※この作品はR-18です。

俺ガイル 日常の何気ないエロス。   作:高橋徹

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1.

 お湯を入れた洗面器とタオル、スポーツドリンクを持って由比ヶ浜の部屋に戻ると、彼女はいつの間にか下を別のパジャマに着替えて、上は裸のまま、ベッド際で胡坐をかいてぽへーっとしていた。

「大丈夫か? 今、身体拭くから」

 言って、お湯にタオルを浸けて絞る。

「あ…うん、よろしく……」

 熱がまた上がってしまったのか、ぽわぽわとした調子で返事をする。

「じゃ、まずは顔から拭くぞ」

「ん……」

 彼女の頬に手を添えて、顔を拭き始めた。

 こしこし。

「んっ、んっ、んっ……ふいぃぃ……」

「…………」

 よっぽど拭かれるのが気持ち良いのか、拭き取る度にほにゃっと頬を緩めている。

「ふわっ……?」

 なんか妙に何かしたくなって、頬をぷにぷにと触ってみた。超柔らかい。

 彼女は相変わらずぽわぽわとしており、頬を摘ままれても目立った反応を示さない。ぷにぷに。

 ぷにぷに。

「……はっ!」

 ……はっ!

 思わず顔を拭く手も止めて、夢中になってしまった。

 これ以上同じことをしていては流石に不自然に思われだろうと思い、次に首筋や肩を拭き取ろうとした。

 ――と、その時。

「……ヒッキー」

「ん?」

 不意に、声を掛けられた。

 表情は相変わらずぽわぽわしたままであるが、その目は真っ直ぐ俺を見つめている。

「……んっ」

「おっ……?」

 俺の名を呼んだ後、そっと目を閉じて、口先をすぼめた。

 …………。

 ……恥ずかしいから、首を拭き始めた。

「ちょっと! 無視はひどくない!?」

 すんごい勢いで怒られた。由比ヶ浜さん、ここに来て覚醒。

「いや、だって恥ずかしいし……」

「そんなこと言ったら……さっきのなんて……」

 指をいじいじと合わせて、顔を真っ赤にしながらぽしょぽしょと呟いた。

「あ、いや……それは……」

「…………」

「…………」

 …………。

 なんだろう。

 唐突に、死にたくなった。

「ほ、ほら、一回やっちゃえば楽になれるよ! ほら!」

「怖い薬の誘い文句みたいなこと言うな。ええい、放せ放せ!」

 この弱った身体のどこにこんな力が残っているのか、本気になっても引き離せないような力で腕を引っ張られる。

 それでも抵抗し続けていると、不意にその力が緩められた。

「……あ……」

 彼女の顔を見ると、明らかにしょんぼりとしている。

 やってしまった。

 瞬時に、そう思った。

「……ほんとに、だめ……?」

 涙に潤んだ目で、袖をくいくいと引っ張ってくる。

「あ、いや……」

「……ほんとに……?」

「うぐ……」

 今にも泣き出しそうなその表情に、見る見る追い詰められて行く。

 ああ、雪ノ下はいつもこんな気持ちだったのかなあ……お疲れ様です。

 これ以上恥ずかしがっていては本気で悲しませてしまう。

 しょうがねえか……ほんと恥ずかしいけど。

 頭をがしがしと掻いて、彼女の肩に手を添えた。

「……言っとくけど、すげえ恥ずかしいんだからな」

「……ぷっ。ヒッキーが言うとなんか気持ち悪いね」

「……うっせ」

 胡坐をかいたままの彼女の唇の位置を確認して、そっと顔を傾けた。

 

2.

「んっ、んふっ、んっ、あんっ、んんっ……」

 唇を重ね合わせたまま、それでも一応やることはやらねばと思い、首筋や肩を拭く。

 タオルを這わせる度に彼女はぴくぴくと震え、甘い声を漏らしているが、今の俺は特に性的な意味合いを持って彼女に触れていない。

 なんで興奮しないのか、不思議に思った。

 いや、正確に言えば、興奮はしている。下を見たらギンギンになってるし。別にこれは言う必要なかった。

 でも、なんだろう。

 その気持ちが分からないまま、手を胸にまで伸ばしたとき、その気持ちの正体が分かった。

 タオル越しに胸に触れると、ふにゅん、と柔らかく沈み込む。

「あっ……ふあっ……」

 彼女の気持ち良さそうな声が漏れ聞こえる。

 その耳心地の良い声をもっと聞きたくて、うっとりとした顔をもっと見たくなって、気付けば片手では胸や背中をタオルで拭き続け、もう片方の手は胸を優しく揉んでいた。

 自分のその手つきも、さっき激しい愛撫をした時と比べて明らかに優しい。

 自然と、優しくなっていた。

 ああ、なんていうか。

 もちろん、気持ち良いのだけれど。

 なんていうか、楽しくて、安心する。

 由比ヶ浜が時折目をうっすら開けて、俺と目が合うとすごく幸せそうに微笑むのを見るのも、俺が身体に触れる度に気持ち良さそうに声を出すのも。

 なんていうか、幸せだ。

 タオルで上半身を一通り拭き終えると、ごく自然と、俺は彼女の肩を掴み、口付けをしたまま押し倒した。

 彼女も何も言わず、嬉しそうに目を細めて受け入れた。

 

3.

 しばらくの間抱き合った後、俺が彼女の上から退いて、徐に二人とも起き上がる。

「……そういや、今更だけど」

「ん、なに?」

「風邪、俺すげえうつりそうだよな」

「本当に今さらだっ!? ……そ、そのときは……あたしが、お粥作ったげるよ……?」

「…………」

「え、ヒッキー? どうしたの?」

「なあ、知ってるか、由比ヶ浜」

「え、な、なに?」

「お粥ってな、お米で出来てるんだぞ」

「知ってるよ! それくらい知ってるよ!」

「あとな、柔らかいんだ。水分が多いってことな」

「分かるから! それくらい分かるから! あたしのことバカにしすぎだし!」

「ほら、馬鹿と書かずバカと書く辺りがもうばかっぽい」

「え、なに、急に訳分かんないこと言わないで……」

 混乱させてしまった。

「じゃあ、ご飯の炊き方は分かるよな? 流石に」

「バカにしないでよ! ……えっと……まずは調味料が……」

「え、え、え?」

 背筋がぞわっとした。なんだこれ、超怖い。

「由比ヶ浜、お前それ本気で言ってる?」

「え、なんかおかしかった……?」

「いや、いい……お前はそのままでいてくれ……」

 レリビーでも、レリゴーでも、何でも良いから。

 今何時って聞かれて、そうね大体ねって言うのでも、一大事って言うのでも良いから。

「え、ちょ、ちょっと、教えてよ! 気になるから!」

「……今度な」

「……う、うん……」

 ……なんか。

 お粥の話一つで、話が妙な広がりを見せた。

 由比ヶ浜が、おバカだけどちゃんとツッコんでくれるという性質を持っているせいで、ついこんなやりとりをしたくなってしまう。二人きりでこんな馬鹿話をすることも今までそんなに無かったし。結構楽しいかも、これ。

 お粥ついでに、もう一つ話をしてみることにする。

「なあ、由比ヶ浜」

「なに?」

「肩たたき券ってあるだろ。よく子どもが母の日とか父の日にあげるやつ。10枚綴りくらいで」

「あー、あるね。あたしも子どもの頃やったかも」

「だよな。俺はやってないけど」

「やってないんだ……」

「小町はほんと小さい時、超可愛かったんだけど、そん時に一回だけ親父に肩たたき券をあげたんだよ」

「へー、小町ちゃん良い子だなー。……ん、一回だけ?」

「そう、一回だけ」

「次からはやんなかったの? なんで?」

「……親父が……10枚綴りの肩たたき券をコピーして、合計200枚にしやがった……」

「うわ……」

「最初はにこにこしながら親父の肩をたたいてた小町も、12回目くらいで違和感を覚えて俺に相談してきてな。それで俺がこっそり調べたら、鉛筆で書いたはずの小町の字が消しゴムで消せない状態になってて。これコピーしたやつじゃんって分かったんだ」

「不正の発覚だ……」

「おお、よく知ってたな、そんな言葉。馬鹿なのに」

「誰がバカだっ!?」

 はい、ひと休憩終わり。

「それでそのことを小町に伝えたら、そりゃあもう怒りに怒ってな。「ろうきほういはんだー!」って、そりゃあもうぷりぷりと可愛く怒ったんだ」

「よくそんな言葉知ってたね……その、ろうき、ほう? ってやつ」

 こいつ……頭の中で労基法が漢字変換されてねえ……。

「それから、小町はもう親父に肩たたき券どころか、何もあげなくなったって訳だ」

「自業自得だね……。……あ、そういえばさ」

「ん?」

「ヒッキー、小町ちゃんのこと可愛い可愛いって言い過ぎだよね。話の中にちょこちょこ挟んできてすごいキモかったよ」

「うっせえよ、乳牛……」

「誰がホルスタインだっ!?」

 ひどい罵り合いになった。

 はい、ひと休憩終わり。

 確認すると、由比ヶ浜は上半身裸である。再び胡坐をかいている。

 なんの確認だろう、これ。

「ところで、なんで肩たたき券の話を急にしたの?」

「ああ、それな。肩たたき券があったら、肩もみ券もあって良いと思わないか?」

「え? うーん……まあ、同じようなもんだし、良いんじゃない?」

「じゃあ、その流れで胸揉み券もあって良いと思わないか?」

「ヒッキー、変態だー! ゆきのんに伝えなきゃ!」

「やめろ! 殺す気か!」

 雪ノ下に電話しようとする由比ヶ浜を、羽交い絞めにして止める。

 ひどいっていうかもう、酷い。

 凄惨な現場だ。

 悪ノリしたらえらい目に遭った。

 しばらくじたばたしたものの、取り押さえ続けた結果電話をする気は無くなったようで、大人しくなった。

 腕をぱっと放すと、再びベッドに二人とも腰かける。

「ヒッキー……それって、1枚で何回……その、揉めるとかって……決めてる?」

「おお?」

 おお?

 なに、まさか、乗ってくれるのん? 夢のようなんだけど。

 や、本当に、夢の極み。

「うーん、そうだな……回数っていうよりは、時間かな。1枚で何分みたいな」

「ふーん……例えば、その、1枚で1分とか?」

「や、120分だな」

「2時間!? 長すぎるよ! 映画見終わっちゃう!」

「……あ、映画。良いな、それ」

「え……」

 胸を腕で抱いて後ずさりした。お願い、引かないで!

「ヒッキー……なに、それ、一緒に映画見て、その間、ずっと……ってこと?」

「え」

 おずおずと。

 上目遣いをしながら、聞いてきた。

 ……んんん?

 なんか、由比ヶ浜さん。

 イジめ甲斐がありそうな気がしてきた。

 ……落ち着け、落ち着け、俺……。

「……そ、そうだな、ありだと……思う」

 おどおどしちゃった。超ダサい。

「……ふーん……ひ、ヒッキーが、ほんとにしたいんなら……いい、よ?」

 少し俯いて、俺をちらっと見ながら囁いた。

 ……うぐぉぉぁぁぁぁぁああああぁぁぁ!

 あぶねえ。

 ぎりぎりで叫ぶのを止めることが出来た。

 めっちゃ怪しまれてるけど。

 でも、と。

 俯いていた彼女はぽそりと言うと、顔を上げた。

 にひっと笑っている。やな予感……。

「その券を発行するに当たっては、何か代わりにヒッキーもやらなきゃだよね?」

「……あ」

 しまった。

 母の日とか父の日に当たるものがない。これじゃあ、楽して胸揉み券を入手出来ないじゃないか!

 別に引きこもりの日とか無いよね。八幡の日とか無いし。戸塚の日なら将来的に意地でも作ろうと思うけど。

「だから……その……」

 急にもじもじし始めたかと思うと、俺の服の袖をきゅっと握った。

「いっぱい……遊びに行こ?」

 少し困ったような笑顔で、照れくさそうに。

 まるでお日様みたいなぽかぽかとした雰囲気を滲ませながら。

 彼女が、由比ヶ浜が、はにかんだ。

 うーん。

 なんか、すんごくむずむずする。

 去年の俺が今の俺を見たら、全力で爆破しにくるんじゃなかろうか。

 いや、俺にそんな度胸は無いと分かってんだけどね。

「……おう」

 目を逸らしながら彼女の頭をくしゃくしゃと撫でると、えへへと幸せそうに笑った。

 

 

 

 続く。




ゆきのんの時とはまた違う幸せ感を出してみたくて、色々試してみました。
途中のやりとりを書く楽しさよ。

アニメの9話の冒頭の八幡の悶えに悶えました。小町可愛いなあ……。奉仕部3人で撮る写真の素敵さよ。ガハマさんのえいっえいっが可愛すぎて死にました。動物の耳を付けた二人の写真で死ぬところでした。そしてゆきのんのパンさん愛と名台詞。そして次週はいろはすが鬼可愛くなるのでしょう。
アニメだと8~10話辺りが名シーン揃いなのかなと思ってます。原作を読んだときに悶えたくだりが目白押し。おかげで感想に書きたいことがめっちゃ多くなりました。
13話辺りで何の話をやるのかが楽しみだったりします。1期のときの体育祭のゆるい感じがすごい好きでした。

明日は小町、行きます。シーンの切れ目によっては二夜連続かもしれないです。何かの特別記念のドラマみたい。
エロシーンを今までより更に濃密に書こうと思うので、小町編ももしかしたらあと3~4話くらい続くかもしれません。

今日で平日が終わりですね。土日が明けたら6月……!?
平日頑張った皆さんはお疲れ様でした。土日に何かある方は頑張ってください。僕は髪を切る以外はひたすら本を読んで小説を書くとします。


それでは、今回もお読み頂きありがとうございました(^^)!!
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