

「……八幡?」

 無意識に唸り声を上げていたら、戸塚、間違えた、天使に声を掛けられた。

 おいおい、髪を耳の後ろにかき上げるなよ。変な気持ちになっちゃうぞ?

「八幡、どうかしたの? 元気ないよ?」

「……あー、そう見えるか?」

「うん、見えるよ。……今まで、ずっと見て来たんだし、それくらい分かるよ」

 ……何この子。超持ち帰りたい。

 戸塚ルートどころか戸塚と家庭を築くルートが欲しい。もしくはタイに旅行に行くイベントが欲しい。

「……そ、そうか……」

 どう説明したものか迷って、視線を自然とトップカーストの連中に向けてしまった。

 その視線に気付いた戸塚が、事情を察する。

「あ、由比ヶ浜さんがいないね……もしかして、今日休みなの?」

「ああ、さっきメールが来てな。風邪引いたらしい」

「そっか、……だから八幡は元気が無いんだね」

 ……すごい自然に、しかも優しい笑顔で言われた。

「……いや、なんでだよ」

「え、そうじゃないの?」

「や、その……」

 待て、他の理由だって挙げられるはず!

 例えば今朝、カマクラを愛でようとしたら一瞬で逃げられたとか、小町にいつもの感じでドヤ顔で喋ったら10分間で2回引かれたとか、昇降口で雪ノ下に会ったら、一瞬「……誰?」って顔をされたとか。

 ……いつも通りだ……。

 って言うか雪ノ下さん、朝のあれはジョークですよね? あの小首の傾げ方は悪意あってのものですよね? 泣いちゃうよ?

「そんなに心配なら、お見舞いに行ってみたら?」

 戸塚がごく普通に提案して来た。

 眩しくて瞼が溶けそう。やばい、瞬きが出来ない!

「や、迷惑になるだろ」

「由比ヶ浜さんなら喜んでくれるよ」

 にぱっと笑って言われた。

 ……くおぉ……戸塚の家に行きたいよぉ……。

 しかし、ここまで言ってもらったんだ。後で雪ノ下と相談するか。

「……ん、分かった。ありがとな」

「いえいえ」

 戸塚とのやりとりで、毎回心の闇が洗い流される感じがする。

 ざっと計算すると、戸塚と一日10時間一緒に居れば、約10年で俺の心の傷をほぼ全て洗い流せることになる。何の計算かは知らんし、同棲してても難しい前提を立てちゃった。

 戸塚がとてとてと自分の席に向かう背中をぼんやりと眺めながら、ふとため息をついた。

 

2.

 放課後、一人部室に向かう。

 別に大体は一人だけど、たまに、いやちょくちょく、いやかなりの頻度で由比ヶ浜が一緒に付いて来るので、一人だと相対的に冬の廊下が一層寒々しく感じられる。

 ……いや、別に何とも無いんだけどね?

 部室につきドアを開けると、雪ノ下が一瞬顔を上げて、明らかに落胆した顔をした。

 や、どんだけ失礼なのん?びっくりしたわ。

「……うす」

 近付いて挨拶をすると、まるで今初めて俺を見たような反応をする。

「こんにちは」

 ……すげえ、今しがた自分がやったリアクションを完全に無かったことにしやがった。

 それにしても、雪ノ下さん。

 平静を装っているように見えるけど……実際のところ、明らかにそわそわとしていらっしゃる。

 まあ、気持ちは分からんでもない。

「……由比ヶ浜のことか」

 クリリンではない。

 言うと、ぴくっと雪ノ下の肩が揺れた。

「……そう、ね。少し心配なのよ。ご両親が今日はいらっしゃらないみたいだし……」

 や、もうそわそわの仕方が少しで括れるレベルじゃねえよ。

「……俺も心配っちゃ心配だから、その、あれだ、見舞い行かねえか? 今から」

「……そうしたいのはやまやまだけれど、部活の時間帯はしっかり活動するべきでしょう」

 律儀なヤツめ……。

「平塚先生に事情を話せば分かってくれるだろ。依頼人が居るとしたら基本的に平塚先生経由だから今から直接確認すれば良いし、お悩み相談メールも一応確認して、今の時点で受信メールが無ければ見舞いに行っても良いと思うんだ」

 ま、こんなこと言ったら毎日同じやり方で即座に帰れちゃうんだけどね。今日は特例と言うことで。

「……そう、ね。そう言うことなら、しょうがないわね」

 明らかに表情がぱぁっと明るくなると、ノートパソコンを即座に開いてメールが来てないのを確認して、せかせかと帰り支度を始めた。

 ……行動超早いな。言行不一致にも程があるだろう。

「どうしたの? 早く鍵を閉めたいのだけれど。閉じ込められたいの?」

「出るよ、今出る」

 だから早いんだよ。相当心配してたのね……。

 二人で平塚先生の下へ行き、事情説明と依頼が無いかの確認を行って、その場で鍵を返した。

 雪ノ下のこの行動は明らかに依頼が無いことを前提としていたので、平塚先生は一瞬苦笑いを浮かべたが……雪ノ下のそわそわした様子を見て、ふっと微笑んで鍵を受け取ってくれた。

 ……改めて、なんでこの人が結婚出来ないんだろうって思ったけど、それは言わないでおく。

 

3.

 養生の為に必要そうなものを買い出すことにしたのだが、俺がコンビニで良いだろうと言ったら一瞬で反対、いや、否定された。「馬鹿なの?」って目で見るのやめてよぉ……。

 栄養を摂れるものを作るため、きちんとスーパーで買い出しをすることになった。

 ……どんだけがっつり看てやろうとしてんだよ。

 雪ノ下とスーパーで買い物だなんて、何このどきどきイベント……と思ったのだけど、買い出しはわずか15分で終わった。

 店に入ってから出るまでできっかり15分。

 迷いが無さ過ぎて惚れる……。

 学校を出る際に雪ノ下が由比ヶ浜に電話をして、メールで住所と周辺地図を送ってもらっていたため、家には割とあっさりと辿り着いた。

 インターホンを鳴らすと、弱々しい声が返って来た。

「けほっ……はい」

「由比ヶ浜さん。雪ノ下です」

 雪ノ下の声を聞いて、由比ヶ浜の声がぱあっと明るくなる。

「わあ、ゆきのん! ありがとう! 今行くね!」

 がちゃりと音がして、通話が切れた。

 ……んん? 俺は? 忘れられてなあい?

 

4.

「ゆきのん、ありがとー! ……って、わわ!? ヒッキー!? なな、なんで!?」

 すげえ驚かれた。

 雪ノ下にジト目を向けると、はて何のことかしらと言わんばかりのきょとんとした表情で首を傾げられた。くそ、可愛いなこいつ……。

「……雪ノ下が何故か伝え忘れてたようだけど、俺も来た……ん、だ……」

 言葉が止まってしまった。

 由比ヶ浜は雪ノ下だけが来ると思っていたようだから無理も無いのだが、由比ヶ浜の服装はオレンジ色の生地に騒々しい柄が描かれたパジャマ姿で、髪もいつものお団子ヘアーではなく、下ろしている。

 そこまではまだ良いのだが、家に居て……しかもパジャマ姿なのだから尚更なのだろうが、どう見てもブラを着けていなかった。

 熱が出て暑いのだろうか、胸元のボタンをかなり開け、じっとり汗ばんだ谷間が洒落にならないくらいの色気を放っている。

 思わずとかじゃない、これはもう男の義務だと言わんばかりの勢いでそれを見つめていると、由比ヶ浜が俺の視線に気付いた。

「あ、ちょ、ひ、ヒッキー! ……あ、あんまり、見ないでよ……」

 言うと、由比ヶ浜が恥ずかしそうに胸を手で隠して、もじもじした。

「あ……す、すまん」

 ……あれ、いつもならここでキモいキモいと連呼されて、それがあまりに大声だったために周りの住人が窓を開け始めて、軽い騒ぎになるくらいするんじゃなかろうか? そこまで事態が悪化したら泣くけど。

 どうやら、風邪でいつもみたいにテンション高く俺を罵倒することは出来ないようだ。

 俺たちのやりとりを眺めていた雪ノ下が、すっと口を挟む。

「由比ヶ浜さん、あまり外気に身体を晒すのは良くないと思うわ。……お邪魔して、良いかしら?」

「え、あ、そうだよね、うん! ……ヒッキーも、か……。……どうぞ」

「お、おう。お邪魔します……」

「お邪魔します」

 まあ、女の子しか来ないと思ってたのにそこに男子が混ざっちゃあ、そりゃやりづらいよな。

 半ば同情しつつ、由比ヶ浜の家に足を踏み入れた。

 

 ……パジャマってだけで、異様なまでにどきどきするんですけど……。

 

 

 

続く。




まったりと行きたいと思います。

感想、一言でも良いのでぜひぜひ(^^)!メッセージでも下さる方がいらっしゃいます。どちらでも大歓迎です!

いろはすのエピソードの下書きを、実験的に今日明日辺りに書いてみます。投稿するのは小町・ゆきのん辺りになりそうです。


それでは、今回もお読み頂きありがとうございました(^^)!!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。