現状整理。
俺と由比ヶ浜が、小町に正座させられている。小町は腕を組んでがっつり仁王立ち。
おうふ、無駄に迫力がありますね……。
「お兄ちゃん、余計なこと考えてない?」
「なんでさらりと兄の心が読めるんだお前は……」
「お兄ちゃんは自分が思っている以上に表情が分かりやすいことを認識した方が良いよ。思ってるよりキモい顔になってることが多いんだから」
「え、あれ、そうなの、え、ほんとに?」
叱るついでの罵倒って感じが拭えないんだけど。マジで廊下歩いてるだけで流れ弾食らった感がある。
小町の罵詈雑言で心がべこべこになっていると、由比ヶ浜が気まずそうに、それはそれは気まずそうに顔を上げた。や、まあ、そりゃあ、俺のを咥えようとしてたらそれを妹に目撃されたとか、ショッキングにも程があるもんねえ……。
……それを言ったら、俺はもはや現物を見せてんだよな、実の妹に……。何それエグい。
「こ、小町ちゃん、ごめんね……? 変なとこ見せちゃって」
そろりと言うと、小町の表情が一変して明るいものになった。え、あれ?
「あー、良いんですよー結衣さん! 勢いで結衣さんにまで正座させちゃいました、ごめんなさい! 取り敢えず楽にしてください!」
「え? あ、う、うん……」
小町の急な切り替えに由比ヶ浜が戸惑う。そりゃそうだよね……。
じゃあ、俺も――と思ったら。
「お兄ちゃんはそのまま」
おうふ。
「はい……」
解放されたのは由比ヶ浜だけだった。俺は依然人質状態。や、この言い方もおかしいんだけどね。
「元々は2人のイチャイチャを助長する為に家を出た訳ですが……それでも、もしあられもない姿になっていたら流石にそれを目撃するのは気まずすぎると思ったから、お兄ちゃんに連絡して確認を取っていたのに……全くもう! お兄ちゃんのバカ! 変態! 色情魔! 思いの外巨根!」
「最後のはマジでやばくないか!?」
全力でツッコんだ。
「キョコン……」
由比ヶ浜がきょとんとした顔で首を傾げている。明らかにこの子の脳内で漢字変換されていない。良かった、ぴんと来てなくて……。
「あー、結衣さん、キョコンというのは漢字で『巨根』と書きましてー……」
「おい馬鹿やめろ小町。なんか変な感じになっちゃうだろうが」
なんか小町の方が耳年増の感があるなあ……。
由比ヶ浜はまだぽへーっとしてる。くっそ、なんか妙に恥ずかしい……。
まあ。
普通、兄のガン勃ちしたものを見たら、そんなのトラウマにしかならないのだろうけれど。
その辺をユーモア交じりで受け流す辺りに、小町の寛容さが伺える。素晴らしいと思います、僕の妹。
小町ならお世辞も言わないだろうから、巨根扱いされたのは嬉しくもある。何言ってんだろう俺。
「キョコン……」
「由比ヶ浜、それ何度も繰り返し呟くような単語じゃねえぞ、やめとけ」
この子、阿呆すぎますやんか……。
× × ×
小町が(俺に)説教、というより今後の振る舞い方の指導をしている間、由比ヶ浜は女の子座りで、俺は正座のままだった。俺そろそろ足が痺れるを通り越して腐りそうなんですけど……。法事かよ。
「――と、言う訳で」
足の痺れとの闘いに全精力を費やしていると、小町のまとめにかかるセリフが聞こえた。おお、やっと地獄から解放される……。
「小町へのお詫びとして、2人がいちゃついている所を見せてください!」
「――はい?」
2人同時に。
素っ頓狂な声を出した。
「……えーと、小町ちゃん、何言ってらっしゃるの?」
「はいそこ、お兄ちゃん。微妙に腰を浮かせて楽しようとしない」
「うぐおお……はい……」
マジで容赦ねえ。
「別にさっきみたいなエグいのを見たいって訳じゃないよ。例えばハグとか、き、キスとか、……き、キスとか、キスとかで良いから!」
「…………」
…………。
……こいつ、バカじゃねえのか?
「小町、お前、それは流石に――」
俺はもちろん、由比ヶ浜もしんどいだろう――と言いかけたところで。
「わ、分かったよ、小町ちゃん!」
「え」
隣のゆいがはま@女の子座りが、胸の前で小さくガッツポーズを作った。なにそれ可愛いなお前。
……や。ていうか。
「おい、由比ヶは……ま……!?」
俺が言葉を言い終える間も無く。
由比ヶ浜が四つん這いになって、顔を俺にずいと寄せた。
「小町ちゃんにお詫びはしなきゃだし、これで済むなら、ね、ね、ね?」
「いやいやいやいや」
顔が近い近い近いまた良い匂いして変な気持ちになる!
由比ヶ浜の肩を掴んで離そうとすると。
「――あ」
その反動でよろけ、足が痺れに痺れていたため踏ん張りが効かず、仰向けにこてんと倒れてしまった。
「あ、大丈夫……?」
由比ヶ浜が俺を心配しながら、俺の身体に重なるような体勢で寄ってくる。おい、その間合いの詰め方おかしいだろ! 事態が悪化してるぞ!
小町につと目をやると、両手で顔を覆い、指の隙間からばっちり覗いて「きゃー! はちゆいきゃー!」とか言ってる。あれ、このテンション、どこかで見た覚えが……ぐ腐腐腐腐……。
頭の中がタイタニック間違えた大パニック状態になっていると(確かにタイタニックは大パニックだったろうけれど)、由比ヶ浜が顔を近付けて、鼻と鼻が触れ合う程に接近した。
そして困ったような笑みを浮かべて、小首を傾げると、
「……ね、だめ?」
とどめの一撃を放ってきた。
「……っ」
……だーーーーーーっ! なんだよこのメロンパンナさん! キスしたいだけなんちゃいますのん!? 千葉県民とは思えない喋り方になっちゃった!
ていうかなんだよ可愛すぎるだろ! 目を潤ませるんじゃねえよ! 「だめ?」とか聞いておきながら、もう吐息がかかるくらい唇が近付いてるぞ! これ男だったら本番を迫って「ね、先っぽだけだから! 先っぽだかだから!」とか言ってる状態だぞ! この例えはなんか色々アレだぞ!
……ふう。別に賢者モードではないけれど、落ち着いた。
「……しゃーねえなあ」
ぽそりと言うと、由比ヶ浜の表情がほわんと明るくなる。
「……やった」
嬉しそうに呟いて、由比ヶ浜がゆっくりと目を閉じた。
× × ×
由比ヶ浜は俺と唇を重ねると、その豊満な肉体を重ねてきた。心地良い重みと圧迫感が身体に掛けられ、たぷんっという胸の柔らかな感触が脳髄を痺れさせる。
「んむっ、ちゅるっ、ぴちゃぴちゃ、ちゅう、ちゅうちゅう、ちゅるる、あむっ、じゅるるっ……」
俺の耳を押さえて、愛おしそうに俺の口蓋、歯列の裏表、頬の内側を舐めて、舌を絡めてくる。
「じゅるっ、ぴちゃぴちゃぴちゃ……ちゅぴ、ちゅる、ちゅる……んはっ、ヒッキー、ヒッキー、ヒッキー……んん……っ、んぐっ、んぐっ……」
時折唇を離しては俺を呼び、おでこを気持ちよさそうにこすり付け、味わう様に俺の唇をついばみ、なぞる。
「……あっ、ふああっ、んふぅっ……」
俺は吸い寄せられるように由比ヶ浜の尻に手を伸ばし、胸同様の柔らかな奥行きを思う存分貪っていた。
どうも、由比ヶ浜とのこういった肉体的接触は、半端じゃない多幸感が伴うようだ。
何ならあと数時間はこうしていたいまである。
……あれ、なんでこんな体勢になってるんだっけ?
…………。
……あ。
今思い出した! すぐ横に小町居るじゃん! 何してんの俺ら!?
きゃーっ! きゃーっ! ぎゃーっ!
慌てて、由比ヶ浜の肩にタップする。
「ん……っ? ……んっ、んっ、ちゅるっ、ぴちゃっ……」
いやいやいや気付いて認識して目を覚まして。俺のタップを一瞬だけ疑問に感じたもののすぐに切り替えてまた濃厚なキスを始めないで!
「……んんっ……ぶはっ! おい、由比ヶ浜むおっ、ぷはっ、こら、横見ろって……んむっ、小町が居るんちゅるっ……ってこらー!」
なんか。
いつかの仕返しをされたような感じだった。
由比ヶ浜はそんな意識はさらさら無かったようで、小町の名前を出したことでようやくはっと我に返ったようだった。
ぴたり、と。由比ヶ浜の動きが止まり、見る見る顔が真っ赤になる。
「……ぷはっ、そ、そうだ、あたし何やって――っ!? こ、小町ちゃん、ごめん、あたした……ち……?」
「……え……」
ようやく冷静になって、横にいる小町に目をやると。
「はわわわ……お兄ちゃんと結衣さんが……こんな……はわわわ……」
「…………」
なんだろう、マンガで、温泉入ってのぼせちゃった人みたいになってる。
両手で顔を覆って指の隙間から覗く体勢は変えぬまま、顔を真っ赤にして目をぐるぐると回して、仰向けでこてんと倒れていた。
「…………」
……うん、まあ。
幸せそうな顔で気を失ってるようなので、良しとしよう。全然良くないけど。ていうかどうやって気を失ったんだ……心配よりも呆れが先立つ。
「……な、なんかごめんなさいだね……」
俺の上に乗ったまま、上半身を起こした状態で、由比ヶ浜がたははと気まずそうに笑って頬を掻く。
全くだよこの発情期の雌め――なんて詰りながら、お返しに絶頂するまで揉んでやろうかと思ったけれど。
「あふあっ!? え、やっ……あんっ! ……え、あれ?」
軽く揉んだだけで留めておいた。服の上からでも、キスで高まっていたこともあるのか激しく喘いだ。あぶねえ、反応が色っぽすぎて押し倒す所だった……。
俺としては欲求を何とか抑えたつもりだったけれど。
「……むー……」
由比ヶ浜が不満げに口を尖らせる。
「……もっと、触って?」
「え……」
あかん。
この子のスイッチ入れてもうた。
「ほら……もっと……」
完全に雌の顔になった由比ヶ浜が、俺の手を掴んで自分の胸へと引き寄せる。
「お、おい、流石にこれ以上は……」
「だーめ。ヒッキーから触ったんだから、ちゃんと責に……ん」
由比ヶ浜の顔が、不意に固まった。
「え、どうし……あ」
何事かと横を見ると、小町が起き上がっていた。
しかし、俺たちの犯行未遂現場(?)を見るなり、ぶつぶつと呟くように、
「うーん……結衣さんが……淫乱だよぉ……」
なんかえげつない捨てセリフを残して、またぱたりと倒れた。
「小町ちゃん!? なんか今すごい恥ずかしいセリフ言わなかった!?」
由比ヶ浜のツッコミも、今は届かない。淫乱て言葉を知らなくても、何となく雰囲気で分かったんだろう。
小町が再び目をぐるぐるさせてばたんきゅーしているのを見て、ぽそりと呟く。
「……取り敢えず、小町をソファで休ませるか」
「うん……」
なんか変な所で、この会(?)は終了した。
起き上がりながら、今さっきの口付けと、胸を揉んだときの由比ヶ浜の反応を思い出す。
……うん、よし。
胸も含めて、後で由比ヶ浜をぐちょぐちょにしよう。
えらく卑猥で鬼畜な覚悟を決めながら、小町をソファに寝かせた。
続く。
ガハマさんでした。
今現在進行しているエピソードについてなんですが、しばらくの間は意識的に更新するのはゆきのん・ガハマさん・いろはすで、めぐりん・平塚先生・小町は不定期に書きたい時に更新するという感じになると思います。まあ、なんやかんやで後者3人もそれなりに書くと思いますw
引き続き、宜しくお願い致します(^^)!
この作品を書き始めて少し経った頃からずっと、下書きは縦書き42×34で書いて、その後ここで推敲して、推敲したものを縦書きの方に保存して……という流れにしているんですが、そのファイルもかなり溜まってきました。我ながらびっくりです。
それでは、今回もお読み頂きありがとうございました(^^)!!